若年層に人気のNotionがユーザー数1位のEvernoteを追う!メモアプリの利用実態調査

若年層に人気のNotionがユーザー数1位のEvernoteを追う!メモアプリの利用実態調査

主要メモアプリのインストール数、月次起動ユーザー数や、ユーザー数推移、利用者の属性などの利用実態を調査します。分析には株式会社ヴァリューズが保有するアプリ行動ログデータを使用。Evernoteがユーザー数でトップも、新興のNotionが若年層を中心に伸びている実態が見えてきました。


こんにちは。ヴァリューズデータ分析チームの安藤です。 普段の業務では、データアナリストとして大手広告代理店やECサイトを運営する事業会社と調査を行ったり、クライアントが保有する購買データや位置情報データなどの分析・可視化の支援などを行っています。

本記事では、メモツールをテーマにアプリ行動ログを分析した事例を共有させていただきます。「Evernote」「OneNote」「ToDoist」「Notion」「Simplenote」「Dropbox Paper」の6つのアプリを対象として、行動ログを分析しました。

▼関連:安藤さんの前回執筆記事はこちら。緊急事態宣言明けの旅行検討者のWeb行動を分析しています。

緊急事態宣言明けで旅行検討者はコロナ以前の水準まで回復か。一方「個室で朝食」ニーズは継続中

https://manamina.valuesccg.com/articles/1583

新型コロナウイルスの影響で、大きな打撃を受けていた旅行業界でしたが、ワクチン接種の普及や緊急事態宣言の解除など、少しずつコロナ以前の状態に戻りつつあることが考えられます。宣言解除後に消費者はどのように旅行・お出かけに関して検討をしているのか、ヴァリューズのデータ分析チームの安藤さんがウェブ行動ログを活用して分析します。

メモアプリのユーザー数でもっとも多いのはEvernote

まず、今回の調査で分析対象としたアプリの2021年における基本的な指標として、月平均の推計インストールユーザー数と起動ユーザー数、1ユーザーあたりの月次平均アプリ起動回数について、弊社が保有する行動ログデータから推計していきたいと思います。

メモツールの基本指標

表1:メモツールの基本指標

利用が最も活発なアプリは「Evernote」であることが分かります。
アプリを起動しているユーザーの数は2位の「OneNote」と比較して倍以上という結果が示されています。

また、ユーザー1人当たりの起動回数を見てみると、「Simplenote」が対象アプリの中では最も多い傾向にあることが分かりました。一方、インストールユーザー数が最も少ない「Dropbox Paper」はユーザー1人当たりの起動回数も対象アプリの中では最も少ない結果となっています。

月次起動ユーザー数推移でNotionの成長ぶりが明らかに

次は、起動ユーザー数にフォーカスして、各アプリの月次の推移を見ていきたいと思います。

メモツール起動ユーザー数の月次推移

表2:メモツール起動ユーザー数の月次推移

表2では、2020年1月〜2021年12月までを対象期間としています。
最も顕著な特徴として「Notion」を利用するユーザーが2020年12月あたりを境に大幅に増加してきていることが読み取れます。

新興のサービス「Notion」はメモツールだけに収まらない多機能なサービスとして、昨年ごろから人気があがっています。長年サービスを継続している他のサービス(「Evernote」や「OneNote」など)と比較するとまだユーザー数は少ない現状ですが、今後もサービスが浸透し、ユーザー数も着実に増加していくことが考えられます。

▼関連:マナミナでのNotion調査記事

仕事管理ツール「Notion」がデザイナーやエンジニアの間で人気な2つの理由とは?関心層をログデータで調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/1409

「Notionは、僕らにとってのオフィス」。愛するユーザーがそう語るのが、仕事管理ツール「Notion」です。2019年には100万人ほどだったNotionのユーザー数は、2021年現在では全世界で1,000万人を超えており、すでに日本法人も始動しています。そんな話題沸騰中のNotionですが、そもそもいったいなぜ人気なのでしょうか? また、どんな人が関心をもっているのでしょうか。Web行動ログ分析ツール「Dockpit」を用い、Notionの人気の理由やユーザー像を調査します。

