前回のPart1では、なぜインナーブランディングが必要だったのか、プロジェクトを通じてどんなことを実現したかったのかについて、じっくり伺いました。また取組みとして、ワークショップの開催からスローガン検討までを聞きましたが、メンバー1人ひとりの想いを引き出したい!という中尾さんの気持ちが伝わってきて胸が熱くなりました。
Part2では、組織スローガンの決定プロセスやロゴ制作についてお話を聞いていきます。
想いの詰まった組織スローガンが決定
―― 次のステップは、いよいよスローガンの決定かと思います。実際どんなスローガンになったのか、またどんな想いを込められたのか教えてください。
ヴァリューズ 中尾斉義(以下、中尾):ワークショップを通じて、コンサルティンググループには個性豊かなメンバーが集まっていることを改めて認識しました。そのため、それぞれを一定の型にはめるのではなく、「個性や自分らしさを突き詰めて活躍してほしい」と思ったんですね。
その想いを込めたスローガンとして、「Go unique, Create one team.」に決めました。
新生コンサルティンググループのスローガン
「Go unique」という言葉は、おそらく文法では正しくないかと思います。似たような言葉で「Be unique」とも迷ったのですが、更に自分の良さを伸ばしてほしいという気持ちから、最終的に「Be」 ではなく「Go」を選びました。
そして、「Create one team」は、「自分らしく一体感のあるチームを創り上げてほしい」という想いを込めています。私たちの仕事は、メンバーごと、プロジェクトごとにお客様も社内のアナリストやリサーチャーも変わります。年齢も性格も考え方もスキルも異なる人びとが集まる中で、一緒に新しい価値の創造や課題解決へ動いていく同志を創ってほしいと考え、「one team」という言葉にしています。
実は、今回のスローガンは2代目で、初代は「Grab your position.」を掲げていました。「自分のポジションをつかみ取れ」というメッセージが込められているのですが、今回のスローガンでは「更に自分らしさを伸ばし、そして自分だけでなく周りに影響を与えてほしい」という繋がりも意識しています。
―― 前向きで勇気づけられる言葉ですね。
中尾:前半の「Go unique」は早めに決まっていた一方、後半部分は当初フラットな言葉を採用していました。ただ、「もっとポジティブな言葉にしてみたら」というアドバイスをもらい、更に練り直していった結果、今の言葉になっています。今回は姿勢を伝えることに重きを置いているので、ポジティブな言葉の「Go」や「Create」はぴったりだと感じています。
「Go unique, Create one team.」に込められた意味
メッセージを形にするロゴ制作
―― ではスローガンをロゴに昇華させていったお話も聞かせてください。まず素朴な疑問ですが、なぜロゴが必要だったのでしょうか。
中尾:せっかくスローガンの言葉を練り込んで作ったとしても、時が経つと忘れられてしまうなと思っていました。そのため、日頃から目にすることができるモノが必要だと考えていました。日々の仕事をする中で、自分の方向性や在り方について悩んだ時、ロゴマークならスローガンをすぐに思い出すことができるので、作ることに決めました。ロゴマークは想いを反映し、目で見て分かりやすい、記憶に残りやすいというメリットがあるので良いと思っています。
―― 具体的にはどんなステップで進められたのでしょうか。
中尾:私自身クリエイティブを作ったり、ロゴマークのデザインを考えたりということに携わったことがなかったんですね。せっかくなら外部にお願いしては、というアドバイスをもらったので、そうすることにしましたが、デザインをする上で何を大事にすれば良いのか、デザイナーの方に依頼する時の大事なポイントは何か、当初は全く分かりませんでした。
