2022年ダブルイレブンの実績
データによると、11月10日午前0時までに、中国No.1のECプラットフォームであるTmall(天猫)のダブルイレブンには、売上高が100%以上成長したカテゴリーが148ありました。 新しいライフスタイルのカテゴリーでは、おもちゃやアートが670%以上、花が230%以上、eラーニングが120%、スポーツが100%の売上増となっています。車や花、教育関連商品、アートコレクション、スケートボードやフリスビー、ランドラッシュなどの流行スポーツの商品をオンラインで買い求める人が増えているようです。
また従来のカテゴリーの中でも、トレンドが注目されています。例えば、家電業界の売上高は、ホームリフトが500%以上、エアコンが280%以上、アパレル業界の売上高は、昔のアニメの衣装が800%以上、メンズの民族衣装が700%以上となりました。また美容業界では、旅行用メイクセットが270%以上、マザー&ベビー業界では子供のポロシャツが160%以上伸び、ブルー・オーシャンのカテゴリーが伸びた形となっています。
そして、京東商城のデータによると、ダブルイレブン開始後、わずか1分間でAppleの売上高が10億元を突破しました。栄養健康ブランド「Swisse」と「汤臣倍健」が売上10万個を突破、開始10分でSK-II、エスティローダー、キールズ、ロクシタンなど87の美容ブランドは前年度よりも200%増となっています。また、カータイヤの受注は188%増となりました。
注目業界
今年のTmallダブルイレブンで注目すべき業界は、おもちゃ、ペット、スポーツ・アウトドア、ジュエリー、健康の5つです。
おもちゃ、ペット、スポーツ・アウトドア、ジュエリーの4つの産業は以前から中国のEC業界では注目され、議論されてきました。今後数年でネット通販の消費量が多い美容やFMCG(日用消費財/日用品)、家電、アパレル業界と並ぶ、大きな産業に成長すると考えられています。
この考え方は、あるデータによって裏付けられそうです。この1年で、おもちゃ、ペット、スポーツ・アウトドア、ジュエリーの業界では、400以上のサブカテゴリーが誕生し、358ブランドが売上1億元台、3,434ブランドが売上1千万元台を突破したと報告されています。 この4業種は、Tmallでの成長率が非常に高く、平均成長率は他業界の成長率を大きく上回っています。
また健康診断、医療美容、審美歯科、各種医療用品などは、若年層から注目を集め、お金をかけている重要な分野です。若年層の購買意欲が実売につながり、「EC+医療」市場はこれまで以上に活況となっています。
ジュエリー・ペット業界が大きく成長
Tmallの全カテゴリーのブランドの売上を見ると、2022年は2021年と比較して変化が顕著に現れています。
2022年の売上1位は、美容・スキンケアです。 しかし、売上高については、美容・スキンケアカテゴリーが前年同期比7.7%の減少、販売数量は16.9%の減少となりました。 その他、売上高、数量ともに前年同期比で減少したのは、メイク・香水、婦人服、紳士服、携帯電話、生活家電、婦人下着です。中でも婦人服や紳士服は顕著で、婦人服の売上高は前年同期比21.1%減、紳士服は同27.5%減となりました。
一方で、ジュエリーは、2022年のダブルイレブンで大幅な増収を達成しました。 2021年のジュエリー部門の売上高は32.28億元で、トップ20のカテゴリー売上高ランキングに入りませんでしたが、2022年は47.88億元で、48.3%の増加を達成しました。
金の購入は、2022年の最も顕著な消費者行動と言っても過言ではありません。多くの若者は「今年一番の投資かもしれない」と語っています。
金を使った商品、IP加工を施した商品など、身につけられる商品が飛ぶように売れています。11月1日午後8時までに、Tmallのジュエリー業界のゴールド部門は前年比30%以上の伸びを示し、6ブランドが1億元を超える売上を達成しました。
上海に拠点を置く100年以上の歴史を持つブランド「老庙黄金」は、新型コロナウイルスの影響を受けたものの、2022年のTmallダブルイレブンが始まって間もなく金製のジュエリーの売り上げがほぼ倍増。618キャンペーン以降、カテゴリーの大きな成長が見えました。
「老庙黄金」の商品ラインナップ
もうひとつ大きく伸びているのがペット業界です。2021年のペット部門の売上高は29億700万元で、部門別売上高のトップ20にも入りませんでしたが、2022年のペット部門の売上高は38億400万元で、前年比30.9%増となりました。
ペットショップがどんな活動をしているか、例をご紹介しましょう。あるペット店主は、自分の店を「ワンストップショッピングショップ」と位置づけ、輸入品も国産品も、老舗商品もニッチなものも、あらゆるカテゴリーのものがここで購入できるとうたっています。 同店では、市場の大きい小型犬・中型犬用の商品よりも、中型犬・大型犬用商品の方が多く販売されています。売れ筋の商品では、月間売上1000個を超えるものもあります。
近年ペットブームにより、資本が流入し、ペット関連のブランドが急増しています。また多くの犬が高齢化する中、中高年齢用ドックフードの需要も高まっています。今後もペットの健康や栄養に関する商品の需要が見込まれるでしょう。
アウトドアスポーツが新しい社交の場に
Tmallのスポーツ・アウトドア業界は、FILA、NIKE、adidas、LI-NING 、ANTA、SKECHERSといったトップスポーツブランドがヒットしています。 また、キャンプやスケートボード、釣りなどもトレンドになっています。
スポーツ・アウトドア業界では、2022年のキーワードとして「キャンプ」、より正確には「グランピング」が挙げられるでしょう。
