5Gで健康被害という話をどう解釈すればよいか?

5Gで健康被害という話をどう解釈すればよいか?

携帯の電波が5Gになる時代が近づいています。便利になる一方、健康被害を懸念する声もあり、ムクドリ大量死のデマや科学者による警告、WHOが携帯の発がん性を認めたなど玉石混交で、一般人には判断が難しい所があります。WELQ問題や東日本大震災後のデマの教訓を踏まえ、第三者に科学的に検証されているかが大事です。


5Gで健康被害という話はどこから来ているのか

携帯電波の5Gサービスは各国で2019年、日本では2020年から開始されます。3Gから4Gになった際はYouTubeを電車で見られるようになるなど、消費者に大きなメリットがありました。5Gは超高速・超低遅延・多数同時接続が特徴で、あらゆる物がインターネットにつながるIoT時代が訪れると言われています。

その一方、各国では5Gの健康被害を懸念する反対運動が起きています。「5G 健康被害」の検索結果には、デマと判明しているムクドリ大量死が1ページ目に入っていたり科学者による指摘もあるなど、一般消費者としてはどう判断したらよいか悩むところです。

健康被害の懸念とどう向き合ったらよいか

健康被害の懸念を聞くと不安になるのも当然ですが、怪しい医療情報をまとめたWELQの教訓と、東日本大震災後に飛び交ったデマから、真偽不明なネット情報とどう向き合うべきかはわかっています。

怪しい医療情報をまとめたキュレーションサイトの教訓

「肩こりは幽霊が原因」など、怪しい医療情報がキュレーションサイトにまとめられたWELQ問題の教訓を振り返りましょう。

・検索結果で上位だから信頼できるとは限らない
・医療従事者や専門家、医療機関等の情報を見る

この問題を受けて、Googleでも医療や健康に関連する検索結果の改善を行っていて、YMYL(Your Money Your Life=健康やお金に関わる分野)では、より権威性を見るロジックしています。

「正しい医療情報」とは だまされない付き合い方

https://www.asahi.com/articles/ASL6452VNL64UBQU00V.html

 怪しい医療情報がまとめられたサイト「WELQ(ウェルク)」の問題をきっかけに、正しい医療情報へのニーズは高まっています。ネット時代の医療情報との付き合い方をテーマに取材を続けるBuzzFeed Ja…

医療や健康に関連する検索結果の改善について

https://webmaster-ja.googleblog.com/2017/12/for-more-reliable-health-search.html

Google フレンドリーなサイト制作・運営に関するウェブマスター向け公式情報

権威性について掘り下げると、医者や科学者の肩書を持っていても信頼度に違いがあります。直近では「血液クレンジング」を展開するクリニックがトンデモ医療と批判を受けています。

「トンデモ医療であると、断言します」 血液クレンジング、医学的に徹底検証してみた

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/blood-cleansing

著名人が自ら体験している様子をSNSなどで拡散している「血液クレンジング」。推進する医師の言い分を聞いた上で、免疫学を専門とする医師に医学的な検証をしていただきました。

東日本大震災後には科学者によるデマもあった

東日本大震災の後、放射能が原因で「◯年後にはガンが多発する!」「福島には住めない!」とする主張があり、科学者によるものもありましたが、福島県の県民健康調査では震災後5年目までの時点で癌は「多発していない」ことがわかってきたようです。

研究チームは今回の解析の結果、2巡目検査がなされた5年後までで、福島では「(がんが増えた)チェルノブイリのような状況は見られなかった」と結論づけた。研究チームの大津留晶・県立医大教授は、対象データが事故5年目までのため、放射線の影響を十分検討できる時期ではないなどとして「この研究だけで、事故の被曝影響について結論づけられない」としている。

また東日本大震災による放射能の長期的な影響については、「UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)」の世界18か国及び様々な国際機関から派遣された専門家が多数参画した報告書で、以下のように結論づけられています。

甲状腺がん、白血病ならびに乳がん発生率が、自然発生率と識別可能なレベルで今後増加することは予想されない。また、がん以外の健康影響(妊娠中の被ばくによる流産、周産期死亡率、先天的な影響、又は認知障害)についても、今後検出可能なレベルで増加することは予想されない。

