【2023年最新】伊藤忠商事とも提携。タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとは

【2023年最新】伊藤忠商事とも提携。タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとは

タイを中心に世界21カ国の市場で総売上7兆円超のチャロン・ポカパン(CP)グループについてまとめました。CPはタイにおける華僑系財閥の一つであり、農業分野や食料品のビジネスを基幹に、近年では通信、小売、不動産、自動車業等にも注力し、伊藤忠商事との業務提携を行うなど、事業拡大を積極的に推進しています。


食品をはじめとして、流通、通信、不動産などタイ国内で多岐にわたるビジネス展開をしているCPグループは、日系企業がタイに進出する際には、多くの確率で接点が出てくる企業と思われます。

CPグループの企業について、また主なビジネスについて、まとめてみたいと思います。

チャロン・ポカパン(CP)グループとは

1. タイ最大規模の財閥(コングロマリット)

チャロン・ポカパン(CP)グループは、タイ有数の規模を誇る財閥(コングロマリコット)で、全従業員数は約30万人、グループの総売り上げは約7兆円をあげています。現在の会長はスパチャイ・チャラワノン氏で、チャロン・ポカパン(CP)グループの事業を大きく拡大させた前会長のタニン・チャラワノンから2017年より会長職を引き継いでいます。

2. 8分野の事業を展開

チャロン・ポカパン(CP)グループは世界21カ国において8分野の事業(農業・食料品、小売・卸、メディア・通信、Eコマース、不動産、自動車・工業製品、医薬品、金融)を展開しています。2016年頃からは経済・社会・環境各方面におけるサステイナビリティ事業にも精力的に取り組んでおり、グループのHPではサステイナビリティ事業に関する報告書を数多く公開しています。

チャロン・ポカパン(CP)グループの歴史

1. アグリビジネスの基礎を築いた1921年〜1960年代

チャロン・ポカパン(CP)グループの前身は、1921年に潮州系中国人、謝易初(Chia Ek Chor)と謝少飛(Chia Jin Hyang)がバンコクに開業した「正大荘(Chia Tai Chung)」という種子販売を担う商店から始まります。その後1953年には「正大荘」の向いに家畜用の飼料を取り扱う販売店が創業されます。この時期に、現在のチャロン・ポカパン(CP)グループの農業分野を中心とした事業展開の基礎が築かれたと考えられます。

2. 多様な事業の展開によりタイ有数の華僑系財閥に成長した1960年代〜現在

1964年に謝易初(Chia Ek Chor)の息子であるタニン・チャラワノンが会長として就任して以降、チャロン・ポカパン(CP)グループは外資の積極的な利用を通し、事業の拡大化と近代化を推し進めました。1970年にはアーバーエーカー社と合弁し、東南アジア初のブロイラー工場を設立します。1980年代には農家への家畜の委託生産や、三菱グループの外資によるブラックタイガーの生産、卸業への参入、1990年に通信業への参入など、事業が拡大していきます。また、1990年代からはサステイナビリティ事業への取り組みも始まり、グループのHPではサステイナビリティ事業に関する報告書を数多く公開しています。

チャロン・ポカパン(CP)グループの代表的な子会社3選

チャロン・ポカパン(CP)グループの代表的な事業子会社を3社取り上げます。

1. 食料品分野 (Charoen Pokphand Foods Public Company Limited)

チャロン・ポカパン・フーズ(CPF)は、家畜養殖・家畜飼料・加工品の各事業を展開し、年間およそ1,300億バーツの売上を計上しており、加工品においては、モダントレードからトラディショナルトレードまで、あらゆるチャネルを全土に網羅して、販売活動を展開しています。

2. 卸・小売業 (CP ALL PUBLIC COMPANY LIMITED)

上述の通り、CPFの商品はあらゆるチャネルを通じて、タイ全土に販売していますが、タイのコンビニエンスストアー業態では、ほぼ独占状態にあり、タイ全土に10,000点以上を展開するセブンイレブンの他、ハイパーマート業態ではロータスとマクロを自前で運営しており、モダントレードの多くを保有しています。事業規模は、年間300億バーツ以上の売り上げを計上しています

3. 通信業 (True Corporation)

通信事業では、携帯電話のプロバイダーを基幹ビジネスとしており、2021年の9月時点での携帯電話通信サービス利用者数は、主要競合AIS社の約4,366万台に次ぐ約3,200万台です。そのほかにも、ネットバンキングのtrue moneyや動画配信サービスであるtrue IDなど、デジタルインフラを提供しています。事業規模は、年間49億バーツ以上の売り上げを計上しています

