ahamoユーザーは動画・ゲーム好き?ahamoアプリ利用者を調査

ahamoユーザーは動画・ゲーム好き?ahamoアプリ利用者を調査

大手4キャリアの他に、格安SIMなど多様化する通信サービス。昨年から、大手キャリアがahamoやpovo、LINEMOといった低価格プランを発表したことで、その多様化はさらに加速しました。そこで本記事では、その中で大手キャリアのドコモが提供している「ahamo」のユーザーを調査しました。利用ユーザーにとっての「ahamo」の魅力を行動ログデータから調査します。


多様化する携帯通信サービス

現在、皆さんはどのような携帯通信サービスを利用していますか。ドコモ、 au、 SoftBank、 楽天モバイルといった大手4キャリアでしょうか。それとも、mineoやIIJmioといったMVNO(仮想移動体通信事業者)の提供する格安SIMでしょうか。はたまた、ahamoやpovo、LINEMOと言った大手キャリアが手がける低価格プランでしょうか。

2020年までは、大手通信キャリアと、安さを売りにしたMVNOの二つが主な通信サービスでした。しかし、2020年10月ごろに菅政権の携帯料金の値下げ要請があったことにより、大手キャリアがahamoなどの低価格プランを発表しました。これにより、価格競争により拍車がかかり、今では「大手キャリア」「MVNO」の他に新しく「大手のオンライン専用低価格プラン」が台頭してくるようになりました。

「大手キャリア」「大手の低価格プラン」「MVNO」を比較してみると以下のようになります。



大手キャリア 大手低価格プラン MVNO格安SIM
代表例 ドコモ、au、SoftBank ahamo、povo、LINEMO IIJmio、mineo、Y!mobile
価格帯 高い(3000円~10000円) 低い(1000円~3000円) 低い(300円~3000円)
データ容量上限 プランによってさまざま 低、中容量(3GB、20GB) 主に低容量(オプション制)
回線 MNOの回線 MNOの回線 MNOから借りた回線
申し込み方法 店頭、Web Web、専用アプリ Web
その他メリット 家族割、店頭サポート


大まかな区分けではありますが、「大手の低価格プラン」を使用するメリットは、MNOである大手が提供する自前の回線網を安く使用できるという点になります。自前の回線網は通信速度が安定しているため、これは強みの1つでしょう。一方で、オンライン専用プランであるため、店頭でのサポートが受けづらい点やキャリアメール(docomo.ne.jpなど)が使えないなどのデメリットも挙げられます。

安くて早い?ahamoのメリットとは

さまざまな携帯通信サービスが存在する中で、今回注目するのは「大手の低価格プラン」の一つである「 ahamo」です。
ahamoは2021年3月末からサービスを開始した、株式会社NTTドコモのオンライン専用プラン。YOASOBIの「三原色」を用いたCMで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

ahamoの料金体系は大きく二つに分かれており、「20GBまで2970円」の通常プランと、2022年6月から開始した「100GBまで4950円」の大盛りプランがあります。5分以内の通話なら何回でもかけ放題、という点を含めても、大容量をとても安い料金で使用することができます。

そしてなんといっても、ahamoはMNOであるNTTドコモが提供しているサービスであることから、通常のドコモ回線が使えるため、通信速度が遅くて困るといったことが少ない点は大きなメリットでしょう。

この記事では、そんなahamoのアプリ利用者を調査します。分析には、毎月更新される行動データを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行うことができるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いました。

若者・男性に人気の 大手低価格プラン

ahamoは携帯通信サービスの中でどのような立ち位置にあるのでしょうか。

まずは、アプリ起動者のユーザー数推移を見ていきましょう。下のグラフから、1年前の2021年8月から2022年7月にかけて、起動者数は約1.6倍に増加していることがわかります(88万人→144万人)。

ahamoアプリのユーザー数の推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
(povo2.0、My IIJmio、mineoのアプリユーザーと比較)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン

特に2022年3月には、ユーザー数が28万人ほど増加していることがわかります。これは、ahamoの大盛りプランとそれに付随する先行エントリーが発表されたことが原因の一つであると考えられます。

