なぜあのコスメはSNSでバズったのか?化粧品好きマーケコンサルが検索データから理由を探ります

なぜあのコスメはSNSでバズったのか?化粧品好きマーケコンサルが検索データから理由を探ります

化粧品のトレンドについて調査する新企画。ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである私、伊東茉冬が気になる話題について調査していきます。初回のテーマは「バズコスメ」。SNSでバズることで人気が広がるような化粧品に関して、バズの実態や人々に受け入れられた理由をデータから考察しました。


化粧品の消費行動は変化してきている?

はじめまして。私はデータマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。息抜きは欅坂46の動画を見ること。

実は私、美容雑誌にはくまなく目を通し、SNSも駆使して情報を集める美容好きです。ただ、化粧品は毎月さまざまなアイテムが発売されていて、市場では商品や情報の飽和状態が起きていると感じます。

米コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授による「ジャムの実験」でも言われている通り、選択肢が多すぎると逆に人間は選べなくなってしまう。そんな状況が起きているのではないでしょうか。

選択肢が豊富すぎて消費行動に結びつかない。贅沢な悩みではありますが、そのなかで最近、ある特徴的な消費行動が登場してきました。それが「バズコスメ」です。今回はこの「バズコスメ」にフォーカスして調査していきます。

パルス型消費をおこす「バズコスメ」とは

バズコスメとは、Twitterを始めとしたSNSの口コミで一躍話題となり、爆発的に売れた化粧品のことを指します。その勢いは店頭から商品が消えるほど。

この「バズる」現象には、先日Google社が定義した「パルス型消費」も関係していると思われます。パルス型消費とは、何気なくスマホを操作する行動の中で、瞬間的に買いたい気持ちを覚え、その瞬間に購買を完了する消費行動のこと。

ただ、化粧品に関してはSNS上で瞬間的に買いたい気持ちを覚えた後、その瞬間にECで買い物を完了するというよりは、実際に店頭まで足を運び購入する人が多い印象です。余談ですが、私も昨年の夏、ちふれのコールドウォッシャブルクリームを探し求め、ドラッグストアを数件ハシゴしました。

では、化粧品の「バズ」はどのように起こっているのでしょうか。今回はバズコスメとして3つの商品をピックアップし、データを見ていきます。

セザンヌ パールグロウハイライト シャンパンベージュ

オペラ リップティント

フジコ シェイクシャドウ

バズりやすい商品の傾向は?

詳しくデータを見ていく前に、バズりやすい商品の傾向はないのか整理して考えてみます。するといくつかの共通点があることに気が付きました。下の表をご覧ください。

これらの商品に共通している特徴は、比較的買いやすい値段であり、ドラッグストアやバラエティショップで売られているということです。

欲しい!と思った次に確認するのが値段と売っている場所ですが、「買いやすい値段・買いやすい場所にある」という状況が、パルス型消費、すなわち「バズる」現象を押し上げているのかもしれません。

データで読み解く「バズコスメ」

では実際、「バズる」現象はデータとして読み解けるのでしょうか。

消費者のオンライン上での行動を追っていくことで、何か「バズる」ためのヒントを見つけられないか、「バズった」後の消費者の行動の特徴はないか、探っていきます。

セザンヌ パールグロウハイライト

それぞれの商品について、消費者のネット行動を分析できるヴァリューズのツール「eMark+(イーマークプラス)」を用いて調べてみましょう。まず「セザンヌ ハイライト」と検索した人数の推移を調べてみます。

▲ 「セザンヌ ハイライト」検索者数推移(PC&スマートフォン)

すると、新色や姉妹シリーズの発売のタイミングで検索数が伸びていることが分かりました。

では、検索者の年代別属性はどうなっているのでしょうか。

▲ ユーザー属性:年代(PC&スマートフォン)

年代別では、20代が32%でもっとも多いことが分かります。

ユーザーが「セザンヌ ハイライト」と検索したあとに閲覧したサイトも見てみましょう。

▲ 検索後に流入したサイト(PC)

