「ソーバーキュリアス」なZ世代の飲酒量が減少。低アルコール・ノンアルコール飲料への注目

「ソーバーキュリアス」なZ世代の飲酒量が減少。低アルコール・ノンアルコール飲料への注目

「ソーバーキュリアス」という言葉をご存じでしょうか。「ソーバーキュリアス」は「Sober(しらふ・酔っていない)」と「curious(好奇心が強い)」を組み合わせたイギリス発の言葉で、飲酒しない生活に興味を持ち、あえて飲まない生活をするという意味です。 Z世代のユニークな価値観も影響して、「ソーバーキュリアス」を実践する人が増加し、アルコール消費が減少中です。世界でもアルコール飲料会社や飲食店が、購買力を持つZ世代を理解し、さまざまな工夫をこらしたビジネスを生み出しています。


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国内外におけるZ世代の消費トレンド、Instagram、TikTok等SNSの利用実態など、2024年に反響の高かった16本のデジタル動向調査をピックアップし、白書として収録しました。(「Z世代トレンド・SNS動向編」ページ数|140P)

この記事では、世界中で見られるアルコール消費の傾向と消費者意識、海外のアルコール関連企業がマーケティング戦略をどのように適応しているかを紹介します。

世界のアルコール消費傾向の変化

アルコール飲料は、何千年もの歴史があり、世界中で社会生活でのコミュニケーションや伝統的文化において重要な役割を果たしてきました。さまざまな国が独自のアルコール飲料を作り出し、その地域の技術と事業に活かしています。しかし近年、世界のアルコール消費に関する傾向が大きく変化しています。

アメリカ人のアルコール飲料の摂取量は、2009年には週に平均4.8杯でしたが、2021年には週に約3.6杯まで低下。さらに、アナリティクスに特化するコンサルティング会社Gallupが2021年7月6日から21日の間に行った電話インタビュー調査(※1)によると、「アルコールを飲む」と回答したアメリカ人は、2019年から2021年の間に5%減少。5%は取るに足らない数字に思えるかもしれませんが、3年間に5%の減少というスピードですから、飲酒を控えてライフスタイルを変えたい人が増えているのではと推測できます。この傾向は年々強まっており、先述の調査では、アメリカ人の34%は2023年には飲酒量を減らすことを目標としているという結果が出ています。

※1 Gallup調査:調査対象者は、アメリカ在住の18歳上の1,007名

同様の傾向はアメリカだけでなく、世界中で見られます。2021年には、スコットランドでアルコール販売量が過去26年間で最低水準を記録。またワインが文化の一部と言えるイタリアでは、2006年~2016年でアルコール消費量が23%減少しました。オーストラリア統計局が2015年に掲載したデータによると、オーストラリアではすべての年齢層で飲酒量が減少し、1960年代からのアルコール消費率の中では過去最低となりました。

こうした変化はアルコール関連企業に課題をもたらします。今アルコール関連企業には、消費者の嗜好の変化を理解し、新たな需要に対応するためにマーケティング戦略を適応させることが求められています。

アルコールフリーな生活を促す新たな運動・文化

「ソーバーキュリアス」の一貫として、アルコールとの関係を見直し、ライフスタイルを変える人がいます。「なぜ飲みたいのか?」「なぜ私はお酒を飲んでいるのか?」と自問し、飲酒を強要する「社会的圧力」の可能性を認識、飲酒の必要性を検討するのです。「ソーバーキュリアス」であることは、必ずしも完全な禁酒を意味するわけではなく、自分自身の健康やその他の事柄を優先することに重点が置かれます。

​​アルコールは社交やお祝いの場と強く結びついていますが、飲酒には常にリスクが伴い、しばしば軽視されてきました。また飲酒は、大人にとっての娯楽や気晴らしのひとつでもあります。アルコールは確かに多くの人にとって、気分を高めるのに役立っています。しかし「ソーバーキュリアス」の盛り上がりからもわかるように、アルコールのネガティブな影響を認識しながら生活する人もいるのです。