対照的に「Dropbox Paper」は対象期間を通してユーザー数が減少傾向にあることも読み解けます。特に2020年下旬から2021年上旬にかけてユーザー数が減少している様子です。

次に、各アプリの利用ユーザー数を四半期ごとに集計し、昨対比を折れ線グラフで示したデータを見てみましょう。

メモツール起動ユーザー数の昨対変化

表3:メモツール起動ユーザー数の昨対変化

前述したように、こちらのデータからも「Notion」の急成長ぶりがよみとけます、特に2021年の1Qは昨年と比較して10倍近くユーザー数が増加している様子も見受けられます。

一方、「Notion」以外のアプリでは、2020年から2021年にかけて、軒並みユーザー数が減少している傾向が読み解けます。対象アプリの中で最もユーザー数が多い「Evernote」に関しても2021年は平均して約-20%程度ユーザー数が減少している様子が見られました。

「Simplenote」は2020年4Qから2021年3Qにかけて前年比がマイナスとなっていましたが、直近の2021年4Qには回復している様子が見受けられます。

NotionとTodoistで若年層割合が高い

ここまでは各アプリの利用者数に注目して分析してきましたが、ここからは、それぞれのアプリを利用しているユーザーの属性にフォーカスして分析を進めていきたいと思います。表4では、それぞれのアプリにおけるユーザーの年代別の構成比率を示しました。

表4:メモツールアプリ利用者の年代構成比率

全体を通して、20〜30代のユーザーが多くなっている傾向が読み取れますが、特に「Notion」「Todoist」のアプリ利用ユーザーで特徴的に若年層の割合が高い傾向が見られます。

「Notion」では対象サービスの中でも軒並み20代のユーザー割合が高く、50%以上のユーザーを20代が占めていることが示されています。新興のサービスであることから、若者を中心に利用が進んでいることが考えられます。

一方、近年ユーザー数が減少している傾向にある「Dropbox Paper」では若年層のユーザー割合が最も低い傾向が見られ、40代の割合が3割以上となっており、対象アプリのなかで最も利用ユーザーの年齢層が高い様子が読み解けます。

次に、表5ではそれぞれのアプリを2021年に利用したユーザーの職業別の構成比率を示しています。

表5:メモツールアプリ利用者の職業構成比率

総じて「会社勤務(一般社員)」の属性がボリュームゾーンとなっている傾向が見られます。

特徴的なポイントとしては、「ToDoist」「Notion」は学生の割合が比較的高くなっていることや、「Dropbox Paper」において会社経営者の割合が高くなっていることなどが読み解けます。

Notionが勢いを増し、Evernoteは押され気味か

最後に本記事での分析をまとめます。

まず、人気メモツールアプリの中では、長年サービスを継続している「Evernote」「OneNote」を依然として多くのユーザーが利用していることが分かりました。ただし、「Evernote」などの人気サービスは近年利用ユーザーの減少が起こっており、特に2020年の後半ごろからその傾向が顕著に現れていると言えます。

一方で、新興のサービス「Notion」は現状での利用ユーザー数は多くはありませんが、近年大幅にユーザー数が伸びてきていることが分かりました。特に20〜30代の若年層のユーザーは「Notion」などの新興サービスを利用する傾向が強いようです。

今後とも各アプリの動向には要注目です。今回の分析をぜひご自身の業務に活かしてみてください。

▼ヴァリューズではWeb行動ログデータを活用した市場動向/競合分析を得意としています。興味をお持ちの方は下記ボタンよりお気軽にご相談ください。

調査データのお問い合わせはこちら

Top Photo by Adobe Stock

この記事のライター

同志社大学商学部商学科卒業後、新卒でヴァリューズに入社。
データアナリストとして大手広告代理店やECサイト、化粧品業界などを担当。

ヴァリューズのWEBログデータの分析だけでなく、購買データや位置情報データなどの分析・可視化や活用支援も行う。

関連する投稿


Why are certain AI English conversation apps “chosen” over others? Exploring how each app is used

Why are certain AI English conversation apps “chosen” over others? Exploring how each app is used

Spring is the season for trying something new, and many want to commit to learning English. Many apps have emerged that offer easy, self-paced English-learning. We will focus on Speak, ELSA Speak, SpeakBUDDY, and Duolingo and analyze the data to investigate the latest trends in AI English conversation apps.


