人気の美容成分「レチノール」の検索者が急増中!「シカ」に関心がある人との違いは?

人気の美容成分「レチノール」の検索者が急増中!「シカ」に関心がある人との違いは?

「しわ改善に」などのフレーズで、「レチノール」という成分の名前を広告やTVCMで見かけるようになりました。レチノールはかつて化粧品への配合が難しい成分とされていましたが、ここ数年で、日本の大手化粧品メーカーや韓国コスメでも使われるようになっています。レチノールにいち早く反応している人は、どのような気になりごとを持っているのでしょう。ここ数年で人気が爆発した成分「シカ」と比較して、調査しました。


そもそもレチノール、シカって何?有識者に聞いてみた

そもそもレチノール、シカ(CICA)とはどのような成分なのでしょう。ビューティーアナリストの東風上尚江さんにお聞きしました。

東風上さん:
レチノールは代謝を促す作用がある成分です。肌がツルっとした感じになり、小じわのケアに効果的です。しかし効果が見込める分、肌への刺激も強いという特徴があります。レチノールだけでは刺激が強くなってしまうため、どの化粧品メーカーもレチノールと相性の良い成分を入れて、肌への負担を軽減しています。

じつはレチノールはずいぶん前から有効成分として着目されていましたが、安全性やエビデンスが不十分で、医薬部外品としてはなかなか登録できないという経緯がありました。国内で初のレチノール配合の商品を発売したのは資生堂で、エリクシールという商品がそれにあたります。

一方のシカは、昔から使われている成分です。ツボクサエキスを主な成分としており、炎症を抑える効果があります。美容医療の後に炎症を抑える薬としても使われています。

レチノールが効果も刺激もある”攻めの化粧品”とするなら、シカは炎症を抑える”守りの化粧品”と言えます」

イニスフリー・キールズがレチノール人気を後押し。コロナ禍も影響か

それでは「レチノール」の検索者の推移を見てみましょう。今回の調査は、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて行いました。

下記は過去2年間における「レチノール」検索者数の推移です。検索者数は2021年1月から2021年7月ごろまで40,000前後を行き来しており、2021年8月ごろからじわじわと伸びてきました。2022年に入ってからは2月~3月、5月に特に上昇、9月、11月にも上昇傾向が見られます。

図:「レチノール」検索者数の推移
集計期間:2021年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

検索者数が上昇してきた2022年2月には、韓国の化粧品ブランド「innisfree(イニスフリー)」にて、レチノール・シカを両方配合した美容液「レチノール シカ リペア セラム」が発売されました。この商品は、コスメ・美容の総合サイト@cosmeではベストコスメアワード2022にて、上半期の第2位を獲得するほどの人気となっています。

また同じくキールズの「キールズ レチノール 美容液」も2021年9月に発売して以降、人気を維持しています。これらの商品がレチノール人気を底上げしたものと見られます。

またコスメ・美容のオンラインショップでは、年に数回セールが行われます。特に韓国コスメを多く取り扱うQoo10では、例年3、6、9、11月ごろの4回、メガ割というセールが開催されています。レチノールの検索者数増加の動きとの、一定の連動が伺えます。

東風上さんからは、このような見解がありました。
東風上さん:
コロナ禍もレチノール人気の後押しとなっているのではないでしょうか。コロナ禍では人に会えないという背景から、美容皮膚科のニーズが高まっていました。それと同様に、人に会えないこの間に、肌に良い効果が出そうなレチノールを使用して、綺麗になりたいという心理が見受けられます」

レチノール・シカ検索者のニーズの違い

レチノールとシカでは、検索者にどのような違いがあるのでしょうか。性別や年代、ワードを見てみましょう。

レチノールは20代、シカは40代

2021年1月〜2022年12月の2年間におけるレチノールとシカの検索者数の推移は、下記図の通りとなっています。シカが30,000前後を推移しているのに対し、レチノールは検索者数が増加していることがわかります。

図:「レチノール」「シカ」検索者数の推移
集計期間:2021年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

ここからは2022年1月〜12月の期間においてのデータを見てみます。「レチノール」と「シカ」を検索している人の性別の割合については、いずれも女性の検索者が8割を超えました。女性の方が関心があるのは美容関係全体に言えることですが、「シカ」は「レチノール」よりも若干男性の割合が多くなっています。男性は髭のお手入れなどで肌が荒れる可能性があるため、しわ改善よりも肌荒れ改善の方が気になるのかもしれません。

図:「レチノール」「シカ」検索者の性別の割合
集計期間:2022年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

年代別に見てみると、「レチノール」を検索しているのは20代が多いことがわかります。40代では、「シカ」を検索する人の方が「レチノール」よりも多くなっています。「レチノール」という新しい美容情報にいち早く反応するのは、若い20代の人たちということなのでしょう。

ただ気になるのは、エイジングケアを謳う「レチノール」に対し、20代が反応している点です。新しいものを試してみたいという欲求のほか、ほうれい線や、眉間・目じりのしわなど目立ちはじめた部分を早めにケアしたい場合に、「レチノール」を検討している可能性も考えられます。

図:「レチノール」「シカ」検索者の年代の割合
集計期間:2022年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

