中国のZ世代はなぜ中国産コスメを好むのか ~ 化粧品ブランド「完美日記」「花西子」の成功要因|中国トレンド調査

中国のZ世代はなぜ中国産コスメを好むのか ~ 化粧品ブランド「完美日記」「花西子」の成功要因|中国トレンド調査

3年前に立ち上がった中国のコスメブランド「完美日記(Perfect diary)」と「花西子(florasis)」は、いずれも短期間で大成功を収めました。今回の中国トレンド調査では、その人気の秘密を考察します。


 「完美日記(Perfect diary)」と「花西子(florasis)」という中国コスメブランドは、中国で社会現象といっても過言ではないほどの注目度と人気を有しています。

短期間内で成功を収めたその理由は一体何でしょうか。

花西子の商品

「完美日記(Perfect diary)」「花西子(florasis)」とは

 「完美日記(Perfect diary)」は3年前に誕生した化粧品ブランドです。現在の経済的付加価値は140億元(約2000億円)だと推測されています。「完美日記(Perfect diary)」は、口紅やアイシャドウなどのコスメ以外にも、香水など幅広い商品を取り揃えています。動物や、美しい風景のプリントなど、アーティスティックなパッケージも注目されています。

 同じく3年前に成立した「花西子(florasis)」もまた、ブランド好感度が43.6%と、高い人気を集めているブランドです。

今年の天猫(Tmall)の「618セール」で、「花西子(florasis)」はコスメ部門第1位、「完美日記(Perfect diary)」は第3位の売上を誇る結果となりました。特に、スティックに彫刻のようなデザインがほどこされた「彫刻リップ」がブランドに大きな話題を呼びました。

「完美日記(Perfect diary)」と異なり、「花西子(florasis)」は、比較的肌馴染みのよい淡いカラーのラインナップが多いです。また、花西子のコスメはパッケージデザインなどに伝統的な模様が多くみられ、自然成分を多用しています。例えば、スイカズラ(忍冬)の花とツルドクダミのエキス入りのペンシルタイプのアイブロウや、西太后の美容秘方である「玉容散」に加え、ハスの花、シャクヤクの花、椿の花のエキスを用いたファンデーションも発売しました。

ブランド成功要因を探る

①高品質で低価格

「完美日記(Perfect diary)」も「花西子(florasis)」も製品の製造を委託するOEM生産を利用しています。OEM生産に対しては、品質問題が発生しやすく、なおかつ品質問題が生じたときの原因の追究が不十分で、改善対応が遅れやすいなどの、ネガティブなイメージを持つ方は少なくありません。

しかし、「完美日記(Perfect diary)」や「花西子(florasis)」の受託工場はイヴ・サンローランやアルマーニなどの有名コスメブランドの商品をも生産しているため、OEMのデメリットが全てカバーされることはないかもしれませんが、品質は十分に保証され、消費者も安心して購入することができます。

また、OEM生産を利用することで、生産コスト、開発や管理に関するコストを削減できるため、「完美日記(Perfect diary)」は価格設定が低く、商品のほとんどの値段は100元(約1560円)以内です。

②コラボ企画

「完美日記(Perfect diary)」と「花西子(florasis)」のターゲット層であるZ世代は綺麗なパッケージ、高いファッション性、個性的な理念を重んじる傾向があります。そのため、「完美日記(Perfect diary)」も「花西子(florasis)」はZ世代の需要に合ったコラボ商品を、他企業・団体と開発しました。

「完美日記(Perfect diary)」はこれまで、Discovery Channelとコラボしてアイシャドー、メトロポリタン美術館とコラボしてリップ、そして中国国家地理とコラボしてアイシャドーを開発してきました。最近では中国の宇宙開発計画の主契約企業であるCASC(China Aerospace Science and Technology Corporation)とコラボして、「月の兎」アイシャドーを発売しました。

伝統文化や伝統的なファッションに興味があるZ世代に受けが良い古風コスメブランド花西子は、ゲームや古風音楽、ビデオブロガーの李子チー(李子柒)などと何回かコラボしています。それらのコラボ商品のうち、海外でも人気なのは中国ミャオ族の無形文化遺産(銀飾りなど)とのコラボコスメシリーズ「ミャオ族印象」でしょう。「もはや芸術品」などのミャオ族印象の美しさを讃えるコンテンツはYoutubeやInstagram、Twitterなどで多く出回りました。

