「市場規模」と検索するユーザーの特徴を掴む
本記事では、「市場規模」というクエリで検索しているユーザー像を分析していきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用します。
はじめに、「市場規模」の検索ユーザー数の推移から見ていきましょう。
「市場規模」クエリの検索ユーザー数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2020年7月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン
上記グラフを見ると、「市場規模」の検索ユーザーは月間3〜4万人ほど。また、ユーザー数が2020年から2022年にかけて、徐々に右肩上がりに伸びているのは特徴的です。
2020年はコロナ禍に突入し、各ビジネスのフィールドで足元の業績の立て直しや、既存の事業形態の見直しなどに追われていた時期だと思います。その後、2021年に入って「市場規模」の検索ユーザー数が伸びていることを見ると、withコロナやafterコロナを意識して、自社のビジネスをどのように伸長させていくべきか調査するユーザーが増えている……といえるかもしれません。
続いて、検索ユーザーの属性データも見てみます。
「市場規模」クエリのユーザー属性(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2020年7月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン
検索ユーザーの性別は男性が70%を超えており、かなりの割合を占めている様子です。また、年代のデータでは、20代・30代の若手世代の検索が盛んなことがわかります。事業戦略を練るうえでのリサーチ業務を担うユーザーや、新たなビジネスチャンスを模索する若手ビジネスパーソンなどが検索者像として想定できるのではないでしょうか。
「市場規模」関心ユーザーの検索キーワードランキング
「市場規模」クエリの検索キーワード(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン
上記、検索キーワード上位を見ていくと、1位・2位には「市場規模」「市場規模 ランキング」という、各市場の大きさや規模の大小を比較したいニーズを持った検索ワードが並びます。
また、3位以下には「ヘルスケア」や「人材」など具体的な業界名の掛け合わせキーワードが並んでおり、リサーチャーからの関心が高い業界を把握することができます。関心を集めるいくつかの市場動向について、次で詳細に触れていきます。
■ 「ヘルスケア」市場はデジタル化とコロナ影響で加速中
先ほどのランキングで上位に登場していた「ヘルスケア」の市場は、近年のDXやIoTといったデジタル革新に加え、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大も後押しとなり急拡大しています。
経済産業省のレポート「経済産業省における ヘルスケア産業政策について」によれば、国内のヘルスケアビジネスの市場規模は2016年時点で約25兆円だったものが、2025年には約33兆円に届く見込みで、急進的な伸びを予測しています。
「ヘルスケア」は健康の維持・増進・管理など幅広い文脈でのビジネス領域を持ちます。サプリメントやフィットネスといった既存の事業領域に加え、近年ではウェアラブル端末の登場や、IoT技術を用いた健康管理のデータ化・デジタル化に関連する事業を行う企業が増加している印象です。
こういった市場状況は、コロナ禍を経て人々の健康維持への意識が高まったことにより、マーケットの成長を伸長させているとも考えられます。
また、ヘルスケア市場は日本が抱える少子高齢化という難題と、非常に密接な関係を持つ市場でもあります。岸田政権発足後には「介護士の所得向上」の政策が取られましたが、今後、政府の積極的な資本介入が期待できることからも、ますます拡大していくマーケットであると言えるでしょう。こうした背景を見ると、「ヘルスケア 市場規模」検索が上位にランクインしていたのも納得です。
スマートウォッチ市場のユーザー層を調査。Apple WatchとFitbitの購買検討層の違いが明らかに
https://manamina.valuesccg.com/articles/1515多機能なウェアラブルデバイスとして人気を集めるスマートウォッチ。コロナ禍のここ2年ほどで出荷台数は増え、スマートウォッチ市場は拡大中です。需要はどのような消費者ニーズにより引き起こされているのか、「スマートウォッチ」検索者や国内シェア上位のApple WatchとFitbitの購買検討層を分析します。
■afterコロナを見据えて関心の高まる「人材業界」
前段のランキングでは5位に登場していた、「人材業界」への興味関心も高まっている様子が窺えます。人材業界は一般的に「人材紹介」「人材派遣」「再就職支援」という主要3領域の合算で表され、ここ2年ほどはそれぞれの領域が新型コロナによる企業の雇い止めの影響を大きく受けたことが記憶に新しい業界です。
とはいえ、リクルート社が発表している「2022年 転職市場の展望」というレポートによれば、企業の中途採用求人数は2021年に入ってから急速回復しており、採用計画の遅れから大量採用に踏み切る企業も現われるなど、人材業界にはある程度の市場の復旧が見られる様子です。
過去2年ほどの同市場の成長は停滞してしまいましたが、雇用があり続ける限り消えることはない大きなマーケットです。他の市場同様に、AIを活用したジョブマッチングやリモートワークを前提としたリクルーティングなど、DX推進が目覚ましい分野でもあることも注目を集める要因でしょう。
また、コロナ禍では有効求人倍率の下降が話題になりましたが、国内の少子高齢化の波を考えると慢性的な採用激化が継続していくことが予想されます。こういった状況を受け、近年ではスカウト型の採用媒体へのニーズが高まるなど、引き続き、各プレイヤーの世相を踏まえた動向が要注目のマーケットだと感じます。
転職市場はコロナでどう変化した?「買い手市場」下の求職者の意識を検索ワードから分析
https://manamina.valuesccg.com/articles/12042020年からの新型コロナウイルス感染拡大は、企業の人材採用を委縮させ、採用の現場は「買い手市場」へと大きく変貌しました。転職を考える人、そしてそれを選考する企業側がどのような状況にあるのか、ヴァリューズの分析ツール「Dockpit」を用いて調査していきます。
「市場規模」関心ユーザーの流入先ページ
最後に、「市場規模」クエリで検索しているユーザーの流入ページのデータを見てみます。
「市場規模」クエリの流入ページ(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン
流入ページのデータを見てみると、最上位に表示されるのは「市場規模マップ」というサイトです。このサイトでは行政の調査データをソースにして、国内の市場規模を視覚的に捉えることが可能です。
「市場規模マップ」同様に、3位の業界動向サーチが提供する「業界別 業界規模ランキング」も市場の大きさを俯瞰するのに有用なページです。こちらのサイトでは他にも、天気図の形式で各マーケットの動向を直感的に把握できるコンテンツも用意されており、面白いです。
まとめ
様々な市場動向を察知して、自他のビジネス領域へのリテラシーを高めておくことは大切といえます。各市場の規模感、将来性、プレイヤーの分布図など、常に最新の情報にアップデートを行うことが好ましいでしょう。
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2020年7月〜2022年6月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。