大ヒットRPGゲーム「エルデンリング」のオンライン上での話題性を分析

大ヒットRPGゲーム「エルデンリング」のオンライン上での話題性を分析

本記事では、2022年2月の発売と同時に大きな話題を呼んだ、オープンワールドのアクションRPG「エルデンリング」に着目し、どのようなタイミングでどのようなトピックがオンライン上で話題になっていたのか調査。ヴァリューズが保有するWeb行動ログデータを活用して、消費者の興味関心を定量的に分析します。


こんにちは。ヴァリューズデータ分析チームの安藤です。 普段の業務では、データアナリストとして大手広告代理店やECサイトを運営する事業会社と調査を行ったり、クライアントが保有する購買データや位置情報データなどの分析・可視化の支援を行っています。

本記事ではゲーム「エルデンリング」を取り上げ、オンライン上での話題性の拡散状況を分析します。2022年2月に発売されたゲームタイトル「エルデンリング」は、フロムソフトウェアが開発した、オープンワールド要素のあるアクションRPGゲーム。発売から1ヶ月後の2022年3月時点で既に、世界累計出荷本数は1,200万本を突破するなど、今年大ヒットしているゲームです。

作り込まれた世界観がエルデンリングの大きな魅力ですが、オンライン上での話題づくりはどのように設計されていたのでしょうか。ヴァリューズのWeb行動ログデータを用いて分析を行っていきます。

「エルデンリング」イメージ画像
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / ©2022 FromSoftware, Inc.

時系列で見る、エルデンリング関連行動をしたユーザーの推移

まず、「エルデンリング」に関連するWeb行動(*)を起こしたユーザー数の推移を、時系列で見ていきたいと思います。

直近約1年をそれぞれ、「プレローンチ期」(2021年6月~12月)「リリース直前広告期」(2022年1月~2月24日)「リリース後1ヵ月」(2022年2月25~3月24日)「リリース後2ヵ月」(2022年3月24~4月30日)と区分し、それぞれの時期別にどのようなことが起こっていたのか分析を行っています。次の図をご覧ください。

(* エルデンリングに関連するWeb行動:「エルデンリング」を含んだ検索クエリを検索した行動、もしくはWebページのタイトルに「エルデンリング」が含まれたページを閲覧した行動としている)

「エルデンリング」関連行動が見られるユーザー数の週次推移

表1:「エルデンリング」関連行動が見られるユーザー数の週次推移

最もユーザー数が多くなっているタイミングは、「リリース後1ヵ月」となっている様子が分かります(赤色の棒グラフ)。特に、リリースの週では、推計ユーザー数が400万人近くを示しており、発売と同時に多くの人の関心を寄せたことが分かります。

特徴的なポイントとして、発売から2ヵ月後の時点でも、コンスタントに多くのユーザーが反応していることが挙げられます。3月中旬にも、ユーザー数が大きく上昇している様子も見受けられ、リリースによる一過性の盛り上がりというより、長く話題を呼ぶ人気コンテンツとして世の中に受け入れられていることがこのグラフから分かります。

また、発売される前の時期にも着目してみますと、発売日の公表や、ゲームプレイの動画を公開したタイミングで非常に多くのユーザーの関心を寄せていることも読み解けます。

開発元のフロムソフトウェアは、過去に「ダークソウルシリーズ」「SEKIRO」といったヒットタイトルをリリースしていることもあり、発売に先駆けた情報公開のタイミングで多くの既存ファンの関心を集めていることが考えられます。

さらに、公開直前の時期になると、リリース日の2022年2月25日に向けて徐々にユーザー数が伸びてきている様子がみられました。

【関連記事】Game-Fiとは?4つのビジネスモデル変遷と事例から考える

https://manamina.valuesccg.com/articles/1799

昨年末に「メタバース」という概念がMeta社のプロパガンダのおかげで一気に広がったことは記憶に新しいでしょう。そして2022年に入ってから、古参のゲーム大手によるNFT進出やブロックチェーンゲーム企業の大型調達が話題になったり、ゲーム内で歩いて仮想通貨を稼ぐ「STEPN」がネット上でバズっていたり、そしてよくメタバースとも関連する文脈で、「Game-Fi 」という概念がひそかに広がり始めたりしています。経営コンサルタントで上級VR技術者としてXR(XReality)の市場調査や新規事業創成支援等の活動を行っているパトリック・ショウさんに、Game-Fi(NFTゲーム)の市場規模や特徴、ビジネスモデルの変遷について解説いただきます。

発売前に特徴的に閲覧されていたコンテンツは?

