消費増税に向けユーザー囲い込みにしのぎを削るキャッシュレス決済業界を調査~QRコード決済利用者は4人に1人にまで拡大

消費増税に向けユーザー囲い込みにしのぎを削るキャッシュレス決済業界を調査~QRコード決済利用者は4人に1人にまで拡大

2018年12月のPayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」を端緒に、一気に盛りあがるキャッシュレス決済。10月の消費増税時の還元キャンペーンという商機を勝ち抜くため、交通/流通系、決済サービス、金融各社がユーザー獲得そして囲い込みにしのぎを削っています。アーリーアダプターからアーリーマジョリティへの市場拡大は思惑通りに進むのでしょうか。


QRコード決済イメージ

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸、以下「ヴァリューズ」)は、スマートフォン決済アプリPayPayが実施した「第2弾 100億円キャンペーン」が2019年5月末で終了したタイミングで、一般ネットユーザーの行動ログとデモグラフィック(属性)情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用して、決済アプリ利用ログからキャッシュレス決済の利用実態を調査しました。また国内の20歳以上の男女10,038人を対象に、キャッシュレス決済の利用意向に関するアンケート調査を実施しました。

分析概要

全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、2019年5月31日~6月5日に「キャッシュレス決済サービスに関するアンケート」調査を実施しました(回答者10,038人)。
また、全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、主要決済アプリの行動ログを分析しました。
※アンケート調査は性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計を行っている。
※行動ログは、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用。
※アプリユーザー数は、Androidスマートフォンでのインストールおよび起動を集計し、ヴァリューズ保有モニター(20歳以上男女)での出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
※「LINE Pay」は決済機能単独でのログが取得できないため、主要決済アプリの対象外としている。

考察サマリ

QRコード決済は4人に1人が利用も、クレジットカードやチャージ系には及ばず

まず、利用経験のあるキャッシュレス決済から見ていきましょう。

アンケート調査では、キャッシュレス決済を「クレジットカード」、Suica、PASMOなど「交通系チャージ式電子マネー」、楽天Edy、WAONなど「交通系以外のチャージ式電子マネー」、PayPay、楽天ペイなどの「QRコード式」、iD、QUICpayなど「後払い式」、「デビットカード」、「仮想通貨」に分けて、店頭での利用経験をたずねました。

最多は「クレジットカード」で86.7%。現在最も利用頻度が高い手段も、「クレジットカード」54.7%が群を抜きました。次いで利用経験者が多いのはチャージ式。SuicaやPASMOなどの交通系電子マネー64.6%、楽天EdyやWAONなど交通系以外が48.5%です。

2018年12月のPayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」など各社のキャンペーン攻勢でも話題をさらったQRコード式の決済アプリは24.9%と4人に1人が利用経験ありと回答しましたが、「最も利用」だと約5%程度。数々のキャンペーンもお財布としての定着効果は今後に期待といえそうです。

なお、デビットカードは15.8%が利用経験ありながら、現在「最も利用」は1.4%にとどまりました。「特に利用していない」現金主義の回答者も9.0%と、ネットアンケートの回答であっても、まだまだキャッシュ好きは一定の割合で存在しそうです。

図表 1 店頭で利用したことがあるキャッシュレス決済サービス

図表 1 店頭で利用したことがあるキャッシュレス決済サービス

(利用経験は複数回答、最も利用は単一回答)

キャッシュレス決済アプリではQRコードとチャージ式が拮抗

続いて、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を用いて、主要なキャッシュレス決済アプリの利用ユーザー数と所持ユーザー数を調査しました。

行動ログでは、アンケートに比べてチャージ式よりもQRコード決済アプリの所持ユーザーが多い結果となりました。物理カードからサービスを開始しているチャージ式や後払い式電子マネーは、まだまだアプリ利用よりもカード利用が多いと推察されます(例えば、Suicaの発行枚数は2019年3月時点で7,587 万枚)。

アプリに関してはPayPay(2018年10月リリース)、d払い(2018年4月リリース)、楽天Edy(2016年12月リリース)、楽天ペイ(2016年10月リリース)と、新サービスほどユーザーが多い傾向です。

図表 2 主要キャッシュレス決済アプリの利用状況(2019年6月)

図表 2 主要キャッシュレス決済アプリの利用状況(2019年6月)

アプリ利用ユーザーでみると、ヴァリューズが発表した前回調査(*1)と変わらずPayPayがトップを独走中で、6月の利用ユーザーは851万人をマーク。チャージ式の楽天Edy752万人がこれを追い、QRコード決済ブームにあやかって急増したd払い663万人が続きます。楽天ペイは525万人で、同じくチャージ式のモバイルSuica536万人に肉薄しました。

