5Gとはどのような技術?
最初に5Gとは、どのような技術なのか見ていきましょう。
5Gは数字の違いからも分かりますが、4Gよりも次世代の通信技術となります。移動通信システムは、初期のショルダーフォンで使われていた1Gから始まっており、メールやネットが可能になった2G、動画や見えるようになった3G、さらに高速でネット環境を楽しむことができる4Gと進歩してきました。
さらに5Gの開発の歴史や特徴を見ていきましょう。
■5Gの開発は2010年から始まっていた
日本国内では通信システムの開発は、NTTドコモが主になって進められてきています。NTTドコモは2010年頃から5Gの研究をスタートさせていました。2013年にはシミュレーターを展示しており、実際に実験を行い、2016年には20Gbpsを超える通信にも成功しています。
2014年には「第5世代モバイル推進フォーラム」が設立されて、5Gの技術開発や標準化に取り組んでいます。また、韓国の通信大手3社は、2019年4月3日に5Gのサービスを提供し、世界初を主張していました。
■5Gが解決してくれること
4Gと比較をすると5Gはより高速で通信をするので、多くの問題点を解決してくれることが期待されます。
例えば現在、人が混みあっているところではインターネットに繋がりにくくなっていることがあります。電波が強いのに、通信がしにくくなっている状態です。
これは、4Gでは1平方キロメートルの中に一定台数の端末のみが接続できるという規約があるためです。定められた以上の端末が接続しようとすると、データ通信に不具合が生じるのです。しかし5Gになると同時接続台数が増えるので、スムーズに通信ができるようになります。この点は後ほど詳しく解説します。
またネット環境が改善されるので、これまでよりも多くのデバイスがインターネットに接続されることでしょう。これまではオフラインだったデバイスも、インターネットに接続されることで、あらゆる情報にアクセスできるように変化します。
2020年3月末から本格的な運用が始まった新たな通信規格「5G(ゴジー、ファイブジー)」。携帯3大キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)のテレビCMなどでも目にする機会が増えたこのワード、かねてより弊サイト・マナミナでもさまざまな記事をお届けしています。今回はこれまでに紹介した、5Gとはなにかという基礎、5Gでできること、そして実際に活用されている事例までをまとめて紹介ます。
4Gと5Gの違いを端的に説明すると?
4Gと5Gの違いを分かりやすく説明すると
・高速データ通信
・データ送信の遅延
・同時接続台数
の上記の3つの点で改善が見られます。
詳しく見ていきましょう。
■高速でデータ通信が可能
高速でデータ通信ができるという点では、4Gでは通信速度は1Gbpsだったものが、5Gでは20Gbpsとなっています。約10倍から20倍の違いがあるのは大きな違いでしょう。インターネット上で動画を再生する時に、動画が停止してしまったり、音声が途切れてしまったりということが少なくなります。
■データ送信の遅延が少ない
データ通信をする時の、遅延が少なくなるのも5Gで得られるメリットです。送受信を繰り返すと、微妙な遅延をするのですが、データ送信の際の遅れが少ないのも5Gの技術の特徴でしょう。
4Gでは10ミリ秒というデータの遅れがあったものが、5Gになると1ミリ秒ほどの遅れへと改善。リアルタイムで遠隔操作をする場合などに、スムーズな操作をもたらすなどの恩恵をもたらします。
■同時接続台数の向上
同時接続台数が向上するのも、5Gでできることに含まれます。4Gの時には、1キロ平方メートルに10万台という台数制限がありました。しかし5Gでは1キロ平方メートルに100万台の台数制限に変わるのです。
現状の10倍のデバイスを同時に接続することができるので、電波は強いのにデータ通信が遅いといった状況が改善されるでしょう。
■省電力でバッテリーが長持ちする
5Gになると、通信の速度が上がるので、通信に使う電力は多くなります。しかし結果として、各社はデバイスの消費電力を抑えるように開発を進めていくこととなるでしょう。
最終的には、これまでよりも省電力なデバイスが開発されることとなり、バッテリーが長持ちする端末が増えることとなるはずです。
5Gでデータ消費量はどう変わる?
