マーケティングファネル分析とは
「ファネル分析」とは、マーケティングにおける顧客の購入プロセスを解析する手法です。
商品購入やサービス申込みなど、目標とするコンバージョンに至る顧客行動を分析し、CVに結びつかなかった際の離脱理由を明確にして改善策を講じます。
これにより、コンバージョン率を上げることができ、ユーザーに対して企業側が求める行動を促しやすくなります。
近年のマーケティングでは、大量生産・大量消費の時代から多様化するユーザーのニーズに合わせた商品の見せ方・提供が必要になります。そのためには、ファネル分析を実施し、移り変わるユーザー心理をいち早く捉え、ターゲットの認知・興味を促すアプローチが必要です。
新商品の販売やイベント運営など、これから認知を獲得することが必要な企業全てが活用できる分析手法がファネル分析になります。
■マーケティングファネルの重要性
前述した通り、マーケティングファネルは売り上げをアップさせる上で重要な分析手法になります。
マーケティング活動を通じて、商品やサービスをより多くの消費者に購入してもらうには、どのプロセスに課題があるのかを明確にし、その課題に対して最適な施策を打つ必要があります。
ファネル分析は商品認知から購買に至るまでのプロセスを可視化し、どの部分に課題があるかを把握できるため、コンバージョンに至らない根本的な問題をいち早く解決することができます。
これにより、顧客ニーズに合わせたプロセスを組むことができ、売上アップに直結する改善が可能です。
しかしながら、マーケティングファネル分析を活用するためには、分析対象となるユーザーや市場の正確なデータ収集が必要不可欠です。
データの質によっては分析結果の質も大きく異なるため、ユーザーの行動履歴や市場の動向といった、正確なデータを収集できる環境構築も進める必要があります。
■ファネル分析とカスタマージャーニーの違い
顧客の行動分析に活用できるファネル分析ですが、似たような分析としてカスマタージャーニーがあります。
両者は似たような分析ではあるものの、分析するポイントが異なります。
ファネル分析はコンバージョンに至るまでのプロセスを可視化するのに対し、カスタマージャーニーは、課題を見つけた後の改善策を検討するのに用います。
カスタマージャーニーは顧客が商品を認知し、購入・利用した後のリピートまでのプロセスを分析し、可視化します。これにより顧客の行動時点での心情や悩み・課題を理解し、それに基づいて価値を提供することができます。
カスタマージャーニーの分析の方が情報量が多く、より顧客の体験・心情に基づいた分析ができるので、より具体的な施策を考案するのに向いています。
カスタマージャーニーについては、以下の記事をご確認ください。
参考:カスタマージャーニーマップは古い?チャットGPTを活用した作成方法や事例・注意点を紹介
マーケティングファネルが古いと言われる理由
マーケティングファネルによる分析が古いと言われている理由は以下の通りです。
・顧客の価値観の多様化
・購買行動の多様化
ファネル分析は顧客の価値観が多様化する前に生まれた手法であり、現代の顧客分析には向かないと言われています。
実際、インターネットの普及により購買行動が多様化しました。インターネットのない時代は顧客自身が収集できる情報量が少なく、認知から購買に至るまでのプロセスが単純ですぐに購買に結びついていました。しかし、現在はWebサイトで情報を簡単に収集できるだけでなく、複数のサービスやSNSなどを活用して簡単に比較検討を行えます。
これらの背景から、顧客に価値観が多様化する前に生まれた分析手法である「マーケティングファネルは効果がないのでは?」と考えられています。
確かに、BtoCは様々な顧客ニーズがあるため、マーケティングファネルだけで顧客を完全に理解することは難しいかもしれません。しかし、BtoBの場合はサービスの選定担当者と決裁者は異なることがほとんどで、社内での承認を得られなければ導入してもらうことはできません。個人の意思ではなく「会社のための導入」であることから、ニーズが多様化せず、マーケティングファネルによる分析でも有効であると考えられます。
マーケティングファネルの種類
マーケティングファネル分析は3種類あります。
・パーチェスファネル
・インフルエンスファネル
・ダブルファネル
それでは詳しく解説します。
■認知から購買に至るプロセスを図式化した「パーチェスファネル」
パーチェスファネルは、消費者の購入プロセスを段階的に視覚化したモデルです。
パーチェスファネルは、認知から購買に至る心理プロセスを略称した「AIDMA(アイドマ)を元に発展した考え方です。このファネルを使用することで、顧客がどの段階で離脱しているかを明確に把握できます。
例えば、潜在顧客が初期段階で興味を示しても、実際に購入に至る顧客が少なければ、その間のマーケティング戦略を見直す必要があります。
