緊急事態宣言明けで旅行検討者はコロナ以前の水準まで回復か。一方「個室で朝食」ニーズは継続中

緊急事態宣言明けで旅行検討者はコロナ以前の水準まで回復か。一方「個室で朝食」ニーズは継続中

新型コロナウイルスの影響で、大きな打撃を受けていた旅行業界でしたが、ワクチン接種の普及や緊急事態宣言の解除など、少しずつコロナ以前の状態に戻りつつあることが考えられます。宣言解除後に消費者はどのように旅行・お出かけに関して検討をしているのか、ヴァリューズのデータ分析チームの安藤さんがウェブ行動ログを活用して分析します。


旅行検討者数をコロナ前後で比較…現在は以前の水準まで回復か

こんにちは、ヴァリューズデータ分析チームの安藤です。私は普段、データアナリストとして大手広告代理店やECサイトを運営する事業会社と調査を行ったり、クライアントが保有する購買データや位置情報データなどの分析・可視化の支援などを行っています。

本記事では、緊急事態宣言解除による旅行検討者の行動について調査します。新型コロナウイルスの脅威が一旦は収束しているように見える現在、消費者はどのように旅行・お出かけに関して検討行動を行っているのでしょうか。旅行業界をテーマにウェブ行動ログを分析した事例を共有させていただきます。

まずはじめに、旅行に関してオンライン上で検討している人の推移を、時系列で確認していきたいと思います。

調査手法としては、株式会社ヴァリューズが独自に定義した「国内の旅行関連サイト全体」へ検索流入している人を抽出し、日次の推移をプロットしています。まずは緊急事態宣言が発令されていた2020年の検索者数推移を見てみましょう。

表1:旅行関連サイトへの検索流入者数の推移(2020年)

表1では、2020年に旅行関連サイトへ検索したユーザー数の推移を示しています。

時期ごとにコロナに関連した代表的な出来事を記載していますが、第1回目の緊急事態宣言が出された時期は顕著にユーザー数が減少していることが読み取れます。特に2020年4月の中旬頃は、2019年の同時期と比較しても50%ほど減少しており、外出が出来なくなった時期と同時に、オンラインでの検討行動も激減していることが分かります。

しかし、その後の第1回目緊急事態宣言の解除、GoToトラベルの実施などによって、オンラインでの検討者が大きく回復。2020年10月上旬には、2019年と同程度、もしくは若干多い水準まで到達している状況を表から読み取ることができます。

このようにコロナが流行して最初の1年間は大きな動きが見られますが、2021年はどのような傾向だったのか次の表で見ていきたいと思います。

表2:旅行関連サイトへの検索流入者数の推移(2021年)

表2では、2021年1月から、直近の10月までの期間で、旅行関連サイトへの検索流入者数の推移を表しています。

特徴的な傾向として読み取れることとしては、第2〜4回目の緊急事態宣言中には、第1回目ほどの検索者数の減少は起きていないことではないでしょうか。該当する期間を見ても、2019年と比較して若干低い水準で推移している程度だと読み取れます。

また、第4回目の緊急事態宣言が解除された後の2021年9月後半から10月末までにかけては、2019年と同程度の水準まで回復していることが分かります。これらの検索者数の推移から、

  1. コロナ流行初期には大きく検討者が減ったが、徐々に現状に慣れていき、オンラインで旅行やお出かけを検討するようになった  
  2. コロナ以前と比較すると若干少ないが、検討している人の数は徐々に回復してきた  
  3. 直近の緊急事態宣言解除後には、コロナ以前の水準まで戻ってきている

といった点を読み取ることが出来ました。

旅行・お出かけ検討者が重視するポイントの変化とは

最後に大手OTAサイト内でユーザーがどのように旅行に関して検討行動をしているのか、という点を分析していきたいと思います。このOTAサイトでは、ユーザーが自分の好みやこだわりの条件を指定して旅行・お出かけ先を検討することが可能となっています。