レチノールは成分、シカは美容アイテムに関心

次に、検索者の関心が高い他の検索ワードを見てみます。「レチノール」検索者の関心ワードを見ると、「キールズ」や「ゼオスキン」、「イニスフリー」といったスキンケアブランドの名前が挙がっています。ほかに、「ナイアシンアミド」「ビタミンC誘導体」など、成分の名前も見られました。東風上さんは、成分の名前が関心ワードに上がっている理由をこのように分析しています。

東風上さん:
「レチノールは単独で使うと刺激が強すぎるため、他の成分を配合してバランスをとることになります。同じレチノールを使った商品でも他の成分がどれくらい配合されているかで、効果や効能が異なるものです。そのために、他の配合成分も関心ワードに入っているのではないでしょうか」

図:「レチノール」検索者の関心ワード
集計期間:2022年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

一方シカは、スキンケアブランド名のほか、「セラム」や「シートマスク」など美容アイテム名も上位にきています。レチノールを検索している人は美容成分にこだわり、シカを検索する人は使える美容アイテムやコスメを求めているといえるでしょう。

図:「シカ」検索者の関心ワード
集計期間:2022年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

レチノールは他の成分との併用にも関心が

検索時の掛け合わせワードを見ても、レチノールは他の成分名が上位になっています。また「併用」や「使い方」といったワードも挙がっているのが特徴的です。レチノールが刺激の強い成分ということから、検索者はレチノールを使用したことによる肌への刺激を和らげるための方法や注意点を探していると見られます。

図:「レチノール」との主な掛け合わせ検索ワード
集計期間:2022年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

レチノールの掛け合わせワード「併用」の流入ページを見てみると、成分の相性や使い方についてのページが並んでいます。特に「相性が良くない」「するべきではない」「効果半減」というネガティブなタイトルのページが並んでいるのが特徴的です。検索者には、「失敗したくない」「肌荒れが怖い」「もし肌が荒れたら治るまでが大変」という心理が働いているのでしょう。

図:「レチノール」の掛け合わせ検索ワード「併用」の流入ページ
集計期間:2022年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

さてシカの掛け合わせワードには、「レチノール」や「使い方」を検索するなど、レチノールとの関心の重複が見られます。検索者は「守りの成分」と「攻めの成分」の両方の効果を得るべく、レチノールとの併用方法や比較を行っている可能性があります。

図:「シカ」との主な掛け合わせ検索ワード
集計期間:2022年1月~2022年12月
デバイス:PC・スマートフォン

また掛け合わせワードランキングにVT(VT Cosmetics)が登場し、掛け合わせワード「マスク」の流入ページでもVTの商品についてのページが挙がっていました。VTのシカを用いたマスクが注目されたことが考えられます。
なお、VTは韓国の化粧品会社です。韓国の化粧品ブランド「イニスフリー」の商品が人気であることも踏まえると、韓国コスメの人気はしばらく続きそうです。

余談:レチノール商品 有識者のおすすめは

レチノールの商品を選ぶ際は、「エビデンスがしっかりしている商品がおすすめ」と東風上さんはいいます。
東風上さん:
「私はエビデンスレベルの高い日本もしくはフランスのメーカーのスキンケアをおすすめします。レチノール配合の商品は、何がどれくらい配合されているかによって大きく効果が異なります。また粗悪品もたくさんある印象です。資生堂をはじめ大手メーカーは、しっかりエビデンスをとって開発しているので信頼できます」

外資に負けない強い化粧品ブランドを作るには?海外ブランドの戦略に見る日本の課題

https://manamina.valuesccg.com/articles/2130

韓国コスメや中国メイクがトレンドになる昨今。海外勢がめきめきと認知を上げる中、日本の化粧品ブランドはどう対抗していくべきなのでしょうか。各国の戦略と日本の現状とは。シャネルパリ本社でエグゼクティブメイクアップアーティストを務め、化粧品開発からコンサルティングに至るまで、世界を股にかけて活動する東風上尚江さんにお話を伺いました。

まとめ|レチノールは他の配合成分や併用に着目

レチノールの検索について、まとめるとこのようになります。
・レチノールは現状、20代の認知が高い。
・レチノールは小じわケアの効果が期待できるが刺激も強いため、同時に配合されている成分や、他の成分との併用にも注目されている。
・守りの成分であるシカと併用されている場合もある。
・スキンケアを含めて、韓国コスメの人気が続きそうな見込み。

レチノールに関してコンテンツを作る場合には、商品の理解と専門家の監修を前提として、成分や併用方法について情報を網羅するとよいでしょう。公開時期はコスメを扱うショッピングサイトのセールの時期を狙うとよさそうです。

新型コロナウイルスが収まってマスクを外す日に向け、肌を整えておきたい人もいるでしょう。既に春コスメの販売は始まっています。今後イニスフリーやキールズのように、検索の傾向を変える商品は登場するのでしょうか。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年1月〜2022年12月および2022年1月〜2022年12月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

IT企業にシステムエンジニアとして10年あまり勤務。結婚・出産を経てお声がかかり、あっという間にライター・編集が主たる業務になりました。IT系記事と一般家庭向けの役立つテーマをメインに、今さら聞けない人でもしっかり参考にできる、わかりやすい記事を心がけています。

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