パーチェスファネルの各段階に自社の顧客を当てはめれば「段階別の顧客」を明確にでき、顧客数が大きく減少している段階間で課題を見つけることができます。
■顧客の利用後のプロセスを可視化する「インフルエンスファネル」
商品やサービスの利用後の顧客行動を分析し、図式化したものがインフルエンスファネルです。インフルエンスファネルは消費者が認知から購買・共有までのプロセスを可視化するAISAS(アイサス)を元に生まれたモデルです。
インターネットやSNSの普及に伴い、誰もが発信者になれるこの時代では、利用者の口コミが広告塔になり大きな利益を生み出します。その「消費者が商品に対するイメージ」や「どのような口コミを増やすか」をコントロールするための分析がインフルエンスファネルになります。
■顧客の認知から情報共有までを可視化する「ダブルファネル」
ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせて、顧客の認知から情報共有までの流れを可視化したものです。
ダブルファネルを利用すれば、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを連携させてより具体的な分析が可能になります。
たとえば、ある顧客が商品を購入したもののリピート購入が見られない場合、顧客サービスやアフターケアに問題があることがわかります。
この顧客行動に基づき、顧客満足度を向上させるための施策を講じたり、リピートを増やすためにキャンペーンを実施したり、クーポンを発行するなどの具体的な戦略を検討できます。
マーケティングファネルの事例
ここからは、マーケティングファネルの事例について解説します。
■ECサイトのファネル分析の事例
ECサイトのファネル分析では、ウェブサイトにアクセスした段階から購入までの導線を追跡するのが基本です。
ECサイトではオーガニック検索だけでなく、SNS広告や検索型広告、ディスプレイ広告を利用している場合が多いので、それぞれのタッチポイントも計測します。
その中で、抽出できるデータは以下の通りです。
・サイトにアクセス
・商品ページを閲覧
・気になる商品をカートに入れる
・注文する
・商品ページのリンクをシェアする
ECサイトの売り上げを上げるとなれば「商品ページの閲覧から商品をカートに入れるユーザーを増やす」「商品をカートに入れてから購買まで誘導する」という2つのポイントが重要になります。
ここまで分析できれば以下のような改善案が生まれてきます。
・商品ページ閲覧時に購買を促すようなクーポン・キャンペーン情報を表示する
・カートに商品が入ったまま離脱したユーザーにリマインドメールを送る
・表示中のページにポップアップを出してカートに入っている商品のリマインドを行う
・決済フローにかかる手間を減らす
改善案を一つ一つ試していくことで、マーケティングによる成果を高められます。
■オウンドメディアにおけるファネル分析の事例
オウンドメディアにおけるファネル分析では、流入から問い合わせ、商談成立までを分析できます。
オウンドメディアから抽出できるデータは以下の通りです。
・オウンドメディアへのアクセス
・コンテンツの閲覧
・資料請求
・ウェビナーの参加
・商談
例えば、オウンドメディアのアクセスや資料請求が多いものの、ウェビナーへの参加や商談に繋がらない場合は「資料の内容に満足できていない」「ウェビナーの内容に興味がない」などの改善ポイントが見えてきます。
また、資料請求やコンテンツへの閲覧が少ない場合にはそもそものアクセス数に問題がある場合もあります。
このようにファネル分析を行うことで、何を重視して改善すべきかを判断できます。
マーケティングファネル分析のやり方
マーケティングファネルの分析は以下の手順で進めます。
・使用するファネル分析の種類を決める
・フェーズごとの顧客の状況・課題を分析する
・フェーズごとに合わせた改善策を検討する
それでは詳しく解説します。
■使用するファネル分析の種類を決める
まずは「パーチェスファネル」「インフルエンスファネル」「ダブルファネル」の中からファネルの種類を選びましょう。
選び方は以下の通りです。
・顧客からの売り上げを最大化するなら … パーチェスファネル
・既存顧客の力を駆使してさらに新規顧客を獲得するなら … インフルエンスファネル
・新顧顧客獲得から既存顧客の維持に活かすなら … ダブルファネル
パーチェスファネルは顧客の認知から購買までのプロセスの中で、購買までの障壁となっている課題を可視化するファネル分析です。購買までの障壁を理解し、課題を解決することで売り上げアップを目指せます。
インフルエンスファネルは、商品購入後の顧客の共有をコントロールするための分析になるので、既存顧客の拡散により新規顧客を見つけたい場合に役立ちます。
