たまごっちブームは「コラボ×マーケティング戦略」がカギ?人気再燃のワケを探る

たまごっちブームは「コラボ×マーケティング戦略」がカギ?人気再燃のワケを探る

1996年女子高生を中心に大ブームを起こした「たまごっち」。新語・流行語大賞、ノーベル賞のパロディ的な賞であるイグノーベル賞も受賞した、記憶に残る玩具のひとつです。そんなたまごっち、いま再ブームがきていることご存じでしたか? ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」で調査しました。


たまごっちの歴史

1996 年 『たまごっち』

まずはたまごっちの歴史について振り返ります。たまごっちは1996年11月、携帯型育成玩具としてバンダイから発売されました。入荷の情報を聞きつけた消費者が徹夜で店舗に並んだり、その希少価値から高値で転売されたりと、大ヒット商品として歴史に名を残しています。

初代のたまごっちはモノクロの液晶画面からスタート、2004年には赤外線通信機能が搭載された「かえってきた!たまごっちプラス」が発売され、2008年にはカラー液晶機能が搭載された「たまごっちプラスカラー」、そして2021年にはコミュニケーションをよりスマートに楽しめる腕時計型モデルの「Tamagotchi Smart」と、トレンドが激しく変わる玩具業界で、2022年現在までの約26年、新商品が発表され続けています。

イベント実施と機能アップデートで、検索者が急増

直近2年間の動きを見ていくと、たまごっち検索者の推移にとくに著しい変化がうかがえるポイントが2つありました。

検索者の推移

「たまごっち」 検索者 推移
(集計期間:2020年7月~2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)

「たまごっち」の検索者数は、年代の拡大とともに右肩上がりに伸びています。しかし気になるのは2021年6月と11月、急激な増加を見せており、現在も検索者を維持しています。その背景にはどのような出来事があったのでしょうか。

2021年6月には、たまごっち25周年を記念し、ガールズグループ“NiziU”を起用して新商品の発表イベントが行われました。その後11月に発売された「Tamagotchi Smart」には、コミュニケーションをとるほど検索者に寄り添うパーソナルペットとしての機能、タッチ液晶とマイク、そしてスマートウォッチのように身に着けて持ち歩ける形状が採用されています。

人気グループとのコラボイベントで注目を集めつつ、現代のニーズに合わせた機能アップデートを行ったことが、検索者の急増につながったと見られるたまごっち。しかし、たまごっち検索者増を後押しする要因はこれだけではないようです。

※画像はTamagotchi Smart NiziUスペシャルセット

初代ブームの懐かしさから購入に至る

たまごっち検索者の年代をみていきます。

年代

「たまごっち」検索者 年代構成
(集計期間:2020年7月~2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)

年代別に見ると40代が20.7%ともっとも多い結果となりました。初代ブームの際に10代半ば〜20代前半にあたる方が現在40代。かつて遊んでいた記憶から購入に至ったり、家庭を持つ方は自身のお子さんに贈ったりなど、子どもの頃の思い出や懐かしさが再び興味関心へとつながったのかもしれませんね。

幅広い年代に支持されている「3つの理由」

次に、年代の推移を見てみましょう。
各年代が散らばっていた状態から、直近は年代間の割合の差が縮まっているのがわかります。

年代推移

「たまごっち」検索者 年代推移構成
(集計期間:2020年7月~2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)

特に10代と50代以上の検索者の増加が見られます。
幅広い年代から注目される背景にはどのような理由があるのでしょうか? 読み解いていくと、これには人気キャラクターとのコラボが起因していそうです。

年代推移構成(10代、50代以上のみ)

「たまごっち」検索者 年代推移構成(10代、50代以上のみ)
(集計期間:2020年7月~2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)

1. 人気キャラクターとコラボした“意外性”