”選ばれる”AI英会話アプリの差別化要因とは? データで各サービスの使われ方を探る

”選ばれる”AI英会話アプリの差別化要因とは? データで各サービスの使われ方を探る

なにかと新しいことに挑戦したくなる春。「今年こそは英語学習に力を入れたい!」と考える人も多いかもしれません。近年、自分のペースで手軽に英語の勉強ができるアプリが数多くリリースされています。今回はそのなかから「Speak」、「ELSA Speak」、「SpeakBuddy」、「Duolingo」に注目し、データを分析。AI英会話アプリの最新の動向を調査します。


サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

位置情報共有アプリ、Zenly。かつて一般的ではなかった「位置情報を共有する便利さ」をユーザーに伝え、位置情報共有アプリという新ジャンルを開拓しました。友人や家族との待ち合わせに使ったり、スマホの紛失に備えたり、災害時の安否確認として使ったり…とユーザーに様々な需要を生み出したZenlyですが、2023年2月3日にサービスを終了しました。ではその後、Zenlyユーザーはどのアプリを利用しているのでしょうか?この記事では、Zenlyに代わる位置情報共有アプリの現在を、サービス終了直後の分析結果と比較しながら考察します。


2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Pokémon Sleep編】

2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Pokémon Sleep編】

大注目の中、2023年7月にリリースされた、画期的な睡眠アプリ「Pokémon Sleep」。マナミナではリリース直後にユーザー分析を行い、ポケモンが好きな人も、普段スマホゲームをしない人も利用していることがわかりました。リリースから半年経った現在、ユーザー層はどのように変化したのでしょうか。Dockpitとstory bankを使って分析していきます。


2023年マッチングアプリ最新動向!マッチングアプリ市場のニーズと今後の可能性は?

2023年マッチングアプリ最新動向!マッチングアプリ市場のニーズと今後の可能性は?

近年、マッチングアプリ経由の結婚が増加しています。本記事では、大手マッチングアプリ5つ(「with」「Pairs」「タップル」「Tinder」「Omiai」)について、その特性と利用実態を調査・分析しました。マッチングアプリに関連した人々のニーズを探り、それを踏まえた市場の今後の可能性についても考察します。


最新の投稿


タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

近年タイではコーヒーブームが起こっています。バンコクには次々と新しいカフェができており、SNS映えする店内だけではなくコーヒーの味にもこだわりを持つカフェが増えています。実際に、起業してカフェオーナー兼バリスタになるのはタイでは一つのトレンドです。 近年、タイのコーヒー市場は右肩上がりに伸びており、タイのコーヒー市場は日本円で1440億円を超えると言われています。 そこで本記事では、タイのコーヒー市場の現状を読み解くとともに、タイでなぜコーヒーの人気が高まっているのかを、タイのコーヒーブームの歴史と共に解説します。


2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

株式会社Creative Groupは、同社が運営するメディア『トレンドメディアTrepo(トレポ)』にて、10代~20代の女性を対象に、2025年上半期のZ世代トレンド予想調査を実施し、結果を公開しました。


ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズは、ゲームプレイヤーの心理・行動を分析し、分かりやすく彼らの実態を可視化した「ゲーム総合調査レポート2024」を作成し、公開しました。


スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

疲労回復、毎日のコンディション管理に必要不可欠な「睡眠」。その睡眠、あなたは足りていますか?最近ではニュースでも多く取り上げられた通り、日本は世界規模での「不眠大国」。実に日本人の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)の加盟国33ヵ国の中で最下位とも言われています。そして睡眠はただ眠るだけではなく、経済とも大いに関わりがあるのです。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、良質な睡眠の鍵を解説します。


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、全国のマーケティングコンサルタントを対象に、「BtoBマーケターが始めた方が良いこと」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