過熱する中国コーヒー市場
現在、中国ではコーヒー市場が盛り上がりを見せています。アメリカのコンサルティング会社フロスト&サリバンの調査によると、中国のコーヒー市場は2013年から2018年において急速に成長し、29.54%の年平均成長率を記録しました。また25.99%の年平均成長率が続いていくという予測に基づくと、2023年には市場規模額が1806億元に達すると見込まれます。
中国コーヒー市場規模グラフ(単位:十億元)
コーヒーショップの店舗数も増加の一途を辿っています。美团美食と咖门が実施した「2022中国现制咖啡品类发展报告(2022中国現場製造コーヒー品目発展報告)」の調査によると、2022年5月時点で、中国国内には11.73万軒のコーヒーショップがあり、前年同期比14.6%の増加を記録しました。1年間で新しく1.5万軒のコーヒーショップが増えたのです。
コーヒーショップだけでなく、コーヒー関連企業全体としても増加を見せています。天眼查のデータによると、2022年時点で国内のコーヒー関連企業数は17万社以上存在しており、そのうち2.3万社あまりの企業が2021年に新しく登録されています。新しく登録された企業数の増加速度は18.9%にものぼります。成立期間の点から見ると、42.2%以上の企業が1~5年以内に成立した企業であり、近年のコーヒー市場の過熱が窺えます。
若者のコーヒー消費スタイルの変化
中国の若者層に利用者が多い、RED(小紅書)のデータによると、RED上の70%以上のアカウントがコーヒーを飲む習慣があり、50%以上のアカウントが毎週1杯以上コーヒーを飲んでいます。REDの利用者層においては、コーヒーを飲むことはすでに生活の習慣の一つになっていることが分かりました。
6月に上海の天地太平橋公園で開かれた、REDコーヒー生活節活動の一つ。数々のコーヒーが出店を出し、多くの若者が訪れた
また、若者たちの間では「中国式コーヒー」がブームを巻き起こしています。データによると、RED上における「中国式コーヒー」の2023年第一四半期における検索数は前年同期比で331%の増加を記録しました。この新しい中国式コーヒーは「茶咖」と呼ばれています。中国のお茶文化とコーヒー文化が融合した「茶咖」は、中国風に設計されたコーヒーショップ増加にも繋がり、2023年の新しい大人気トレンドになっています。原料のコーヒー豆から加工技術、風味、店舗の景観に至るまで、中国風にローカライゼーションがなされる傾向が増えており、コーヒーの消費者はお茶の愛好家層にまで広がっているのです。
さらに、コーヒーはコーヒーショップでだけ飲める物ではなくなり、寺院コーヒーや郵便局コーヒー、ガソリンスタンドコーヒー、さらには警察署コーヒーに至るまで、様々な場所でコーヒーが飲めるようになりました。コーヒーへの高い需要という力を借りて、様々な場所で、若者に足を運んでもらう試みがなされているのです。
四川省成都の公安局が建てたコーヒーショップ。若者が多く訪れている
旅行業の目覚ましい復活!中国のGW「五一假期」を調査 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/24072023年4月29日から5月3日にかけて、中国では「五一假期」と呼ばれる連休がありました。今年の「五一假期」では、コロナ禍が収束して初の大型連休ということもあり、旅行業の著しい復活が注目されています。 本記事では「五一假期」における中国の国内、海外旅行業について紹介していきます。
寺院コーヒーについては、こちらの記事で紹介しています。
さらに重要なのは、若者たちにとってコーヒーは単なる愛好の飲料に留まらず、新しいソーシャルコミュニケーションの道具にもなっていることです。「咖啡社交」という言葉も生まれるほど、コーヒーを通じて人と人が関わり、他者、ひいては社会との繋がりを持つといった傾向が増えています。加えて競争が激しい現代中国においては、コーヒーショップは若者たちにとってのサードプレイスとなり、仕事と私生活の合間でリラックスできる場所になっているのです。
多様化するコーヒーの販売方法
コーヒーの販売方法の多様化も、コーヒー市場が盛り上がりを見せている大きな要因の一つです。