大量にデータ通信できるように変化しますので、データ消費量は増えることでしょう。さらに通信設備が整備されていくと、データ通信の量が増えても、データ通信のスピードが速いことや、同時接続台数が増えていくことから不便を感じることがありません。
VR体験などのデータ通信量が多い技術でも、リアルタイムで体験することが可能になります。データ通信量が増えても問題がないほどの、データ通信が可能な5Gだからこそ実現できるのです。
5G時代のマーケティング
5Gになり大容量で通信ができるようになると、生活面にも変化が生じるのでマーケティングにも変化が生じるでしょう。VRなどで架空データを大容量で通信することができたり、自動運転も進歩したりすることが考えられます。
広告に関しても、動画がより一般的になることから、動画広告の質も向上することでしょう。画質の向上からも、動画広告の成果が向上することが予想されます。
5Gになると生活はどう変わる?
続いて、5Gが普及すると私たちの生活はどのように変わっていくのでしょうか。予想される事柄について考えてみましょう。
2020年から商用サービスが始まる5G通信。超高速・超低遅延・多数同時接続という特徴を持ち、あらゆるものがインターネットとつながるIoT時代がやってきます。その結果、インフラを始め社会のあちこちで5Gを活用したサービスが始まると予想されています。5Gの普及が社会に与える変化と効果について。
■5G時代はデータ消費量が格段に増えていく
まず、通信が高速になる分データ消費量は大幅に増えます。実際に、携帯キャリア各社は5Gサービス開始に伴い、通信量の上限を大幅に引き上げ始めています。ドコモなど、5Gでも通信制限なしの使い放題プランも登場しています。
■5G時代は娯楽の多様性がさらに増していく
現在、ネット上の娯楽はYouTubeやNetflixのような「動画コンテンツ」が主流です。5G普及後は画質が大幅に改善し、8K動画をストリーミングで見ることも可能となります。
また、2Dの動画に加えてVRコンテンツも充実していきます。5G通信下では2時間の映画をなんと3秒でダウンロードできるほど、通信速度が上がります。スポーツ観戦のリアルタイムVRのような新しいコンテンツも期待されています。
また、スマホの次に来るものとして、スマートグラスが注目されていますが、 それが一般化すれば5Gと接続して、 AR(Augmented Reality、拡張現実)やMR (Mixed Reality、複合現実)も日常的に楽しめるようになるかもしれません。
※VR・AR・MRの違い
VR(バーチャル・リアリティー)は映像の世界に入り込んだかのような体験ができる技術(仮想現実)。AR(オーグメンテッド・リアリティ)はポケモンGOでも知られるように、現実世界に仮想コンテンツを重ねる技術です(拡張技術)。MR(ミクスト・リアリティ)はVRとARを融合させたような技術です(複合現実)。
ARとMRの違いは、仮想現実の立体性にあります。ポケモンGOを例にとると、ARではポケモンは2Dで表示されるため、近づいたり触れたりすることはできませんが、MRでは仮想現実に奥行きを持たせることができ、モンスターに近づいたり後ろに回り込んだりすることができます。
■5G時代は様々な情報がデータ化・数値化される
5Gの特徴である「複数同時接続」により、IoT機器の利用も一般的になります。現在でもスマートスピーカー、エアコン、照明など、ネット接続できるデバイスが増えていますが、その枠がさらなる広がりを見せてくるでしょう。
IoT機器はネットと接続されることで、電源を入れた時間、利用時間、使用位置などのさまざまなデータを逐次記録します。そうして集めたビッグデータをAIが分析し、QOL向上のための提案をしてくれたり、健康管理に役立てたりできます。
IoT機器は「行動・活動のデータ化」を可能にします。すでに保険会社各社はIoT技術を活用して「信用」を可視化する試みを行っています。例えば、自動車保険ではIoT化された自動車を用いて、アクセルの踏み方や運転時間などのデータを集めます。それをもとにして顧客一人ひとりのリスクを洗い出すことで、より正確なリスク計算が可能となります。
5Gになるとビジネス・産業はどう変わる?
