「評判がいい」とは?
食べ歩きは楽しいものです。特に今まで行ったことのない街で、美味しい料理や伝統のある建築のお店、あるいは経験したことがないようなサービスに出会うことに幸せを感じるのは私だけではないと思います。ワイン用語にある「マリアージュ」。つまり料理とワインの相性のように、その街への訪問に相応しい、お酒と料理の組みあわせを探し出す。楽しい限りです。地元のお酒や料理であれば、なおさら嬉しくなります。
「評判が評判を呼ぶ」、良い噂が流れると客が多く集まり店が繁盛します。そのようなお店を見つける喜びもあります。その際、しばしば口コミを参考にします。特にSNSを活用した口コミについ影響されてしまいます。
評判がいいとは、何かにつけ、その存在の先行きが明るくなることを指します。社会や学校での評判は個人についてまわるものですし、就職や昇進に影響を与えるかもしれません。企業が業務を続ける上で、あるいは商品・サービスの売れ行きのためには良い評判を得て、それを維持・拡大することが成功の鍵となります。それは、企業イメージや商品イメージを高めることにもつながります。
「バズる」
グローバル化し、ITが深化し、AIが進化するなど、企業を取り巻く環境は刻一刻と変化し続けています。テレビや他の映像媒体で、企業のトップや広報責任者が謝罪する姿を見かけることがあります。以前から、記者会見に社長が泣きながら登場したり、取材する記者の前で興奮した姿を見せたり、印象に残るような映像を見かけることは珍しくありません。企業のイメージを考える上で、マイナスのイメージを持たれるケースには、このような場面の影響もあるでしょう。企業の不祥事は長引く場合もあれば短期間に解決する場合もありますが、不祥事を起因に企業努力を重ね、不祥事前よりイメージを高めたケースもあります。
評判や噂はインターネットを駆け巡る、とは今や当たり前の事象です。ある話題が短期間で爆発的に拡散し、多くの人の注目を集めることを「バズる」といいます。主にインターネットやSNSによる拡がりのことを指します。「バズる」とは話題になることであり、良きにつけ悪きにつけ、これからの新しい口コミの指標もしくは手法となります。活用の仕方を考えると諸刃の刃のような面もあるかもしれませんが、「バズる」を研究し、工夫して最新の注意をしながら活用することにより、広報・PR活動の幅を広げることは可能です。また、売りたい商品・サービスを口コミなどで拡げて、売り上げを向上させる方法として「バズマーケティング」という手法もあります。
「レピュテーション」と「レピュテーションリスク」
それでは、企業にとっての評判とは何を指すのでしょう。企業や団体のような組織で、商品やサービス、従業員、事業、グループ会社などについて、世間に流布する評判や風評などを「レピュテーション」(reputation)といいます。一般のビジネス社会においては、特に世間における企業の評価や信用あるいは製品の評判などを指します。
企業の不祥事や噂、製品の悪い評判によりブランド価値が低下し、売り上げや収益に大きな影響を与え、損害が生じる危険性が「レピュテーションリスク」(reputation risk)です。また、情報セキュリティー分野においては、データの送信元やデータそのものについて、過去の情報を収集して解析し、安全性を確認、評価することを「レピュテーション」といいます。
企業イメージの戦略性
では、改めてイメージが悪くなるのはどのようなケースまたはタイミングなのでしょうか。当然、イメージの対象となるものの弱点や欠点が現れたときに起こることが多いはずです。
イメージを幅広く持たれている場合、弱点や欠点はいつどこに現れるかを予測するのは極めて難しい問題です。ここで、イメージを戦略的にコントロールするためのアイディアとして、2つのポイントを紹介します。ひとつは『積極性』です。新たなイメージアップの種を自らの中に見つけ出してPRすることです。良いイメージの材料をより積極的・攻撃的に活用することが重要です。つまり、戦略的なPR活動が重要なのです。
つぎは、『対応力』です。常にアンテナを拡げて、現在何が注目され、興味を持たれているのか、さらには愛されているのかをキャッチアップし、時代に合ったあらゆるPR手法で対応する必要があります。年齢差はもちろんのこと、あらゆるギャップを念頭に入れながら、スピード感あふれる対処をすべきです。以上の考察は、企業イメージにおいても同様です。
企業イメージは過去から続く歴史的なものから、未来への予測や将来性まで、時間軸が大きく関与します。過去の企業活動が蒸し返されたり、逆に発明や発見などで新しい事業や製品による輝かしい未来を想像できたりと、時間はイメージを醸成する上で大きな役割を持っています。そのため、企業イメージは時系列に測定し、比較を行い、常に現在値を認識することが重要です。
それに伴い、無形資産(インタンジブルアセット)として、企業イメージを経営戦略の武器とするためには、個々の企業の過去・現在・未来それぞれの企業イメージを確認する必要があります。また、具体的には『活気がある』、『個性がある』、『国際化を重視している』など様々なイメージ項目ごとの認識を深め、そのうち強いイメージ項目をさらに強めるのか、弱いイメージ項目をPR活動や広告宣伝などで補い強化していくのか、など戦術面での対応が求められます。もちろん、全ての項目を強化する必要はありませんが、個々の企業にとってふさわしいイメージ項目を見つけて、それに注目し続けることが大切です。
「レピュテーション」や「レピュテーションリスク」を常に気に留め、グローバルな視野から細心の注意を払った企業独自のコミュニケーション活動を進めることにより、無形資産として企業イメージは、経営判断を求められる場面でも重要な役割を果たすでしょう。
【関連】企業イメージ経営 ~ 企業イメージを高める経営・ブランド戦略とは
https://manamina.valuesccg.com/articles/1792企業イメージやブランドイメージを高める企業経営や戦略とはどのようなものなのでしょうか。個人の価値観が多様化する現代社会において、自社そのものやブランド、サービスに対し、誰にどんなイメージを持って貰いたいかを設計する難易度は増しています。 広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏に、企業イメージを高める経営について解説いただきます。
株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェロー。広告・マーケティング業界に約40年従事。
日本創造学会評議員、国土交通省委員、東京富士大学経営研究所特別研究員、公益社団法人日本マーケティング協会月刊誌「ホライズン」編集委員、常任執筆者、ニューフィフティ研究会コーディネーター、CSRマーケティング会議企画委員会委員、一般社団法人日本新聞協会委員などを歴任。日本創造学会2004年第26回研究大会論文賞受賞。