ここまでは、関心を寄せているユーザーのボリュームに着目してデータを見てきましたが、ここからは、「どのようなコンテンツが特に話題になっていたのか」というポイントで分析していきたいと思います。

下記に、発売前の時期でユーザーがエルデンリングに関してどのようなWebコンテンツに興味を示していたのか、閲覧ユーザー数の多い特徴的なコンテンツを時期ごとにピックアップして見ていきたいと思います。

2021年11月~12月での「エルデンリング」に関連して話題を読んでいたWebコンテンツ

表2:2021年11月~12月での「エルデンリング」に関連して話題を呼んでいたWebコンテンツ

表2では、2021年11~12月に閲覧ユーザーが多く関心を寄せていた、特徴的なWebコンテンツを示しています。

11月に関しては、多くのユーザーがゲームプレイの動画が公開されたことに興味を示している様子が見受けられます。実機のプレイ動画が公開されたことによってか、閲覧コンテンツの上位には、PC版のソフトを事前購入できるSteamのWebサイトがランクインしていました。

また、12月は年末の大きなゲームイベントのひとつである、「The Game Awards」で新映像が公開されたことを報じる記事が話題を読んでいる様子が見られます。同時期には予告トレイラーも公開され始めており、ストーリーや、世界観への期待が書かれているブログ・ニュース記事などが多くのユーザーの関心を寄せている様子も伺えます。

次にリリース間近の2022年1月から発売前日までの期間に、話題を呼んでいて、閲覧ユーザーの多い特徴的なWebコンテンツを見ていきます。

2022年1月~2月(発売日直前まで)の「エルデンリング」に関連して話題を呼んでいたWebコンテンツ

表3:2022年1月~2月(発売日直前まで)の「エルデンリング」に関連して話題を呼んでいたWebコンテンツ

2022年1月には、監督・制作陣のコメントなどが着目され始めている様子が伺えます。制作陣は過去に既にヒットしているタイトルをリリースしていることから、「次回作に対してのプレッシャーが高くなっている」といったコメントを報じている記事が閲覧されている様子が見られました。

発売間近の2月の特徴的な閲覧コンテンツには、ゲームレビュアーの方たちが先行プレイを実施し、ゲームプレイを絶賛している様子が報じられた記事や、「面白すぎて、プレイしたら死んでしまわないか」といったような記事が関心を寄せている様子が見受けられます。

海外レビュアーなど、信頼度が高いコアゲーマーからのコメントによって、ゲームプレイの質の高さが評判になり始め、購入を検討しているユーザーの期待がさらに高まっていたようです。

【関連記事】位置情報はシェアする時代。ビジネスからゲームまで、広がる位置情報の活用

https://manamina.valuesccg.com/articles/1637

SNSで「今ココにいるよ!」と位置情報をシェアする人が増えているようです。中高生や学生も、今誰とどこにいる(いた)かを、映え写真にしっかりタグ付けしてシェアするわけで、スポット側もその対応に追われます。もはや位置情報はシェアする時代。交通・物流サービスでの活用は大前提、ゲームアプリでは「位置ゲー」が幅広いユーザー層で愛されています。今回はそんな位置情報の活用の実態を調査しました。

リリーズ前後での閲覧サイトランキングから見えてくること

次は、時期別に関連行動が多く見られた閲覧サイトを見ていきましょう。

「エルデンリング」に関して時期別に閲覧ユーザー数が多いサイトランキング

表4:「エルデンリング」に関して時期別に閲覧ユーザー数が多いサイトランキング

表4では、時期別に話題を呼んでいた媒体の上位20サイトをピックアップして示しています。

「プレローンチ期」や「リリース直前広告期」では、「ファミ通.com」「オレ的ゲーム速報」などが上位にランクイン。ゲーム情報に関して情報感度が高いユーザーの閲覧傾向が高いと考えられる、ゲーム専門メディアサイトが上位に見受けられました。

一方、「リリース後1・2ヵ月後」の時期には、同様にゲーム専門メディアが上位に来ている傾向は見受けられるものの、「livedoorブログ」「Yahoo!ニュース」「YouTube」といったコアゲーマー向けではないメディアも上位にランクインしています。リリース後は、一般的なユーザーも多く利用する大手メディア媒体が上位に上がっていることが、特徴のひとつとして伺えます。

まとめ:エルデンリングの話題拡散の流れ

発売と同時に大きな関心を呼び、公開から2ヵ月経っても依然、多くのユーザーの注目を浴びるヒットコンテンツだったエルデンリング。Web行動データを分析した結果、エルデンリングの人気拡散については以下のことが示唆されました。

