ファッションECで前年比の訪問者数が54%増のサイトも。巣ごもり消費と新型コロナ影響の関係を探る

ファッションECで前年比の訪問者数が54%増のサイトも。巣ごもり消費と新型コロナ影響の関係を探る

外食産業や観光業をはじめ、あらゆる業界に深刻な売上不振をもたらしている新型コロナウイルス。しかしそんな中で、“巣ごもり消費”でEC売上が向上していると言われているのがファッションECです。本稿では、外出自粛の影響で、実際にファッションECが伸びているのか、またどのような影響が現れているのか、実態を調査していきます。


ファッションECで売上前年比が2割増

オンライン試着サービス「バーチャサイズ」を提供するVirtusizeの調査によると、ファッションECの売り上げは昨年の同時期に比べ20%増加しているといいます。

また、業界大手のユナイテッドアローズとワールドは、2月の売上速報で、店頭売上が伸び悩んだ一方、EC事業の売り上げが増加したことを公表しました。両社によると、ユナイテッドアローズでは店舗売上が前年同月比2.5%減だったのに対し、EC売上全体では19%増。ワールドは店舗売上が7.4%減、EC売上全体は18%成長となり、いずれもEC事業が2割近く増加していますFASHIONSNAP.COMの記事より)。

では、ファッションEC業界全体における、新型コロナウイルスによる影響の実態はどうなっているのでしょうか。国内主要サイトのユーザー数、前年同月比から調べていきます。

ファッション系サイトの訪問ユーザー数は

ヴァリューズが提供するSaaS型の市場調査ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使って、国内主要ファッション系サイトの3月度訪問ユーザー数を調査しました。

分析期間:2020年3月、対象デバイス:PC&スマートフォン

トップにはユニクロ、2位ZOZOTOWN、3位ベルメゾンネットと続いています。

ここで注目したいのは、前年同月比です。上位にランクインしているサイトの大半が、前年よりもユーザー数が増加していることが分かります。上位15位の中で最も上昇率が高いのはドットエスティで、54%増。飛躍的成長を見せています。

ドットエスティは、グローバルワーク、ローリーズファーム、ニコアンドなど24ブランドの直営ストアを集結させた、カジュアルファッションECサイト。直営ストアならではの豊富な品揃えや、スタッフ個人のInstagramと連動したスタイリング提案(STAFF BOARD)が人気のサービスです。

外出自粛でお店に足を運べない中、SNSで展開されているスタッフの親近感を感じさせるコーディネート提案がユーザーに刺さり、購買促進に繋がったのではないでしょうか。

ドットエスティのSTAFF BORD 公式Instagramアカウント

上位3サイトを見てみると、ユニクロは前年同月比がやや減少。一方でZOZOTOWNやベルメゾンは上昇しています。

自社製品のみを扱うユニクロのオンラインストアは、外出自粛で百貨店やショッピングモールに出かけられない中、"複数のブランドを見比べながらショッピングを楽しむ"といった体験とは目的が異なり、外出自粛に伴う伸びが表れ難かったのかもしれません。その点、複数のブランドを扱うZOZOTOWNやベルメゾンは前年同月比でいずれも上昇しています。

また、前項でECの売上が伸びたことに触れたワールドは、前年同月比が若干下降しています。

ワールドは、自社のECショップに限らず、トップ2位、3位にランクインし、前年同月比も伸びているZOZOTOWNやベルメゾンへ複数のブランドを出品しています。それら外部サイトでの売上が好調だったことが、EC事業全体の売上を引き上げたのでしょう。

前年同月比の上昇率順で見ると

次に、前年同月比の上昇率順でファッションECサイトを見てみます。

分析期間:2020年3月、対象デバイス:PC&スマートフォン

1位のコールハーンは前年同月比でプラス381.6%増という驚くべき数字。ドレスシューズで定評のあるシューズブランドでしたが、最近はビジネスカジュアルやアスレジャーなどのトレンドを取り入れ、人気を集めています。

オフィスファッションのカジュアル化が一層進んだ上、新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが推奨され、自宅とオフィスのどちらでも使えるスタイルとして、昨年よりも格段にユーザー数を伸ばしたのかもしれません。

