マス×デジタル横断データからユーザー理解を深める。ターゲット分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」とは|vol.1

マス×デジタル横断データからユーザー理解を深める。ターゲット分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」とは|vol.1

消費者のニーズが多様化し、マーケターの腕が試される今の時代。勘や経験のみに頼らず、データで仮説を裏づけ、確信を持って戦略を進めることも重要になってきています。ヴァリューズでは2020年3月から、ターゲット分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」をリリース。インターネット上で検索やサイト閲覧など特定の行動を行った消費者の、Web行動とアンケートデータを紐づけた分析を可能にした、従来にはない画期的なツールの機能性について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントに話を聞きました。


Web行動×アンケートで複眼的にターゲットを理解

―― まず「story bank」 の概要を教えてください。

一言でいうと、心理や属性など消費者をより深く理解するために必要なデータを集計できるツールです。具体的には、ターゲットユーザーにおける、特定の Web 行動における前後の動きを用いて、Web 行動の背景を把握し、属性情報とアンケートデータを掛けあわせて複眼的に理解することが可能になります。

―― “前後の動き”とはどういうことですか?

Webの閲覧履歴データを活用して、特定のサイトやページを閲覧する前後3時間のWeb行動を、さまざまな確度から分析できます。

―― 前後の動きがわかると、消費者のニーズが鮮明に見えてきそうですね。

はい。例えば、自社のサイトを「story bank」に入力していただければ、「消費者が何を求めて訪問したのか」だけでなく、自社サイト訪問前後で、どの競合サイトやメディアをよく閲覧していたのかや、どんな検索をしていたのかまで分析することが可能です。

自社サイトを運営している企業にとっては、競合他社や押さえるべきメディア等の洗い出しや、消費者に喜ばれるサイト内のコンテンツ作成に必要な、客観的かつ実践的なデータを獲得できるのではないでしょうか。

アンケート調査だけでは見えないところがわかる

―― なぜここまで詳細な消費者のデータを収集できるのですか?

ヴァリューズでは日本全国にモニターがおり、明確に許諾を得た上で、Web行動データだけでなく定期的なアンケート調査も実施しています。その際、性別や年齢といったデモグラフィックはもちろん、「1日どのくらいテレビを見るのか?」「普段何にお金を使うのか?」「頻繁に使用しているアプリは?」といった生活レベルの把握に役立つ質問にも多数お答えいただいているため、具体的な消費者理解につながるのです。

―― どのようなシーンで使われることが多いですか?

ありがたいことに業界や業種に関係なく、様々な企業様にご利用いただいております。具体例を出しますと、広告代理店の場合、コンペに役立つ情報が欲しいとのご相談が多いのですが、コンペ開催まで2週間しかないなど、急ピッチで提案を作成することが必要なケースも珍しくありません。ただ、例えばしっかりとしたアンケート調査を実施する場合、設問設計からアンケート調査の実施、さらには、データの集計から分析まで、様々な業務が発生するため、1〜2ヶ月程度かかってしまうことが多いです。

一方で、「story bank」はアンケート調査よりも圧倒的に早い。「そのワードで検索した人の属性や生活様式を見たいな」と思えば、ワンクリックで結果が出ます。急を要するケースであっても、効果的な結果を提示することができ、むしろアンケート調査では見えてこないデータを得ることも可能です。とりわけ、消費者のデータ収集が求められる企業様には、大変重宝していただいております。

―― 確かにアンケート調査だけではわからないことも少なくないです。

ユーザー理解を経験や感覚に頼ってしまい、客観的なエビデンスに基づいた検討ができていない企業様も多いかと思います。そもそも、アンケート調査は事前に仮説を設定してクラスターを作るため、予想外の発見は見えにくい。「story bank」では仮説からは見えてこなかった示唆やインサイトなど、これまで見落としていた消費者心理を拾うことができます。新しいターゲットが見つかることも珍しくなく、視野を広げるための気付きを与えてくれるでしょう。

ボタン1つでAIが自動的にクラスタ分類

―― 実際に使用している様子を見せてください。

例えば、「story bank」を使用して「ダイエット」というテーマを深掘りしてみましょう。

story bankの画面

story bankの画面。「ダイエット」と検索した人をモニターから自動抽出して分析できる

※抽出可能な人数の上限は5000人

今回サンプルとして抽出してきたのは「ダイエット」で検索した人になるのですが、男女比や年齢層だけではなく、“ワードクラウド”といって、「ダイエット」と検索した人が、他にどういったワードに関心があるのかもわかります。

