オムニチャネルの次に来る「OMO」とは?「O2O」との違いも説明

オムニチャネルの次に来る「OMO」とは?「O2O」との違いも説明

オンラインとオフラインが融合した顧客体験を提供する「OMO(Online Merges with Offline)」が、オムニチャネルの次に来るマーケティング概念として注目されています。OMOの概念や特徴、オムニチャネルやO2Oなどの似た概念との違いについて説明します。


OMOの基本:オンライン、オフラインを意識しない顧客体験を実現する

OMO(Online Merges with Offline)は、元Google China代表の李開復(リ・カイフ)氏が2017年に提唱した「オンライン、オフラインを行き来する顧客の動向に合わせ、それぞれを融合させてよりよいUX(顧客体験)を提供する」という概念が元になっています。

そもそも、顧客は商品やサービスを手に入れるチャネルが、オンラインかオフラインであるかは意識せず、そのときに便利な方法を選んでいるにすぎません。

したがって、ECサイトで商品をお気に入り登録したのにアプリと連携していない、店舗で見た商品をECサイトでチェックする際にあらためて探し直す必要がある、店舗でアプリ機能を使おうにも階層が深く使いづらいなどの場合、顧客は不便を感じる=よりよいUXの提供にはならず、離脱してしまう可能性が高まります。

それぞれ独立した販売経路だった店舗とネット(EC)について、在庫管理を統合したり、オンラインからオフラインに誘導するといった施策は従来から行われてきましたが、そろそろオンラインとオフラインを融合させた顧客体験を設計してもよいのでは、という視点がOMOの着眼点です。

オンラインとオフラインの垣根をなくすマーケティング施策「OMO」とは?

https://manamina.valuesccg.com/articles/1109

昨今、OMO(Online Merges with Offline)という、オンライン、オフラインの境界を意識せずに顧客の購買意欲を創出するマーケティング施策が広まっています。オンラインとオフラインの垣根をなくすOMOとは何か、解説します。

O2Oの基本:オンライン、オフラインを切り分ける

O2Oは「Online to Offline」の略で、オンラインとオフラインを切り分けて考え、双方間の行き来を促すというマーケティング施策です。チャンネルに誘導するだけで、それぞれのユーザー体験は独立している点がOMOと異なります。

O2Oの一例として、ネットで割引クーポンを配布し、それを実店舗で使ってもらうという施策があります。この場合の効果測定は、店舗で使われたクーポンをカウントするだけなので、マーケティングやITに明るくなくても行いやすいメリットがあります。

類似ワード「オムニチャネル」とOMOとの違い

オムニチャネルは「すべてのチャネル(販路)」を意味します。オンラインとオフラインの区別をなくす、つまりは店舗とECとの連携を統合・強化して一貫性のあるサービスの提供を行い、顧客は店舗でもECでも都合のよいチャネルを選んでもらおうという施策です。

オムニチャネルはどちらかと言えば、販売・流通のバックエンドの統合に狙いがある点がOMOとは異なっています。

O2O、オムニチャネルに続くステップがOMO

販売チャネルとして実店舗とEC両方持っている企業も多くなっていますが、購入にいたるカスタマージャーニーのなかで、ネットで下調べして実店舗で購入するといった購買行動も一般的になっていて、マーケティングがそれぞれのチャネルで完結しなくなってきています。

こうした状況を受けて、オンラインからオフラインに誘導するO2Oや、在庫や購買履歴の一元管理により機会損失の防止や顧客満足度の向上を目指すオムニチャネルなどが試みられています。

このようにO2O化やオムニチャネル化で既存の仕組みを改善しつつ、OMOの準備に取り掛かるのがスムーズな流れと言えます。

たとえば、アパレルのセレクトショップ「BEAMS(ビームス)」では、2016年に従来独立していたECサイトと店舗それぞれの顧客データを一元化するオムニチャネル化し、現在はさらにOMO施策にも取り組んでいます。

具体的には、店頭スタッフがコーディネートをECサイトに投稿できるようにし、1年4カ月ほどで自社EC の売上におけるスタッフ投稿コンテンツ経由の割合が65%になるなど、大きな成果を挙げています。

スタッフ約2000人から累計12万個もコーディネート例が集まっていますが、ECサイトの売上に貢献したスタッフの表彰制度を設けるなどの工夫を行うなど、チャネル間の融合を進めています。

OMOの普及に必要なものは

企業側がOMO化を進めようとしても、それを可能とする下地がないと実現できません。OMOを提唱した李開復氏は、OMO普及にあたっては以下の4項目が必要不可欠であると説いています。

1.モバイルネットワークの普及
オンラインとオフラインが融合したユーザー体験を作るには、いつでもどこでも誰でもネットワークを利用できるインフラ環境が必要です。

2.モバイル決済の普及
各所でモバイル決済比率が高まれば、金額の大小、店舗の規模に関係なくモバイル決済を利用できるようになります。たとえば日本でも、決済手数料や初期費用を気にして、小規模店や少額決済ではキャッシュレス決済の導入が進んでいませんでした。最近では、初期費用や決済手数料が無料の◯◯PAY登場で状況が改善しつつあります。

3.幅広い種類のセンサーが高品質で安価に手に入り、それらが普及すること
安価で高品質なセンサーが「IoT」のようにネットワークにつながると、現実世界の動作がリアルタイムでデジタル化されます。そしてそれらのデータの活用が進みます。

たとえば、次世代通信規格5Gの時代には、超低遅延・多数同時接続という特徴を生かして、センサーなど多数のIoT機器がインターネットに接続することが期待されています。逆に言えば、多数同時接続できなかったり、一回線あたりの単価が高いネットワーク環境では、センサーを多数用いるIoT環境を実現するのは、まだ難しい、ということになります。

5GとIoTの関係とは?5Gに接続される機器はIoTが大多数に

https://manamina.valuesccg.com/articles/809

「超高速・超低遅延・多数同時接続」を特徴とする5G時代が間近に迫っています。5Gによってスマホの通信が高速化されるだけでなく、産業やインフラにも大きなインパクトがあるとされています。5Gの超低遅延・多数同時接続を生かしてセンサーなど多数のIoT機器がインターネットに接続し、新たなビジネスが生まれると期待されているからです。5GとIoTの関係、具体的なIoTの利用シーンを見ていきます。

4.自動化されたロボット・AIの普及
これによって、最終的には物流のオートメーション化も可能になります。

これら4項目が揃うと、リアルチャネルである店舗においても常時オンラインに接続され、リアルタイムでデータが処理されて総合利用できるようになります。こうしてオンラインとオフラインの境界は曖昧になって融合していく、と李開復氏は述べています。

まとめ

OMOの先進国と言われる中国ではすでにOMOは当たり前の現状・ルールになっています。
オフラインがなくなり、アフターデジタル社会化した中国では、「オンラインがベースにあって、店舗(リアルチャネル)はより深くコミュニケーションできる貴重な場」という考えが根付いています。

これからOMO、オムニチャネル、O2Oに取り組む場合は、このような考えをまず最初に身につけてからそれぞれの施策について熟慮すべきでしょう。

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この記事のライター

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