インナーブランディングの効果とは?浸透施策と実践のポイント|Part3

インナーブランディングの効果とは?浸透施策と実践のポイント|Part3

3回にわたって、株式会社ヴァリューズの新生コンサルティンググループで行われたインナーブランディング・プロジェクトの事例をご紹介。最終回となる本稿では、社内浸透施策への取組みとプロジェクト全体を振り返り、実践する際のポイントについて、プロジェクトリーダーの中尾さんに伺いました。


Part1、Part2では、なぜインナーブランディングが必要だったのかという組織背景や、メンバーの想いを引き出し、スローガンやロゴとして形にするまでのプロセスについて、じっくり伺いました。

Part3では、メンバーへの浸透施策への取組みや、プロジェクト全体の考察についてお話を伺います。

グループのスローガンを自分事化

―― 前回インナーブランディング・プロジェクトの浸透施策として、7つの取組みをされていると伺いました。特に2回目のワークショップの位置付けとなる「Linked Day」では、どんな取組みをされたのでしょうか。

ヴァリューズ 中尾斉義(以下、中尾):Linked Dayは、コンサルティンググループのメンバーが「Go Unique, Create one team」というスローガンを自分事化してもらうため、1人ひとり考える機会を設けた取組みです。

具体的には次の3つのテーマについて考えてもらいました。1つ目は年始に行ったため、2022年度の抱負を、2つ目は「Go Unique」の部分として、自分はどんな強み・特徴を持っているか?を、3つ目は「Create one team」として、その特徴を活かしてチームにどんな変化を与えたいのかということです。

Linked Day 3つのプレゼンテーマ

Linked Day 3つのプレゼンテーマ

中尾:そして1人5分のプレゼンテーションを行った後、「強みのジャムタイム」というお互いに感じている印象を話し合う時間を設けました。発表者のどんなところが強みだと思うか、メンバー全員にGoogleのJamboardに書いてもらい、気になるコメントがあれば書いた人に直接話をしてもらうことで、他の人から見える自分の側面への理解を深めるという取組みでした。

―― 特に工夫された点を教えてください。

中尾双方向のコミュニケーションを意識した点です。発表者が自分の想いを語るだけでなく、聴衆全員から自分に対して強みや想いを投げかけてもらうことで、テーマである「自分の強みと、自分ならではのチームへの関わり方とは?」について深く再認識してもらう機会にできればと考えました。

―― Linked Dayを開催して、どんな意義があったと感じていらっしゃいますか。

中尾:各人の想いを聞くことや様々な角度からその人に対する印象を聞くことで、新しく加わったグループのメンバーにはこんな一面もあったんだと知ることができ、改めて距離を縮める場になったことが良かったです。

また私自身もLinked Dayに取り組んだのですが、自分では気づきにくい意外な一面への気付きがあったり、自分でも強みにしたいと考える一面を、他の人にも認めてもらっているんだなと知れたりすることができました。他のメンバーの反応も良かったので、この取組みへの意義を感じています。

「強みのジャムタイム」であがったメンバーからのメッセージ例

「強みのジャムタイム」であがったメンバーからのメッセージ例

プロセスや想いをナラティブとして形にする

―― その他の浸透施策として、ナラティブに取り組まれたそうですね。こちらも詳しく教えていただけませんか。

中尾ナラティブは、「Go Unique, Create one team」というスローガンにどういう想いを込めたのか、どんな背景があるのか、きちんと言語化しようと思って取り組んだ施策です。ブランドストーリーのようなものですね。

新しく入るメンバーにも、我々が掲げているスローガンにどんな想いが込められているのか、ナラティブを読んでもらうことで、理解度を上げてもらうことを狙っています。中途採用の方はもちろん、新卒採用のコンサルティンググループを説明する際にも、ナラティブとして制作したフライヤーを使ってもらったと聞いています。

―― 具体的には、どのような制作物を作られたのでしょうか。

中尾:こちらのフライヤーになります。

ナラティブを綴ったフライヤー

ナラティブを綴ったフライヤー

中尾:作る際は、私のグループのマネージャー陣や副社長の後藤等、5人にインタビューをしました。副社長にはどんな想いでこのグループを創ったのか、マネージャーにはどんな想いでメンバーに向き合っているのか、どんな組織にしていきたいのか等をヒアリングしています。それらの意見も取り入れて、「Go Unique, Create one team」というスローガンに込めた想いを言語化して作成しました。

―― 素敵ですね。工夫された点はどんなところでしょうか。

中尾:上司にもヒアリングしたため、プロジェクトメンバーの3人だけでは生まれない言葉や視点、想いを引き出すことができた点です。もう一つの工夫は、背景にコンサルティンググループのメンバー全員を入れたことですね。