多様化した販売方法とは、オンライン上で注目を集めることで、店舗に足を運ぶ人を増やすという方法です。バイドダンスが提供する動画共有サービス・抖音における、「#咖啡(ハッシュタグ・コーヒー)」の討論熱度は273.9億回にのぼり、2023年4月現在、抖音でコーヒーショップに訪れた旨の投稿をしたアカウント数は、前年同期比328%の増加を記録しています。このようなコーヒーへの注目の高さは、コーヒー関連企業に大きな商業的機会を与えています。
2022年の挪瓦咖啡は、未だコーヒーショップの数が少ない、中国都市階級における三線都市、四線都市への出店を始めました。ただ開店しただけでは客足は伸びづらいはずでしたが、2022年抖音で「挪瓦咖啡敲椰子(挪瓦咖啡がヤシの実を叩く)」という、本物のヤシの実を目の前で割ってコーヒーを淹れた挪瓦咖啡の商品に関する投稿が、2.6億回以上再生されトレンドになり、新店舗の迅速な顧客獲得に大きなプラスの影響を与えました。その結果、現在では挪瓦咖啡は抖音内のトレンドコーヒーショップランキングにおいて、多くの都市で1位を獲得しています。
実際に抖音のユーザーが投稿した、「挪瓦咖啡敲椰子(挪瓦咖啡がヤシの実を叩く)」の動画
また、抖音は動画投稿や生放送が可能であるだけでなく、生放送の画面や、抖音内にある抖音ショッピングモールから直接商品を購入することができます。
抖音生活服务などが連合で発表した「2023年咖啡赛道专题研究报告(2023年コーヒーサーキット特集研究報告)」によると、全体的な傾向のうち、ショート動画や生放送を通じての売上が上昇を見せていることが分かりました。特に2023年4月における生放送を経由しての購入数は、前年同期比で22倍増加しました。
抖音のショート動画、生放送を経由してのコーヒー関連購入数。緑色の折れ線グラフが生放送経由、赤色の折れ線グラフがショート動画経由
このように、抖音を有効活用することで、コーヒーショップは人気と売り上げを短期間に伸ばすことを実現しています。そして抖音を見て店を訪れた、もしくは商品を購入した客が、抖音でその体験をシェアすることでブランドの良いイメージを形成し、良質な循環が生まれています。
多様化した販売方法の更なる例としては、キッチンカー形式でのコーヒー販売が挙げられます。REDでは、コーヒーキッチンカーに関する投稿が113万件以上投稿され、6500万回以上閲覧されています。どこでも好きな時に外に出て、1杯のコーヒーを買って飲めることは、消費者に心地よさを与えています。
まとめ
中国におけるコーヒー市場の盛り上がりと、その主な要因となった出来事を紹介しました。若者のコーヒー消費スタイルの変化や、若者のコーヒー需要を目当てに様々な場所がコーヒー販売を始めたことは、コーヒー市場の裾野を広げています。
さらに抖音やREDなどのSNSを活用することで、来客や売上増加に繋がるプラスの循環を生み出すなど、コーヒーの販売方法も多様化を見せています。
中国におけるコーヒー市場は、今後も拡大が見込まれています。コーヒーの消費スタイルや、関連企業の販売方法が今後どのように進化を遂げていくか、注目です。
参考URL
中国的咖啡市场现状如何 2022中国咖啡市场数据分析报告
https://www.mitsublshi.com/h/37486.html
市场规模2023年将超1800亿!中国咖啡消费迈向日常化刚需化
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1750267337635375282&wfr=spider&for=pc
2023咖啡行业发展趋势及市场现状分析
https://think.szonline.net/zhbd/20230114/202301557840.html
咖啡成年轻人新型“社交货币”
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_23508593
咖啡市场线上化?是资本野心还是风口锚点
https://www.digitaling.com/articles/943809.html
早稲田大学在学中。