■【1】Webマーケティングにおけるベンチマーク設定の必要性?
インターネットという変化の激しい環境の中では、半年後一年後といった近い未来、時流に置いて行かれ気づいたら手遅れになっていたという事態が起こりかねません。
例えば広告配信技術や検索エンジンの進化により効果的な集客施策というものは日々変化します。
また比較サイト、キュレーションメディアといった新しいWebメディアやSNSなどの流行の変化によって、提携先についてもタイムリーに捉え対応する必要があります。とはいえ、全ての変化を素早く正確に捉え打ち手に繋げるには膨大なコストと時間がかかってしまいます。
このような状況にならないように、競合となりうる他社のWebサイトをベンチマークとして設定しておくことが必要でしょう。
「変化」が起きたとき、どのサイトで変化が起き、あなたのビジネスに影響があるか判断するのではなく、ある程度あたりをつけておく事で、より早く対応しなければならない変化に気づくことができ、より効果的な打ち手を吟味することができます。
ベンチマーク設定は、膨大な情報の変化の中に飲まれないようにするための指標の一つになり、Web担当者をより的確なWebマーケティングに導いてくれるでしょう。
■【2】ベンチマークするWebサイト選びのポイント?
ベンチマークするWebサイト選びのポイントは「流入元」に注目することです。なぜならばユーザーの行動や欲求によってサイト流入経路が異なるためです。獲得したいユーザー層を明確にし、それを獲得するため流入元に注目してベンチマーク先を設定する必要があります。消費者の購買決定プロセス【AIDMAの法則※1】に対応させながらブレークダウンします。
例えば広告施策に力を入れているサイトはAttention段階のユーザーを、SEO対策やリスティング施策に注力しているサイトはInterestやDesire段階のユーザー獲得を意図していると考えられます。
さらにベンチマークサイトの流入元について詳細に分析することで自社には無い集客導線が発見できる場合があります。またSEO対策やリスティング広告で競合するキーワードの発見、比較サイトやSNSなどのトレンドを加味することで有効な広告の出稿先や提携先の検討にも役立ちます。
※1 AIDMAの法則:広告宣伝に対する消費者の心理状態を示した法則。Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という購買に至るまでのプロセスの頭文字からAIDMAの法則という。Aは認知段階、IDMは感情段階、Aは行動段階と区分される。
図 1 消費活動全般におけるAIDMAの法則
図2 Web上での消費活動におけるAIDMAの法則
ベンチマークで見るべき指標は主に2つです。
1つはユーザー数です。これはWebにどれだけの人が訪れているかの指標です。
購買プロセスの導入であるAの段階にいる人数と近く、ユーザー数は最終的なCV数につながる重要な指標です。
もう1つはユーザー属性です。
これはターゲットとするユーザー層を集客できているかを知るための指標です。
ターゲット層は購買プロセスで次段階に進む割合が高いと考えられます。より多くのターゲット層を集客することでAIDMAの段階を効率良く進めCV数を増やすことができます。
他社のWebサイトが集客できている層、できていない層とその原因について把握することで、よりターゲットユーザーにリーチした施策の打ち出しが可能になります。
■【3】実践!!Webサイトの選び方 ~ベンチマーク実践例?
前述の3つのポイント(流入元、ユーザー数、属性)を踏まえて実際にベンチマークするサイトを設定してみましょう。
今回は想定クライアントをアパレル業界とします。まずは「アパレル」業界のECサイトに絞り比較的ユーザー数の近いサイトからベンチマークするWebサイトを選定します。
図 2「アパレル」カテゴリサイト、ユーザー数ランキング
これはアパレルカテゴリでユーザー数、PV数が多いサイトを列挙したものです。ここから上位3つのサイト(「ZOZOTOWN(以下Z社)」、「ユニクロ(以下U社)」、「ベルメゾンネット(以下B社)」)について詳しく見てみましょう。
図 3 アパレル3社サイトユーザー数推移 (期間:2015年11月~2016年4月)
ユーザー数については3社とも激しい推移はないことが分かりますが、B社とZ社の間でU社のUU数が推移しているといった市場環境が見てとれます。
属性については構成比を見ることで分析していきます。
図 4 各サイトユーザー属性 性別構成比
図 5 各サイトユーザー属性 年齢構成比
図 6 各サイトユーザー属性 未/既婚構成比
図 7 各サイトユーザー属性 子供の有無構成比
女性比率はB社が最も高く、Z社は若年層から支持を得ていることが分かります。子供有の家庭へはB社が最もリーチできていることが分かります。U社は幅広い層を集客できていると考えられます。
図 8 各サイト流入元分析
各サイトの流入元内訳はこのようになっています。
U社について「外部サイト」からの流入が3社中最多となっていますが、同社が経営している廉価版ブランドからの流入であるため、実質はB社が最多流入数であると考えられます。その結果U社は特定の流入経路に偏らず様々な経路でサイトに流入しているという特徴が見えてきました。Z社は「自然検索」「お気に入り」からの流入が特に多く、「自然検索」では直接的な社名の検索からの流入が大多数を占めていました。また「外部サイト」からの流入が少ないですが、twitterやfacebookといったSNSからの流入は3社中最多となっていました。B社においては「一般広告」「外部サイト」が多くなっています。
「一般広告」はアフェリエイトやアドネットワークからの流入が、「外部サイト」はポイントサイトからの流入が上位に並んでいました。
これら結果から、U社については幅広い消費者層を幅広い方法で集客している事が分かりました。
ですが、反対に特徴のない集客構造だと言い換えることも可能です。
Z社については「お気に入り」や「自然検索」からの流入が多いことで、若者を中心にSNSを活用しブランドイメージを固める、といった集客施策の成功がうかがえます。B社は家庭を持つ女性を主ターゲットとし、お得感に敏感な彼女たちを取り込むためのポイントサイトからの導線が確立されています。
このように大手アパレル3社についてユーザー属性の構成や、サイトへの流入元で特徴が明らかになりました。
幅広い層をターゲットとしているU社ですが、商品やキャンぺーン毎にターゲットを明確にし、それに応じたWebマーケティング施策を行うことで売り上げの増加が見込めると考えられます。例えば、若年向け商品の広告にはZ社を見習い、SNSを用いた集客施策を行うのが効果的であると言えます。また家族向け商品についてはB社の流入経路を習い、親和性の高い広告の出稿先を検討することが良いと考えられます。
本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。Dockpitではサイト内コンテンツ等についても詳細な分析が可能です。ターゲットに「刺さる」コンテンツ作成や、サイト全体の構成についてもご活用いただけます。
本記事を参考にベンチマークするWebサイトを設定し、外部環境を踏まえた戦略構築を行ってみてください。
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