新型コロナウイルスの化粧品業界への影響は
こんにちは。私はデータマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。
株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。
現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。息抜きは欅坂46の動画を見ること。
実は私、美容雑誌にはくまなく目を通し、SNSも駆使して情報を集める美容好きです。前回の記事ではSNSでバズったコスメについて、検索データからその理由を探りました。そして今回は、化粧品業界における新型コロナウイルスの影響を調査していきます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、店舗の営業自粛、人々の外出自粛措置がとられ、様々な業界に影響を与えています。化粧品業界も例外ではなく、百貨店休業やインバウンド消費の減少により売上への影響が避けられない状況です。
過去に例を見ない事態ではありますが、消費者のWeb行動データから状況を把握することにより、今後の予測を立てる上で少しでも参考になればと思います。
では早速、データを見ていきましょう。
メイクアップ関連の検索ワードは減少、スキンケアは維持
新型コロナウイルスの影響により、化粧品への消費者の興味関心はどのように変化しているのでしょうか。化粧品関連のキーワードをメイクアップ関連とスキンケア関連にわけ、検索者数の変化から影響を分析してみます。今回は下の3つのキーワードで調べました。
メイクアップ関連の検索キーワード:「ファンデーション」「口紅」
スキンケア関連の検索キーワード:「化粧水」
まず、直近半年での検索ユーザー数の推移はグラフのとおりです。
化粧品関連検索キーワード 検索ユーザー数推移
(2019年11月~2020年4月 eMark+ Keyword Finder PC・スマホデータ合算)
「ファンデーション」や「口紅」といったメイクアップ関連の検索ユーザー数は2020年4月で減少している一方、「化粧水」検索ユーザー数は他の月と変化がないことから、スキンケアに対する関心は維持されていることが伺えます。
2020年3月時点でも新型コロナウイルスのニュースは出ていましたが、どのキーワードも3月では変化が見られないことから、2020年4月7日の緊急事態宣言後に大きく意識の変化が起きたと考えられます。
マスクをする機会が増えたことはもちろん、外出自粛により家にいる時間が増え、メイクへの関心が下がっていることがわかりました。
逆に注目が高まった2つのビューティーカテゴリ商品とは
メイクアップに対する関心が下がってしまっている状況が先ほどのデータから見受けられましたが、新型コロナウイルスの影響で逆に注目が高まっている商品はないのでしょうか。
大手ECモールの商品ページの分析データを見ると、いくつかの商品が浮かび上がってきました。
■フェイスマスク
フェイスマスク商品ページ閲覧者数の推移を見ると、3月~4月にかけてユーザー数が底上げされていることが分かります。
フェイスマスク商品ページ閲覧者数推移
(2019年11月~2020年4月 PC・スマホデータ合算)
外出の機会は減っているものの、家にいる時間が長くなったことでケアへの意識が高まったり、普段よりも時間をかけてケアができる、ということが関係していそうです。
■ジェルネイルのキット
次に、ジェルネイルのキットに関しても商品ページ閲覧者数の推移を見てみます。
ジェルネイル商品ページ閲覧者数推移
(2019年11月~2020年4月 PC・スマホデータ合算)
ジェルネイルキット関連ページの閲覧は4月にかけて増えていました。
ネイルサロンへ気軽に出かけられなくなったことに加え、家にいる時間、いわゆる「おうち時間」の充実のため、自宅でできるジェルネイルキットの注目が高まったことが考えられます。これを機会に自分でネイルをする楽しさに目覚め、セルフネイルに移行する人も一定数いるかもしれませんね。
これらは一部ではありますが、コロナウイルスの影響で売れなくなった商品がある一方、注目が高まった商品もあることが分かりました。
ユーザー数を伸ばしている化粧品ECの会社は?
新型コロナウイルスの影響が及ぶ中でも、順調にECへ集客ができている企業もあります。ヴァリューズの市場分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」のサイトランキングで、化粧品カテゴリに絞り込んで見てみましょう。
2019年4月と比較してユーザー数を伸ばしており、かつ2020年3月から4月にかけてもユーザー数を伸ばしていたのは下記のサイトでした。
2020年4月時点(eMark+サイトランキング PC・スマホデータ合算)
これらの中から、特に2020年3月に比べて2020年4月のユーザー数の伸びが大きい5サイト(黄色)のデータを見てみましょう。まずは過去半年のユーザー数推移を比較してみました。
ユーザー数推移(eMark+Site Analyzer 2019年11月~2020年4月 PC・スマホデータ合算)
では、2020年4月でユーザー数を伸ばしている企業はどのような打ち手をしているのでしょうか。流入元のデータから分析します。
2020年3月の流入元(eMark+Site Analyzer PCデータ)
2020年4月の流入元(eMark+Site Analyzer PCデータ)
ユーザー数を増やしているサイトは2020年4月で一般広告や外部サイトからの集客をかなり増やしています。この状況をチャンスと見込み、出稿量を戦略的に増やしているのかもしれません。想定外の出来事に対しても柔軟に対応していく力が試されます。
withコロナの戦略
4月7日に緊急事態宣言が発令されて以降、営業自粛、外出自粛が続いてきましたが、少しずつ緩和の動きも出てきています。しかし人々の行動がこれまで通りに戻るかというと、すぐには難しいことも想定されます。
混雑を避けるため、以前のように人の多い店頭に出向くことを控える人も増えるかもしれませんし、テスターの利用がしばらくは難しいかもしれません。そうなると、ECの強化が必要となったり、口コミサイトやYoutubeなどの商品レビューの重要性が増す可能性もあります。
特に、ECについては整備を進めておくことが重要と言えそうです。店舗での購入がすぐに元に戻るかわからない、ということはもちろんですが、世の中的にデジタルシフトが進んでいく中で、はやめはやめに手を打っておくことで、今回のような突然の事態にも対応することが可能となるのではないでしょうか。
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新型コロナウイルスによる外出自粛、営業自粛により、日本経済全体に影響が及んでいます。
その中でも化粧品業界が受ける影響は甚大であり、今後の見通しを立てづらい状況でもあります。
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株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。