グランピングー中国では今大人気
新型コロナウイルスの流行以来、キャンプは新しい社交の場となっています。アウトドアでのサバイバルハイクよりも、都市部でのキャンプが人気です。都市部でのキャンプでは、アンビエントライトやコーヒーポット、プロジェクターなどをマストアイテムとして、エレガントでスタイリッシュな雰囲気が楽しめます。また消費者層もバックパッカーから、新しい都市部のビジネスパーソン、ママ層、シニア層へと広がっています。
キャンピングカーはダブルイレブン開始から45分で2021年の初日の売上を上回るなど、爆発的な売れ行きを見せました。また一部のメーカーのスポーツ・アウトドア商品も、最初の1時間で2021年の初日の売上を上回ったそうです。
2021年末にTmallでスポーツ・アウトドア業界がTier1カテゴリーに昇格したことは注目に値します。2022年4月、Tmallはスポーツ・アウトドア業界を秋のキャンプ、アウトドア、スキーなど7カテゴリーに分け、多くのブランドの爆発的な売り上げを促していました。
「潮玩(ミニフィギュア)」がZ世代に人気
「 POP MART (ポップマート) 」は、「潮玩(ミニフィギュア)」のメーカーで、「潮玩」業界全体に火をつけました。潮玩を机の上に置いたり、中には潮玩のディスプレイケースを作ったりする若者も増えているようです。 2022年のTmallダブルイレブンでは、「 POP MART (ポップマート) 」のフィギュアが一瞬で完売しました。
若年層が自分たち専用のおもちゃを持っていることは、これまでとは違うおもちゃ業界の特殊な現象です。「潮玩」に加えて、メカやコットン人形、中国風積み木なども、Z世代に流行っているようです。
「 POP MART (ポップマート ) 」のフィギュア
若者の新たなニーズ:「健康」意識の高まり
若者の「健康」に対する意識の高まりが、実際のモノの売れ行きにつながっていると、データは示しています。
ダブルイレブンの先行販売が始まった10月24日の夜、京東商城は過去5年間の消費者動向の変化を振り返る「11.11消費者動向報告」を発表しました。 報告書によると、過去5年間(2017年〜2021年)で、生活・サービス消費の重要なカテゴリーである健康サービス消費量は7倍に増加しています。軟膏タイプの医薬品、活性化オイル、目薬、ニキビ・傷跡除去商品は、2022年のダブルイレブン先行販売で注目の健康商品となりました。
10月24日8時のTmallダブルイレブン前売りデータによると、開始から1時間は、HPVワクチン、燕の巣、霊芝胞子粉など多くのカテゴリーの健康商品が売れ筋だったとのことです。中でもHPVワクチンの予約販売額は前年比の600%以上伸び、血糖値対策用品、傷消し用品、健康茶などのカテゴリーも3ケタ台の高い伸び率を示しました。
消費者の意識の変化やモバイルヘルスケアの普及により、自分の健康問題に関心を持ち始める若者が増えており、インターネット消費者の主流層には、スピリチュアルな医薬品も選ばれています。2022年のダブルイレブンでは、栄養補助食品や医療美容関連商品がさらに伸びると業界では予測しているほどです。
国民の健康意識の高まりとともに、多くの若い消費者の「健康管理」の概念は、「治療だけ」から「予防重視」へ、さらに「改善」へとグレードアップしているのです。それに留まらず、さらに「心身のコンディションの向上」、「美しさ」にまで踏み込んでいます。このような認識の変化により、健康消費はだんだんと増加しています。
若者の「病気を予防する」という健康志向の高まりを受け、関連する健康商品メーカー、通信事業者、総合ECプラットフォームなどが、それぞれの強みを活かして、この大きな市場を取り込もうと動き出しています。
具体的には、医療用マスクや洗口液などの消費者向け健康商品のメーカーは、商品の価格を下げる「直販」に注力しています。健康診断や歯科医院、医療美容機関などは、様々な商品・サービスを独自に組み合わせ、健康チェックリストや機器ガイドなどの形で訴求し、複数購入がお得になることで消費者を呼び込んでいます。
まとめ
ダブルイレブンでは、美容、FMCG、家電、アパレルの「4業界」に加え、おもちゃ、ペット、ジュエリー、スポーツ・アウトドア、健康という「新業界」がシェアを伸ばしています。
これらの業界アイテムは一部生活に必須の商品ではないにもかかわらず、2022年の「ダブルイレブン」の人気商品となりました。その背景には、消費者全体が若年化し、生活の質を向上させたり、精神的欲求を満たすための消費が多くなっている、というトレンドがあると見られます。
ECビジネスはそれらのアップグレードした消費行動に即した対応をする必要があります。消費者だけでなく、企業やECプラットフォームにも、消費行動の合理性を取り入れることが求められているのでしょう。
参考URL
「双11爆款战报出炉:美妆销售额销量双降,珠宝、宠物双增」
https://m.mp.oeeee.com/a/BAAFRD000020221113739087.html
「天猫双11跑出“新四大金刚”,站上C位的竟是它们?」
https://t.cj.sina.com.cn/articles/view/2659261621/9e811cb5001018nna
「天猫双11战报出炉:148个趋势品类增速超100% 44家中华老字号成交额破千万」
https://finance.sina.com.cn/chanjing/cyxw/2022-11-11/doc-imqmmthc4094147.shtml
「京东双11“巅峰28小时”开场1分钟 Apple成交额破10亿元」
https://www.dsb.cn/news-flash/104722.html
慶應義塾大学在学中。