一方で、この傾向は他のアプリについても同様に見られており、povoのアプリでも23万人ほど増加していることがわかります。これは、KDDIが3Gの電波送受信を停止しサービスを終了したことにより、この3G回線を利用していた携帯電話が使用できなくなってしまったことが原因であると考えられます。法人用やサブ端末として、今までKDDIの3G回線の携帯電話を利用していたユーザーにとって、機種変更の際に低価格な料金プランの端末を導入する機会になったと考えられます。

次に、ahamoアプリ利用者のユーザー属性について見てみましょう。

ahamoアプリユーザーの性別(「Dockpit」画面キャプチャ)
(povo2.0、My IIJmio、mineo、My docomoのアプリユーザーと比較)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン

ahamoアプリ利用者のうち、男性の割合は68.9%、女性の割合は31.1%となりました。男性の割合が多いのが特徴的ですが、これは、他の「大手の低価格プラン」であるpovoアプリ利用者や「MVNO」であるIIJmioのアプリmineoアプリ利用者においても同じ傾向があることがわかります。

一方で、大手キャリアであるドコモでは男性割合がやや優勢であるものの、明確な男女比の差があるわけではなさそうです。ここから、男性の割合が多いが多いという特徴は、「大手の低価格プラン」や「MVNO」といった安価な料金プランに共通した特徴であると考えることができます。ガジェット好きの男性が、イノベーターやアーリーアダプターなど先行層になっている様子が伺えます。その中でも、ahamoは女性の定着が進んでいるようです。

次に、ユーザーの年代別の利用割合を見てみましょう。

ahamoアプリのユーザーの年代(「Dockpit」画面キャプチャ)
(povo2.0、My IIJmio、mineo、My docomoのアプリユーザーと比較)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン

ahamoアプリ利用者のうち、20代の割合が26.8%、30代の割合が26.8%であり、2,30代が半数を超える結果となりました。ここから、ahamoアプリが若者に圧倒的に人気であることがわかります。
競合であるpovoアプリでも同様の傾向が見られましたが、比較するとahamoアプリの20代割合はより高く、20代からの人気が特に高いことがわかります。

比較のために、MVNOであるIIJmioとmineoのアプリユーザーを調べてみたところ、
どちらも20代のユーザーは平均的である一方で、IIJmioは40代の、mineoは30代のユーザーが多いことがわかりました。ここから、20代の若者人気は「大手の低価格プラン」であるahamoやpovoに特有なものであると考えられることができます。

また、My docomoは60代のユーザーが多いのに対して、ahamoやpovo、MVNOのアプリユーザーには60歳以上の割合が低いという共通点があります。これは、若者の方が新しいサービスに敏感であるのに加えて、店舗サポートが有料であったり、受けられないといった点が、オフラインでサポートを受けたい高齢の方にとっての障壁になっているためではないでしょうか。

ahamoユーザーは価格.comへの関心が高め

次に、ahamoアプリ利用者の興味・関心を分析していきます。

初めに、ahamoアプリ利用者の関心が高いサイトを見てみましょう。

ahamoアプリ利用者の関心サイトのランキング(リーチ差降順)
(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年7月
デバイス:スマートフォン

特徴的なものとしては、「dメニュー」や「d払い」、「dポイントクラブ」、「dマーケット」といったドコモユーザーをターゲットとしたサイトが上位にランクインしていることが挙げられます。これらの理由としては、「ドコモユーザーからahamoへの乗り換えが多いこと」と「ahamo契約にdアカウントが必要」の2つの理由があると考えられます。

また、8位には価格.comがランクインしています。これは、他の低料金プランをはじめとして、商品やサービスを比較する際に利用している人が多いためと考えられます。ここから、ahamoユーザーは価格に敏感で、お得さを追求するタイプであるとも読み取れます。

ahamoユーザーは動画・ゲームが好き

次に、ahamoユーザーはどんなものに興味があるのかを「story bank」を用いて分析しました。

ahamoアプリ利用者の興味・関心についてのチャート(縦軸はリーチ率、横軸は特徴値)
(「storybank」画面キャプチャ)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス: スマートフォン

