セミナー概要
■AGENDA
⚫︎コロナ禍による環境変化と中国市場
⚫︎コロナ禍による中国人の変化(メディア利用・消費行動・意識)
⚫︎変化する消費者像を掴むための調査手法
■スピーカー紹介
図:スピーカー紹介
コロナ禍による環境変化と中国市場
■コロナ禍の経済状況
株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安亜紀子(以下、子安):「まず、現在の世界規模での経済事情を俯瞰してみてみたいと思います。
2020年春からコロナにより、各国ともに大きな経済ダメージを受けているのは明らかです。そのような中、 経済成長率の2020年度のグラフを見てみますと、中国の成長率は+2.3%となっており、大国の中で唯一経済を伸ばしていることが分かります。
依然コロナ禍の収束は見えない状況にありますが、そのような中で、どのようにして中国マーケティングを行ってゆくのか。今年は非常に重要な1年となるのではないでしょうか。」
図:2020年の経済成長率
■インバウンド市場の激減
子安:「中国マーケティングといえば、2019年まではインバウンドの調査がほとんどを占めておりました。しかし、皆さんもご存知のように2020年はかなり厳しい状態となりました。
数値で見ると、2019年までは約3100万の訪日顧客があり、2020年は4000万人にのぼるとの予測もありましたが、コロナショックにより、結果98%減というのが現状です。」
図:インバウンド市場の激減
■中国におけるEC購買金額の拡大~独身の日(W11)の取扱高推移
子安:「では、今までインバウンドで消費されていた大規模な消費はどこに移って行ったのかを掘り下げてみたいと思います。
今、中国ではECが非常に伸びています。そこには、コロナ禍で旅行に行けないなどのフラストレーションが溜まる中、国内でECで物を買う方が今まで以上に増えているということと関係があるのではないでしょうか。
例えば、ダブルイレブン(11月11日を中心とした独身の日)の前後2週間ほどは特にEC市場が活況となり、急速に売り上げが増加します。その取扱高の推移のグラフをご用意しました。
アリババと京東(Jingdong)、両方合わせて2019年は4728億元。同時期の2020年では、はさらに62.8%も売上が伸びていて、結果、2週間程度で日本円換算にして12兆円もの取引が行われていました。
こういった購買の動きを見ると、消費自体の勢いは落ちてるわけではなくて、海外旅行に行けない分、国内ECでいろんなものを買って過ごすという状況にあるという様子が見えてきます。」
図:中国におけるEC購買金額の拡大
■今すすめるべき中国市場対策
子安:「要は、今経済成長という視点で見ると、中国だけは堅調に伸びているということが言えると思います。
そこで本日は中国人の方の意識の変化や、今どんな消費を考えているのか、そういった肌感をデータを通じて掴んでいただいて、どういうふうに中国市場に仕掛けて行けば良いのかというところで、1つでもヒントをご提供できればと考えております。」
図:今すすめるべき中国市場対策
コロナ禍による中国人の変化(メディア利用)
■コロナ前後の中国人意識変化アンケート 調査概要
図:アンケート概要
■ロックダウン中の利用メディアの変化
株式会社ヴァリューズ グローバルリサーチ推進グループ リサーチャー 姜茹楠(きょう じょなん)(以下、姜):「早速利用メディアの変化を見ていこうと思います。
「ニューズ情報系」や「ショートムービー系」の新規利用が増えている傾向にあります。
「ニュース情報系」はコロナについて等、積極的な情報収集に利用されていると考えられます。また「ショートムービー系」については、ロックダウン中の娯楽の一つとして楽しまれていたのではないかと想像できます。
続いて、利用時間が増加したものを見ると、「SNS系」と「動画サイト系」があげられます。」
図:ロックダウン中の利用メディアの変化
■SNS・ショートムービーサービス利用状況詳細
姜:「SNS系の利用時間増加率では、「微信(wechat)」が(日本でいうLINEのようなツール)大幅に増えており、72.1%と高い数値となっています。
同じくSNS系を新規利用率で見てみると、「知乎(Zhihu)」が20%となっています。
そしてショートムービー系を見ると、中国の2大ショートムービーと言われている「抖音(TikTok)」と「快手(KuaiShou)」の利用時間がそれぞれ51.4%、27.5%と多い割合を示しています。
「微信(wechat)」について補足しますと、中国では殆どの人が使っているようなチャットツールですが、最近はミニプログラムが使えるようになっていて、様々なサービスを受けたり、商品を購入でき、利便性がさらに加速して高まっている印象を受けます。」
子安:「「微信(wechat)」は、コミュニケーションツールを超えて、ウェブサイトじゃなくても「微信(wechat)」のミニプログラムで色々な行動をできるという点で非常に利便性が高いと言えると思います。その結果、利用される消費者の方は増えていますし、今大いに注目されているツールだと言えますね。」
図:SNS・ショートムービーサービス利用状況詳細
■性年代別での新規利用率・利用時間増加率
姜:「前述に挙げた各種アプリの新規ユーザーの性年代別の推移を見ると、「抖音(Tiktok)」、「快手(Kuaishou)」どちらも40代の新規利用率が高く現れました。また「抖音(Tiktok)」に関しては30代に利用時間増加率が高く、コロナ禍の影響がなんらか関連しているのではないかと考えられます。」
子安:「ショートムービーアプリというのは、日本でも同じことが言えるかと思いますが、20代の若い世代が牽引している文化だという認識が中国もあったと思います。