―― 背景にもメンバーお1人おひとりへの想いを感じます。このナラティブに、今後どのような効果を期待されていますか。

中尾:既存のメンバーに対しては改めてこういう想いで作っているということを、新しいメンバーにはどんな価値観を大事にしてほしいかを認識してもらいたいということを考えています。毎年7月頃には新しいメンバーが入ってきます。「Go Unique, Create one team」というスローガンを浸透させるための機能を、ナラティブに期待しています。

浸透効果を感じたロゴとLinked Day

―― 沢山の浸透施策を伺いましたが、どの施策に一番手応えを感じていらっしゃいますか。

中尾:現状はLinked Dayとロゴですね。Linked Dayは、自分のユニークさを深く認識することや、他のメンバーとの関わりを増やすという点で、必要な機会だったと感じています。我々が作成したスローガンについて、自分ごと化する時間を作ることができました。

とはいえ、時が経てば忘れてしまうので、中長期的に思い出してもらうためには、ロゴが有効です。例えば全社に向けた発表等で、定期的にロゴを用いてスローガンを伝えることで、メンバーや他グループの人の再認知に繋がっています。

―― ロゴは色々なシーンで活用されているんですね。

中尾:普段はオンラインミーティング時の壁紙に入れていることがメインです。あとは、今ステッカーを制作中です。パソコンや社用スマホに貼ってもらうことを想定しています。ステッカーを通じてスローガンにいつでも触れられるので、思い出してもらう回数が増えることを期待しています。

プロジェクトを振り返って

―― 改めてこのプロジェクトを振り返った際、メンバーの行動の変化は感じていらっしゃいますか。

中尾:効果測定はこれからで、6月に一度アンケートを取る予定です。個人的には、最初のワークショップを通じてお互いの考えや想いを共有し合い、Linked Dayを通じて普段その人をどういう風に捉えているのか等、色々と話したりできたことが良かったと思います。当初の目的の一つに、連携を深めたいと考えていましたので。

―― 一番苦労した点はどんなところでしょうか。

中尾:実際苦労したのはスローガンの言葉を紡ぎ出す部分でしたが、大事だなと思うのは、最初の想いを吸い上げる部分です。設計も一番考えました。今回では最初のワークショップにあたりますが、ここでグループの在りたい方向性が見えないと、どういう言葉を紡ぎ出せばいいのか分かりません。仮に言葉を紡ぎ出せたとしても、そのスローガンはメンバーがしっくりこないので意味が無いなと。なので、一番最初のワークショップはやるのと、やらないのでは言葉への腹落ち感の点で随分違うと感じます。

逆にそこさえしっかり設計できれば、考える内容のイメージがつくので、どういう言葉が適しているのか考えやすくなると思います。

―― もしインナーブランディングに取り組むなら、どんな組織が向いているのでしょうか。

中尾:私達のグループのように毎日顔を合わせるということが少なく、共通認識を揃える必要がある組織にはおすすめです。逆に毎日顔を合わせていて、コミュニケーション量の多い組織であれば、敢えて作る必要がないのかもしれません。

私がコンサルティンググループに入った当初は、グループとして何を目指していて、個人としてはどういう力が身につくのか、数年後にどうなっているのか想像できていませんでした。今回のスローガンのように、何を大切にしたいと考えている組織なのか、個々人にどうなってもらいたいのかなど、明確なメッセージがあれば、日々顔を合わせる機会が少なくても、安心感や組織の連帯感を生み出すことに繋がるのではと感じています。

―― 非常に当事者意識高く、取り組まれたことが伝わってきました。最後に今後の展望を教えていただけませんか。

中尾:今行っている浸透施策をやり切れば、一旦終了となります。ただ浸透施策については、今後も中長期的に取り組んでいく予定です。Linked Dayもヴァリューズ全体では毎年2回行っていますが、月日が経てば、同じ人でも考えていることや自分のテーマ、良さも変わると思います。なので定期的に開催したいですね。

あとは「Go Unique, Create one team」について、より具体的に体現する言葉が出てくるといいなあと。そうすれば、組織として強くなり、個人としてもイキイキ働いている人が増えると思うので、これからも経過を観察していきたいと考えています。

この記事のライター

大学卒業後、損害保険の営業事務を経て、通販雑誌・ECサイトのMD、編集、事業企画に従事した後、独立。自身のキャリアを通じて、一人一人のポテンシャルを引き出すことが組織の可能性に繋がることを実感したことから、現在はマーケティングとキャリア・人材を軸に、人と組織の可能性を最大化できるよう支援をしています。

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