また、2位のアルペン、3位のコンバースは、いずれもスポーツ・アウトドアブランドです。外へ出かける機会が減ったことで、ちょっとした散歩や買い物の際におしゃれを楽しめる、カジュアルスタイルが伸びたのではないでしょうか。

さらに、外出自粛が呼びかけられて以降、自宅でアウトドア気分を楽しむ”自宅キャンプ”という言葉がSNSでも話題になりました。2位のアルペンはサイト内でアウトドア用品も販売しており、自宅キャンプ需要もアルペンのユーザー増加の要因のひとつではないかと考えます。

時間あたり売上のピーク開始は昨年より早い

一方、消費者がファッションECを利用する時間帯は、巣ごもり消費で変化があったのでしょうか。こちらは、Virtusizeの調査によるファッションECの時間ごとの売上変化です。

時間あたりの売上データは、今年は昨年よりも早い時間での上昇が見られます。昨年は21時以降にピークを迎えていましたが、今年は午前中も比較的高い値を記録。ピーク時間も少し早く、19時以降に活発に購買が行われている様子です。

外出自粛で自宅で過ごす時間が増えた分、家でできる楽しみとして、ファッションECを早い時間から利用する方が増えたのでしょう。

まとめ

ファッション業界全体で見ると、外出自粛に伴う店頭売上の大幅減により、厳しい状況に陥っています。さらに、先行きが不安な情勢が続き、消費者の購買欲求は下がり気味。外食や旅行にも出かけられず、仕事も自宅で行う日々が続くと、おしゃれを楽しんだり、外見を気づかう機会が減ってしまうかもしれません。

しかしそんな中でも、ECには良いニュースがありました。オンラインだからこそできるマーケティング活動に力を注いだり、試着やコーディネート提案など、オンライン上のサービスを充実させることが、いま重要な活動なのではないでしょうか。また、それらの取り組みが、消費者に新しいショッピングの楽しみ方を提供し、今後の業界の発展にも繋がっていくかもしれません。

本記事の調査は、ヴァリューズのインターネット行動ログ分析ツール「eMark+」を用いて調査を行いましたが、2020年10月に新ツール「Dockpit(ドックピット)」がリリースされました。指定したサイトのユーザー数がわかる「ユーザー数推移」やサイト訪問者の性別、年代、職業などがわかる「ユーザー属性」は、PCのデータであれば無料で利用することができます。さらに詳しくECサイト関連のデータを分析したい方はぜひ以下ボタンよりご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら
分析概要

ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2019年3月および2020年3月のネット行動ログデータを分析しました。
※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

関連記事

コロナ禍で起きた消費者行動変化を緊急調査 Webやアプリの行動ログから見えてきた実態とは

https://manamina.valuesccg.com/articles/823

新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛やテレワークなど、人々のライフスタイルが大きく様変わりする中、消費者の行動や意識にはどのような変化が起きているのでしょうか。「巣ごもり消費」や「ネット行動の活発化」など、Webやアプリの行動ログから、日別の推移、商品ジャンルの閲覧伸び率などを通じて、変化の実態を緊急調査しました。

新型コロナの影響は食生活にも?「Uber Eats」などフードデリバリーアプリの利用が急増中

https://manamina.valuesccg.com/articles/835

2019年10月からの消費増税で盛り上がりを見せたフードデリバリー市場。現在は新型コロナウイルスの影響で自宅で食事を取る機会が急増していることもあり、フードデリバリー市場にさらなる勢いが見られます。今回は既に定着しつつあるフードデリバリーアプリの利用状況を「eMark+」を用いて比較・調査しました。

新型コロナ影響も?「あつ森」にユーザーがあつまり中! ヒット作「あつまれどうぶつの森」を調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/800

3月20日、Nintendoの人気シリーズ「どうぶつの森」から、最新作「あつまれどうぶつの森(以下、あつ森)」がリリースされました(Nintendo Switch版)。発表から期待が高まっていたところに、新型コロナウイルスによる外出自粛など予期せぬ情勢も加わり、かなりのユーザーが動いているようです。そこで今回は、あつ森ユーザーの行動について徹底分析します。