不確かな説は科学的な態度で判断する

肩書でも信頼できないなら、何を基準に判断すればよいでしょうか。

「すべてがFになる」などのベストセラーで知られる作家の森博嗣さんは、名古屋大工学部助教授の側面も持っていて、東日本大震災を受け「科学的とはどういう意味か」という本を出しています。

この本では単なる主張と科学を分ける境界として、科学とは「誰にでも再現できるもの」であるとしています。ある主張が正しいと認められるには、他者の再現によって検証される必要がある、ということです。

5Gの健康被害について言えば、ある科学者が健康被害の新説を発表したとして、ただちにそれが真実と認められる訳ではなく、多数の他者によって確認された説がより確からしい真実となっていくのです。

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

WHOが携帯電波の発がん性を認めた話をどう読めばよいか

まず、WHOが携帯電波の発がん性を認めたことは事実です。WHOでは携帯電波による発がんリスクを2B(限定的な影響がある)と認定しています。

限定的な影響があるとは、一日15時間以上(累積通話時間が1,640時間〜2,000時間)通話した場合に、がんの発生率が増加する要因になるとしたものです。

一日15時間通話する極端な場合なので、通常の利用では心配する必要がなさそうです。さらに、基準値を超えない強さの電波でも健康へ悪影響が生じる不安に対しては、WHOから否定する見解が出ています。

熱作用を生じない強さの電波でもがんが発生するなど、健康への悪影響を示唆する報告があります。しかしながら、それらは別の研究者らによる再現実験等で再現されておらず、科学的に確立した証拠としては認められていません。WHOも、現在の国際ガイドラインの値を超えない強さの電波により健康に悪影響を示すという明確な証拠はないという見解を示しています。

携帯電波の影響として認められているのは「刺激作用」と「熱作用」の2つ

元々、携帯電波を含む「電波」の肉体的な影響として「刺激作用」と「熱作用」が知られています。なお「電波」にはX線や放射能のように遺伝子を傷つける作用はないので、混同に注意しましょう。

■刺激作用
低周波(100kHz以下)のきわめて強い電波を浴びることにより体内に電流が流れ、“ビリビリ”“チクチク”と感じる、刺激作用のことが知られています。

■熱作用刺激作用
高周波(100kHz以上)のきわめて強い電波を浴びると体温が上がります。この原理を応用したのが電子レンジです。

なお、携帯電話基地局や放送局などから発射される弱い電波を長期間浴びた時の健康影響(非熱作用)については、現在のところ、熱作用による影響以外に根拠を示すことのできる影響は見つかっていません。

携帯の電波にも国ごとに安全基準があり、対策されている

電波による「刺激作用」と「熱作用」がどのくらいの強さの電波で起きるかは長年の研究で知られていて、国(総務省)では「電波防護指針」で電波の強さの基準値を設け、電波法による規制を行っています。

携帯電波基地局や放送局など強めの電波にさらされる職場環境では10倍、一般環境では50倍の安全率を取った基準になっていて、携帯端末も基準値を超えないよう対策されています。

5Gと健康被害についてのまとめ

超高速・超低遅延・多数同時接続を特徴とする5G時代の携帯電波ネットワーク。電波が強くなり健康被害を懸念する声もあがっています。その内容はムクドリ大量死のデマや科学者による警告、WHOが携帯の発がん性を認めたなど玉石混交で、一般人には判断が難しいところがあります。

このような場合重要なのは科学的な態度を取れるかで、科学であれば「理屈」で説明され「再現性」があります。

例えばWHOは携帯電波の発がん性を認めていますが、一日15時間以上使用した極端な場合です。また4Gも5Gも「電波」という大枠では同じものですが、電波の健康被害として認められている現象は「刺激作用」と「熱作用」だけです。したがって、それ以外の新たな主張は、第三者による科学的な検証が必要と判断できます。

また、国もこれらの現象を無視しているわけではなく「電波防護指針」など健康被害が起きないよう対策する枠組みを持っています。「電波防護指針」では職場環境で基準値から10倍、一般環境では50倍余裕を持った対策が取られていて、通常の環境では健康被害が起きないよう配慮されていることがわかります。

本記事では5Gと健康被害の関係について、WHOや総務省の資料などを参照しながらまとめました。さらに気になるようでしたら、参照元のページなどで情報を集めてみてはいかがでしょうか。情報があふれる今の時代、より確からしい情報を得るスキルはますます重要になってきていると言えるでしょう。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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