はじめまして。データマーケティングの会社・ヴァリューズのデータプロモーション局でコンサルタントを務めている利根川と申します。前職ではWeb広告代理店に勤めており、教育業界や女性向け商材を中心に広告の運用やマーケティングに携わっていました。ヴァリューズでもプロモーションの提案や運用、新人教育を中心に担当しています。
昨今急成長を遂げたデジタル広告は今や日常で目にしない日はないくらい私達の生活に溶け込んでいます。では、デジタル広告はこれまでどのように成長を遂げてきたのでしょうか。
そこで本連載では、デジタル広告にまつわる基礎的な内容を振り返ります。今回はデジタル広告の発展の歴史をおさらい。これからデジタルマーケティングの業界で働く方や、あらためて基礎を身に着けておきたい方は、ぜひご自身の学びに役立ててみてください。
株式会社ヴァリューズ
マーケティングコンサルタント 利根川唯
Web広告代理店出身。大手教育業界クライアント様をはじめ、美容業界クライアント様を中心に主に女性をターゲットとする様々な業界で経験を積む。業界特性に合わせた運用型メディア全般のプランニング/実行を得意とする。
デジタルマーケティング市場の成長を振り返る
まずはデジタル広告を取り巻くデジタルマーケティングの市場について、その概要をまとめてみましょう。
そもそもデジタルマーケティングとは何でしょうか? デジタルマーケティングの定義には様々なものがありますが、端的にまとめると「Web上でものを売る仕組みを作る活動」のことです。
インターネットが登場する以前はマス広告を活用したプロモーションがマーケティングの主たる活動でした。インターネットが世の中に浸透して以降、デジタルマーケティングが登場することになったのですが、その特徴としては、効果測定ができる、スピードが早い、低予算から実施が可能、といった点が挙げられます。
次に、デジタルマーケティングとして代表的なEC市場の動向を見てみましょう。次の図をご覧ください。
BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)
直近1年はコロナ禍の影響も受け、サービス分野のBtoC-EC市場規模は縮小しておりますが、物販・デジタル分野のBtoC-EC規模は年々右肩上がりで伸びています。
デジタルマーケティングの歴史を概観してみる
続いて、デジタルマーケティングのこれまでの歴史を振り返ってみましょう。次の図に、インターネットの登場以降の主要な出来事を時系列でまとめました。
デジタルマーケティングの主な出来事
■1995年~:インターネット黎明期
歴史の始まりは今から30年ほど前にさかのぼります。1994年、オンライン雑誌に世界で初めてバナー広告が掲載されました。当時はYahoo!やGoogleのような検索エンジンはなく、多くの人々は雑誌などに掲載されたアドレスを元にサイトにアクセスし、情報を得ていました。
1996年に国内初の商用検索サイト「Yahoo!JAPAN」が開始され、検索エンジンのサービスが始まります。今では「ググる」といった言葉に代表されるようにGoogleの利用が目立ちますが、国内最初の検索サイトはYahoo!だったのです。
当時は検索エンジンの運営会社が厳選したサイトのみを登録・分類することで構築したウェブディレクトリ内を検索する「ディレクトリ型」が主流でした。しかし、1998年にGoogleが「ロボット型検索エンジン」を発表。ロボットがWeb上にある該当サイトを自動的に探し出し、検索結果を表示するようになりました。これによって、検索結果の上位に表示されるように工夫を凝らす検索エンジン最適化(SEO)対策というデジタルマーケティング手法が発達しました。
■2000年~:ネットショップやブログサービスの台頭
2000年にGoogleがAdwordsをローンチしたことで検索型連動広告(SEM)が誕生します。検索結果の表示画面に検索キーワードと関連する商品・サービスなどの広告を表示する仕組みです。Yahoo!JAPANも追ってサービスを開始。従来のネット広告よりも手軽に始めることができ、現在でもインターネット広告の主流となっています。
また、この時期になると楽天市場やアマゾンなどのネットショッピングが盛んとなってきます。さらにブログやメールマガジンが普及したことでアフィリエイト広告が活用されるようにもなってきます。こうして集客のためのチャネルがどんどん広がってきたことになります。
■2005年~:SNSの誕生、スマホの登場
2005年にもなるとインターネットもだいぶ成熟してきており、MSNやYotubeなどのサービスが台頭してきます。また、TwitterやFacebookなどのSNSも誕生し、個人での発信がより手軽にできるようになってきました。