公式サイトに次いで「@コスメ」や「Youtube」「Amazon」「C CHANNEL」などに流入していることがうかがえます。

オペラ リップティント

では同じように、「オペラ リップティント」についても検索者の動向を見ていきます。

▲ 「オペラ リップ」検索者数推移(PC&スマートフォン)
商品リニューアルや限定色発売のタイミングでかなりユーザー数が伸びていることが分かりました。

▲ ユーザー属性:年代(PC&スマートフォン)
割合としては20代が33%、30代が29%で、6割以上を20代、30代が占めていることがわかります。

▲ 検索後に流入したサイト(PC)
公式サイトへの流入が断トツで多いです。ついでAmazon、@コスメ、LIPS、ファッションプレスに流入しています。

フジコ シェイクシャドウ

「フジコ シェイクシャドウ」についても検索者の動向を見ていきましょう。

▲ 「フジコ シャドウ」検索者数推移(PC&スマートフォン)
商品発売のタイミングで一番ユーザー数が伸びており、その後、新色発売のタイミングでも盛り上がっています。

▲ ユーザー属性:年代(PC&スマートフォン)
割合は20代が31%、30代が29%を占めていますが、40代も27%と検索しているユーザーが多いことがわかります。

▲ 検索後に流入したサイト(PC)
1位は公式サイトへの流入で、ついで@コスメ、Amazon、YouTube、LIPSに流入しています。

これらのデータから、セザンヌのハイライトやオペラのリップティントは新色・限定色発売やリニューアルのタイミングで話題になっていることが分かります。一方、フジコのシェイクシャドウは2019年2月27日の商品発売後に検索ユーザー数が急上昇し、その後新色発売のタイミングで一度上昇していることがわかります。

また、検索しているユーザーの年代を見るとどの商品も20代が割合としては一番多く、次いで30代が多いという結果になっています。やはりSNSに親しんでおり、情報感度が高い年代のほうが検索者が多いという結果になりました。

検索後によく見られているサイトのランキングでは、すべての商品において公式サイトへの流入が一番多く、顧客との接点が公式サイト上で持てていることがわかります。また、@コスメ、LIPSの2サイトが上位にランクインしており、美容口コミサイトとして頼りにされていることがうかがえますね。

さらに、すべての商品で検索後にAmazonへ流入していることがわかります。「すぐに欲しい」という欲求を満たすために使われるのは、数あるECの中でもやはりAmazonに軍配があがるのでしょう。化粧品に関してはAmazon内に公式ストアを持っておくなど、消費者がすぐに買える・すぐに手に入る環境を整えておくことも有効と言えそうです。

これらの商品はなぜバズったのか?

ここまではバズ現象の実態をデータから浮き彫りにしてみました。では、ここからはそれぞれのコスメがなぜバズったのか、その理由を探ってみたいと思います。

セザンヌ パールグロウハイライトの場合

まず、セザンヌの場合は「価格と質のバランス」が大きいと感じます。

この投稿は発売前にインフルエンサーの方が投稿したものですが、他の方の投稿でも、プチプラながら某デパコスと遜色ない仕上がり、という感想が多く見られました。また、660円という値段なら失敗しても痛くない、という心理も働きそうです。

さらにセザンヌのハイライトでは、検索後に流入しているサイトとして「YouTube」や「C-CHANNEL」といった動画サイトを閲覧しているユーザーが多いことが分かります。検索キーワードの中に「使い方」「塗り方」といった単語も出てきているので、使い方を知りたいというユーザーのニーズが見受けられます。

▲「セザンヌ ハイライト」を含む検索の検索キーワードランキング

また、閲覧数を伸ばしたいというインフルエンサー側のニーズとマッチした結果、自然と発信する人たちが増えて拡散されていった可能性もあります。

オペラ リップティントの場合

オペラのリップティントは公式Twitterでのキャンペーンが上手く効果を上げていると考えられそうです。

バレンタイン限定色発売と同時にプレキャンを行っており、リツイート数といいね数が他の投稿に比べてかなり伸びています。メーカー側がSNSでアプローチしていく場合には一方的な情報発信ではなく参加型、かつなにか嬉しい特典があると拡散されやすいようですね。

また、「新色」ではなく「限定色」としているのもバズっているポイントかもしれません。「この時期にしか買えない」と言われると、「買っておかなきゃ!」という気持ちにおのずとなってしまいます。