しかしこのコロナ禍がおきたことで、様々なアプリが年代問わずに利用されるようになり、ネット文化もだいぶ変わってきたなと感じますね。」
図:性年代別での新規利用率・利用時間増加率
コロナ禍による中国人の変化(消費行動)
■ロックダウン中に購入が減少、解除後に購入が増えたもの
子安:「ロックダウン中に購入が減少し、解除後に購入が増えたものを揺り戻し率で見てみると、「服・カバン・靴」が多く、ロックダウン解除後の購入率では30%を超えています。
続いては「化粧品・コスメアイテム」。また、「時計・メガネ・アクセサリー」といった高額商品も戻ってきている様子がうかがえます。」
図:ロックダウン中に購入が減少、解除後に購入が増えたもの
■ロックダウン解除後に検討・購入した商品の産国
姜:「購入したものの産国を見てみると、1位は中国なのですが、多くのカテゴリーで日本製品が2位にあがっているのがわかります。」
子安:「外国製品というとまず日本製という結果が上がってくる状態というのは、日本企業にとってはとても良いニュースなのかなと思います。」
図:ロックダウン解除後に検討・購入した商品の産国
■ECの利用状況
姜:「続いて、各ECの利用状況にフォーカスしてみます。
ロックダウン解除後の利用率をみてみると、「淘宝」、「天猫」、「京東」の利用率がトップ3となっています。一方、ロックダウン中の新規利用率で見ると、4位に上がっている「拼多多」が22%と最も高くなっています。
越境ECとしては、5位に上がっている「天猫国際」がトップとなっています。」
図:ECの利用状況
■W11(ダブルイレブン)での販売状況
姜:「ECの活況を見るため、参考までに2019年のW11での「天猫」と「京東」の状況を抜粋してみました。
「天猫」では、開始17分で成約金額が1億元を突破し、35分で2億元を突破したという驚異的なスピードと金額です。また、「京東」では、初日の成約金額が去年同期比90%増加との結果に。
一時は『コロナで消費購入は回復できないのではないか』といった予測がありましたが、こうのようなW11の状況を見ると、中国国内では爆買いが始まっているといった印象も受けます。」
図:W11での販売状況
コロナ禍による中国人の変化(意識)
姜:「ここで海外旅行意向を見てみます。
コロナが収束した後に最も行きたい国として、日本は中国国内全域において1位となっています。これは日本に対する憧れが変わらずにあるとも受け取れますし、日本ブランドにとってはチャンスが続くということになるのではないでしょうか。」
子安:「データを見てみると、『1年以内に海外旅行には行かない』という返答が約17%ほど見受けられましたが、多くの人が海外旅行を希望しているのが分かりました。中でも日本への渡航を希望していることからも、日本人気、日本製品のニーズの高さがうかがえたと思います。
コロナの収束後には(どのような形になるかはわかりませんが)以前のようにインバウンドが戻ってくるのではないかと大いに期待します。」
姜:「またライフスタイルなどに関する意識の面でのアンケート結果では、『計画的にお金を使う』『衝動買いをしない』『無駄遣いをしない』といった傾向が強い反面、『趣味や好きなものにお金を使いたい』といった回答も多く見られました。
このことから、『良いものや生活を楽しむためには積極的にお金を使いたい』という心理も垣間見えたかと思います。」
図:海外旅行意向
変化する消費者像を掴むための調査手法
■コロナによる中国市場の変化|まとめ
子安:「コロナによる中国市場の変化についてまとめてみると、以下のようなことが言えるかと思います。」
⚫︎ネット利用量・年代の拡大により地域や年代問わずリーチしやすい環境になった。
⚫︎ECが非常に伸びている。アフターコロナで消費も回復。日本産品人気も戻りつつある。
⚫︎旅行意向が非常に高い。節約志向は健在だが、嗜好品への消費意向は上昇傾向にある。
子安:「このような背景から、今は積極的にデジタルメディアを利活用し、商品販売や商品認知をすすめるビジネスチャンスにあると考えています。」
図:コロナによる中国市場の変化
■中国マーケティングの課題|PDCのすすめ
子安:「中国マーケティング施策を打つという時、日本の企業の皆様が陥りやすい課題として、プロモーションを「短期視野」で捉えてしまいやすいということがあげられます。
そしてプロモーションが「施策ありき」になりやすいことが言えると考えています。
私どもは調査会社でもあるので、各種データを有効活用した戦略設計や結果確認をするというステップをとることをいつもおすすめしています。
そうしたデータを利活用したプロモーションのPlan-Do-Checkを回すことで、短期的で終わらず、継続して効果が出るような施策が行えると考え、ご支援をさせて頂いています。」
図:中国マーケティングの課題
まとめ
世界規模で猛威を振るうコロナ禍の中、独自路線で早期のコロナ収束に努めた中国。大国中唯一の経済成長も見せ、ますます魅力的な市場であることには変わりが無いようです。
今回の各種データ紹介では、コロナ禍を経験したからこそのネット利用の変化も知るところが多かったように思います。
そしてアフターコロナの中国市場への更なるアプローチにおいて、データやデジタルメディアの利活用がマーケティング施策において有効な手法であるということも、1つのヒントとなったのではないでしょうか。
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マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。