人気急上昇中のサッカー漫画『ブルーロック』を徹底分析!成功の秘訣はシナジー戦略?

人気急上昇中のサッカー漫画『ブルーロック』を徹底分析!成功の秘訣はシナジー戦略?

週刊少年マガジンで連載中の『ブルーロック』の人気が急上昇しています。単行本は最新22巻まで発売されており、累計発行部数は2150万部を突破(2023年2月23日時点)。さらに、2022年10月8日からTVアニメの放送も開始したことや、サッカーW杯でサッカーというスポーツ自体にも注目が集まったことで人気に拍車がかかっています。今回は、今大注目の人気漫画『ブルーロック』の人気の秘密を、検索データから分析します。


史上最もイカれたサッカー漫画『ブルーロック』

『ブルーロック』とは、週刊少年マガジンで2018年8月から連載されているサッカー漫画です。第45回講談社漫画少年部門で受賞し、「史上最もアツく、史上最もイカれたサッカー漫画」として話題を呼んでいます。連載が開始された2018年といえば、サッカーW杯がロシアで開催された年でもあります。『ブルーロック』の物語は、この現実の出来事と結びついて展開していきます。

舞台は2018年、W杯、日本代表ベスト16敗退…。日本フットボール連合はW杯優勝を目指し、全国から才能ある300人の高校生を育成寮“青い監獄(ブルーロック)”に集めます。主人公である潔世一(いさぎ よいち)は”青い監獄”に入寮し、世界一の「エゴイストストライカー」を目指します。

『ブルーロック』の最大の特徴は、登場する選手が全員FW(フォワード)であることです。作中では、日本がW杯で優勝できない理由は、エゴが足りないからだとされています。日本サッカーはその国民性から高い組織力を有していますが、その反面、周囲を気にせず主体的に得点を奪いにいく革命的なストライカーが存在しないことを問題視しているようです。そのため、登場人物全員が超エゴイスト。これが『ブルーロック』が「史上最もイカれたサッカー漫画」と評される所以です。

アニメやW杯の注目と共に検索者数も増加している

早速、『ブルーロック』人気の背景を探るために、検索者数の推移から見ていきましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用します。

下記グラフは、2021年2月〜2023年1月の検索者数の推移を表しています。アニメ化が決定した2021年8月と、アニメが放送開始した2022年10月は、検索者数が増加していることが分かります。その後一時的に落ち着いたものの、2022年12月からは検索が再加熱する動きが見られました。

2022年12月ごろは、カタールで開催されたサッカーW杯が盛り上がっていた時期とも重なります。サッカーを題材にしている作品という性質上、サッカーというスポーツそのものの注目が、作品の人気にも影響していた可能性が考えられます。

「ブルーロック」検索者数の推移
集計期間:2021年2月~2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

『ブルーロック』はサッカー漫画の中でも、特に現実のW杯を意識して作られている作品です。そのため、あくまで推測ですが、『ブルーロック』の放送開始時期は意図的にサッカーW杯に被せて、シナジー効果を狙ったというTVアニメ制作陣の戦略があったのかもしれません。

スマホゲームでもシナジーが発揮されている

つづいて、検索者の掛け合わせワードから、読者の関心ごとを探っていきましょう。ランキング上位から順に見ていくと、最も検索されていたのは「アニメ」「声優」などTVアニメに関するワードでした。それに続いて「漫画」「ネタバレ」の検索が増加していることから、アニメを視聴して原作に興味を持った人も一定数いるのではないでしょうか。他にも、「攻略」「アプリ」といったスマホゲームに関するワードの検索が増加しています。

「ブルーロック」との掛け合わせ検索ワード
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

ここで、注目が高まっているアプリについて見ておきましょう。『ブルーロック』のスマホゲームアプリである、「ブルーロック Project: World Champion」は2022年12月30日にリリースされました。ゲームジャンルは育成シミュレーションで、アニメに登場したキャラクターたちを自分好みに育成することができます。2023年2月21日時点では、累計ダウンロード数が300万を突破し、順調に人気を伸ばしています。

