中国ではペットブームがさらに加速。これから流行るペット用品を予測|中国トレンド調査

中国ではペットブームがさらに加速。これから流行るペット用品を予測|中国トレンド調査

中国のペット関連市場規模は近年急成長を遂げましたが、今後もさらに成長すると予測されています。本記事では、中国で具体的にどのようなペット用品がこれから人気を集めるのかを分析し、ECサイトで販売されている手作り猫フード、オーガニックペットケア用品、自動猫トイレ等のペット家電など注目アイテムをご紹介します。


中国におけるペット市場規模は約3兆円に拡大

中国のペット関連市場規模は2019年までに2024億元(約3.24兆円)に達し、その前年比は118.5%で、急速な成長を見せています。

さらに、「2020年中国ペット市場報告」によれば、2020年のペット1匹あたりの平均消費額は6,653元(約112,000円)で、2019年の5,561元(約94,000円)より19.6%増えました。

この急成長の背後には、中国成人の単独世帯の増加にあるようです。「2021ペット食品業界消費洞察報告」では、ペットの飼育者の40%以上が一人暮らしをしていると報告されました。

しかしながら、中国のペット市場浸透率はわずか6%でしかなく、北アメリカやヨーロッパと比べるとまだまだ低い状況です。従って、中国のペット市場はこれからも更なる成長を遂げるという見込みです。

急速に成長するペット用品

ペットフード

中国におけるペットフードの市場規模の成長は著しく、2010年から2020年までに、中国のペットフードの市場規模は7.19億ドル(約790億円)から67.18億ドル(約7400億円)に上り、その間の平均増加率は25.04%になります。

特に、猫フードと猫のおやつの市場規模は急速に拡大しており、その速度はドッグフードより遥かに速くなっています。

CBNDataの「ねこの食と健康トレンド洞察報告」によれば、ペットにかかった費用のうち、ペットフードは4割を占めています。なお、飼い主はペットフードの品質と付加機能にこだわる傾向があるため、値段が高めの高級フードを購入することが多いようです。

また、中国の若年者はネットショッピングを好むので、ECサイトでのペットフードも全体的に売れ行きが良いです。例えば、昨年11月11日に、京東商城における猫缶やドライフードの売上高は前期より150%以上の増加が見られました。

また、猫フードにおいては、総合栄養食のドライフードと猫缶は依然として不動の人気を有していますが、主にECサイトで販売されている手作り猫フードにも注目です。

通常、手作り猫フードは注文されてから製作され、一回分ずつに小分けして冷凍便で顧客に届けられます。なお、手作り猫フードは肉のみによって作成されており、栄養バランスに対する配慮もしっかりとされいますので、健康的なイメージがあります。「ねこの食と健康トレンド洞察報告」によれば、昨年の手作り猫フードを販売するブランド数の増加率は2018年の10倍以上になり、これからも急速に成長していくでしょう。

手作り猫フード

ケーキと行事食

ペットの家族化が進んでいる中、ペット用ケーキとペット用ちまきをはじめとしたペット用行事食が流行しています。

「STICKYRICE」や「PETPETCAKE」などのペット用ケーキ専門店は中国で大人気のようです。人間が食べるケーキには糖質や脂質が多く含まれていますが、それらの成分はペットにとっては悪影響になることが多いことから、ペット用ケーキには羊乳と鶏肉、牛肉などの原材料が使われることが多いです。また、ペットの種類や品種、年齢、体型に合わせてカスタムすることもできるので、アレルギーがある場合も安心です。

「PETPETCAKE」のペット用ケーキ

ケーキだけでなく、近年、ペット用行事食も段々と注目されるようになりました。「妙品」や「麦萌」、「小鮮糧」などのペットフードメーカーはペット用ちまきやペット用元宵団子などのペット用行事食を次々と発売しています。まだまだケーキほどは普及していませんが、今後の発展が期待できる商品でしょう。

天然素材を用いたオーガニックペットケア用品

2019年の中国におけるペットケア用品市場の小売売上高は69億元(約1,172億円)に達しており、2015年より38億元(約646億円)増加しました。

中国では、ペットのケア用品には主にシャンプー用品やデンタルケア用品、消臭剤、猫砂が含まれています。昨年11月8日に、中国の大手ECサイト「蘇寧易購(Suning.com)」はペット用品売上TOP10を公表しましたが、1位はペット用品ブランド「LORDE(里兜)」の猫砂で、続いて2位と3位も猫砂であり、4位からがペットフードという結果でした。