「スマートフォン」、「マネー、投資」の他に、主に「動画共有サイト」や「ゲーム」、「国内旅行」への関心が特に高いことがわかります。ここから、「データ通信量が多い動画共有サイトやゲームを外出先で楽しみたい」というニーズに対して、ahamoの魅力である「大容量のデータ通信量を安く利用できる」点がマッチしていることがわかります。

また、「ahamoは若者に人気である」理由の一つに、「動画共有サイト」や「ゲーム」を通信速度などに悩むことなく利用できる点もありそうです。

そんなahamoは現在、VTuber / バーチャルライバーグループで、主にYouTubeで活動している「にじさんじ」のゲーム企画「にじさんじ甲子園」とコラボをしています。このコラボは、YouTubeでVTuberを視聴する層と、ゲーム(特に野球ゲーム)が好きな層の両方をターゲットにしていることが伺えます。

外出先でのTV番組・映画の視聴ニーズに応える

一方で、これらの「動画共有サイト」や「ゲーム」、「国内旅行」への関心の高さは、「大手低価格プラン」の競合であるpovoアプリ利用者にも見られます。

では、povoアプリ利用者と比較して、ahamoアプリ利用者は特にどのようなことに興味関心があるのでしょうか。povoアプリ利用者の興味を「storybank」を用いて分析し、2つのアプリの利用者のリーチ率の差を表にしてまとめました。

ジャンル リーチ率の差(%)
(ahamo-povo)
ahamoのリーチ率(%) povoのリーチ率(%)
1 テレビ番組 12.10 29.00 16.90
2 お笑い芸人 10.50 22.90 12.40
3 映画 10.40 36.90 26.50
4 俳優・女優 9.90 21.40 11.50
5 マンガ 6.90 29.40 22.50
6 ファッション 6.60 21.80 15.20
7 アーティスト 5.90 19.50 13.60
8 お酒 5.20 25.40 20.20
9 子どもの教育 4.20 11.60 7.40
10 料理 4.20 23.40 19.60

ahamoとpovoのリーチ率の差(リーチ差降順)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス: スマートフォン

ahamoアプリ利用者はpovoアプリ利用者と比較して、「テレビ番組」、「お笑い番組」、「映画」、「俳優・女優」への関心が高いことがわかりました。

このことから、ahamoユーザーは特に、「動画媒体を用いたテレビ番組や映画を視聴」への関心が高いと考えることができます。ここからは推察ですが、ahamoのプラン、特に大盛りプランは、「一人暮らしで、家にテレビがない20代」をターゲットにしており、外出先でTVerやNetflix、Amazon Prime Videoなどの媒体を通信制限なく使用できることが売りであると考えられます。

【まとめ】ahamoは若者ニーズにマッチした料金プランを提供している

今回は、NTTドコモが提供しているオンライン専用プラン「ahamo」について、その利用者のWeb行動ログを分析することで調査してきました。

調査の結果、

・男性ユーザーが多いものの、女性の定着がいち早く進んでいる
・2,30代のユーザーが50%を超えており、20代のユーザーが特に多い
・起動者はdアカウント関連のサイトや価格.comに関心が高く、買い物をする際に価格に敏感である
・起動者は「動画共有サイト」や「ゲーム」への関心が特に高く、ahamoは外出先での動画視聴やゲーム利用というニーズに応えている

ということがわかりました。
携帯通信の業界は、オンラインでの手続きに困らない若者に対しては「格安のオンライン専用プラン」を、家族割が適用できるファミリー層や店舗サポートが必要な年代の人々には「大手キャリアの元々のプラン」を提供する、というニーズの棲み分けがうまくできていると感じます。携帯通信サービスの低価格競争は今後も激しさを増すと考えられますが、今後どのようなサービスが出てくるかには目が離せません。

▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

『story bank』は、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できるツールです。Web行動データとアンケートデータを用いた、より定性的な調査が可能です。詳しくはこちらをご覧ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

世界的なシェア率を誇る「OPPO」など、海外メーカーのスマホの検索キーワードを分析

https://manamina.valuesccg.com/articles/1961

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この記事のライター

2023年の4月に新卒として入社予定で、現在はヴァリューズの内定者アルバイトとして働いています。現在は、大学院にて金属クラスターについての研究を行っています。

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