観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


【無料ダウンロード】デジタル・トレンド白書2024 – Z世代トレンド・SNS動向編|ホワイトペーパー

https://manamina.valuesccg.com/articles/3770

国内外におけるZ世代の消費トレンド、Instagram、TikTok等SNSの利用実態など、2024年に反響の高かった16本のデジタル動向調査をピックアップし、白書として収録しました。(「Z世代トレンド・SNS動向編」ページ数|140P)

ポイ活機能がついた「TikTok Lite」の特徴とは

「TikTok Lite」は「TikTok」公式が2023年にリリースした、「TikTok」を軽量化した動画共有アプリです。アイコンの左上に小さな雷マークがついているのが特徴です。また、ユーザーが動画を視聴することでポイントを獲得できるという、「ポイ活」アプリとしての機能も持っています。

「TikTok Lite」は、App Storeのエンターテインメント部門で1位を獲得しています(2024年6月28日現在)。「TVer」や「ABEMA」、「Netflix」など多くの人気アプリを抑えていることからも、「TikTok Lite」の人気の高さがうかがえます。

App Storeのエンターテインメント部門ランキング(2024年6月28日時点)

「TikTok Lite」と「TikTok」のもっとも大きな違いが、冒頭でも触れたポイ活要素の有無です。

一般的なポイ活アプリでは、ポイントを獲得するためにアンケートに回答したり、移動や買い物をしたりする必要がありますが、「TikTok Lite」では動画を視聴したり、「いいね」を押したりするだけでポイントを稼ぐことができるのです。

また、「TikTok Lite」は定期的にポイントを大量獲得できるイベントを開催しており、ユーザーは他のポイ活アプリと比較しても多くのポイントを獲得することができます。この「ポイント獲得にかかる労力の低さ」や「獲得ポイントの多さ」が人気の要因だと見て良いのではないでしょうか。

一方で、「TikTok Lite」は本家「TikTok」に比べて投稿機能が制限されています。具体的には、「TikTok Lite」には動画編集機能とLIVE配信機能、それに伴う収益化機能が存在していません。そのため、動画の閲覧のみを行いたいライト層は「TikTok Lite」、配信で収益を獲得したい層は「TikTok」を利用するというように、ユーザーの性質によってどちらのアプリを使うかが変わってくると考えられます。

また、投稿機能が制限されていることで、「TikTok Lite」は「TikTok」と比較してかなりデータ量が軽くなっています。出先など、Wi-Fiがない場面でもポイ活しやすいというメリットもあるかもしれません。

TikTokとのユーザー属性の違いは?

次に「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーの属性などを比較することで、両アプリの違いを見ていきます。分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

まずは、実際にアプリを起動したユーザー数の推移から、両アプリの規模感を比較していきます。下のグラフからは、「TikTok Lite」の月次アクティブユーザーがリリース開始後から順当に増加していることが分かります。

「TikTok Lite」、「TikTok」利用者数の推移
集計期間:2023年6月~2024年5月
デバイス:スマートフォン

TikTok Liteユーザーの50%以上が月あたり16回以上アプリを起動

アプリ起動者の動向をさらに深掘って見ていきます。まず下のグラフは「TikTok Lite」と「TikTok」の月平均アプリ起動日数を比較したものになります。

「TikTok」アプリを起動した人の6割が、月に平均して5日以下しか起動しない一方で、「TikTok Lite」アクティブユーザーの多くは月に平均して16日以上起動していることが分かります。ポイント獲得のために毎日タスクをこなしたい人が多く、「TikTok Lite」には月あたり起動回数の多いヘビーユーザーが多くなっているのかもしれませんね。

「TikTok Lite」、「TikTok」月平均アプリ起動日数
集計期間:2023年6月~2024年5月
デバイス:スマートフォン

TikTokを使っていない新規ユーザー層の獲得に寄与か

アプリ起動者の性年代も詳しく見ていきます。下のグラフは「TikTok Lite」、「TikTok」両アプリユーザーの男女比を示したものです。

男女比は両アプリともに1対1に近く、あまり偏りがないことが分かります。

「TikTok Lite」、「TikTok」利用者の男女比
集計期間:2023年6月~2024年5月
デバイス:スマートフォン

年代割合を見ると、「TikTok Lite」は「TikTok」に比べ、20代の利用者割合が数ポイント低くなっていました。

「TikTok Lite」、「TikTok」利用者の年代割合
集計期間:2023年6月~2024年5月
デバイス:スマートフォン

また、「TikTok Lite」と「TikTok」両アプリの利用状況も調べてみます。「TikTok Lite」利用者から見た併用状況を示す下のグラフを見ると、併用なし(TikTok Liteのみを使っているユーザー)の割合が46.7%と、全体のうち約半分を占めることが分かりました。

