リサイクルからリユースへ 〜 業界横断で広がるリユース文化

リサイクルからリユースへ 〜 業界横断で広がるリユース文化

「再利用」。このワードで今、思いつくのは何でしょうか。以前までは「リサイクル」が主流だった環境配慮への再利用活動も、今や「リユース」に焦点が当たることも珍しくありません。「リユース」とは“形を変えず”に繰り返し使うこと。形を変えずに循環させることで、再利用にかかるエネルギーを減らすこともCO2 の削減にも繋がります。そして「リユース」は、身近な自治体やインターネットオークション、リサイクルショップでも手軽に始めることができ、その対象は1点の衣類から、果ては1軒の家まで。いつの間にか幅広い市場で広がりつつあるこの「リユース」活動。生活者の興味関心や「リユース」市場の今について検証しました。


SDGsとの関係も深い「3R(スリーアール)」の活動

2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)も、すでに耳慣れた言葉となった今。けれど、「17の目標」や、それぞれの目標を達成するために、具体的に何をするべきかをまとめた「169項目のターゲット」を、全て答えられる人は多くはないでしょう。

「3R(スリーアール)」とは、具体的目標ではありませんが、SDGsの目標のうち、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」「12:つくる責任つかう責任」「14:海の豊かさを守ろう」などに深く関わりのある活動に含まれ、以下3つの英語の頭文字を表したものです。

①リデュース(Reduce):ゴミを減らす
②リユース(Reuse):形を変えずそのまま再利用する
③リサイクル(Recycle):形を変え再び資源として再利用する

似たもの同士「リユース」と「リサイクル」その違いは?

「再利用」という意味では、「リユース」も「リサイクル」も同意ですが、実は大きな違いがあります。
「リユース」は、使用済み製品やその部品等を“そのまま繰り返し”使用することで、「リサイクル」は、廃棄物等を原材料やエネルギー源として有効利用することを指します。つまり、「リユース」の方が、再利用のための工数などを省いてその製品や部品を再利用することができ、最終処分されるごみの削減にも寄与し、CO2の削減も可能、加えて採掘する天然資源を減らすことにも繋がる行為と言えます。

物を繰り返し再使用する「リユース」。回収して資源として再生利用する「リサイクル」。
「リサイクル」において消費者個人の私たちができるのは、正しく分別して廃棄するまでなのに対して、「リユース」は、そのままの物を消費者の私たちが利活用させる行動だけで完結すると言え、より身近で個人だけでもできる環境への取り組みであるとも言えます。
また、最近ではさまざまな業界でも、「リサイクル」よりも「リユース」が話題にあがることも珍しくありません。

Web行動データの数値で見る「リユース」への消費者の関心度

「リサイクル」への関心は、今や「リユース」へ移行?

まず「リユース」と「リサイクル」に、どれほどの関心が持たれているのかをデータで見てみましょう。
以下のグラフは、2020年12月から2022年11月までの、「リユース」と「リサイクル」の2語のキーワード検索したユーザー数の推移を示したグラフです。こちらは、毎月更新されるWeb行動データを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用しています。

下図、青い線が「リユース」検索のユーザー数、ピンク色の線が「リサイクル」検索のユーザー数推移を表しています。「リサイクル」の方が絶対数的には多い状況ですが、全体的に下降傾向にあります。一方「リユース」は徐々に上昇しています。

図:「リユース」「リサイクル」検索ユーザー数推移①

図:「リユース」「リサイクル」検索ユーザー数推移
期間:2020年12月〜2022年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

「リユース」の増加状況がよりわかるよう、再度「リユース」検索ユーザー数推移部分のみを拡大して見てみましょう。こちらのグラフを見ると、「リユース」への関心は2年間で2.27倍と大幅に伸びていることがよくわかります。

図:「リユース」「リサイクル」検索ユーザー数推移②

図:「リユース」検索ユーザー数推移
期間:2020年12月〜2022年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

続いて、どのような人が「リユース」に関心を持っているか、属性別のデータを見てみます。
性別から見ると、56.0%が女性と、若干女性が多い傾向にありました。年代で見ると、40代が最も多いとの結果に。
日常的に家事などを行い、生活用品全般に接する機会の多い女性。家庭生活での不用品循環に興味があると読み取れそうです。

図:「リユース」「リサイクル」検索ユーザー属性別(性別・年代別)

図:「リユース」検索ユーザー属性別(性別・年代別)
期間:2020年12月〜2022年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

「リユース」対象は「制服」から「家」まで!?