イギリスの「Dry January(ドライジャニュアリー)」は、1月(January)の1ヶ月間アルコールを控えるというキャンペーンです。この活動は、アルコールによる害を減らすことを活動目的としている慈善団体・Alcohol Change UKが主導しており、依存症と健康全般についての意識を高められるよう、人々に奨励しています。キャンペーンに参加した人は、支出の減少、記憶力を低下させずに行動することによる体重減少やその他健康改善に役立つなど、アルコールのない生活を送ることの利点を認識できました。新年の最初の月には新たな決意を立てる人が多く、「アルコールを控えること」を1年の目標とする人もいます。「Dry January」は1月にキャンペーンが行われるため、「アルコールフリー」が1年の目標として採用されやすく、それが結果的にお酒を飲まないライフスタイルを長く続けることを促しています。

Z世代の影響力がアルコール消費量の減少に貢献

Z世代の購買力は増大しており、市場の変化をリードしています。アルコール関連企業が価値のある顧客層を確保するためには、Z世代を調査して、彼らの飲酒に対する態度や価値観の変化を理解することが有効です。

Z世代はリスク回避的な考え方を持っているため、「ジェネレーション・センシブル(賢明な世代)」とも呼ばれます。2000年代半ばから後半にかけて、お酒の力を借りて友情を育む若者が多くいました。しかし米国医師会が発行する医学雑誌「JAMA Prediatrics」の調査によると、2018年から2022年の間に禁酒した大学生は、20%から28%に急増しました。さらにヨーロッパの高所得国、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド全体でも飲酒する若者が減少しています。

飲酒の量については、全体的に世代が進むごとに減少しています。アメリカの投資会社「ベレンバーグ・リサーチ」のレポート(※2)によると、Z世代の飲酒量はミレニアル世代(1981年~1997年生まれの人)より20%少なく、ミレニアル世代の飲酒量はX世代(1965年~1981年生まれの人)やそれ以上の世代における同年齢時の飲酒量よりも少ないといいます。21歳から78歳のアメリカ人1,082名を対象に2023年1月に実施されたNCSolutionsの調査(※3)の結果、Z世代の70%は、単純に「飲みたくない」ためアルコールを飲まないと言われます。

※2 アメリカ在住の16~22歳(6,000名以上)
※3 NCSolutions調査回答者属性:25% ベビーブーマー、25%X世代、25%Y世代、25%Z世代、49%男性、48%女性、1%ノンバイナリー、1%トランズジェンダー、1%答えたくない。


Z世代がアルコールに対して否定的な世代となった要因をいくつか紹介します。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスは、世界中の社会習慣を一変させました。外出制限が始まった当初、特に40歳以上の飲酒量が急増し、イギリスの成人860万人がより頻繁に飲酒するようになったという調査もあります。しかし外出禁止令の期間中、上の世代がアルコールに頼る一方、若者は断酒に惹かれました。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学が行った調査では、外出制限中に飲酒量が減少した人の割合が最も高かったのは18歳から24歳で、44%が飲酒量が減少したと報告されています。彼らは「外出制限によって友人と交流する機会が減り、飲酒の魅力が失われた」と述べているとのことです。これらのことから、若者は飲酒を「人とコミュニケーションをとるときにすること」と捉えていると見ることができます

若者の飲酒量が減ったもう一つの理由は、若者が実家に戻ったことが考えられます。企業がリモートワークを導入し始め、大学もオンライン授業を開始し、職を失ったり給料が減ったりして、生活費の支払いができなくなった人も出てきました。家賃を払えない若者の中には、実家に戻った人もいます。家族が常にいることで自立心が薄れ、親に求められる「適切な行動」、すなわち禁酒をするようになった可能性があります。外出制限が解除した今でも、多くの人が親と暮らし続けているため、禁酒も続けている人もいるのです。