お世話に応じて、どのようなキャラクターに進化していくのかを見守るのがたまごっちの醍醐味。そのキャラクターの種類を意外な方向に広げたことに注目です。たまごっちがコラボしたキャラクターの代表的な作品といえば、映画化もされ空前の人気を呼んだ『鬼滅の刃』、モルモットが車になった世界を描いた『PUI PUI モルカー』、1971年から続くヒーロー作品の『仮面ライダー』、週刊少年ジャンプの人気漫画『ONE PIECE』などが挙げられます。

※画像は2022年6月18日に発売された「きめたまごっち」

2013年、高知工科大の「アニメキャラを活用したコラボ戦略について」の論文においても、コラボ戦略では意外性と話題性が有効であると述べられていました。昔から発売されている玩具と現代の人気キャラクターのコラボという意外性が、話題にあがりやすい要素だったといえるでしょう。

2. 各キャラクターのファン層にリーチ

女子高校生をターゲットにするところからスタートした玩具ではありますが、コラボを通して、個別のキャラクターについているファン層、すなわち従来のターゲット層以外へリーチし、新しい層を獲得することに成功したと考えられます。

とくに注目されていたコラボは、最も面白いと思うアニメランキングで10代〜70代以上の全世代で1位(※)を獲得した鬼滅の刃。「たまごっち」との掛け合わせワードにおいても1位と2位、5位を占めていました。

(※)株式会社モニタス「アニメに関する調査」参照

掛け合わせワード

「たまごっち」との掛け合わせ検索ワード
(集計期間:2020年7月~2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)

全世代に愛されている鬼滅の刃とは、2022年7月現在までで4回のコラボを実現しています。継続的なコラボ企画を通して、認知拡大や購入に貢献しているといえるのではないでしょうか。

新しい層の獲得という点では、性別にも変化があらわれていました。

男女

「たまごっち」検索者 男女構成
(集計期間:2020年7月~2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)

男女別の比率を見てみると、その差はほとんどありません。当初は女子高校生をターゲットにしていたたまごっちも、さまざまなキャラクターコラボを通して性別問わず選ばれる玩具へと変化していったようです。

3. アニメファンはSNSとの親和性が高い

先述の「アニメキャラを活用したコラボ戦略について」の論文では、アニメファンの活動の場はSNSが活発と述べられています。アニメキャラとコラボすることで、SNS内で情報が拡散されやすかったのも、もしかすると幅広く認知を獲得した要因の1つかもしれませんね。

【まとめ】玩具ブームは「新たな層の獲得」と「機能アップデート」がカギ

今回の調査結果ではたまごっちブームの裏側に2つの要因が見受けられました。
1つ目はイベント実施や人気キャラクターとのコラボを通じて、幅広い年代へリーチし、新しいファン層を獲得できたこと。「コラボ×マーケティング戦略」が有効である可能性です。
そこには「人気キャラクターとコラボした“意外性”」「各キャラクターのファン層にリーチ」「アニメファンはSNSとの親和性が高い」の3つが関係していそうです。とくに全世代で人気を集める『鬼滅の刃』とのコラボレーションは、継続的に行っている背景からも検索者増加へ繋がっているのではないでしょうか。

2つ目は、上記で紹介したイベント実施や人気キャラクターとのコラボのタイミングで、機能アップデートを加えた新商品をローンチしたことが挙げられます。過去にたまごっちを所持していた消費者に対し、年月を経て技術的にも進化したバージョンを提供することで、懐かしさと興味を喚起させたことも検索者の急上昇に起因していそうです。

このように複数の企業がお互いの良い部分を共有し戦略的に協力する “コラボマーケティング”と同時に行った“機能アップデート”が、たまごっち人気再燃の火付け役といえるのではないでしょうか。今後のコラボ企画にも注目したいですね。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログと検索者の属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2020年7月〜2022年6月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

女性系メディアの運営に4年携わり、現在は子育てをしながらフリーランスとして活動中。みなさんの”選択肢のひとつ”になるような、役に立つ記事をお届けしたいです。

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