この記事のライター

フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。

関連する投稿


「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

検索エンジンで調べ物をするときによく使われる「〇〇とは」検索。今回は、直近1年間で検索数が多かった注目ワードや、時期によって急上昇したトレンドワードをご紹介します。「とは」検索から見えてくる最新の流行りやみんなの関心事を読み解いていきます。


Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

“Oshikatsu” stimulates consumption in Japan. In fact, more than 80-90% of teens answered that they have an “Oshi.” We will deepen our understanding by investigating the current state of the “Oshikatsu” market, behaviors like time and money spent on “Oshikatsu,” and its connection with collaborations, etc. in marketing.


現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「イマーシブ・フォート東京」「変な家」のプロモーションを考察(2024年3月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「イマーシブ・フォート東京」「変な家」のプロモーションを考察(2024年3月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第17弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、「イマーシブ・フォート東京」「変な家」「新生活」の3テーマを取り上げてZ世代のトレンドをお送りします。イマーシブ・フォート東京が刺さるのはどんな人?映画化で話題の「変な家」と、マンガ広告が生み出す購買活動とは?、Z世代のニーズに刺さる家電のサブスクリプションとは?など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代のニーズを読み解きます。


推し活実態2024!「沼落ち」プロセスとは?推し活のインサイトとマーケティング活用

推し活実態2024!「沼落ち」プロセスとは?推し活のインサイトとマーケティング活用

日本の消費を活気づける「推し活」。実は10代の8~9割以上が「推し対象あり」と回答しているという結果も。本ホワイトペーパーでは、推し活市場の現状や、推し活にかける時間・金額などの行動実態、コラボ企画といったマーケティングとの接続について調査し、推し活への理解を深めていきます。


フリマ市場を比較調査。メルカリとYahoo!系サービス、それぞれの特徴や集客の強みとは?

フリマ市場を比較調査。メルカリとYahoo!系サービス、それぞれの特徴や集客の強みとは?

節約やお小遣い稼ぎの手段としても注目が高まるフリマ市場。「メルカリ」「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」を対象に、フリマ市場の最新動向について調査しました。各サービスのサイト・アプリについて、利用者数やユーザーの人となりに加えて、サイト集客構造の違いについても深掘りし、それぞれの特徴について明らかにしていきます。


最新の投稿


決済者が抱えるDX課題の1位は「新規営業を強化したい」【コミクス調査】

決済者が抱えるDX課題の1位は「新規営業を強化したい」【コミクス調査】

株式会社コミクスは、同社が運営するクラウド・SaaSサービスの情報プラットフォーム『kyozon』会員を対象に、決済者のDX(デジタルトランスフォーメーション)課題に関する調査を実施し、結果を公開しました。


食品メーカーにおける商品開発の事例5選 〜 キユーピー、カルビー、キリンなど

食品メーカーにおける商品開発の事例5選 〜 キユーピー、カルビー、キリンなど

食品業界において、企業の成功を大きく左右する「商品開発」。本記事では、お菓子や飲料などさまざまなヒット商品を生み出した企業の商品開発にまつわるエピソードをご紹介します。特に、いくつかの企業で共通していた「徹底的な顧客視点」や「データの有効活用」といったキーポイントに焦点を当て、消費者に新たな価値を届けるための開発プロセスを掘り下げていきます。


【2024年5月20日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2024年5月20日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


メーカーの約8割がSNSによるユーザーコミュニティ形成に期待 理由は「ユーザーの声が拾いやすくなると思うから」など【SHINSEKAI Technologies調査】

メーカーの約8割がSNSによるユーザーコミュニティ形成に期待 理由は「ユーザーの声が拾いやすくなると思うから」など【SHINSEKAI Technologies調査】

株式会社 SHINSEKAI Technologies は、SNSマーケティングを実施しているメーカーのマーケティング担当者を対象に、コミュニティ形成に関する意識調査を実施し、結果を公開しました。


【2024年5月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2024年5月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