健康とウェルネスの意識が高い

世界の消費者の40%が、健康上の理由から飲酒量を減らしています。飲酒の長期的な健康への影響には、がん、心臓病、認知機能の低下、精神疾患的健康問題などが含まれます。

Z世代は、日常のあらゆるところで「健康優先」で行動するケースが多くあります。アルコール摂取は世界的に見て、15歳から24歳の人々の死亡と病気の罹患の危険因子となります。実際に、Z世代は食事の際にアルコールを避けており、飲酒の頻度も摂取量も減っているのです。

またZ世代の86%は、メンタルヘルスが健康の重要な要素であると感じています。彼らはアルコールに対して否定的なイメージを持っており、ストレス源と感じています。アルコールはストレスを感じたときに飲むことがあるため、アルコール自体にも否定的なイメージを持っているのです。2019年にGoogleが実施した調査によると、Z世代の回答者の41%がアルコールを「脆弱性」、「不安」、「乱用」と関連付けています

今後消費者は、かつてのマーケティング戦略から人気だった喫煙の衰退と同様のパターンで、アルコールから遠ざかっていくでしょう。
20世紀前半、喫煙は映画やテレビでよく見られ、おしゃれなものとして宣伝されていました。しかしその後、公衆衛生キャンペーン、喫煙と肺がんとの関連に関する研究、タバコの危険性を取り上げたCMなどにより、喫煙者の数は大幅に減少しました。そして今、アルコールも同じ方向に向かっています。アルコールも長年にわたり公衆衛生キャンペーンがなされており、消費者のアルコールに関する知識が向上した可能性があります。世界保健機関(WHO)は、「健康に影響を与えない安全な(アルコールの)量は存在しない」と述べています。カナダ薬物使用・中毒センターも、アルコール摂取ゼロを推奨し、「週に2杯以上は多すぎる」とみなしています。またアルコールを厳しく非難する新たなガイドラインを発表し、アルコールがもたらす恩恵や価値はほとんどないことを示唆しています。

SNSにおける自身のイメージを守りたい

Z世代は、「酔っ払い」に対し嫌悪感を強く持っています

アルコールを摂取しすぎると、判断力の低下をもたらし、危険な行動や怪我などを引き起こす恐れがあります。特に飲酒運転や犯罪への影響は、多くの人が危険と感じるところです。またアルコール依存は、能力に影響を与え、失業や欠勤など仕事上でのトラブルや、人間関係に影響を与える可能性があります。
Z世代も、自ら社会問題でもあるアルコール依存症になるリスクを避けているのです。

またZ世代は、幼い頃から複数のSNSを使ってきた世代であるため、オンラインでの自分のイメージを非常に意識しており、不適切な行動が映像として撮られることを恐れています。Z世代の49%は、ネット上でのイメージが頭の片隅にあると回答しています。彼らは自分の飲酒によって周りへどれくらい迷惑がかかるか、どのように見られているかなどを考慮しており、慎重に行動しているのです。特に断酒は注意力を維持するのに役立ち、SNSへの投稿内容をよりコントロールできるとZ世代に感じられているようです。Z世代の消費者の76%は、自分の生活のあらゆる側面をコントロールすることが重要であると述べています

生活費を優先

Z世代は、金銭面でも「リスク回避」を意識しています。インフレは家計に影響を及ぼしており、15,000人のZ世代を対象としたデロイトが行った調査(※4)では、「生活費」が彼らの最大の心配事であることが示されています。人々は全般的に支出を削減していて、宅飲みと飲食店の両方でアルコールへの支出が減り、食料・住宅・光熱費などの必需品にお金を使うようになっています。ただし、インフレといってもアルコールの価格が大幅に上昇しているわけではありません。消費者は、アルコールの価格が上昇したから支出を削減しているわけではなく、そもそもアルコールを必需品とは考えていないためアルコールにお金を使わないのです。

※4 デロイトの「2023 Gen Z and Millennial Survey(2023年Z世代とY世代調査)」
44カ国、Z世代:14,483名、Y世代:8,373名
参考:https://www.deloitte.com/global/en/issues/work/content/genzmillennialsurvey.html

