いま、中国で「ウルトラマン」が熱い|中国トレンド調査

いま、中国で「ウルトラマン」が熱い|中国トレンド調査

2020年、中国最大のECサイト「タオバオ(淘宝網/Taobao)」の人気商品TOP10の中で、日本のアニメキャラクター「ウルトラマン」がランクインしました。また、「ウルトラマン」がタオバオで2億回を超える検索回数を獲得し、2000年代初期の「ウルトラマン」ブームが再び到来することとなりました。現在、1989年〜2019年の間で次々と誕生した「ウルトラ兄弟」が中国で幅広い年齢層から支持されています。ここでは、中国における「ウルトラマン」ブームについて考察し、ウルトラマンの海外進出の実態に迫ります。


ウルトラマンが中国で人気を集めた理由とは

早いタイミングで中国進出を図る

1993年、上海のテレビ局がウルトラシリーズを中国で初めて放送して以降、ウルトラマンは、80、90年代生まれの中国人に愛されるヒーローとなりました。常に外需を意識している日本のアニメ業界にとって中国は魅力的な市場であり、ウルトラマンの中国進出をきっかけに日本アニメの中国での知名度が高くなりました。

また、1993年というタイミングは、市場開放と経済成長の促進によって中国人の生活水準が高くなった時期と重なっています。文化的欲求も高まり、多くの子供はウルトラマンに対して受け入れる態度を示しました。そして、物語の展開によって「ウルトラマン」というキャラクターに対して憧れの感情を持つようになりました。

時代の変化に左右されない独自の価値観

ウルトラマンは、「勇気」と「根気」を備え、宇宙と地球の平和を守る「正義のヒーロー」のストーリーを描いていますが、その裏には人々が思わず感動し、実生活で経験するような心情を描くシーンもたくさんあります。

この人生の隠された性質を体感できる物語が「怪獣が存在する人間の世界」を舞台に、現在のようなヒーローの共演が当たり前になった時代の先頭に立ち、ウルトラマンの「強さ」だけでなく、優しさに裏づけされた責任感と地球に対する愛おしさも描かれているのです。

そのため、80、90年代生まれの子供たちは成人になっても、他のアニメとは異なった独自の価値観を持つウルトラマンを「代わりのいない存在」としてみなし、愛してきました。

シリーズ化の成功

ウルトラマンの中国語字幕

中国で上映された日本アニメの中で、ウルトラマンはシリーズ化に最も成功したアニメとして知られています。

テレビ放送だけでなく、映画も大ヒットするなど高い人気を誇り、歴代のヒーローを「ウルトラ兄弟」としてグループ化したことが子供たちに喜んで受け入れることで、1993年放送される当初から現在まで人気を保っているのです。

「ウルトラマン」をテーマにしたPR施策

数十年前の「日本のアニメーションで育った」青少年は、現在、購買力の高い消費者に成長しました。

そのため、「ウルトラマン」をテーマにしたPR施策をいち早く取り入れ、話題作りを求めるブランドが増えています。ここでは、「ウルトラマン」とコラボをしたブランドをいくつ紹介したいと思います。

ユニクロ

2020年、人気の歴代ウルトラヒーローと怪獣がポップに描かれたユニクロTシャツが登場しました。この特別なUTコレクションに対して中国人消費者は、「実際の放送より面白い広告だ」、「ユニクロの広告の中で、ティガとベリアルの対戦を見るのは面白かった」などのコメントを寄せました。

また、2020年のUTコレクションに続き、『ウルトラマンティガ』の25周年を記念したUTコレクションが2021年3月下旬より世界中で発売となり、世代問わず楽しめるコレクションとして期待されています。

ユニクロの商品

ローソン

ローソンの限定グッズに『ウルトラマンタイガ』と『ウルトラヒーローズ』のコラボ商品がありました。さらに、上海のローソン支店は、ウルトラマンとのコラボ店舗まで展開しました。

キャラクターのグッズコーナーを設置したり、コラボ商品などを販売したりするだけでなく、店舗独自の内装デザインによって初めて日本のキャラクターをテーマにしたコンビニとして知られています。

ローソンの限定グッズ

バンダイ

これまでは日本市場をメインに発売される商品と、フュージョンカードなど、中国バンダイ限定デザインのウルトラ関連商品がありましたが、現在は日中で同時に発売される商品が増えています。例えば、ウルトラマンガイア(V2)のスペシャルセットが2021年3月に発売される予定です。

ウルトラマンガイア(V2)のスペシャルセット

まとめ

ウルトラマンの海外進出や、ウルトラマン商品の具現化は大勢の名脚本家たちによって成されています。ウルトラマンのストーリーは、「夢」を起点として、国境を超え、日本アニメの代表作としてその地位を確立しています。

その中で、中国市場にさらなる進出を図るためには、ビジネスモデルの立脚、市場規模の把握、また中国の情勢や法律を分析する必要があります。近年、中国政府は、アニメーション産業を活性化させるため、人材の育成や企業活動の環境支援に力を入れており、このような背景の中で日本のアニメーションに対して関心を持つ新しい世代への対応が迫られています。

また、ウルトラマンはこれからの時代でも人気を保っていくため、テクノロジーやコンテンツとの関わりが高いビジネスアイディアが求められます。

参考文献

Taobao.com
https://world.taobao.com

Uniqlo.com
https://www.uniqlo.com/jp/ja/spl/ut-graphic-tees/ultraman-21ss/men

Ifeng.com
http://biz.ifeng.com/fashion/detail_2012_06/01/212455_0.shtml

Weibo.com
https://weibo.com/pbandaihk?nick=万代-BANDAI

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中国出身の留学生。慶應義塾大学に在学中。

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