今回の調査では、それらの行動に紐づいたURL情報をもとに、コロナの影響による旅行検討時期の変化や、ユーザーが重要視するポイントの変化を分析していきたいと思います。

表3では、このOTAサイト内で旅行検討行動を行っている人の中で、対象とするこだわり条件を検索している人の割合の推移を出しています。コロナ以前の期間(2019年)に該当する項目を検索していた人の割合を「1」として、それ以降の期間で検索している人の割合がどのように変化しているのか、推移を表形式で示しています。

表3:大手OTAサイト内における検討軸の変化

高い数値を示し、濃い色でハイライトされている項目ほど、コロナが流行してから特に検索される割合が高くなっていることを示しています。

特に濃くなっている項目として、コロナが本格的に流行し始めた2020年4月~9月において「個室で朝食」「部屋で朝食」が3~5倍の割合で検討されるようになっていることが読み取れます。

特に食事の時間帯などで「密な状態を避けたい」という意識が顕著に現れていて、直近の3ヵ月を見ても「個室で朝食」の項目は3.1〜3.5と高い数値が現れていることが分かります。このことから、コロナがたとえ収まりつつあっても食事の際は不要な人との接触を避けたい、というニーズは継続していくことが考えられます。

またもうひとつ、直近の傾向で2021年6月から10月間では「オンラインカード決済」の割合も非常に高くなっていることが特徴として読み取れます。コロナ前と比較して、高い月では6倍近く検討されていることが分かり、決済や旅先での受付などでもなるべく人との接触は避けたい、という旅行者の関心があることが考えられます。

▼関連記事:マナミナでは新型コロナによる世の中の変化をレポートした記事を多数公開しています。ぜひ併せてご覧ください。

アフターワクチンの消費者行動意向を公開。今後実施すること・実施時期など調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/1589

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、国内の20歳以上の男女25,401人を対象に、新型コロナウイルス影響2年目のいま現在の消費者動向実態をアンケート調査いたしました。第一弾「生活変化編」、第二弾「メディア変化編」に続き、今回第三弾「アフターワクチン展望編」として、感染拡大前~コロナ1年目~コロナ2年目現在までの消費者意識変化と今後の展望を公開いたします。 なおアンケート調査に加え、ヴァリューズが独自保有する消費者行動ログを用いての分析も実施しています。

緊急事態宣言解除後の消費者行動&実施時期を調査 ~ 日用品・化粧品のEC利用や出前・宅配は 約7割がアフターコロナでも継続意向

https://manamina.valuesccg.com/articles/931

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、国内の20歳以上の男女25,382人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大後から緊急事態宣言解除後までの消費意識の変遷、そしてアフターコロナにおける消費意欲およびその実施時期に関するアンケート調査第二弾を実施しました。

国内旅行のこれからはどうなる

最後に本記事での分析をまとめます。

まず、オンラインでの旅行の検討者はコロナ流行の初期には大幅に減少しましたが、GoToトラベルの影響で一時的に回復していました。2021年に入ってからは緊急事態宣下にあってもオンラインでの検討者は一定数いて、第4回目の緊急事態宣言解除後はコロナ以前の水準まで回復しています。

また、コロナの影響により、食事の際にソーシャルディスタンスをしっかり保つことができるのかどうかが、旅行先を検討する上で重要となっているようでした。さらに、決済や受付などでも不要な人との接触は避けれるだけ避けたいと思っているようです。この傾向はコロナが落ち着きつつある現状でも維持され、今後の旅行のスタンダードになっていくのではないでしょうか。

コロナと上手く付き合いつつ、旅行を楽しむという新しいスタイルに今後とも注目していきます。

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この記事のライター

同志社大学商学部商学科卒業後、新卒でヴァリューズに入社。
データアナリストとして大手広告代理店やECサイト、化粧品業界などを担当。

ヴァリューズのWEBログデータの分析だけでなく、購買データや位置情報データなどの分析・可視化や活用支援も行う。

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