チャロン・ポカパン(CP)グループと伊藤忠商事について

2014年7月に、チャロン・ポカパン(CP)グループと伊藤忠商事は業務提携契約を締結しました。チャロン・ポカパン(CP)グループにおける非資源分野の強みに着目し、伊藤忠は「アジア地域を中心とした食料、化学品、情報通信、金融等を含む非資源分野における事業拡大機会の共同開拓」及び「タイ・中国・ベトナムなどを中心としたアジア地域における飼料、畜産及び水産関連分野での共同取組の推進並びに同地域への原料供給体制の整備」という内容にて業務提携契約を締結しました。

具体的には、伊藤忠はチャロン・ポカパン(CP)グループの株式の25%を約870億円で取得し、チャロン・ポカパン(CP)グループは子会社、及び子会社と株式会社日本政策投資銀行が設立した投資事業組合による第三者割当増資を通して合計4.9%の出資を行いました。

この業務提携契約の締結を通して、伊藤忠商事はチャロン・ポカパン(CP)グループの実質的な筆頭株主となりました。

まとめ

タイ国内外で事業拡大を着々と進めるCPグループは、今後のタイをはじめとした東南アジアにおいてビジネス展開をされる日系企業にとっては、目が離せない企業です。今後もCPグループの動向に注目していきたいと思います。

【監修】
若山 修
株式会社ヴァリューズ相談役
Shyu Co., Ltd.代表取締役
在タイ23年目。タイをはじめとする東南アジアでのマーケティングリサーチとブランドマーケティングを専門とし、消費者分析にとどまらず、製品・流通レベルの課題も加味した上で、次期課題を浮き彫りにしていく手法は、多くのクライアントより好評を博している。

参考文献

CPグループHP(タイ語)
https://www.cpgroupglobal.com/th/home
CPF HP(タイ語)
https://www.cpfworldwide.com/th/home
CP ALL HP(タイ語)
https://www.cpall.co.th/
DBD Data Ware House+(タイ語)
https://datawarehouse.dbd.go.th/index
Hoon Smart「Dtac จับมือ TRUE สู้ AIS แถลงข่าวรวมพลัง 22 พ.ย.นี้」(タイ語)
https://hoonsmart.com/archives/220603#:~:text=%E0%B8%97%E0%B8%B1%E0%B9%89%E0%B8%87%E0%B8%99%E0%B8%B5%E0%B9%89%20%E0%B8%93%20%E0%B8%AA%E0%B8%B4%E0%B9%89%E0%B8%99%E0%B9%80%E0%B8%94%E0%B8%B7%E0%B8%AD%E0%B8%99%E0%B8%81,%E0%B8%A1%E0%B8%B5%E0%B8%88%E0%B8%B3%E0%B8%99%E0%B8%A7%E0%B8%99%2043.66%20%E0%B8%A5%E0%B9%89%E0%B8%B2%E0%B8%99%E0%B9%80%E0%B8%A5%E0%B8%82%E0%B8%AB%E0%B8%A1%E0%B8%B2%E0%B8%A2
Hoon Smart「」(タイ語)
https://hoonsmart.com/archives/276747#:~:text=%E0%B8%9A%E0%B8%A3%E0%B8%B4%E0%B8%A9%E0%B8%B1%E0%B8%97%E0%B9%83%E0%B8%99%E0%B8%95%E0%B8%A5%E0%B8%B2%E0%B8%94%E0%B8%AB%E0%B8%A5%E0%B8%B1%E0%B8%81%E0%B8%97%E0%B8%A3%E0%B8%B1%E0%B8%9E%E0%B8%A2%E0%B9%8C%E0%B9%81%E0%B8%AB%E0%B9%88%E0%B8%87%E0%B8%9B%E0%B8%A3%E0%B8%B0%E0%B9%80%E0%B8%97%E0%B8%A8%E0%B9%84%E0%B8%97%E0%B8%A2,%E0%B8%A3%E0%B8%A7%E0%B8%A1%E0%B8%81%E0%B8%B1%E0%B8%99%E0%B9%80%E0%B8%9B%E0%B9%87%E0%B8%99%201%2C831880
伊藤忠商事
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2014/1407242.html
CP Freshmart
https://cpfreshmartshop.com/

この記事のライター

東京の大学でタイ語を専攻中。

関連するキーワード


タイ

関連する投稿


日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

2024年6月5日、EXILEを輩出した音楽事務所LDHがタイ大手音楽レーベルGMM MUSICと新エンターテイメント会社【G&LDH】開設を発表しました。タイ最大のメディア企業GMM GRAMMYの子会社であるGMM MUSICは、タイの音楽産業を牽引する存在です。 この合弁会社の設立により、両国の音楽市場の強化と相互の文化理解が期待されています。 本記事では、タイと日本の音楽文化の違いや、音楽がビジネスに与える影響、そしてG&LDH設立の背景を探っていきます。


Japanese “omakase” meets Thai food culture! What are the reasons for its popularity?