フジコ シェイクシャドウの場合

フジコのシェイクシャドウは、「新感覚」コスメで注目を集めたことが大きいと言えそうです。

フジコのシェイクシャドウはこれまでになかった新感覚の商品です。振ってから使うアイシャドウは今までになく、奇をてらい大外れ、となっていてもおかしくありませんでした。しかし口コミにもある通り、密着感が高く使いやすいというコメントが多数見られます。

固形のアイシャドウでも同様の物は作れたかもしれませんが、「シェイクして使う」という目新しさをフックにし、かつアイシャドウとしての質もキープすることで見事話題になったのです。他の商品に埋もれない尖った商品にすることで「バズる」現象を引き起こしたと言えそうです。

さて、ここまで3つのバズコスメについてバズった要因を考えてきました。各ブランドのPR施策や、商品開発へのこだわりが「バズる」現象を後押ししたと感じます。

しかし、企業側からの宣伝や、インフルエンサーを活用したPR施策よりも、ユーザーの「使ってみたらすごくよかった!超おすすめ!!」という本気の熱量ほどバズる現象を押し上げるものはないと思います。

「#PR」に対して敏感になっているユーザーも多い中、インフルエンサーではなくいわゆる一般の人がおすすめしているもののほうがより受け入れやすくなっており、今後さらにその傾向が高まっていく可能性はあるでしょう。

おわりに

今回は「バズコスメ」をテーマにいろいろなデータを見てきましたが、そもそもどうしてこのような現象が起きているのか、という視点も必要です。

SNSが発達して個人の発信力が増したから、というのはもちろんですが、冒頭でも述べた通り、商品や情報が多すぎて何を基準に選んだらよいのか分からない人が増えている、ということも要因として考えられます。

選択肢が多すぎて選べず、いちいち商品を試すにも数が多すぎて面倒。そして広告の仕組みについて消費者も詳しくなっている今、頼りになるのが口コミとなっているのかもしれません。そのような消費者に対し、メーカーとしてどのように適切な情報を発信していくかが、今後ますます重要なのではないでしょうか。

本記事の内容や、化粧品のデータに関するお問い合わせはこちら|ビッグデータ×マーケティングで事業の成長を支援|株式会社ヴァリューズ

https://www.valuesccg.com/inquiry/

国内30万人規模の消費者行動から 確実に成果につながるデータ マーケティングを導き出すSaaS、eMark+(イーマークプラス)を提供する企業 VALUES。無料から有料アップグレードで ネット広告の市場+効果、キーワード調査、集客施策などの分析も可能。今すぐOODAを実現させましょう。

関連記事

オーガニックコスメを利用する人が増えている!? Cosme Kitchenが流行った理由を調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/867

新型コロナ拡大防止のため、外出を自粛したり在宅勤務に切り替える人も多い中、「おうち時間(STAY HOME)」がInstagramのストーリーの項目として表示されるなど、新たなトレンドワードとして急上昇。おうち時間では、映画や読書、ネットサーフィンや料理など、普段はできない自己投資に時間を割く人も多いのではないでしょうか。そんな人と会う機会が減った今だからこそ、普段酷使しているお肌を時間をかけていたわる人が増えているのかもしれません。今回は、SNSでもよく目にするナチュラルコスメやオーガニックコスメ、スキンケアの需要の動向、特にナチュラルコスメを買えるお店で有名な『Cosme Kitchen(コスメキッチン)』に焦点を当ててみました

注目を集めるD2Cを化粧品・コスメの成功事例から紹介

https://manamina.valuesccg.com/articles/878

生産者とカスタマーが直接取り引きをする「D2C」。最近注目を集めているビジネスモデルです。スマホとSNSの普及によって認知・浸透してきたD2C、さかんな分野は前述の普及要因と親和性の高いレディス向けの商品です。今回はその中でもとくに「化粧品・コスメ」について、事例とともに紹介します。

化粧品のアーリーアダプターは意外と雑誌から情報を集めていた【アンケート×行動ログ調査】

https://manamina.valuesccg.com/articles/621

新商品に敏感で、オピニオンリーダーとしての役割も果たすと言われる「アーリーアダプター」の人たち。今回は化粧品のアーリーアダプターに関する調査結果をお届けします。生活者が普段の購入の際に意識している点や、情報収集の媒体などをまとめました。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

関連する投稿


Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

“Oshikatsu” stimulates consumption in Japan. In fact, more than 80-90% of teens answered that they have an “Oshi.” We will deepen our understanding by investigating the current state of the “Oshikatsu” market, behaviors like time and money spent on “Oshikatsu,” and its connection with collaborations, etc. in marketing.