ダブルファネルは新規顧客の獲得や既存顧客の維持につなげられる分析で、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを合わせるため、より具体的に分析できるのが特徴です。
これらの特徴を踏まえ、自社の課題に合わせた分析手法を選びましょう。
■フェーズごとの顧客の状況・課題を分析する
ファネル分析の種類を選定したら実際にフェーズごとに顧客を分け、目的の行動までに障壁となっている課題を見つけましょう。
フェーズごとに顧客を分類し、離脱数を計算します。離脱が多い箇所が障壁となっている可能性が高いので、フェーズに合わせた改善策を検討しましょう。
例えば、ECサイトの場合に「カートに商品が入る点数は多いものの購入までに離脱されてしまう」という場合には、決済システムに何らかの問題がある可能性があります。
このようにフェーズごとに顧客を分類することで「どこに課題があるのか」を判断できます。
■フェーズごとに合わせた改善策を検討・実行する
フェーズごとに顧客が分類できたら改善策を検討・実行しましょう。
ファネル分析の結果「そもそもの流入を増やそう」「カートから購入までの導線やステップを簡略化しよう」などの改善策があれば一つ一つ実行します。
このように、ファネル分析を行えば、「自社にどんな課題があって、どのように改善すればいいか」が明確になります。
ニーズが多様化した現代でも、自社で保有するデータをファネル分析に当てはめれば、精度の高いマーケティング分析が可能です。現状、集客や売り上げが伸び悩んでいる企業は一度ファネル分析を試してみてください。
マーケティングファネル分析に活用できるツール
マーケティングファネル分析に活用できるツールは以下の通りです。
・Web解析ツール
・CRMツール
・MAツール
・SFAツール
それでは詳しく解説します。
■Web解析ツール
Web解析ツールは、Webサイト上のアクセスや顧客行動を分析できるツールです。Webサイトのページごとの訪問者数を割り出したり、アクセスしたユーザーのWebサイト内の行動を理解するのに役立ちます。
Googleアナリティクスなどは自社で運営しているWebサイトの分析に役立ちますが、株式会社ヴァリューズが提供する競合・業界・トレンドもわかるリサーチエンジン「Dockpit」では、国内最大規模の250万人のWeb行動ログデータを元に、客観的なデータを元にユーザー行動を分析できます。
ファネル分析では、自社の顧客情報も重要ですが、競合他社のWebサイトや集客施策を分析することも大切です。競合他社との比較により、新しい施策を生み出したり、より効果的な施策を組み合わせることも可能です。
「Dockpit」は無料で試せるので、すぐにファネル分析に必要なデータを抽出できます。
■CRMツール
CRMツールは顧客情報を一元管理し、顧客との関係を深めるために役立ちます。
顧客の購買履歴や対話記録を活用し、顧客ごとに最適化されたアプローチを行えます。
例として、リピーターに向けたクロスセル・アップセルにつながるクーポン券や限定価格でのご案内や、購入後のフォローアップを自動化することで、顧客満足度の向上とリピート率を高めることができます。
■MAツール
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、マーケティング活動の効率化を図る上で欠かせません。
顧客の行動追跡からデータ収集、スコアリング、キャンペーン管理を一括自動で行うことが可能です。
これにより、どの顧客が購買に近づいているのかをリアルタイムで把握し、ターゲットに合わせた適切なコンテンツを提供できます。
■SFAツール
SFA(セールスフォースオートメーション)ツールは、営業プロセスの自動化と効率化を行うための機能が搭載されています。
営業活動の各ステージでの進捗状況を把握し、どの顧客がどの段階にいるのかを視覚的に管理できます。
たとえば、各営業担当者ごとの案件の進捗状況ややり取りが自動で記録されるので、失注・受注の傾向を把握できたり、それぞれの課題を可視化できます。
これにより、営業チームがタイムリーに介入し、効果的なフォローアップを行うことが可能となります。
まとめ
この記事では、マーケティングファネル分析の基本的な解説に加え、種類や事例、分析ツールについて紹介しました。
マーケティングにファネル分析を取り入れることで、顧客の購買行動を細かく分類し、これまで見えてこなかった課題や改善策を見つけられます。
ECサイトやオウンドメディア、BtoCやBtoBなどの領域によってファネル分析の種類や結果が変わるので、まずは自社でファネル分析を活用してみてください。
Webライター。BtoB系の案件メイン担当。主に上位表示を目指したSEO記事の作成を担当。これまでに、コーポレーションサイトやオウンドメディア、求人広告など2,000記事以上を執筆。