Nintendo Switchソフト「スイカゲーム」なぜ突然トレンドに?配信者が夢中になる理由を調査

Nintendo Switchソフト「スイカゲーム」なぜ突然トレンドに?配信者が夢中になる理由を調査

スイカゲームというパズルゲームが話題を集め、2023年10月時点で200万ダウンロードを突破しました。2021年12月に配信開始され、当初はそこまで注目されていなかったスイカゲームですが、なぜこのタイミングで突然流行り出したのでしょうか。今回はスイカゲーム人気の秘訣に迫ります。


スイカゲームとはどんなゲーム?

スイカゲームとは、フルーツを上から落として箱に詰めていくシンプルなパズルゲームです。同じ種類のフルーツが触れると、一段階大きな1つのフルーツとなり、スペースに余裕が生まれます。高得点を狙うには、なるべくフルーツを大きくしていく必要があります。フルーツの最終段階であるスイカを作ることを一つの目標として進めていくことが、「スイカゲーム」の名前の由来であると考えられます。

このゲーム、「ただ同じフルーツをくっつけるだけなら難しくないのでは?」と初見では感じてしまうかもしれませんが、実際にやってみると非常に奥深い作品です。フルーツはある程度の物理法則に従って動くため、フルーツを落としても思わぬ方向に転がってしまうことがあります。このせいでスイカの手前のメロンやパイナップルなどの大きなフルーツがくっつかずに残ることがあり、スペースを圧迫してどんどん苦しくなっていきます。

操作性がシンプルで、可愛らしい見た目のスイカゲームですが、実際にはスイカを作ることすら一苦労という難易度になっています。ただし、誰でもコツをつかめば徐々に上達していくうえ、一回のプレイ時間も短いため、繰り返し挑戦したくなる中毒性も魅力のゲームです。

200万DL突破のスイカゲーム。人気すぎて偽物も登場!

スイカゲームはもともと、プロジェクターの開発会社であるAladdin X(アラジンエックス)によって、プロジェクターの内臓アプリとして開発されました。その後Nintendo Switchに移植され、2021年12月に配信を開始しています。当初はそこまで注目されていなかった本ゲームですが、最近になって突然話題を集め、2023年10月には200万ダウンロードを突破しています。

では、具体的にスイカゲームの人気が急上昇したのはいつごろからなのでしょうか。そのきっかけや理由についても探っていきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

早速「スイカゲーム」の検索者数の推移を見て、注目され始めた時期を確認しましょう。下記グラフから、2023年8月以前はほとんど検索されていなかったにも関わらず、2023年9月に検索者数が急増していることが分かります。やはりスイカゲームの人気はジワジワあがったのではなく、1〜2カ月で急激に伸びたようです。

「スイカゲーム」検索者数の推移
集計期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC、スマートフォン

また、スイカゲームの知名度が伸びる中で、「名前だけは知っていて興味はあるけど、どんなゲームかは知らない」という人も増えています。そんな層を狙って、最近ではスイカゲームを装った類似のスマホアプリゲームが相次いで誕生しています。

スイカゲームの本家と呼べるものは、2023年10月時点ではNintendo Switchのダウンロードソフトとして、240円で配信されているもののみです。類似のアプリゲームは、公式よりも高額の課金を求められることもあるため、今後ダウンロードする際は注意が必要です。この件については、開発元のAladdin Xからも公式Xにて注意喚起をされています。

スイカゲームは正しい情報が追いつかないほど異常なスピードで注目を集めています。しかし、本ゲームは配信開始から世間に注目を集めるまで、およそ1年半のラグが存在しました。一体なぜこのタイミングで突然日の目を見ることになったのでしょうか。

スイカゲームヒットのきっかけはゲーム実況者

先述の通り、スイカゲームは2023年9月ごろから突然注目されるようになりました。世間に広く認知されるようになったのは、多くの著名なゲーム実況者が配信するようになったからだと考えられます。