そのため、事前に知見をお借りしたいと思い、我々のグループ会社であるヴァリューズクリエイターズのクリエイティブアドバイザー 柏本さんに、ご相談することからスタートしました。柏本さんは、リクルートで長くクリエイティブ監修に携わっていたデザインのプロフェッショナルです。
株式会社ヴァリューズクリエイターズ 特別顧問・クリエイティブアドバイザー 柏本 郷司氏
中尾:柏本さんへの相談を通じて、デザイナーの方に依頼する時の大事なポイントを把握することができました。その上で、クラウドソーシングを通じてコンペ形式で依頼、最終的に約80件が集まり、プロジェクトメンバーで選定、グループ会議で最終決定したというフローになります。
―― 依頼の際に気を付けたポイントはありますか。
中尾:まずロゴマークを見た時に、どんな感情になってもらいたいのか伝えることが大事ということです。例えば「わくわくしてほしい」「かっこいいと感じてほしい」という感じですね。柏本さんからは「読後感」という言葉で教えていただきました。
また読後感の元となるもの、例えば「なぜ作ろうと思ったのか」という背景や目的、大切にしたいことを伝えることも大事です。ロゴマークが果たす役割をきちんとお伝えすることで、デザイナーの方が考えやすくなり、かつ私たちもマッチしたロゴマークを作っていただけることで満足度も上がると思います。
その他、長い期間、様々なシーンで使われるロゴで大事なものだと伝えることで、デザイナーの方がデザインする時の想いも一段と乗ってくるとお聞きしたので、きちんとお伝えしています。
どんな風に可視化するかという部分は、デザイナーの方がプロなので、そこには踏み入りません。代わりに最後の仕上がりイメージや、どういう風になってもらいたいのかという点を意識して伝えるようにしました。
―― 読後感が大事なんですね。ただデザイナーの方にイメージを伝える時「クール」「先進的」など抽象的なワードが並びがちで難しい…と思うことがあります。今回はワークショップから出た要素をどのように反映させていったのでしょうか。
中尾:そうですね。クラウドソーシングのサイトに、対となる言葉を選ぶ欄がありました。例えば「高級」の対では「日常的」という風に。「未来的」「遊び心」など、色々な軸はありましたが、プロジェクトメンバーでのズレはほとんどありませんでした。ワークショップを通じて対話を重ねて共通認識を持つことができていたので、イメージ自体は迷いなく言葉にしていくことができたと思います。
メンバーの最終投票は接戦に
―― コンペ形式でロゴが集まってきた後は、どのように決めていかれたのでしょうか。
中尾:約80件の提案から、プロジェクトメンバー3人それぞれで自分がいいと思うロゴを選びました。そしてグループの定例会議の中で、なぜこのロゴがいいのかプレゼンテーションを行い、メンバー投票をして決めるという形を取っています。ちなみに、フィーリングで3人とも選んだのですが、最後に残ったのは、実は2件だったんですよね。
―― すぐにそこまで絞られたんですね!
中尾:1つは僕が選んだもので、もう1つは後輩2人が選んだものでした。つまり、2人は80案から同じものを選んでいましたね。また、私が選んだものも、後輩の1人は最後まで悩んでいたと言っていました。候補は沢山ありましたが、意外とすぐに絞っていくことができました。
―― そして最終的にはメンバーの投票で決められたんですよね。
中尾: はい。結構接戦でしたね。私と後輩2人で、それぞれプレゼンスタイルは違ったのですが、最終的に投票を募ったところ、なんと結果は55% 対 44%でした。
―― 均衡しましたね!