続いて、5Gが産業界に与える影響を見ていきましょう。
■5G時代のビジネスのキーワードは「XaaS」
「XaaS」とは、SaaS(Software as a Service)、MaaS(Moblity as a Service)、PaaS(Platform as a Service)などの総称です。5Gの発展により、「ハードよりソフト」「所有よりシェア」「モノよりコト」への変化が加速化します。その理由は、社会的背景と技術的背景の2つで説明ができます。
成熟期に入り何でも手に入れられる現代では、所有することの意味が徐々に薄れてつつあります。例えば、かつては「高級車を持っていることがステータス」とされていましたが、最近では「カーシェアを使いこなせた方がスマート」と考える人も増えるなど、所有から利用に価値が移ってきています。
さらに技術的には、多くのサービスやソフトをクラウド上で扱えるようになりました。かつて写真は、フィルムを現像して紙のアルバムに入れて保存するものでした。それが、いつしかデジカメ・スマホが登場し、現在ではクラウドがアルバム替わりです。さらに5Gが一般化すれば、クラウドでできることが格段に増えていくでしょう。社会的背景に加え、技術的な制約がなくなってきたからこそ、今XaaSが注目されているのです。
■5G時代には自動車産業、製造業など各分野で革新が起こる
5Gがビジネスに与える影響は業界を問いません。さまざまな産業でイノベーションが起きていくでしょう。例えば、自動車産業。当初は少なかったハイブリッド車も普通になってきたように、自動運転も研究・開発が進む分野です。車に多数のセンサーを設置し、それらを5Gで接続する利用シーンが想定されます。
製造業では「スマートファクトリー」がキーワードです。スマートファクトリーでは、工場のロボットや製造ライン、カメラなど、あらゆるものにセンサーを持たせます。それらのセンサーを5G経由で統合します。それにより必要人員を減らすことができるほか、ヒューマンエラーが減り効率性や危険性、正確性も改善します。
その他にも、医療では5Gを用いた遠隔手術、スポーツビジネスではVR中継やマルチアングル中継、一次産業ではセンサーを使った作物管理など、5Gによってもたらされる変化は各分野に及びます。
■過度な期待に注意。5Gの課題はまだ多い
ここまで聞くと「5Gはなんて素晴らしテクノロジーなんだ!」と思う方もいるでしょう。ただ、5Gにも課題はあります。まず導入期で懸念されるのは、そのカバー範囲の狭さです。総務省では「5年以内に50%以上のメッシュで5G高度特定基地局を整備する」としています(メッシュとは全国を10㎞四方で区切ること)。つまり、5年経っても日本の半分しかカバーされない可能性があるということです。
さらに、5Gの電波は4Gよりも飛距離がなく、障害物にも弱いという弱点があります。建物内だと電波が入りにくかったり、基地局の少ない場所では電波が届かなかったりする場合もあります。そのため、基地局を多数設置しなければなりません。
そのほかのリスクとしては、「5Gの電波が健康被害を及ぼすのではないか?」という議論もあります。ただこの議論については、まだ科学的根拠が薄く、漠然とした不安の域を出ていないのが現状です。
携帯の電波が5Gになる時代が近づいています。便利になる一方、健康被害を懸念する声もあり、ムクドリ大量死のデマや科学者による警告、WHOが携帯の発がん性を認めたなど玉石混交で、一般人には判断が難しい所があります。WELQ問題や東日本大震災後のデマの教訓を踏まえ、第三者に科学的に検証されているかが大事です。
5Gになると、通信速度向上にとどまらず、生活全般が変わる!
5Gは大容量で、同時接続台数も多く、様々なデバイスが接続できる技術として注目されています。現在よりもさらに多くのデバイスが接続されることとなると、家電や自動車などの今までは考えられないデバイスもインターネット接続されることでしょう。
通信システムの変化は、私たちの生活を大きく変化させます。これからの5G技術や設備の進歩に期待です。
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