アルコール飲料会社や飲食店への影響

Z世代の価値観や行動が上の世代とは大きく異なるため、アルコール関連ビジネスは、業界に大きな影響を与える可能性のある極めて重要な局面にあります。アルコール飲料メーカーは、「ソーバーキュリアス」な消費者についても考慮する必要があります。飲酒量が減っただけでなく、自宅で飲酒する人が増えています。また禁酒目標を守りたい人はアルコールを提供する場所を避けたいと考えているため、飲食店へ訪れる人も減っています。

アルコール飲料会社はどのようにすれば消費者のアルコール離れへ対応できるのでしょうか。

ノンアルコール・低アルコール飲料の多様化

アルコール飲料会社が顧客の喪失を回避できる方法の一つは、ノンアルコールおよび低アルコール飲料を開発して製品を多様化することです。低アルコール飲料およびノンアルコール飲料のカテゴリーは一貫して成長しています。大手アルコール飲料市場調査会社であるIWSRは、2024年までにオーストラリア、ブラジル、カナダ、オーストラリア、ドイツ、フランス、日本、南アフリカ、スペイン、米国、英国の全土で低アルコール飲料およびノンアルコール飲料の総消費量が31%以上増加すると予測しています(※5)。

※5 IWSR調査:https://www.theiwsr.com/whats-driving-growth-in-the-no-and-low-alcohol-space/

「ソーバーキュリアス」消費者は、飲酒量を深く意識していますが、じつはその多くは完全に禁酒をしていません。彼らはアルコール含有量の高い飲料を避け、アルコール含有量が比較的低いRTD(Ready-to-Drink:ふたを開けてすぐにそのまま飲める飲料)に目を向けています

アルコール入り炭酸飲料であるハードセルツァーや、スピリッツ(テキーラ、ウィスキー、ウォッカなどの蒸留酒)とジュース・シロップ・炭酸水などを合わせたカクテルがその例です。イギリスのマーケティング会社・Kantarのレポート(※6)によると、消費者の37%がRTDカクテルを購入しており、消費者の58%がハードセルツァーなどの炭酸飲料の購入に興味を持っています。RTD は缶またはボトルに入っていて混ぜる必要がなく、手頃な価格で手軽にスーパーなどで入手できるため、自宅で低アルコール飲料を楽しみたい若い世代に最適です。

※6 Kantar Retail IQの「Shopping for Beverage Alcohol」調査
2,000名、女性:>50%、男性:<50%、Y世代:35%、Z世代:8%
参考:https://shop.kantarretailiq.com/products/available-soon-shopping-for-beverage-alcohol


ハードセルツァーの代表格である「White Claw(ホワイト クロー)」は、アメリカ市場に導入することに成功したRTDの好例です。ホワイトクローは麦芽ベースの蒸留酒に炭酸水を混ぜたもので、スイカ、パッションフルーツ、マンゴーなどのさまざまなフルーティーな味があります。低カロリー、グルテンフリーで、「ライトアルコール飲料」として認識されておりZ 世代の健康的な価値観と共鳴しました。またホワイトクローは手頃な価格であり、大学生や年収が低い社会人にとって手に取りやすくなっています。2020年から2021年にかけて、このブランドの売上は139.7%増加し、最も人気のあるRTDブランドになりました。ホワイトクローのヒットは、多くの大手アルコールブランドが同様の低アルコール飲料を提供するきっかけとなりました。例として、オールドファッションウイスキーで有名な「ジャックダニエル」では、従来の伝統的で保守的なブランドイメージとはかけ離れた、「スイカパンチ」や「サザンピーチ」など、少しポップな味の「カントリー カクテル」製品を生み出しています。ほかにも多くの企業が似た飲み物を製造し、市場が飽和状態になっています。

