注目高まるエキゾチックペット。飼い主のユーザー像を行動ログデータから分析してみた

注目高まるエキゾチックペット。飼い主のユーザー像を行動ログデータから分析してみた

「ペット」で思い浮かぶ動物は何ですか?定番の犬猫以外に、知り合いからもらったハムスターやお祭りですくった金魚など、「エキゾチックペット」も犬猫に負けない人気が集まっています。今回はエキゾチックペットの定義と市場概況の紹介に加え、直近一年間(2021年8月〜2022年7月)のWeb行動ログデータから、飼い主の特徴と関心を読み取ります。


実は50%の人が飼育経験がある!?エキゾチックペットって?

a. エキゾチックペットとは

エキゾチックペット(エキゾチックアニマル)という言葉は明確な定義がありませんが、一般的に「犬猫以外でペットとして飼育されている動物全般」を指しています。文鳥、ハムスター、モルモット、メダカ、カメといった動物から、ペットとして珍しいメンフクロウ、プレーリードッグ、フェネック、ボールパイソンまで、全てエキゾチックペットと呼ばれています。

b.エキゾチックペットの市場概況

では、エキゾチックペットの国内における市場規模はどれほどのものなのでしょう?

WWF(世界野生生物基金)ジャパンが公開したエキゾチックペットに関する日本の意識調査2021の中で、犬猫以外の動物の飼育経験がある人は調査対象者の50%を占めています。実際に触れてみたいと回答した人は33%、飼ってみたいと回答した人は17%という結果になりました。

また、大手ペット保険会社のアニコム損保が2019年にリリースしたペットにかける年間支出調査によると、猫にかける年間最低限支出は約10万円ですが、うさぎは8.8万円、フェレットは約7万円と、猫の支出額と大きな差がない金額であることが分かりました。

エキゾチックアニマルにかける年間費用調査(有効回答数 n = 6,111)
(アニコム損保の契約者に対し、2019年1月1日~12月31日のアンケート調査結果)

このように飼育経験/飼育願望がある人は一定割合で存在するため今後の飼育者が増える見込みであること、また1匹当たりの飼育費用は猫に匹敵することを考慮すると、エキゾチックペット市場は今後さらなる拡大が見込まれると言えそうです。

ただし、エキゾチックペットとはいえ、その中には様々な種類の動物が含まれています。どんな動物を飼ったら良いかを考える際には、飼い主の性格や生活条件で選択肢の違いが生じるのでしょう。そのため、今回はエキゾチックペット全体ではなく、飼っている動物の種別を分けて、エキゾチックペットの飼い主はどういう人なのか、ペット関連の関心事がどこにあるかを深掘りします。

調査概要

今回はAmazonサイトにおける行動ログデータから、飼い主の特定を行いました。分析期間に餌を買ったことがある人は飼い主として認定されます。また、複数のカテゴリで買い物する人はどちらのカテゴリでも計算されます。

分析1:飼い主のライフスタイルは動物によって異なる特徴がある

a.デモグラフィック

まず各カテゴリの概観を掴むために、種類別の飼い主人数を見てみましょう。参考までに犬猫カテゴリのユーザー数もグラフに入れました。

Amazonで各動物種別の餌カテゴリ商品をカートに投入したユーザー数(推計)
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

エキゾチックペットの中では、熱帯魚・観賞魚のボリュームが最も大きく(19.56%)、鳥と小動物はどちらも1割前後を占めています。爬虫類・両生類はこの中で最も少ない4.55%でした。実際の動物品種にもよりますが、熱帯魚・観賞魚は簡単な用品を揃えば気軽に飼い始められることに対して、爬虫類・両生類は飼育難度が高い印象と合致している結果です。


では、実際にどのような人が飼い主となっているのでしょう。
まずは各飼い主の性年代分布です。
(以下の分析1の内容は行動ログデータとアンケートデータが紐づいた集計結果のため、アンケートの回答数による集計人数の減少が生じます。特に爬虫類・両生類の結果については、参考値としてお取り扱いいただければと思います。)

飼い主の性年代分布
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

鳥と小動物は女性が約半数を占めており、特に鳥は40代以上女性の割合が高いです。一方で熱帯魚・観賞魚と爬虫類・両生類は男性が多く、熱帯魚・観賞魚は50代以上男性だけでも4割を超えています。

続いては同居家族の構成です。

飼い主の同居家族構成
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

小動物の飼い主は夫婦のみ世帯と小さい子供あり世帯、熱帯魚・観賞魚の飼い主は大学生以上の子供あり世帯が多いことが伺えます。子供の一員として小動物を育てる夫婦と、生活の重心を子供から熱帯魚・観賞魚に移すお父さんのイメージが湧きますね。

また、職業の分布も見てみましょう。

飼い主の職業分布
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

鳥の飼い主は専業主婦(主夫)とパート・アルバイト、熱帯魚・観賞魚は自営業、小動物と爬虫類・両生類は一般会社員の割合が高くなっています。

b.SNS・情報入手先

飼い主の生活スタイルについてさらに深掘り分析するために、SNS利用時間と情報入手先も見てみましょう。まずはSNS利用時間です。

飼い主のTwitterとInstagramの利用時間
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

1日の平均利用時間は、Twitterは熱帯魚・観賞魚の飼い主が最も長く、Instagramは小動物の飼い主が最も長くなっています。

SNSに限らない新しい情報の入手先も見てみましょう。

飼い主の新しい情報の入手先
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

熱帯魚・観賞魚の飼い主は特にラジオのCMからの情報収集が特徴的で、鳥の飼い主はネット人口全体と似通った傾向があります。一方、小動物と爬虫類・両生類の飼い主はサイトやSNSでの情報収集が盛んで、特に小動物の飼い主の情報収集はオンラインとオフラインの両方で活発な様子です。