濃淡はありますが、QRコードはいずれも2018年11月から2019年6月の8ヶ月間右肩上がり。PayPayは12.4倍、d払いは2.7倍、楽天ペイは2.5倍、Origamiは2.6倍にユーザーを増やしています。

もともと利用が多かったチャージ式の楽天EdyやモバイルSuicaも、アプリユーザーを1.1~1.2倍に増やしていますが、QRコードに比べると伸びは控えめ。これらサービスは、現時点では物理カードの方が生活に浸透しているのでしょう。

図表 3 主要決済アプリの利用ユーザー数

図表 3 主要決済アプリの利用ユーザー数

QRコード決済の生活への浸透度は?

2018年12月に実施されたPayPay第1弾キャンペーンの衝撃を経て、現在は各社とも10月消費増税を見据えた「ファースト財布としての定着」へと軸足を移しているわけですが、ユーザーの利用頻度はどうでしょう?

QRコード決済の利用経験者2,283名のうち、最も多いのは「週に1~2日」の利用。「毎日」使う人は3.7%にとどまりましたが、53.2%は週1回以上利用していて、生活に定着している様子です。「週に1~2日」に次いで多かったのは「1カ月に2~3回」でした。

「1カ月に1回未満」は11.0%にとどまり、利用経験者の約9割はある程度定期的にQRコード決済を使用しているようです。

図表 4 QRコード決済の利用頻度

図表 4 QRコード決済の利用頻度

QRコード利用のインセンティブは「キャッシュバック/ポイント還元」

QRコード決済を使う理由は、「キャンペーン中の利用でキャッシュバック/ポイント還元」が49.0%、「普段の利用でキャッシュバック/ポイント還元」が42.5%。一方、「キャンペーン中の利用で購入時の支払い金額割引」は16.4%で、同じおトクキャンペーンでも、割引よりキャッシュバック/ポイント還元に軍配が上がりました。

「普段よく買い物をする店舗で利用できる」は27.2%、「利用できる店舗が多い」は12.1%と、店舗対応はおトクに比べると控えめな利用動機のようです。まだまだ利用可能な店舗が限られる、あるいは利用可否がわかりづらい面もあるのかもしれません。「クレジットカードで決済できる」、「アプリが利用しやすい」はそれぞれ20%強でした。

図表 5  QRコード決済を使う理由(複数回答の上位)

図表 5  QRコード決済を使う理由(複数回答の上位)

QRコード決済利用のハードルは「よくわからない」「きっかけがない」

QRコード決済利用促進を阻む要因は何でしょうか。

QRコード決済を使ったことがない7,535人を対象に、使わない理由をアンケートで聴取したところ、「QRコード決済サービスがよくわからない」27.6%、「使い始めるきっかけがない」27.5%がほぼ拮抗。様子見層に対して最初の一歩のハードルを下げるには、交通系ICカード並みに誰でも使っていてカンタンという評価が必要でしょう。

3番目に多かったのは「どのQRコード決済サービスを使えば良いかわからない」19.6%。還元率や対応店舗数以外の差別化要素を打ち出しづらいなか、こうした層に対する施策としては、LINE Payが実施した「お友だち同士で送金」のような「家族や友人からのクチコミ」を誘発するキャンペーンなどが、ひとつの解といえるかもしれません。

図表 6 QRコード決済を使わない理由(複数回答の上位)

図表 6 QRコード決済を使わない理由(複数回答の上位)

「紛失した際に悪用されることが怖い」18.9%、「個人情報の漏洩等が気になる」15.7%も上位です。各社とも十分な安全性確保に努めているわけですが、キャッシュレスを推進する政府が、事業者に対して一定のお墨付きを与えるようなしくみや有事の救済制度を検討してもいいかもしれません。

「他のキャッシュレス決済サービスの方が便利」層18.0%の心を奪うのはなかなか厳しそうですが、現金での決済で十分」11.8%、同じく現金派と思われる「思っているよりお金を使ってしまいそう」11.0%あたりの心を動かすには、決済自体の利便性に加え、購買行動のデータが消費者自身にとっても有益という啓発も必要でしょう。

PayPayとLINE Pay、メルペイがセブン‐イレブンで7月11~21日まで最大20%還元、8月12日からは「毎週最大300円相当お得な5週間」合同キャンペーンを展開するなど、マーケティング面での各社の協調もみられます。