Z世代の「リスク回避」的な姿勢は、ノンアルコール飲料を身近に感じる一因となりました。彼らは、身体的および精神的な健康を損なうことなく、社交場でリラックスできて、罪悪感のないノンアルコール飲料のメリットに魅力を感じています。

ノンアルコール蒸留酒の売上は194%増加し、ノンアルコールおよび低アルコール飲料の中で最も急成長している種類となっています。Seedlipは、独自のノンアルコールスピリッツのラインナップで、ノンアルコール飲料の分野の先駆者として浮上したイギリスのブランドです。2018年から2019年にかけて、Seedlipの売上は107%増加。洗練された大人向けの飲料の市場の隙間に入り込み、より大人っぽい独自のブランドイメージを確立しました。その強力なデザイン美学は、SNSで自分の経験を共有したいと考える若者にアピールしています。

さらに、ビールの代替品を求める人が増えています。ノンアルコールビールの売り上げは過去10年間で90%増加しています。Z世代の21%、Y世代(1980年〜1995年生まれの人)の18%がノンアルコールビールを購入したことがあると回答。アメリカ人の32%は、さまざまな飲み物を探索するのが楽しいと述べています。2021年から2022年にかけて、ノンアルコール市場の売上高の85.3%(3億2,860万ドル相当)をノンアルコールビールが占め、20%増加しました(ニールセンIQ調べ)(※7)。

※7 Nielsen IQの「Non-alcoholic beverage trends in the US」:https://nielseniq.com/wp-content/uploads/sites/4/2022/10/32634-beval-non-alc-infographic-d02-1.jpg

World Financeの資料をヴァリューズが翻訳

2024年までに、ノンアルコールビール市場は年間8%の成長率で250億ドルを超えると予想されていますが、従来のビールの売上高は1.8%の増加にとどまります。

もしビールメーカーが、消費者に既に知られ愛されているおいしいビールを、低アルコール飲料やノンアルコール飲料として再現できれば、さらに多くのビールファンを引き寄せられるでしょう。既にその取り組みを行っているビール会社があります。

2021年には、オランダの世界的ビール会社「ハイネケン」はここ10年で最高の年を迎えました。ノンアルコールビールである「ハイネケン 0.0」の導入が大きく貢献し、すでにハイネケンの英国売上高の5%、スペイン売上高の7%、ロシア売上高の20%を占めています。オリジナルのハイネケンビールの150カロリーと比べ、ハイネケン 0.0のカロリーは69カロリーです。世界最大のビール会社「バドワイザー」を所有する「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」は、事業の方向性を適切に転換し、2025年までに低アルコールビールとノンアルコールビールが全売上高の20%を占めるようにするという目標を掲げています。

多くのブランドがこの低アルコール飲料およびノンアルコール飲料の分野で革新を試みているため、企業は競争上の差別化に留意する必要があります。

飲酒の代わりに楽しめるエクスペリエンスの提供

2,000名を対象としたKantar Retail IQの「Shopping for Beverage Alcohol」調査(※8)では、消費者の21%は、バーのメニューが低アルコール・ノンアルコール飲料があるかどうかが満足度に大きな役割を果たしていると回答しています。彼らはまた、特定の成分を含まない、または炭水化物や糖質の含有量が低い代替品を探しています。そして多くの「ソーバーキュリアス」消費者は、アルコールがメインではない社交場を望んでいます。これに応じて、バーやレストランはモクテルなどの低アルコール飲料やノンアルコール飲料でドリンクメニューを多様化しました。モクテルとは、「疑似」を意味する「モック」と「カクテル」を組み合わせて作られた言葉です。またアルコールを飲まない消費者を歓迎する環境を作り出す方法としては、卓球台をはじめ、飲酒の代わりに楽しめるアクティビティを提供することが挙げられます。その結果、「ドライ・バー」または「ソーバー・バー」と呼ばれる、低アルコール飲料やノンアルコール飲料だけを提供するバーが普及し始めました。