Japanese “omakase” meets Thai food culture! What are the reasons for its popularity?

Japan’s “omakase” is becoming popular in Thailand. “Omakase” is often associated with luxury, and in Thailand, it can be 10 to 100 times the price of food stalls and other restaurants. We explore how the Thai culture of dining out, the growing middle-income class, and the social media contributed to its popularity.


タイの食文化に日本の「おまかせ」がブーム!人気の理由はタイの食文化やSNSの利用率が関係?

タイの食文化に日本の「おまかせ」がブーム!人気の理由はタイの食文化やSNSの利用率が関係?

タイでは長年日本食ブームが続いていますが、日本の高級料理店で見られる食文化「OMAKASE(おまかせ)」が流行しています。日本でも「おまかせ」というシステムは高級料理店のイメージがありますが、タイでお任せのシステムを取り入れている店舗は屋台やその他の飲食店と比べると10~100倍を超える価格帯の店舗もあります。タイの食文化に「おまかせ」が流行しつつある背景には、タイの外食文化や中間所得層の増加、SNSの使用率などが挙げられます。本記事では、タイの文化の解説に加え、日本の文化である「おまかせ」が流行している理由について解説します。


タイにおける日本食の人気。タイで成功する秘訣とは

タイにおける日本食の人気。タイで成功する秘訣とは

タイでは近年日本食ブームが起きています。タイの大型ショッピングモールに行くと、日本食レストランの多さに驚くほど。タイにおける日本食レストランの数は年々増加傾向にあり、今後も増えていくと期待されています。そんな日本食レストランのお客さんの大半は、在留邦人ではなくタイ人客です。では、なぜタイではこれほど日本食が人気なのでしょうか。日系和食チェーン店のタイでの経営スタイルの分析から、タイでの成功の秘訣を見ていきます。


Thai cosmetics are trending among Gen Z? The appeal of Thai cosmetics is evolving in its own unique way

Thai cosmetics are trending among Gen Z? The appeal of Thai cosmetics is evolving in its own unique way

Following the “Korean” and “Chinese” trends among Gen Z, the popularity of “Thai cosmetics” and “Thai beauty” is growing on social media. We will introduce the appeal of “long-lasting” Thai cosmetics that remains “smudge-free” in the hot and humid climate of Thailand and that continue to evolve in its own unique way.


最新の投稿


SEO対策、企業の40%が重要視も実施率は25%未満【メディアリーチ調査】

SEO対策、企業の40%が重要視も実施率は25%未満【メディアリーチ調査】

株式会社メディアリーチは、企業のマーケティング課題を解明するための定期的な調査として、2024年11月に実施した『経営者・役員対象:SEO対策意識調査 2024・2025年』の結果を公開しました。


Z世代の6割以上は「SNS」が認知のきっかけに!特に「衣類・ファッション」はSNSで比較・検討を行う割合が高い【僕と私と調査】

Z世代の6割以上は「SNS」が認知のきっかけに!特に「衣類・ファッション」はSNSで比較・検討を行う割合が高い【僕と私と調査】

僕と私と株式会社は、全国のZ世代/Y世代/X世代を対象に、商品カテゴリー別のカスタマージャーニーに関する調査を実施し、結果を公開しました。


ポッドキャスト、マーケターの約8割が認知も活用は約1割!活用における課題は「制作ノウハウがない」が最多【オトバンク調査】

ポッドキャスト、マーケターの約8割が認知も活用は約1割!活用における課題は「制作ノウハウがない」が最多【オトバンク調査】

株式会社オトバンクは、企業のマーケティング担当者を対象に「ポッドキャストに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


スイート&スパイシー「Swicy(スワイシー)」味の商品が続々と登場!アメリカで人気の背景とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年11月)

スイート&スパイシー「Swicy(スワイシー)」味の商品が続々と登場!アメリカで人気の背景とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年11月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、アメリカの食品業界で新たなトレンドワードとして注目されている「Swicy(スワイシー)」とその流行の背景について取り上げます。


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