では、ユーザーは一体どのような対象物を「リユース」したいと考えているのでしょうか。また、どのような興味を併せ持っているのでしょう。掛け合わせワードのランキングと、実際に参照されているWeb流入ページのランキングを見てみましょう。

図:「リユース」「リサイクル」掛け合わせワード分析及び流入ページ分析

図:「リユース」掛け合わせワード分析及び流入ページ分析
期間:2020年12月〜2022年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

2つのランキングを見ると、想像以上に「リユース」の関心対象の幅が広いことがわかりました。
手近なところでは、掛け合わせワード4位、5位にあがった「制服」「ユニクロ」といった衣類の再利用の様子が垣間見え、同ランキングで3位にランクインし、流入ページでは1位となった「ヤマダ電機(アウトレットリユース)」では、環境配慮という思惑だけでなく、家電をお得に利用したいという消費者意識もうかがえます。

大きな関心事としては、掛け合わせワードランキング2位、流入ページランキング4位の「セキスイハイム」でした。この「リユースハイム」とは、住宅展示場のモデルハウスをユニット単位に解体して運搬し、新たな土地に建築するセキスイハイム独自の再築システムで物件を販売するといったもの。もちろん新築よりリーズナブルで、資源を無駄にせず再利用することで大きな環境配慮となる実例となっています。
加えて「リユースハウス」でWeb検索してみると、多くの他ハウスメーカーでも扱っていることを発見。多くの物件が抽選式でもあることから、「新築同然のマイホームが低価格で」というお得感からの人気・関心も高いこともうかがえます。

地方自治体と民間企業で「リユース」の促進も

また、興味深いところでは、自治体の「リユース」への取り組みもあげられます。

掛け合わせワードランキングの10位に上がっていた「神戸市」。こちらを探ってみると、年末に多くなる粗大ゴミ対策に向け、神戸市が主催となって「メルカリ」の使用を推奨するといった記事が掲載されていたことがわかりました。
そして、さらに検索してみると、2022年11月には毎日新聞にて、西宮市の粗大ゴミを「メルカリ」で販売するといった取り組みもニュース化されており、実はこれは3例目とのこと。すでに2022年5月には愛知県蒲郡市、新潟県加茂市・田上町消防衛生保育組合でも連携済みとのことでした。
そんな「メルカリ」ですが、調べてみると、メルカリグループ(※メルペイ、ソウゾウなど関連会社を含む)と、何らかの事業連携をしている地方自治体は、2022年12月8日時点で6都道府県、32市、6町村にも及びます。

また、このような取り組みを行っている民間企業は他にもあり、循環型社会の形成を目指し、廃棄物削減に取り組むことを目的として、株式会社マーケットエンタープライズが運営するリユースプラットフォーム「おいくら」が東京都渋谷区東京都北区と事業連携を結んだといったニュースも取り上げられています。

これらのように、生活者にとって一番身近な存在となる『自治体』が、民間企業のノウハウと合理的に提携しながら、積極的に「リユース」事業に取り組む事で、更なる「リユース」文化の根付きに期待が持てそうです。

まとめ|リユース文化の根付きから新たなビジネスへの発展も

「リユース」と単純に検索するだけで、「どういう活動?」といった「リユース」への基本的な疑問から、靴一足からオフィス機器、家までと「リユース」事業紹介のサイトが数多くヒットすることに驚きます。
それだけ「リユース」できる商材が世の中に溢れていること、すなわち、そこに新しいビジネスの可能性も秘めているということに、今後の新規市場としても魅力を感じました。

新しいビジネスの創造も不可欠。しかし、再生可能なビジネスが重要視される今、このように徐々にヒートアップしつつある「リユース」市場の動向を追うことで、今後の新旧ビジネスの展望に役立つヒントが得られるかもしれません。

調査概要

・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき「Dockpit」で分析
・行動ログ分析対象期間:2020年12月〜2022年11月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。

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