完美日記(Perfect diary)と中国国家地理のコラボ商品

完美日記(Perfect diary)とCASCのコラボ商品

花西子(florasis)と中国ミャオ族の無形文化遺産のコラボ商品

③入手のしやすさ

「完美日記(Perfect diary)」と「花西子(florasis)」はいずれもTmallをはじめとしたECサイトで主に販売を行っています。新型コロナウイルスの感染の拡大により、経済活動が制限される中、「花西子(florasis)」のTmallにおける第1四半期の総売上高は4.58億元(約75億円)、成長率は644%に達しました。

また、2019年、「完美日記(Perfect diary)」は広州市や深圳市などの中国主要都市に店舗を構えました。「完美日記(Perfect diary)」の店舗で陳列される商品は全てテスターであり、購入したい場合はまずオンラインで予約購入してから、店舗のカウンターで商品を受け渡しするという方式を取っています。

④プロモーション戦略

「完美日記(Perfect diary)」は成立当初、中国の若年層女性に圧倒的に支持されているECアプリ小紅書(RED)でコンテンツを発信することで、知名度を上げました。「花西子(florasis)」も「完美日記(Perfect diary)」と同様、小紅書で有名人KOL(Key Opinion Leader)やKOC(口コミを発信する消費者)に製品の宣伝や広告を依頼していました。

「完美日記(Perfect diary)」はブランド成長の段階において、異なるプロモーション手法を用いていることも面白いポイントです。

市場導入期においては「完美日記(Perfect diary)」はランウエイやファンションからインスピレーションを受け、コアファンを獲得。

次に市場成長期において、ブランドと新製品の宣伝を広く浅く行いました。さらに、ファッション系インフルエンサーやおもしろ・ネタ系ブロガーなどのブランドと関連度の高いKOLに宣伝を依頼することによって、ブランドのWeb上の露出度を高めました。

知名度を上げた後の市場成熟期では、ブランドとの関連性が最も高い美容・メイク系インフルエンサーにのみ口コミを依頼し、狭く深く宣伝を行うようになりました。

よって、初期の宣伝で「完美日記(Perfect diary)」の新製品に興味を持った潜在的な消費者は、口コミを調べるために自ずと美容・メイク系KOLが発信したコンテンツを見て、購入するかどうかを決めることになります。

このように、「完美日記(Perfect diary)」が採用したプロモーション手法は効果的であるうえ、無駄がない分、コストも抑えることができます。

 一方、「花西子(florasis)」は異なるSNSで、それぞれのユーザーに適合するコンテンツを発信してきました。例えば、TikTokでは「#メイク落としでクマドリができる#」というコンテストを始めました。また、タオバオのライブコマース販売では様々な古風メイク動画を配信しました。

REDにおける完美日記(Perfect diary)に関する投稿

まとめ

完美日記(Perfect diary)」と「花西子(florasis)」が成功したのは、顧客のニーズを満たしたからだけでなく、SNSプロモーションを用いたことも大きいことも大きく関わっていることが分かりました。

日本においても、SNS利用者数・利用率は年々増加しており、2019年末の時点で、その数字は7786万人・78.2%となっています。そのため、今後日本における化粧品のSNSプロモーションの需要と重要性は増加していくでしょう。

<参考文献>
完美日记:靠代工,做不了“中国欧莱雅”
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1667988701489139249&wfr=spider&for=pc
完美日记 VS 花西子,谁的品牌购买潜力更强?
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1664837603284557320&wfr=spider&for=pc
三年10亿,花西子是如何做到的?
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1668125736371029932&wfr=spider&for=pc
复盘花西子、完美日记等新国货品牌的突围之路
http://www.shopmall.org.cn/a/guanli/pinpaiguanli/2020/0715/4345.html
与完美日记争艳,花西子的喜与忧
https://m.sohu.com/a/424272711_120873679/?pvid=000115_3w_a
估值70亿的完美日记,问鼎美誉度第一的花西子,谁才能代表国货的未来?
https://m.sohu.com/a/385222179_610458
深度解析花西子年度惊艳之作“苗族印象”
http://www.linkshop.com.cn/web/archives/2020/456584.shtml
【2020年版】海外SNSランキング | 世界と日本のSNSユーザー数と普及率の違いを分析
https://www.digima-japan.com/knowhow/world/15722.php

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この記事のライター

中国出身の留学生。立教大学大学院に在学中。

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