ファッションECで売上前年比が2割増
オンライン試着サービス「バーチャサイズ」を提供するVirtusizeの調査によると、ファッションECの売り上げは昨年の同時期に比べ20%増加しているといいます。
また、業界大手のユナイテッドアローズとワールドは、2月の売上速報で、店頭売上が伸び悩んだ一方、EC事業の売り上げが増加したことを公表しました。両社によると、ユナイテッドアローズでは店舗売上が前年同月比2.5%減だったのに対し、EC売上全体では19%増。ワールドは店舗売上が7.4%減、EC売上全体は18%成長となり、いずれもEC事業が2割近く増加しています(FASHIONSNAP.COMの記事より)。
では、ファッションEC業界全体における、新型コロナウイルスによる影響の実態はどうなっているのでしょうか。国内主要サイトのユーザー数、前年同月比から調べていきます。
ファッション系サイトの訪問ユーザー数は
ヴァリューズが提供するSaaS型の市場調査ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使って、国内主要ファッション系サイトの3月度訪問ユーザー数を調査しました。
分析期間:2020年3月、対象デバイス:PC&スマートフォン
トップにはユニクロ、2位ZOZOTOWN、3位ベルメゾンネットと続いています。
ここで注目したいのは、前年同月比です。上位にランクインしているサイトの大半が、前年よりもユーザー数が増加していることが分かります。上位15位の中で最も上昇率が高いのはドットエスティで、54%増。飛躍的成長を見せています。
ドットエスティは、グローバルワーク、ローリーズファーム、ニコアンドなど24ブランドの直営ストアを集結させた、カジュアルファッションECサイト。直営ストアならではの豊富な品揃えや、スタッフ個人のInstagramと連動したスタイリング提案(STAFF BOARD)が人気のサービスです。
外出自粛でお店に足を運べない中、SNSで展開されているスタッフの親近感を感じさせるコーディネート提案がユーザーに刺さり、購買促進に繋がったのではないでしょうか。
ドットエスティのSTAFF BORD 公式Instagramアカウント
上位3サイトを見てみると、ユニクロは前年同月比がやや減少。一方でZOZOTOWNやベルメゾンは上昇しています。
自社製品のみを扱うユニクロのオンラインストアは、外出自粛で百貨店やショッピングモールに出かけられない中、"複数のブランドを見比べながらショッピングを楽しむ"といった体験とは目的が異なり、外出自粛に伴う伸びが表れ難かったのかもしれません。その点、複数のブランドを扱うZOZOTOWNやベルメゾンは前年同月比でいずれも上昇しています。
また、前項でECの売上が伸びたことに触れたワールドは、前年同月比が若干下降しています。
ワールドは、自社のECショップに限らず、トップ2位、3位にランクインし、前年同月比も伸びているZOZOTOWNやベルメゾンへ複数のブランドを出品しています。それら外部サイトでの売上が好調だったことが、EC事業全体の売上を引き上げたのでしょう。
前年同月比の上昇率順で見ると
次に、前年同月比の上昇率順でファッションECサイトを見てみます。
分析期間:2020年3月、対象デバイス:PC&スマートフォン
1位のコールハーンは前年同月比でプラス381.6%増という驚くべき数字。ドレスシューズで定評のあるシューズブランドでしたが、最近はビジネスカジュアルやアスレジャーなどのトレンドを取り入れ、人気を集めています。
オフィスファッションのカジュアル化が一層進んだ上、新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが推奨され、自宅とオフィスのどちらでも使えるスタイルとして、昨年よりも格段にユーザー数を伸ばしたのかもしれません。
また、2位のアルペン、3位のコンバースは、いずれもスポーツ・アウトドアブランドです。外へ出かける機会が減ったことで、ちょっとした散歩や買い物の際におしゃれを楽しめる、カジュアルスタイルが伸びたのではないでしょうか。
さらに、外出自粛が呼びかけられて以降、自宅でアウトドア気分を楽しむ”自宅キャンプ”という言葉がSNSでも話題になりました。2位のアルペンはサイト内でアウトドア用品も販売しており、自宅キャンプ需要もアルペンのユーザー増加の要因のひとつではないかと考えます。
時間あたり売上のピーク開始は昨年より早い
一方、消費者がファッションECを利用する時間帯は、巣ごもり消費で変化があったのでしょうか。こちらは、Virtusizeの調査によるファッションECの時間ごとの売上変化です。
時間あたりの売上データは、今年は昨年よりも早い時間での上昇が見られます。昨年は21時以降にピークを迎えていましたが、今年は午前中も比較的高い値を記録。ピーク時間も少し早く、19時以降に活発に購買が行われている様子です。
外出自粛で自宅で過ごす時間が増えた分、家でできる楽しみとして、ファッションECを早い時間から利用する方が増えたのでしょう。
まとめ
ファッション業界全体で見ると、外出自粛に伴う店頭売上の大幅減により、厳しい状況に陥っています。さらに、先行きが不安な情勢が続き、消費者の購買欲求は下がり気味。外食や旅行にも出かけられず、仕事も自宅で行う日々が続くと、おしゃれを楽しんだり、外見を気づかう機会が減ってしまうかもしれません。
しかしそんな中でも、ECには良いニュースがありました。オンラインだからこそできるマーケティング活動に力を注いだり、試着やコーディネート提案など、オンライン上のサービスを充実させることが、いま重要な活動なのではないでしょうか。また、それらの取り組みが、消費者に新しいショッピングの楽しみ方を提供し、今後の業界の発展にも繋がっていくかもしれません。
本記事の調査は、ヴァリューズのインターネット行動ログ分析ツール「eMark+」を用いて調査を行いましたが、2020年10月に新ツール「Dockpit(ドックピット)」がリリースされました。指定したサイトのユーザー数がわかる「ユーザー数推移」やサイト訪問者の性別、年代、職業などがわかる「ユーザー属性」は、PCのデータであれば無料で利用することができます。さらに詳しくECサイト関連のデータを分析したい方はぜひ以下ボタンよりご登録ください。
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2019年3月および2020年3月のネット行動ログデータを分析しました。
※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
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フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。