1.発売前から少しずつ情報を出しユーザーの注目を集める。発売前の情報には「販売元が公式で公開する予告動画」だけでなく、監督や制作スタッフの苦労話などの「制作の裏の声」といった情報などがあった。

2.発売の直前になると海外レビュアーが先行プレイを実施し、絶賛している様子が見られた。このように、信頼性が高くSNSでの影響力を併せ持つ人のコメントによって、ユーザーの期待が醸成された。

3.媒体別に見ると、発売前はファミ通などのゲーム専門情報メディアが中心だったが、発売後は人気に火がつきYahoo!ニュースなどの一般的なユーザー向けのメディアでも取り上げられることが多くなり、一般ユーザーにも広がっていった。

今回は「エルデンリング」に着目して話題性を分析しました。Web行動ログを活用することで、オンライン上で特定のコンテンツが波及していった流れや、話題性を獲得する過程が見えてきたと思います。弊社・ヴァリューズでは、Web行動ログデータを活用した市場動向の把握や競合の分析を得意としています。興味をお持ちの方は下記ボタンよりお気軽にご相談ください。

調査データのお問い合わせはこちら

Top Photo by Adobe Stock

▼本記事を執筆した安藤は、流行の変化を丁寧に分析した記事を多数執筆しています。以下のメモアプリ調査や観光業界のコロナ影響調査もぜひ併せてお読みください。

若年層に人気のNotionがユーザー数1位のEvernoteを追う!メモアプリの利用実態調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/1584

主要メモアプリのインストール数、月次起動ユーザー数や、ユーザー数推移、利用者の属性などの利用実態を調査します。分析には株式会社ヴァリューズが保有するアプリ行動ログデータを使用。Evernoteがユーザー数でトップも、新興のNotionが若年層を中心に伸びている実態が見えてきました。

緊急事態宣言明けで旅行検討者はコロナ以前の水準まで回復か。一方「個室で朝食」ニーズは継続中

https://manamina.valuesccg.com/articles/1583

新型コロナウイルスの影響で、大きな打撃を受けていた旅行業界でしたが、ワクチン接種の普及や緊急事態宣言の解除など、少しずつコロナ以前の状態に戻りつつあることが考えられます。宣言解除後に消費者はどのように旅行・お出かけに関して検討をしているのか、ヴァリューズのデータ分析チームの安藤さんがウェブ行動ログを活用して分析します。

この記事のライター

同志社大学商学部商学科卒業後、新卒でヴァリューズに入社。
データアナリストとして大手広告代理店やECサイト、化粧品業界などを担当。

ヴァリューズのWEBログデータの分析だけでなく、購買データや位置情報データなどの分析・可視化や活用支援も行う。

関連する投稿


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

マナミナでは、国内最大規模の消費者オンライン行動データを活用して、世の中のトレンドを調査しています。2024年もさまざまなトレンドを記事として取り上げてきました。今回は調査記事の総集編として、2024年のトレンドを振り返ります。


2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

パリ2024オリンピックや衆議院選挙が行われた2024年は、どのような1年だったのでしょうか?2024年新語・流行語大賞の分析とヴァリューズで分析した今年1年間の週間検索キーワードランキングから2024年のトレンドを分析しました。


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – ライフスタイル・消費トレンド編」を公開

データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – ライフスタイル・消費トレンド編」を公開

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)


最新の投稿


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、全国のマーケティングコンサルタントを対象に、「BtoBマーケターが始めた方が良いこと」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

即時払いで決済を行うデビットカード。キャッシュレス決済全体に占める割合はまだまだ低いものの、利用者や利用場面は着実に増加しており、成長の兆しを見せています。本稿では、そんなデビットカードの検討状況について、キャッシュレス決済カテゴリのマーケットリーダーであるクレジットカードと比較し、今後の市場動向を占います。


博報堂DYMP、日本経済新聞社・東北新社と企業ブランディングのためのドキュメンタリー動画広告企画を開発

博報堂DYMP、日本経済新聞社・東北新社と企業ブランディングのためのドキュメンタリー動画広告企画を開発

株式会社博報堂DYメディアパートナーズは、株式会社日本経済新聞社、株式会社東北新社とともに、ドキュメンタリー動画を制作・提供する広告企画「日経ブランドドキュメント」を開発したことを発表しました。


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

マナミナでは、国内最大規模の消費者オンライン行動データを活用して、世の中のトレンドを調査しています。2024年もさまざまなトレンドを記事として取り上げてきました。今回は調査記事の総集編として、2024年のトレンドを振り返ります。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