ただ、ワードクラウドに表示されているワードは決して、ダイエットと検索したその瞬間だけを参考にしたわけではありません。「ダイエットと検索する前後に検索していたワード」といった一連の流れのWeb行動も参照して、キーワードを提示してくれます。

ワードクラウド

この“検索キーワード”を見ると、ダイエット中に効果的なレシピを調べたり、自分に合ったプロテインを求めてAmazonを閲覧したり、YouTubeに投稿されているダイエット関連の動画を検索したりなど、一口にダイエットと言っても多様な消費者心理があることがうかがえますよね。

また、ダイエットと検索をする前後に、どんなサイトを閲覧していたのかや、ダイエットと検索した人が、特徴的にインストールしているアプリが何か、なども分かるため、消費者のダイエット以外にある、意外な関心事の発見も期待できます。

更に、ダイエット検索後に流入したページを、サイト毎に確認出来るため、具体的にユーザーが知りたい情報やコンテンツも可視化できます。

以下のデータは、1位のサイト内で、具体的にどのページが見られているかを集計しています。
例えば筋トレ方法や糖質制限を行う上での注意点等、豊富なコンテンツを用意しており、どんな内容が、ユーザーにとって知りたい内容なのかが分かり、ユーザー理解が深まります。

―― ここまで多角的な気付きを得られるのはすごいですね。

さらには、ユーザーを興味関心ごとに分別する“クラスタ作成”もとても有効です。集計するクラスタの数を指定できるのですが、基本的には6~7つに分けることが多いです。今回は7つに分けますが、「ダイエットウェア検索層」や「プロテインダイエッター」「サプリ活用ダイエッター」など、同じダイエットに関心がある人でも、これだけの関心に違いが見えてきます。

性別や年齢など、デモグラフィックデータでのセグメントには、どうしても限界がありますが、実際にダイエットに関心のある人の中には「運動して痩せよう」という人もいれば、「栄養価があってカロリーの少ない食事で痩せたい」という人もいます。

こういった深層心理的なニーズや興味関心ベースからセグメントでき、さらにオフライン行動にも紐づけられるのが「story bank」の一番の魅力です。

――「story bank」のほうでクラスタ分けをしてくれるのは非常に助かりますね。

そうですね。単純に“ダイエット検索者”と一括りにするのではなく、ユーザーひとりひとりのダイエット検索前後のキーワードを分類し、機械的にユーザーをグループ分けすることができます。次回、詳細を説明しますが、アンケート結果をもとに「このプロテインを摂取して痩せようとしているダイエッターは、テレビとTwitterから頻繁に情報収集している」「普段ドラックストアでこれだけ買い物をしている」というオフラインの行動だけでなく、「アニメとか漫画が好きな人が多い」といった興味関心まで把握することが可能です。

通常のアンケート調査ではわからないWeb行動はもちろん、また、Web行動だけではわからないオフラインの興味関心も把握できる仕組みになっています。

次回はこの7つのクラスタから、さらに「オートミールダイエッター」に絞って、「story bank」ができることを深掘りしていければと思います。

vol.2はこちら

データからユーザーの解像度を上げるには?ターゲット分析ツール「story bank」の機能を徹底解剖|vol.2

https://manamina.valuesccg.com/articles/1687

前回の記事では、「story bank」の機能を紹介してもらうため、「ダイエット」を含むワード検索者分析を展開。デモグラフィックだけではなく、「ダイエット」と検索する前後のWeb行動から導き出された“検索キーワード、頻繁に接触したサイトやアプリなど、詳細なデータを収集できることがわかりました。今回は「ダイエット」と検索したユーザーを7つのクラスタに分類し、中でも「オートミールダイエッター」をピックアップ。「オートミールダイエッター」のユーザー像を探りつつ、「story bank」のさらなる機能も掘り下げます。

story bank|株式会社ヴァリューズ

https://www.valuesccg.com/storybank/

story bankは、消費者の検討背景やニーズ、購入のアクションを起こすきっかけを、実際のWeb行動データとアンケートデータから定量的に分析・把握することができるサービスです。ターゲットユーザーの検討過程における検索キーワードや閲覧サイト、属性・興味関心データなどを用いて、消費者のリアルなWeb行動を把握できます。

この記事のライター

ライター兼動画編集者。“マーケテイング”という、よくわかりそうでよくわからない世界をわかりやすく伝えていきます。

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