「TikTok Lite」から見た、「TikTok」併用状況
集計期間:2023年6月~2024年5月
デバイス:スマートフォン

ここまで、「TikTok Lite」と「TikTok」の違いについて、アプリの特徴面と、属性や利用状況などのユーザー面、両方の面から分析を行ってきました。以下の表に、分析から見えてきた両アプリの性質の違いをまとめています。「TikTok Lite」では、ポイ活機能によって、これまで「TikTok」を利用していなかった層や、ポイント獲得のために毎日アプリを起動するヘビーユーザーを獲得できたのはないでしょうか。

「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリ面・ユーザー面の違いまとめ

TikTok Liteが伸びているのはなぜか?

ここからは群雄割拠のポイ活市場でなぜ「TikTok Lite」が人気となっているのかについて考察していきます。

ひとつには、「ポイント獲得にかかる労力の低さ」や「獲得ポイントの多さ」が考えられます。前述の通り、「TikTok Lite」では簡単にポイントを稼ぐことができることに加え、定期的にポイントを大量獲得できるイベントを開催しているため、一般的なポイ活アプリと比較して手軽に多くのポイントを獲得することができます。

また、メインのタスクが「動画視聴」であることも影響しているのかもしれません。“歩くだけ”、“レシートを撮るだけ”などの、いわゆる「ながらポイ活」がポイ活市場でブームとなっています。そうした中で、現在ユーザーの可処分時間の多くを占める「動画視聴」は“ながら”でポイントを貯める行為と非常に相性が良い可能性が高いでしょう。そうした理由から「TikTok Lite」が人気となっているのかもしれません。

「TikTok Lite」をリリースした意図などは公式から明言されてはいないものの、高いポイント還元率でユーザーを囲い込み、大量のアクティブユーザーを獲得しているなど、大きな成果となっていることは事実です。

この先行事例が成功を収めれば、「Instagram」や「X」などの大手SNSや「YouTube」などのプラットフォームも、ポイ活を軸にしたサービスを行う可能性も否めません。既存のサービスに新たな価値を付与することで、新規ユーザーの獲得を狙う可能性も大いにあります。

一方でSNSビジネスの競争において重要な点は、ユーザーの囲い込みに加えてクリエイターの囲い込みであることも指摘できます。TikTokは2023年8月からクリエイター向けの収益プログラム「Creativity Program Beta」を開始。YouTubeと同様に、再生回数に対して報酬が受け取れるようになっています。この仕組みは2024年3月にアップデートされ、プラットフォーム側もクリエイターのモチベーションを高く保つ工夫を凝らしていることが分かります。

2023年に押さえるべき、SNSマーケティングのトレンドは?|「2023年1月 コンテンツマーケティング最新動向レポート」

https://manamina.valuesccg.com/articles/2201#outline14

ヴァリューズのマーケターが、コンテンツマーケティングの今をお届けする本連載。2023年第1弾は、SNSマーケティング先進国における動きなど、2022年の主要SNSの動向を振り返り。今後の予測や対策すべきポイントについて解説します。押さえておくべきは、「ワンストップ送客」「短尺動画」「インフルエンサー収益化強化」の3点です。

ユーザーの可処分時間の取り合いがますます激しくなっていく現代。ユーザーとクリエイターの獲得のために各SNSやプラットフォームがどのような工夫を施していくのでしょうか。今後に注目です。

今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

【最新のSNS情報を知りたい方へ】総ページ数140P以上のSNS・Z世代ホワイトペーパーの無料ダウンロード

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。今回、国内外におけるZ世代の消費トレンド、Instagram、TikTok等SNSの利用実態など、2024年に反響の高かった16本のデジタル動向調査をピックアップし、白書として収録しました。

ホワイトペーパーの詳細・ダウンロードは
データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – Z世代トレンド・SNS動向編」を公開をチェック

この記事のライター

2025年4月に入社予定の大学4年生です。大学では、経済学部で計量経済学を学んでいます。

関連する投稿


au・UQモバイル・povoを比較!料金プラン・ユーザーの違いは?

au・UQモバイル・povoを比較!料金プラン・ユーザーの違いは?