以上の結果は、各カテゴリの飼い主と親和性の高いチャネルとも言えます。飼う動物の種別から媒体を選んでアプローチすれば、飼い主方々とより効率の良いコミュニケーションを取れるかもしれません。

c.興味関心

では、普段の興味関心についてはどうでしょうか。

飼い主の興味関心比較
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

小動物の飼い主は多趣味で、国内及び海外旅行にも高い関心を示しています。爬虫類・両生類の飼い主はこだわりが出やすいジャンル、例えばグルメ・レストラン、マンガ、お酒、車などに対して、興味が高いことが伺えます。

興味関心の結果から生活スタイルだけではなく、各カテゴリの性格の違いも浮かびました。例えば小動物の飼い主は活発でアウトドアな一方、爬虫類・両生類の飼い主は熱量のあることに対して知識深いイメージが想像できます。

分析1では、動物の種別によって、飼い主の人となりやライフスタイルに違いが出ることがわかってきました。次の分析2ではより深く、各飼い主のペットに関するWeb行動について調査します。

分析2:鳥と小動物は触れ合い重視、魚と爬虫類・両生類なら飼育環境重視

a.ペット関連検索キーワード

オンライン上での実際の検討行動にも、カテゴリごとに特徴が出るのでしょうか。
まずはペット関連の検索キーワードを見てみましょう。

飼い主のペット関連検索の掛け合わせワードクラウド(UU数上位抜粋)
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

全体的にペットの飼育方法が最も気にされていることで、特に温度関連のワード「温度」、「保温」、「水温」、「ヒーター」などはどのカテゴリでも見られています。

鳥と小動物の飼い主はペットの世話全般とペットとの触れ合いを重視し、鳥は「鳴き声」、「おもちゃ」、「挿し餌*」、小動物は「病院」、「爪切り」、「マッサージ」の検索者数が多く、特徴的なワードです。熱帯魚・観賞魚と爬虫類・両生類の飼い主はよりペットの生活環境(水槽、ケージ)を整えることを重視している様子です。

*挿し餌:雛に飼い主が手で餌を与える行為。

b.ランディングページ分類

次に、検索後のランディングページの分類から、各飼い主の重視点を深掘りをしましょう。タイトルの内容によって日常世話、食事、病気、個人ブログ、一般理解(平均寿命、種類、生態など)、生体の販売・譲渡/グッズ販売、その他に分けました。

各飼い主の検索後ランディングページのタイトル分類
集計期間:2021年8月~2022年7月
集計デバイス:PC

鳥と小動物の飼い主は病気に関するコンテンツを閲覧する方が多く、その他の2つのカテゴリと比べて約2倍となっています。一方で熱帯魚・観賞魚と爬虫類・両生類の飼い主は個人ブログの閲覧比率が高く、他人の経験ややり方を参考にしながら飼育を進める様子です。

また、熱帯魚・観賞魚と爬虫類・両生類カテゴリの生体の販売・譲渡/グッズ販売コンテンツとの接触も鳥と小動物の飼い主より多いです。この2つのカテゴリの動物のライフスパンが短いことと、複数の動物を飼うことが多いのが理由かもしれません。

サマリ

各カテゴリの分析結果は以下となります。飼っている動物の種類によって、飼い主のプロフィールとWeb行動が違うことが分かります。

鳥と小動物の飼い主はペットとの触れ合いを重視する方が多く、鳥の飼い主は割と自由時間の多い方で、小動物の飼い主は多趣味で活発な生活をしている方が多いです。

一方、熱帯魚・観賞魚の飼い主と爬虫類・両生類の飼い主はよりペットの生活環境を整えることを重視する方が多く、熱帯魚・観賞魚の飼い主はよくTwitterとラジオから情報収集をしている方で、爬虫類・両生類の飼い主は自分の興味に対するこだわりの強い方が多いです。

更に分析の結果から以下の人物像をまとめました。

今回の調査結果から、同じエキゾチックペットでも動物の種別で飼い主のユーザー像や飼育の時に重視するポイントが異なるので、動物の種別によって訴求軸やコミュニケーション手段を変える必要があることが分かりました。

以上、エキゾチックペットの飼い主のイメージをまとめました。今回の調査結果が皆さんのお役に立てれば幸いです。

参考情報

(1) エキゾチックペットに関する日本の意識調査2021:https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210304wildlife01.pdf
(2) ペットにかける年間費用調査2019(アニコム損保):https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2019/news_0200331.html

この記事のライター

東京大学大学院農学生命科学研究科卒業後、新卒でヴァリューズに入社
データアナリストを務めデータ分析を用いてあらゆる業界の現場課題を解決したい

コザクラインコ1匹、デグー1匹、レッドラムズホーン数匹と共ににぎやかな日々を過ごしています

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