※8 Kantar Retail IQの「Shopping for Beverage Alcohol」調査
2,000名、女性:>50%、男性:<50%、Y世代:35%、Z世代:8%
参考:https://shop.kantarretailiq.com/products/available-soon-shopping-for-beverage-alcohol

Ocean Beach Cafe:サンフランシスコにあるノンアルコールバーとカフェ

マーケティングにおける注意点

アルコール飲料会社、特に長い歴史を持つ有名企業は、自社ブランドに対する消費者の認識やイメージ・印象を変えるのに苦労するかもしれません。他の通常のアルコール製品も販売しながら、より健康的な代替品を宣伝することは、皮肉的で偽善的に感じられる可能性があるためです。したがって慎重かつ戦略的にブランドイメージを変更し、マーケティング戦略を適切に調整することが重要です。保健機関と協力することで、信頼性を強化しながら、責任あるマーケティング実践をさらに促進できる可能性があります。

前述したように、多くの世界的企業は、アルコール摂取量を減らしながらも貴重な成長層であるZ世代を認識し、低アルコール飲料やノンアルコール飲料を開発しました。この分野は今後も成長し続ける可能性が高いでしょう。この分野に参入する企業は差別化を図り、消費者を獲得するために独自の価値を提供する必要があります。

もう一つの課題は、利益を確保しながら価格を下げる方法を見つけることです。Z世代は物価上昇に苦しんでおり、必需品でないものへの支出を減らしています。この点を考慮すると、低アルコール飲料・ノンアルコール飲料がZ世代にとって必需品とは言い切りにくく、その価格設定も難しいと言えます。

Z世代がさまざまなライフステージに入るにつれて、彼らの好みは進化し続けるため、変化する消費者行動に注目し続けることが重要です。

日本にはノンアルコールRTDの知見が既にある

現在日本では、労働文化の象徴ともいえる「飲み会」文化が失われつつあります。日本生命保険相互会社が2021年に実施した「ニッセイインターネットアンケート「勤労感謝の日」について」の調査(※9)では、調査参加者7,774名の内日本の回答者の60%が「仕事上の飲酒は不要だ」と回答していました。日本とアメリカはどちらもノンアルコールRTD(ノンアルコールスピリッツなど)の最大の市場であるため、日本のアルコール飲料企業はすでに海外市場に展開するための多くの専門知識を持っています。

※9 日本生命保険相互会社 「ニッセイインターネットアンケート「勤労感謝の日」について」
期間:2021年10月1日〜10月13日
回答者数:7,774名
男性:3,914名
女性: 3,704名
性別解答なし::158名
参考:https://www.nissay.co.jp/news/2021/pdf/20211117.pdf


アルコール消費傾向が変化し続ける中、企業は消費者の嗜好の変化を理解し、適応することを優先する必要があります。Z世代はアルコールに対して前の世代とはまったく異なるアプローチを取っています。アルコール飲料会社が成功するには、「リスクを回避する」「賢明な」層に合わせてマーケティング戦略を調整することが不可欠です。