通信会社は多様なプランを展開し、幅広いユーザー層の獲得を目指しています。本記事では、KDDIが展開するau・UQモバイル・povoを比較し、それぞれのユーザー層の違いを分析します。


エアコン購入の検討フローを分析。データが示す、重要な"媒体"とは

エアコン購入の検討フローを分析。データが示す、重要な"媒体"とは

購入検討のピークが近づくエアコン。夏には欠かせないアイテムですが、消費者はどのような流れで、何を軸に検討を進めているのでしょうか。エアコン検討者の行動データから、情報収集の実態を調査しました。


サプリを飲む3,000人以上に調査!人気&注目の成分ランキング

サプリを飲む3,000人以上に調査!人気&注目の成分ランキング

健康の維持増進や栄養補給のために利用されるサプリメント。様々な成分を含むサプリメントが販売されていますが、どのような成分が消費者の関心を引きつけるのでしょうか。この記事では、サプリメントを摂取している方を対象に行った調査を参照しつつ、「関心がある」と回答の多かった人気&注目の成分のランキングや興味関心者を分析しました。


大学生の旅行計画はWebよりSNS?情報収集の実態と検討フローとは

大学生の旅行計画はWebよりSNS?情報収集の実態と検討フローとは

スマートフォンが生活の一部となった現代、旅行の計画方法も大きく変化しています。特に大学生の情報収集の手段は、これまでのWebサイトからSNSへとシフトしているようです。大学生は実際にどのような方法で旅行情報を集め、計画を立てているのか。分析ツールや調査データ、大学生の声も聞きながら分析していきます。


Y世代よりZ世代の方が「友人」「推し」などの影響でコスメを購入!Z世代過半数が“SNSバズコスメ”購入経験あり【eBay Japan調査】

Y世代よりZ世代の方が「友人」「推し」などの影響でコスメを購入!Z世代過半数が“SNSバズコスメ”購入経験あり【eBay Japan調査】

インターネット総合ショッピングモール「Qoo10」を運営するeBay Japan合同会社は、全国の女性を対象に「Z世代・Y世代女性のコスメの流行と消費に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


最新の投稿


【2025年7月7日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2025年7月7日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


ライブ配信から商品購入に至った視聴者は3割超!ライブ配信は「楽しむもの」から「売る手段」へ着実に進化【PRIZMA調査】

ライブ配信から商品購入に至った視聴者は3割超!ライブ配信は「楽しむもの」から「売る手段」へ着実に進化【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、企業のマーケティング・PR担当者と、ライブ配信を視聴したことのある10代~60代の一般視聴者を対象に、「ライブ配信を活用したリアルタイムマーケティングに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2025/06/02〜2025/06/08)

みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2025/06/02〜2025/06/08)

ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」をもとに、週次の検索急上昇ワードランキングを作成し、トレンドになっているキーワードを取り上げます。


中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者実態調査

中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者実態調査

中国国内でも盛況なキャラクターコンテンツ市場。本資料では、どのようなキャラクターコンテンツが好まれているのか、派生商品やイベントなどの人気動向などにも注目し、中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者の実態について行った定量・定性調査の結果をまとめました。 グッズの購入実態やコラボ商品・イベントへの意向なども聴取したことで、中国人キャラクターコンテンツ愛好者において受容度が高いコラボ施策も把握可能となっています。<br>※本資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


買い物にAIを活用するZ世代は約3割!Adyen、買い物および決済体験における消費者と小売企業に関する2025年度調査結果を発表

買い物にAIを活用するZ世代は約3割!Adyen、買い物および決済体験における消費者と小売企業に関する2025年度調査結果を発表

Adyenは、顧客の決済体験と企業のテクノロジー投資に関する年次調査「リテールレポート 2025」を発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