他方、キャッシュレス決済先進国で問題視される「現金拒否」店舗の許容範囲、先日の北海道地震でクローズアップされた停電時の対応など、キャッシュレス社会への道程には課題も少なくありません。また、情報銀行やスコアリングでの決済履歴利活用についても、まだまだ議論の余地があります。

キャッシュレス推進協議会では、社会資産としての決済データ取扱いやデータ活用のための標準化、フォーマット統一やプラットフォーム構築に関する検討も始まっています。社会とビジネス、そしてもちろんユーザーがハッピーな、三方良しのキャッシュレス社会に期待したいところです。

関連記事

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


新NISA開始!NISAとiDeCoで検討者を比較調査

新NISA開始!NISAとiDeCoで検討者を比較調査

2024年1月から新NISAが開始されました。今回の調査では、新NISAは若年層や未婚者の関心が高く、積極的に資産の運用をしたいと考える人が多いと推測できそうです。一方のiDeCoは、40代以降の年代で新NISAよりも関心が高く、老後の資産形成を意識しているといえるでしょう。NISAを始め、iDeCoとも比較しながら、新NISAの検索者の属性や興味関心について分析しました。


2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Pokémon Sleep編】

2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Pokémon Sleep編】

大注目の中、2023年7月にリリースされた、画期的な睡眠アプリ「Pokémon Sleep」。マナミナではリリース直後にユーザー分析を行い、ポケモンが好きな人も、普段スマホゲームをしない人も利用していることがわかりました。リリースから半年経った現在、ユーザー層はどのように変化したのでしょうか。Dockpitとstory bankを使って分析していきます。


ふるさと納税はどんな人が検討している?セグメントごとの特徴を調査

ふるさと納税はどんな人が検討している?セグメントごとの特徴を調査

年末が近づくにつれて注目度が高まるふるさと納税。そのユーザー像はどのようなものなのでしょうか。検討の度合いから検討者を5つのセグメントに分類し、実態を調査しました。


データ分析のヴァリューズ、「デジタル・トレンド白書2023 – 金融編」を公開

データ分析のヴァリューズ、「デジタル・トレンド白書2023 – 金融編」を公開

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から3回目を迎える「デジタル・トレンド白書2023」は、「金融編」についてご紹介します。※レポートは無料でダウンロード頂けます。(ページ数|134P)


2023年マッチングアプリ最新動向!マッチングアプリ市場のニーズと今後の可能性は?

2023年マッチングアプリ最新動向!マッチングアプリ市場のニーズと今後の可能性は?

近年、マッチングアプリ経由の結婚が増加しています。本記事では、大手マッチングアプリ5つ(「with」「Pairs」「タップル」「Tinder」「Omiai」)について、その特性と利用実態を調査・分析しました。マッチングアプリに関連した人々のニーズを探り、それを踏まえた市場の今後の可能性についても考察します。


最新の投稿


リスキリングに取り組めない理由の半数は金銭面 時間的理由・学習支援の少なさもネックに【ベンド調査】

リスキリングに取り組めない理由の半数は金銭面 時間的理由・学習支援の少なさもネックに【ベンド調査】

株式会社ベンドは、同社が運営する「スキルアップ研究所」にて、「リスキリングに取り組む際の課題に関する実態調査」を実施し、結果を公開しました。


3C分析(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

3C分析(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、3C分析(環境分析のアウトプット)について寄稿いただきました。


Is the "car camping" trend over? Investigating changes in demand and user persona based on search words

Is the "car camping" trend over? Investigating changes in demand and user persona based on search words

Car camping became popular in recent years for travel and as an outdoor activity done while social distancing. After the pandemic, its popularity is said to have subsided, but how has the demand changed? We look at changes in demand based on the searches and the user persona of people searching and their interests.


博報堂DYホールディングス、メタバース生活者定点調査2023を実施

博報堂DYホールディングス、メタバース生活者定点調査2023を実施

株式会社博報堂DYホールディングスは、全国15~69歳の生活者を対象に、メタバースに関する現状の生活者意識や動向を把握することを目的とした「メタバース生活者定点調査2023」を実施し、結果を公開しました。


ログリー、成果保証型インフルエンサーマーケティング支援サービス「バズリスタ」を提供開始

ログリー、成果保証型インフルエンサーマーケティング支援サービス「バズリスタ」を提供開始

ログリー株式会社は、2024年4月8日(月)に成果保証型インフルエンサーマーケティングを支援するサービス「バズリスタ(BUZZRISTA)」を正式リリースしたことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