【参考文献】

Alcohol Drinking Declines and Sobriety Spreads as Consumers Slash Discretionary Spending
https://pro.morningconsult.com/analysis/alcohol-spending-on-the-decline
As The Non-Alcoholic Category Continues To Grow, Booze–Free Beer Will Be The Space To Watch
https://www.forbes.com/sites/katedingwall/2022/02/28/as-the-non-alcoholic-category-continues-to-grow-boozefree-beer-will-be-the-space-to-watch/?sh=5636328e6d5d
Australians' alcohol consumption at lowest levels since 1960s
https://www.theguardian.com/society/2015/may/06/australians-alcohol-consumption-at-lowest-level-since-1960s
Axios Finish Line: Americans are Drinking Less
https://www.axios.com/2022/10/19/axios-finish-line-americans-are-drinking-less
Beer and Wine Sales in Canada Fall to All-Time Low
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-64792928
Is the Alcohol Industry Drying Up?
https://www.worldfinance.com/special-reports/is-the-alcohol-industry-drying-up
Looking for a booze-free buzz? This S.F. cafe specializes in non-alcoholic beer, wine and spirits
https://www.sfchronicle.com/sf/article/alcohol-free-ocean-beach-cafe-17607788.php
Millennials are dragging down beer sales--but Gen Z marks a 'turning point' that will cause an even bigger problem for the industry
https://www.businessinsider.com/millennials-gen-z-drag-down-beer-sales-2018-2?r=US&IR=T
Non-Alcoholic Beverages Flourish as More Americans Cut Back on Drinking
https://www.pbs.org/newshour/show/non-alcoholic-beverages-flourish-as-more-americans-cut-back-on-drinking
Non-alcoholic beverage trends in the US
https://nielseniq.com/global/en/insights/education/2022/non-alcoholic-beverage-trends-in-the-us/
Polarising, pricey and non-alcoholic: why Seedlip is booze’s biggest success story
https://www.google.com/url?q=https://www.thegrocer.co.uk/big-interview/polarising-pricey-and-non-alcoholic-why-seedlip-is-boozes-biggest-success-story/599697.article%23:~:text%3DSpirits%2520is%2520the%2520next%2520frontier,to%2520go%2520back%2520to%2520alcohol&sa=D&source=docs&ust=1692512388398671&usg=AOvVaw07YrKCnVgKoJhxTnTpKAPZ
Sober Curious Nation: One in Three Americans are Trying to Drink Less Alcohol in 2023
https://ncsolutions.com/the-goods/sober-curious-nation-alcohol-survey/
The No-Alcohol Drinks Market Surpassed $11 Billion in 2022
https://www.forbes.com/sites/katedingwall/2022/12/23/the-no-alcohol-drinks-market-surpassed-11b-in-2022/?sh=53be78a0689a
The No-Alcohol Industry Boomed Over the Pandemic. Where’s It Going Next?
https://www.forbes.com/sites/katedingwall/2021/10/29/the-no-alcohol-industry-boomed-over-the-pandemic-wheres-it-going-next/?sh=533d925b3daf
The Sober Curious Movement is Impacting What Americans are Drinking
https://nielseniq.com/global/en/insights/analysis/2022/the-sober-curious-movement-is-impacting-what-americans-are-drinking/
Trends Revealed: The Non-Alcoholic Beer Market is Bubbling Up
https://blog.hubspot.com/the-hustle/the-non-alcoholic-beer-market-is-bubbling-up
What’s driving growth in the no- and low-alcohol space?
https://www.theiwsr.com/whats-driving-growth-in-the-no-and-low-alcohol-space/
Why Gen Zers are Growing Up Sober Curious
https://www.bbc.com/worklife/article/20220920-why-gen-zers-are-growing-up-sober-curious
Why Young Adults are Turning to Low-/No-Alcohol Drinks
https://www.google.com/url?q=https://www.kantar.com/north-america/inspiration/consumer/why-young-adults-are-turning-to-low-no-alcohol-drinks&sa=D&source=docs&ust=1692512969942074&usg=AOvVaw0nAY0lAdJHiF1Hr0zk-pKm
2023 Gen Z and Millennial Survey
https://www.deloitte.com/global/en/issues/work/content/genzmillennialsurvey.html

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この記事のライター

Born and raised in the Bay Area, U.S.A, I was fascinated by the different social and purchasing behaviors between Japanese and American consumers. I studied communication for undergrad and international marketing for my graduate studies. My professional background is in bilingual recruitment and Japanese-English translation.

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スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

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疲労回復、毎日のコンディション管理に必要不可欠な「睡眠」。その睡眠、あなたは足りていますか?最近ではニュースでも多く取り上げられた通り、日本は世界規模での「不眠大国」。実に日本人の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)の加盟国33ヵ国の中で最下位とも言われています。そして睡眠はただ眠るだけではなく、経済とも大いに関わりがあるのです。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、良質な睡眠の鍵を解説します。


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

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