このアプリがリリースされた12月末は、2クールで放送されたTVアニメの1クール目が終わったタイミングと重なります。ここでも、「2クール目の放送開始直前に、ゲームアプリでさらに盛り上げて新規ファンを獲得しよう」という意図があったのかもしれません。

さらに、このゲームの集客戦略として印象的なのは、コラボキャラクターとして実在する日本代表選手である三苫薫選手を起用していることです。三苫薫選手は2022年のカタールW杯でも見事な活躍ぶりでしたが、そのテクニカルなプレイが「まるでブルーロックのキャラの技を再現しているようだ」と話題を集めており、広告塔としてピッタリの選手と言えます。

先ほど、「TVアニメの放送開始時期は、サッカーW杯との相乗効果を狙って決定したのではないか」という可能性を示唆しました。その真偽は不明ですが、こうして実在の選手と作品のつながりを強めていることから、やはり「作品の人気をW杯の盛り上がりでさらに後押ししよう」という意図はあったのではないでしょうか。

それでは実際のところ、『ブルーロック』とサッカーW杯の視聴者はどのくらい重なっているのでしょうか。

ワールドカップのファンは『アオアシ』に類似。『ブルーロック』はファン層が異なる?

それでは、「ブルーロック」と「ワールドカップ」に、同じく2022年4月から放送されたサッカーアニメ「アオアシ」を加えて、それぞれの検索者層を比較してみましょう。下記グラフは、それぞれの検索者の性別割合を示しています。「ブルーロック」の検索者の男女比はおよそ半々なのに対し、「ワールドカップ」と「アオアシ」は男性が約65%と男性にやや多く検索されています。

「ブルーロック」、「ワールドカップ」、「アオアシ」検索者の性別割合
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

同様に、年代についても見てみましょう。「ブルーロック」は20代を中心に若い世代から人気を集めているのに対し、「ワールドカップ」と「アオアシ」は40代の検索者が最も多いことが分かりました。

「ブルーロック」、「ワールドカップ」、「アオアシ」検索者の年代割合
集計期間:2022年2月~2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

これらのことから、「ワールドカップ」と「アオアシ」の検索者には共通点が見られましたが、「ブルーロック」はファン層が異なると考えられます。なぜこのような結果が得られたのでしょうか。詳しく分析していきます。

『ブルーロック』ファンがサッカーファンと異なる理由は?

「ブルーロック」と検索していたのは20代が中心であり、いわゆるZ世代と重なります。家にテレビを置いていない若者が一定数存在することを考えると、「W杯を観戦するための手段がないから見ない」「ネット配信もあるものの、視聴設定が手間だから見ない」という人もいたのかもしれません。

また、Z世代というと、タイパ(タイムパフォーマンス)を意識していることも特徴として挙げられます。サッカーは1試合90分かかり、アディショナルタイムや延長戦を含めると2時間以上かかることもあります。「最低でも90分はかかるコンテンツを見続けるのはしんどい」という若者もいるのかもしれません。

以上の理由から、「『ブルーロック』は手軽に楽しんで見れるけど、W杯を見るほどではない」という層がいると考えられます。

他にも、「W杯は視聴したけど、ワールドカップというワードで検索はしなかった」という人もいるかもしれません。基本的にSNSを駆使して情報収集していたり、選手名や国名で検索していた可能性が考えられます。

タイパに関しては、以前マナミナでも取り上げています。タイパを意識する人の価値観について気になる方は、是非チェックしてみてください。

タイパとは?Z世代が重視する「タイパ至上主義」の背景とマーケティング事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/2112

Z世代の多くは、生活のさまざまな場面でタイパ(タイムパフォーマンス)を意識しています。「タイパ至上主義」という言葉が登場するほど、Z世代は時間効率を重視しているのです。この記事では、Z世代の購買心理・最新のトレンドを知るために、タイパの概要や価値観、マーケティング事例を解説します。

一方の『アオアシ』は、40代を中心に注目を集めています。40代の視聴者には、前述したようなタイパを意識した価値観を持っている人は、若年層よりは少ないでしょう。そのため、サッカーが好きな『アオアシ』の視聴者は自ずとW杯も視聴したのかもしれません