伝統的なケア用品のほか、肉球クリームやペット用美容液などのケア用品も出回っています。

例えば、デンマークのペットケア用品ブランド「amo petric」はアボカド鼻クリームやキュウリエキスコンディショナーなどの天然素材を用いたオーガニックペットケア用品を販売しています。

また、ペット用品メーカー以外の企業もペットケア用品に商機を見出して製造・販売することがあります。中国のバイオテクノロジー企業「Bloomage BioTechnology」はヒアルロン酸配合のペットケア用品を開発しました。日本の化粧品・サプリメントの製造販売メーカーDHCもうるおい保護成分配合の肉球ケアクリームやリンスinシャンプーなどのペットケア用品を販売しています。

「amo petric」のキュウリエキスコンディショナー

ペット家電

特に注目に値する2021年のペット用品の新商品として中国のアリババグループが今年年始に挙げたように、自動猫トイレや自動給餌器などのペット家電の需要も大きくなる見込みです。

今年6月18日に開催された618セール期間中、ペット用品メーカー「小佩(petkit)」の全自動猫トイレや「Catlink」の大容量自動給餌器とペットカメラをはじめとしたペット家電がかなり売れたようです。

「天猫(Tmall)においてはペット用品の売上は1300%以上激増し、「京東商城」においてはペットドライハウスの売上は300%増加しました。実際飼い主に伺ってみると、ペットに毎月かかっている費用のうち、一番多いのはペットフードではなく、このようなペット家電や医療費になるそうです。「2020年中国ペット業界白書(消費報告)」によると、2020年には43.1%の飼い主がペット家電を購入したことがあります。

まとめ

QuestMobileによって発表された『2020ペット経済洞察報告』によれば、2020年10月までに、ペットに興味・関心を示す人数は5.3億人を超えました。さらにTikTok(ティックトック)や快手(クアイショウ)のような短編動画共有アプリ、およびWeiboやREDのようなSNSアプリにおけるペットのコンテンツによって、ペット好きな人数はこれからも増加するでしょう。

そして、単身世帯率はこれからもどんどん増えることも考慮に入れると、中国のペット関連市場規模はさらに成長すると予想できます。

<参考文献>
「养宠开支每月500元起步,资本盯上了你家狗子」
https://www.cbndata.com/information/189485
「腾讯小米争相入局的宠物市场,还有哪些待挖掘的机会?」
https://www.cbndata.com/information/184607
「喝奶茶、拍写真、上幼儿园……年轻人正在重塑“宠物经济”」
https://www.cbndata.com/information/186592
「QuestMobile发布2020萌宠经济洞察报告,小象优品等电商宠物用品销量持续增长」
http://www.cet.com.cn/xwsd/2738346.shtml
「宠物用品悟空榜公布销量前十名单 “铲屎官”流下了贫穷的泪水」
http://news.hexun.com/2020-11-09/202391308.html
「2020年中国宠物行业发展情况分析:国内宠物行业快速发展壮大,“井喷时代”已经到来」
https://www.chyxx.com/industry/202006/876638.html
「2020萌宠经济洞察报告:萌宠群体超5.3亿,喵星人VS汪星人,谁更能带货、拉消费?」
https://www.36kr.com/p/1011404743683847
「猫咪饮食健康趋势洞察报告」
https://max.book118.com/html/2020/1015/5241030121003011.shtm

この記事のライター

中国出身の留学生。立教大学大学院に在学中。

関連するキーワード


中国トレンド調査

関連する投稿


ペットと人が共に暮らす時代〜中国で広がる“ペット・フレンドリー”

ペットと人が共に暮らす時代〜中国で広がる“ペット・フレンドリー”

中国ではいま、「ペット・フレンドリー(宠物友好)」という考え方が急速に広がっています。カフェやホテル、交通機関からオンラインプラットフォームまで、人とペットが共に過ごすことを前提にしたサービスが次々と登場しています。この記事では、拡大を続ける中国のペット市場と、その背景にある価値観の変化を中心に、ペットと共に過ごす空間や新しいテクノロジーの動きをたどっていきます。


中国の若者の新たな社交方式「无料〜無料グッズ交換」とは?

中国の若者の新たな社交方式「无料〜無料グッズ交換」とは?

