2017年の民泊事情調査

2017年の民泊事情調査

国内の民泊業界では「Airbnb」が圧倒的トップ!


ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸)は、米国サンフランシスコに本社をおく民泊仲介プラットフォーム「Airbnb」について、消費者の動向を分析しました。

分析概要

ネット行動ログとユーザー属性情報を用いた分析サービス「eMark+」を使用し、民泊業界最大手のAirbnbの調査を行った。
※キーワード検索者数やサイト訪問者数はPCからのアクセスを集計し、VALUES保有モニタでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。サイトのカテゴリはヴァリューズが独自に定義。

考察サマリ

調査背景 ~「Airbnb」の検索数は直近1年で増加傾向。「民泊」の検索数を上回る。

近年、インバウンド需要や東京オリンピックに伴う宿不足が懸念される中、一般の民家に泊まる「民泊」が注目を集めています。また、2017年3月10日には、民泊新法が閣議決定されるなど、日本においても民泊を推進していこうという動きが起こっています。そこで、民泊仲介プラットフォーム最大手のAirbnbを取り上げ、日本における民泊の動向について調査しました。

はじめに、2016年3月~2017年4月の「民泊」と「Airbnb」を検索したユーザーの月別検索者数の推移をみてみましょう。「民泊」と検索する人は、減少傾向にありますが、「Airbnb」と検索する人は2017年2月に急激に減少しているものの、全体として増加傾向にあります。また検索する人数も「Airbnb」のほうが「民泊」よりも多くなっていることがわかります。民泊そのものよりも、Airbnbに注目している人が多いことがうかがえます。

民泊仲介プラットフォーム3社のユニークユーザー数を比較 ~民泊仲介プラットフォームでは、Airbnbが圧倒的トップ!しかし、日本ではまだ民泊は根付いていない様子もうかがえる。

次に、2016年3月~2017年4月の民泊仲介プラットフォーム3社(「Airbnb」、「HomeAway」、「SPACEMARKET」)のサイト訪問者数の推移をみてみました。
HomeAway、SPACEMARKETは他の民泊仲介プラットフォームの中でも、より多くのサイト訪問者を集めていたのでAirbnbとの比較対象としましたが、それでも、Airbnbが他2社よりも3倍以上も多くのサイト訪問者数を集めています。

しかし、Airbnbのサイト訪問者数に着目すると、2017年1月以降はほぼ横ばいとなっています。上述した「民泊」と検索する人が増加していないことも加味すると、日本においてはまだ民泊そのものが根付いていないことも考えられます。


民泊仲介プラットフォーム3社のサイト訪問者数推移(2016年3月~2017年4月)

民泊仲介プラットフォーム3社の併用状況

続いて、2016年11月~2017年4月のAirbnbからみたHomeAway、SPACEMARKETとの併用状況です。
他サイトと併用せずに、Airbnbのみに接触している人が圧倒的に多くなっていることがグラフからわかります。


民泊仲介プラットフォーム3社のサイト併用状況(2016年11月~2017年4月)

これまで述べてきた、サイト訪問者数、併用状況からも、「民泊」において「Airbnb」は想起されやすいことがうかがえます。ユーザー数では圧倒的な差を誇るAirbnbの課題としては、今後、民泊の利用をいかに日本で普及・拡大させるかではないでしょうか。

Airbnbの併用サイトランキング ~Airbnbの競合は大手旅行予約サイトではないだろうか

続いて、2017年2月~4月に、Airbnbのサイトに訪れた人が他にどんなサイトに訪れていたのかを、旅行カテゴリに絞ってサイト訪問者数のランキング形式でみてみました。

「楽天トラベル」や「じゃらんnet」といった大手OTA(Online Travel Agency)と併用されていることがわかります。Airbnbの実質的な競合としては、既存の旅行予約サイトではないでしょうか。


Airbnbサイト訪問者の併用サイトランキング(2017年2月~4月)

Airbnbでの宿泊予約者は、他にどのようなサイトを見ているのか?

さらに、2017年2月~4月、Airbnbでの宿泊予約者が他にどんなサイトに訪れていたのかを、旅行カテゴリに絞って、サイト訪問者数のランキング形式でみてみました。

上述のAirbnbサイト訪問者では、2位、3位だった「楽天トラベル」、「じゃらんnet」が、Airbnb宿泊予約者でも、それぞれ3位、2位となっています。また、Airbnbサイト訪問者では13位だった「トラベルコちゃん」は、Airbnb宿泊予約者では6位にランクアップしています。Airbnbでの宿泊予約者は、各サイト(楽天トラベルやじゃらんnetなど)のホテル情報を、Aribnbに掲載されている物件と比較して、最終的に宿泊予約を行っている人が多いことが考えられます

また、Airbnbサイト訪問者では7位だった「エクスペディア(Expedia)」は、Airbnb宿泊予約者では4位となっています。海外領域に強いExpediaとの併用も多いことから、Airbnbの利用シーンとして海外旅行も浮かび上がってきます。


Airbnbでの宿泊予約者の併用サイトランキング(2017年2月~4月)

Airbnbで宿泊予約するのはどんな人? ~Airbnbで実際に宿泊予約する人は、年齢は20~30代が多く、職業は、学生や会社経営者が割合として多い

最後に、Airbnbでの宿泊予約者の特徴を把握するため、他サイトの宿泊予約者とユーザー層を比べてみましょう。下記4分類のユーザーセグメントの属性情報(年代、職業、個人年収)を比較してみました。

※下記の「CV(コンバージョン)」は各サイトでの宿泊予約アクションを示し、各サイトの宿泊予約時に遷移するディレクトリへの接触者と定義

1.Airbnbで宿泊予約CVに至った人
2.Airbnbサイト訪問者
3.楽天トラベルで宿泊予約CVに至った人
4.じゃらんnetで宿泊予約CVに至った人

Airbnbで宿泊予約CVに至った人は、20~30代が65%以上と圧倒的に高くなっています。また20代だけの割合も48.1%と他のセグメントと比較して高くなっています。


上記4分類の年齢区分(2016年3月~2017年4月)

また、Airbnbで宿泊予約CVに至った人の職業は、「学生」と「会社経営者」の割合が、他セグメントと比較して高くなっています。新しいサービスに敏感な人たちが実際に利用していることが推測されます。

上記4分類の職業区分(2016年3月~2017年4月)

分析のまとめ

日本において、民泊はまだ新しいサービスであり、実際にAirbnbで宿泊予約をしている人はいわゆるアーリーアダプター層であると考えられます。また、既存の宿泊予約サイトと併用して見ており、Airbnbとして今後は顧客層拡大のため、アーリーマジョリティ層獲得に向けた施策がより一層重要となってくるのではないでしょうか。

この記事のライター

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