タイにおける少子高齢化の現状
タイの総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、ASEAN諸国の中ではシンガポールに次ぐ2番目。2022年にすでに高齢社会(総人口の14%が65歳以上)に突入しました。さらに、2031年には超高齢化社会(同28%)に入ると予想されています。
また高齢化へのスピードはとても早く、近年の20年を比較しても、人口ピラミッドの形が大きく変化しているのが分かります。
高齢者向けビジネスの需要増加
タイでは少子高齢化が進むにつれ、老人ホームや介護施設の需要が高まっています。実際に近年タイでは、富裕層や長期滞在の外国人高齢者向けのリゾート介護施設、中所得層向けに民間事業者が提供している介護施設が徐々に増えています。
以下は、パタヤにある富裕層や外国人高齢者向けのリゾート介護施設Baan Lalisaです。
出典:Baan Lalisa介護施設ホームページより(https://baanlalisa.com/accommodation/)
このような外国人向けの施設が多い理由として、タイでは「メディカル・ツーリズム(医療観光)」を国家的な戦略として打ち出していることが考えられます。医療観光とは、自国以外の国で医療を受けるために旅行することです。タイでは欧米などの国々と比べ、治療費を大幅に抑えることができ、またトップクラスの医療が受けられるという理由から医療観光に人気があります。
しかし全体的な介護施設の数は依然として少なく、また中低所得層向けの介護施設も存在するものの、低所得層の人々はほとんど利用できていません。これは老後の保有資産が十分でないことが最も大きな理由の一つです。
またタイでは家族(特に娘)が両親の介護をすべきという伝統的な価値観が残っており、両親を老人ホームに入れるのは、親不孝と考える人も少なくはありません。しかし女性の社会進出や都市化、少子化などにより、以前と同様の家族による介護体制では厳しい状況となっています。
日本企業のタイへの進出
日本企業が進出している国ランキングで、一位の中国、二位のアメリカに続いて、三位にランクインしているのがタイです。またその数はASEAN諸国の中でも突出しています。
参考:外務省「海外進出日系企業拠点数調査」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100371935.xlsx
日本企業のタイ進出は右肩上がりで増えており、今後も伸びると予想されます。
その理由として、
・日本文化の理解や親しみ、関心が高い
・国民の9割以上が仏教徒で宗教的軋轢がほとんどない
・ベトナムなどの周辺国々への交通網が整っている
・近年の中・高所得層の人口増加
など、政治状況が不安定であることが懸念事項としてあるものの、日本企業にとってタイ進出には多くのメリットがあるからです。
タイでの日本企業による高齢者関連ビジネス
少子高齢化が進むタイでの需要予測をし、30年程前から少子高齢化問題と向き合ってきた日本の知見を活かして、タイへ事業を展開すれば、海外進出するチャンスや事業拡大につながるのではないでしょうか。
そこに逸早く目をつけたのが、タイで健康弁当の提供をしている「やまとグループ」です。やまとグループは「ココロとカラダを健康に」を合言葉に、やぁや/Ya-Ya(北陸地方のお母さんの呼称)が作る、優しく飽きないおふくろのご飯の味を再現。日本でも高齢者の方を中心に多くの人々の健康的な食事を支えています。そんな中、タイで健康に対する意識が高まっていることに着目し、日本人の管理栄養士が作ったメニューで日替わりお弁当の提供を始めています。
出典:Ya_Ya公式フェイスブックより
https://www.facebook.com/Yaya.YamatoAsia
(左:卵豆腐のチリソース炒め、右:鯖の味噌煮)
その他にも、介護に必要な介護用ベッドや車椅子などをタイに輸出している企業もあります。しかし日本製品は競合である中国製や韓国製のものと比較すると、製品の質や使いやすさは優れているものの、価格が高い為にほとんどが富裕層向けの販売となっているのが現状です。
まとめ
タイでは少子高齢化が急速に進行しているものの、まだまだ中高所得層向けのビジネスにしか踏み出せていないのが現状です。日本製品をできるだけ安価な価格でサービスや商品を提供できるかどうかが、事業をより拡大していく上で重要な要素になるでしょう。
大阪大学外国語学部でタイ語を勉強中。タイのカセサート大学に約一年間留学をし、それまで知らなかったタイの文化やタイ人の優しさに触れ、タイがいつしか心のふるさとに。老後はタイ移住も検討中。