中国の若者の間で近年広がっている「无料(むりょう)」文化。日本語の「無料」という単語がもとになっているこの言葉は、コンサート、音楽フェス、映画祭、ミュージカルなどといったオフラインのリアルなイベントの場において、ファンたちが自作したグッズを無料で交換・配布する現象のことを指します。この記事ではこの独特な文化を深堀りし、その背景と共に人々がどんなグッズをどのように交換してこの体験から何を得ているのかを紹介します。


【最新トレンド調査】健康を考える飲食品〜中国、台湾、タイ、アメリカ、イギリス

【最新トレンド調査】健康を考える飲食品〜中国、台湾、タイ、アメリカ、イギリス

コロナ禍を経て、世界的な健康意識トレンドは一層の高まりを見せています。また、その傾向は国を超えて共通する点が多く見られます。本レポートでは、中国、台湾、タイ、アメリカ、イギリスにフォーカスし、各国ごとの健康×飲食品トレンドに対してデスクリサーチを基に調査。世界的に共通して見られる最新トレンドと、各国ごとの特徴を分析しました。海外消費者のニーズや価値観を把握し、インバウンド戦略にご活用頂ける内容となっています。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


より早いスピード感xディスカッション会!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」ワークショップ機能のご紹介【第4回】

より早いスピード感xディスカッション会!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」ワークショップ機能のご紹介【第4回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の考え方がよくわからない。」というのも多く耳にします。従来の調査には1ヶ月以上の時間が必要ですが、Web調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、定量調査のほかに、動画を介して、迅速に、中国人の実態調査を実施することが可能です。 第4回は、ワークショップ機能の特徴を事例とともにご紹介します。


中国EV市場 〜 爆発的成長の裏で進行する4つの課題

中国EV市場 〜 爆発的成長の裏で進行する4つの課題

中国の電気自動車(EV)市場は、販売台数で世界トップを誇り、街には新ブランドの車があふれています。価格競争も激しく、「誰でもEVを買える時代」が到来したかのように見えます。しかし、その華やかな表舞台の裏では、値下げ合戦による収益悪化、生産過剰による中小メーカーの淘汰、中古市場の急拡大、そしてバッテリー寿命という深刻な課題が同時進行しています。本記事では、この急成長市場を揺るがす4つの課題を整理し、今後の行方を探ります。


最新の投稿


約7割が再来店につながらず...単発購入で終わる顧客が増加傾向?小売業のリピーター獲得に立ちはだかる壁とは【iTAN調査】

約7割が再来店につながらず...単発購入で終わる顧客が増加傾向?小売業のリピーター獲得に立ちはだかる壁とは【iTAN調査】

株式会社iTANは、小売店経営者・店舗責任者・マーケティング担当者を対象に、「小売業界における再来店促進と顧客接点の実態」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


ペットと人が共に暮らす時代〜中国で広がる“ペット・フレンドリー”

ペットと人が共に暮らす時代〜中国で広がる“ペット・フレンドリー”

中国ではいま、「ペット・フレンドリー(宠物友好)」という考え方が急速に広がっています。カフェやホテル、交通機関からオンラインプラットフォームまで、人とペットが共に過ごすことを前提にしたサービスが次々と登場しています。この記事では、拡大を続ける中国のペット市場と、その背景にある価値観の変化を中心に、ペットと共に過ごす空間や新しいテクノロジーの動きをたどっていきます。


「1円スマホ」の購入経験者は約1割も、機会があれば利用したい人は約5割と利用に前向きな姿勢あり【イード調査】

「1円スマホ」の購入経験者は約1割も、機会があれば利用したい人は約5割と利用に前向きな姿勢あり【イード調査】

株式会社イードは、スマートフォンやデジタルライフについてユーザー目線で最新情報をお届けするメディア「LiPro(インターネット)」において、1円スマホに関心のあるユーザーを対象に「1円スマホ」に関する関心・意向についてアンケート調査を実施し、結果を公開しました。


新興テック企業「Nothing」。2年で7倍成長の理由を世代別に分析

新興テック企業「Nothing」。2年で7倍成長の理由を世代別に分析

ロンドン発、今注目のテクノロジーブランド「Nothing(ナッシング)」。2020年の設立以来、スマートフォンやオーディオ製品を中心に、透明感ある唯一無二のデザインと高い性能で、多くの大企業がひしめくテック業界で急速に存在感を高めています。そんな革新的なNothing製品は、どのような人々に支持されているのでしょうか。本記事では、Nothingのサイト訪問者データをもとにユーザー像を分析し、なぜNothingが注目を集めているのかを年代別に考察していきます。


電通デジタル、リテールメディアが生活者にもたらす購買行動とブランド指標への影響についての調査結果を公開

電通デジタル、リテールメディアが生活者にもたらす購買行動とブランド指標への影響についての調査結果を公開

株式会社電通デジタルは、生活者のリテールメディアへの接触が購買行動およびブランド認知に与える影響を明らかにするため、「2025年 リテールメディア調査」を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