現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「イマーシブ・フォート東京」「変な家」のプロモーションを考察(2024年3月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「イマーシブ・フォート東京」「変な家」のプロモーションを考察(2024年3月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第17弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、「イマーシブ・フォート東京」「変な家」「新生活」の3テーマを取り上げてZ世代のトレンドをお送りします。イマーシブ・フォート東京が刺さるのはどんな人?映画化で話題の「変な家」と、マンガ広告が生み出す購買活動とは?、Z世代のニーズに刺さる家電のサブスクリプションとは?など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代のニーズを読み解きます。


メンズの注目高まる?「日焼け止め」ニーズを調査!2024年最新版

メンズの注目高まる?「日焼け止め」ニーズを調査!2024年最新版

メンズコスメへの注目が高まる中、生活者の日焼け止めへのニーズはどのようになっているのでしょうか。また、夏と冬、シーズンによって日焼け止めに求められるものは異なるのでしょうか。本記事では、日焼け止めの検討行動から、ニーズの移り変わりと消費者心理を紐解いていきます。


推し活実態2024!「沼落ち」プロセスとは?推し活のインサイトとマーケティング活用

推し活実態2024!「沼落ち」プロセスとは?推し活のインサイトとマーケティング活用

日本の消費を活気づける「推し活」。実は10代の8~9割以上が「推し対象あり」と回答しているという結果も。本ホワイトペーパーでは、推し活市場の現状や、推し活にかける時間・金額などの行動実態、コラボ企画といったマーケティングとの接続について調査し、推し活への理解を深めていきます。


YouTube, Shorts & TikTok: Comparing Gen X, Y, & Z! Usage rates, how they’re used, & effectiveness of ads <Part 2>

YouTube, Shorts & TikTok: Comparing Gen X, Y, & Z! Usage rates, how they’re used, & effectiveness of ads <Part 2>

Gen Z has been enjoying videos since their school days and known as one of the first to adopt short-form videos. We’ll analyze how they use video-format social media and compare with Gen X and Y. This analysis will cover medium usage, popular content, daily integration, purchasing behavior, and awareness.


最新の投稿


GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

株式会社mitorizは、消費者購買行動データサービス「Point of Buy®」の会員に対し「大型連休に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

“Oshikatsu” stimulates consumption in Japan. In fact, more than 80-90% of teens answered that they have an “Oshi.” We will deepen our understanding by investigating the current state of the “Oshikatsu” market, behaviors like time and money spent on “Oshikatsu,” and its connection with collaborations, etc. in marketing.


三井不動産、ECブランドの成長を支援するプラットフォームを提供開始

三井不動産、ECブランドの成長を支援するプラットフォームを提供開始

三井不動産株式会社は、統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供する株式会社SUPER STUDIOとともに、ECブランドの成長を“商業”と“物流”の両面から支援するプラットフォームを提供開始したことを発表しました。


【TVドラマランキング】共感性や独自性が話題に。「不適切にもほどがある!」「君が心をくれたから」など

【TVドラマランキング】共感性や独自性が話題に。「不適切にもほどがある!」「君が心をくれたから」など

近年動画配信サービスが普及し、時間や場所にとらわれず様々なジャンルの動画を手軽に視聴できるようになりました。テレビ離れが幅広い年代で囁かれている時代、話題になるテレビドラマとは、どのようなものなのでしょうか。今回は、2024年1月~3月に放送されたドラマについて、認知度や視聴方法、満足度、満足理由などをランキング化。その実態を探りました。


配膳ロボットの認知率は約9割、現在利用率は6割 1年後には利用率1.4倍伸びる!?【LINEリサーチ調査】

配膳ロボットの認知率は約9割、現在利用率は6割 1年後には利用率1.4倍伸びる!?【LINEリサーチ調査】

LINEリサーチは、今と近未来の流行予想を目的として「配膳ロボット」にかんする流行予想調査を実施し、その結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