そして2007年、スマートフォンの流行の火付け役となるiPhoneが誕生します。その後、スマートフォンはまたたく間に世界中に普及。今までになかったサービスとプロダクトの誕生によって、人々の情報入手やコミュニケーションのあり方が大きく変わってきました。
■2010年~:「アドテク時代」の到来
スマートフォンの誕生により頻繁に行われるようになった我々の情報収集や購買行動に伴い、マーケティング戦略もマスからOne to Oneにシフトしていきます。しかしながら、一人ひとりにあった広告の配信を行うにはかなりの工数がかかります。それを解消するためにシステマティックに広告配信ができる仕組みが開発されました。
例えば、従来の配信手法では広告の配信先毎に配信媒体を選定し出稿する必要がありましたが、「アドネットワーク」が開発されたことで広告媒体のWebサイトを集めた広告配信ネットワークが形成され、多数の面に掲載ができるようになりました。いわゆるアドテク時代の到来です。
その後、アドエクスチェンジ、DSPやSSPなど、広告主側も媒体側も効果や収益が最大化できるような仕組みが開発されていきました。どのような入札額で誰に向けて広告を出すかがキーポイントとなってきます。
■2015年~:コンテンツマーケティングの流行
2015年に入るとコンテンツマーケティングという言葉を頻繁に耳にするようになります。その後、コンテンツマーケティングの中でも、コンテンツSEOの手法が注目を集めるようになりました。検索エンジンがある限りこの手法は有効であり続けるため、SEOといえばコンテンツSEOというくらい、現在ではコンテンツ施策が台頭してきています。
また、広告配信も自動化がすすみ、AIが流行したこともあり、人の手から離れて機械が運用していくようになりました。それに伴い、人の仕事は配信設計や戦略など、考える仕事にどんどんシフトしていくこととなります。
■2020年~:個人のデータ保護の観点
AIの進化に伴い広告配信も自動化が進み、一人ひとりに対して最適化された広告配信が進んでいきます。一方で、配信方法がアップデートされるほどユーザーのデータ取得や活用が進むため、プライバシー保護の観点も重要視されてきます。個人情報保護の観点からGDPRの推進や、Cookie削除によるトラッキング防止機能のITPの実装などが取り沙汰されるようになりました。
特に、ITPの影響は大きく、今までの計測機能やオーディエンスデータが活用しにくい状況となってきています。Googleも、2023年にはcookieの活用を廃止するとしており、今後どのようにデータを扱っていくべきかが注目されています。このように、デジタル広告は技術の進歩とともに日々成長を遂げてきています。
現在のデジタルマーケティングの全体図
最後に、現在のデジタルマーケティングの全体像と、その手法についてをまとめてみます。次の図をご覧ください。
デジタルマーケティングの全体像
デジタルマーケティングをKPIごとに分類すれば、「集客」「成約」「単価」「リピート」の4つに大きく分けられます。そのなかに、上図のように施策を位置づけることができます。デジタルマーケティングでは、これらの施策をうまく使い分けながら成果を最大化していくことになります。
今回では主に集客部分を中心に歴史をたどってきましたが、デジタルマーケティングの全体像を考えると、成約・単価・リピートとより踏み込んだ施策についても考える必要があります。様々な進化によって、各施策や手法はこれからもどんどん増えていきますが、今後デジタルマーケティングを行う上では、データ収集と分析が非常に重要になってくるでしょう。
今回は以上となります。次回はデジタル広告の種類について解説していきます。
インターネット広告の5つの種類と市場規模を解説!現場担当者が語るデジタル広告の基礎
https://manamina.valuesccg.com/articles/1645#outline31インターネット広告の市場規模や5つの種類、3つの取引手法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタント・利根川さんが解説します。現場の担当者の目線から語る、初学者にとっても分かりやすい内容。基本を学びたい方は必見です。
▼ヴァリューズでは、ブラウザ上で競合サイト分析を含む3C分析を簡単に行えるツール「Dockpit(ドックピット)」を提供しています。一部機能を使える無料版もありますので、ぜひ一度利用してみてください。
前職ではWeb広告代理店に勤めており、教育業界や女性向け商材を中心に広告の運用やマーケティングに携わっていました。業界特性に合わせた運用型メディア全般のプランニング/実行を得意としています。ヴァリューズでもプロモーションの提案や運用、新人教育を中心に担当しています。