ここまで『ブルーロック』が若い世代に人気だという前提で分析を進めましたが、30〜40代の人気も決して低いわけではありません。むしろ、今までサッカー業界がアプローチ出来ていなかった層にもリーチできていると考えると、『ブルーロック』の人気は大きな意味を持つかもしれません。『ブルーロック』がサッカー関連市場全体にどのような影響をもたらすのか、引き続き注目です。

まとめ

今回は、人気急上昇中のサッカー漫画『ブルーロック』について分析しました。まとめると、以下のようなことが分かりました。

・『ブルーロック』はアニメやW杯をきっかけに人気が加速している作品である。
・ゲームアプリでもW杯との相乗効果を狙っている可能性がある。
・『ブルーロック』の主な視聴者層であるZ世代は、タイパを意識するためW杯の視聴者層と重ならなかった可能性が考えられる。

2022年はサッカーW杯もあり、サッカーというスポーツへの注目が集まる中、アニメの放送が開始された『ブルーロック』。意図的かは定かではありませんが、『ブルーロック』の人気はサッカーW杯とのシナジーによって後押しされたと考えられます。

新たにコンテンツを生み出す際には、流行を常にキャッチしタイミングを見計らうことで、より効果的に売り出すことができるかもしれません。マナミナでは、そんな流行に乗り遅れないための情報を引き続き発信していきます。

この記事のライター

大学では経済学部で主に会計学を学び、2024年に新卒でヴァリューズに入社しました。現在はデータプロモーション局にて、弊社プロモーション事業のフロントを担当しています。

関連する投稿


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

2024年6月5日、EXILEを輩出した音楽事務所LDHがタイ大手音楽レーベルGMM MUSICと新エンターテイメント会社【G&LDH】開設を発表しました。タイ最大のメディア企業GMM GRAMMYの子会社であるGMM MUSICは、タイの音楽産業を牽引する存在です。 この合弁会社の設立により、両国の音楽市場の強化と相互の文化理解が期待されています。 本記事では、タイと日本の音楽文化の違いや、音楽がビジネスに与える影響、そしてG&LDH設立の背景を探っていきます。


データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – ライフスタイル・消費トレンド編」を公開

データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – ライフスタイル・消費トレンド編」を公開

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)


いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

2024年7月、いすゞ自動車は新型トラック「ELFmio」を発表しました。普通自動車免許で運転でき、「だれでもトラック」と銘打たれるこのトラック。狙いは物流を担うトラックドライバー不足の解決です。そんなエルフミオのインパクトを、Webサイト訪問者データを通じて分析しました。


ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトの売り上げをあげるためには、KGIの設定だけではなく、KPIの策定が重要なポイントになります。そこで、気になるKPIの策定ポイントや、課題の洗い出し・分析についてご紹介します。効果的なマーケティング施策にお悩みの方や、ECサイトの売り上げが伸び悩んでいる方はぜひ参考になさってください。


最新の投稿


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

Repro株式会社は、Webサイト運営・管理者を対象とした、「Webサイトの表示速度改善についての実態調査」を実施し、結果を公開しました。


感性について ~ マーケティングとハプティクス

感性について ~ マーケティングとハプティクス

人には5感が備わっています。さらに突き詰めれば第6感という感覚も。それら人の持つ感性や感覚を補うべくあらゆる技術も日々進歩していますが、人のそれらの代替となるような技術はまだ未完の途上です。それほどに他に取って代われない私たちの感性・感覚。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、広告やマーケティングを通して人の感性の深さを説き、ハプティクス(Haptics)を用いて人の感覚の重要性を解説します。


イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

株式会社イードと株式会社ガイエは、全国のファミリーマート、ローソン(※一部店舗を除く)に設置されているマルチコピー機で展開するコンテンツサービス「エンタメプリント」を活用した広告パッケージ「Anime Touch Ad」を共同開発し、販売開始することを発表しました。


ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

株式会社ネオマーケティングは、株式会社ボーダーリンクと協業し、在日外国人リサーチサービスを提供開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