中尾:約80件から2件に絞られたこともすごかったのですが、投票でも接戦でしたね。最終的には後輩2人が選んだ方にロゴが決定しました。
ロゴに込められた3つの想い
―― 選ばれたロゴの意味やコンセプトを教えていただけませんか。
中尾:大きく2つの意味があります。1点目は『「Good!」の手』が入っていることです。以前にグループで使っていたロゴにも、拳の手があったんですよね。今回もグッドマークという同じく「手」の要素があります。前のスローガンでは「自分のポジションをつかみ取れ」という要素が強く拳が適していましたが、今回は自分やお互いの良さを認め合うことや更に良くすることをスローガンの意味に込めているので、『「Good!」の手』は良いなと思います。
2点目は「No.1」という意味です。スローガンには無い要素ですが、メンバーの間では「お客様にとって第一想起でありたいよね」という話をよくしていて。というのは、我々はお客様と最前線で向き合い、相談をいただいて課題解決をするグループです。だからこそ、お客様が何か困った時に「そうだ、ヴァリューズの中尾さんに相談してみよう」と思ってもらえる存在でありたいよねと。
決定したロゴに込められた意味
取組み効果と今後の浸透施策
―― インナーブランディングの取組みを通じて、コンサルティンググループにどんな変化がありましたか。また今後どのような効果を期待されているのでしょうか。
中尾:スローガンとロゴマークを作る過程で、みんなの想いを聞くことができ、かつ1つにまとめられたことで、意志の統一や同じものを共有している感覚を持つことができたと感じています。
現在のメンバーや新しく入ってきた人が、コンサルティンググループでキャリアを築いていく時、どうなってもらいたいのか。一言で表した言葉が「Go unique, Create one team.」です。それをどんな風に体現するかは、それぞれの色や良さを出してもらえればいい。ただ方向性として「ユニークさを突き詰めて欲しい、それを活かした自分なりのチームを作ってほしい」というメッセージ自体は、みんなに認識してもらえたのかなと。
我々のチームはフロント組織でヴァリューズを束ねる存在だと思うので、他のチームにも良い影響を与えてほしいなと思います。
―― 今は浸透施策に取り組んでいらっしゃいますよね。Part3に向けて、どんなことをされているのか教えていただけませんか。
中尾:大きくは7つ取り組む予定です。
今後取組んでいく7つの浸透施策
伝えたい相手 | 浸透施策 |
---|---|
全体 | ロゴ制作 ナラティブ制作 |
コンサルティンググループ | ワークショップ / Linked Day ステッカー制作 |
他部署 | クレド制作 |
クライアント | Web会議壁紙への記載 オウンドメディアでのコンテンツ化 |
中尾:1つ目はロゴマークを作ること、これは先程お話したロゴ制作の件です。2つ目は、ナラティブ、つまりブランドストーリーを作っています。先程のスローガンを見た時に、新しく入ってきたメンバーにはどんな思いが込められているのか掴みにくいかなと思ってます。そのため想いを込めたストーリーを作ることで新しく入ってきた方にもスローガンが伝わるようにしたいと思っています。3つ目は「Linked Day」というお互いの気持ちをリンクさせるワークショップを行う予定です。
4つ目から6つ目はまとめてお伝えしますが、ステッカー制作、クレド制作、WEB会議壁紙への記載への取組みです。これは、スローガンを普段から目にすることで、日々意識してもらう施策として行いました。
7つ目は、この取組み自体をストーリーとして残しておき、我々がどういう過程を経て、どういう思いで作っているのか、他の人に見てもらえる機会を用意しておくことです。このマナミナでの記事化が、正にそうです。これら7つの取組みを通じて、メンバーへの浸透を図っているところです。
―― 浸透施策も盛りだくさんですね!次回はいよいよ最終回ですが、2回目のワークショップの目的や効果、ナラティブやクレド(行動指針)の制作について伺いたいと思います。またどんな組織がインナーブランディングに向いているのか、躓きやすいポイントもお聞きでればと。Part3も楽しみにしています。
↓続きはこちら↓
インナーブランディングの効果とは?浸透施策と実践のポイント|Part3
https://manamina.valuesccg.com/articles/18073回にわたって、株式会社ヴァリューズの新生コンサルティンググループで行われたインナーブランディング・プロジェクトの事例をご紹介。最終回となる本稿では、社内浸透施策への取組みとプロジェクト全体を振り返り、実践する際のポイントについて、プロジェクトリーダーの中尾さんに伺いました。
大学卒業後、損害保険の営業事務を経て、通販雑誌・ECサイトのMD、編集、事業企画に従事した後、独立。自身のキャリアを通じて、一人一人のポテンシャルを引き出すことが組織の可能性に繋がることを実感したことから、現在はマーケティングとキャリア・人材を軸に、人と組織の可能性を最大化できるよう支援をしています。