ゲーム実況者が視聴者を獲得するには、得意なゲームだけでなくトレンドのゲームにも積極的に挑戦する必要があります。そのため、最初に数人が配信したゲームが「面白い」と話題になると、流行に敏感な配信者が取り入れるようになり、加速度的に有名になることがあります。スイカゲームもこのケースに当てはまるのではないでしょうか。

では、スイカゲームの流行はどこから始まったのでしょうか。実際に配信を遡ってみると、最初にスイカゲームが多くの視聴者の目に晒されたのは、有名配信者の「布団ちゃん」が9月7日に「僕が寝室で普段やっているゲーム」として配信したもののようです。

スイカゲームはこの配信を見た視聴者の間で面白いと話題になりました。この時点ではまだ小さな界隈での流行でしたが、きっかけを作ったのは布団ちゃんの配信だと考えられます。

その後、視聴者層が近い「おおえのたかゆき」さんという配信者が視聴者に勧められてスイカゲームを実況し、それを見たゲーム実況者の「もこう」さんも生放送中にスイカゲームをプレイし、ドハマりする様子を配信しました。

もこうさんはYouTuberとしても活躍しており、配信後に生放送の切り抜きをYouTubeにも投稿したことで、スイカゲームの流行がさらに加速しました。この影響で9月15日に「加藤純一」さんもスイカゲームの配信をし、一気に話題となりました。

そして9月後半には、「にじさんじ」や「ホロライブ」のVTuberも配信するようになり、さらに知名度が上がりました。スイカゲームが有名になってからは、「はじめしゃちょー」さんや「ヒカキン」さんといった大物YouTuberをはじめ、ゲーム実況がメインでないようなYouTuberもスイカゲームのプレイ動画を投稿し、10月現在もまだ流行は衰えていないようです。

スイカゲーム検索者は実況視聴者が中心?

では、そんなスイカゲームに関心があるのはどんな層なのでしょうか。Web上で「スイカゲーム」と検索した人のデータから、人物像を探ります。

下記グラフは、「スイカゲーム」検索者の性別、年代割合を表しています。グラフを見ると、スイカゲーム検索者は男性が6割以上とやや多く、年代は20代を中心として、30代にも人気であることが分かります。

2022年にヴァリューズが実施したYouTube利用動向調査からも、20〜30代はゲーム実況やVTuberをよく視聴しており、特に男性の方がこの傾向が強いという結果が出ています。スイカゲームの検索者は、ゲーム実況の視聴に興味のある層と重なっているのかもしれません。

「スイカゲーム」検索者の性別・年代割合
集計期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC、スマートフォン

ヴァリューズが実施したYouTube利用動向調査はこちらからご覧いただけます。

【YouTube利用動向調査】男性は学び系・女性は熱量高く多様な動画を視聴 | ショート動画に代替されにくい“ながら見”コンテンツが若者に人気

https://manamina.valuesccg.com/articles/2029#outline9

利用率9割という圧倒的な浸透率を誇るYouTube。生活の中での位置づけや、実際の使われ方、よく見られるコンテンツとはどのようなものなのでしょうか。またそれらは、性年代で切ったときにどのような違いが出てくるのでしょうか。アンケートとWeb行動ログデータから、YouTubeの利用動向を調査しました。

検索者の関心は、「落ちものパズルゲーム」よりも「ゲーム実況視聴」?

つづいて、「スイカゲーム」検索者は他にどのようなワードで検索をしているのか、関心ワードも見ていきましょう。下記表は、スイカゲーム検索者の関心ワードを特徴値(※)の高い順に、上位15位までランキングにしたものです。

上位ワードには、「Q REMASTERED」、「漢字でGO」など配信界隈で流行したゲームの名称や、配信媒体である「ツイッチ」、「ホロライブ」や「にじさんじ」など配信者である「VTuber」のワードなど、配信関連のワードが多くランクインしていることが印象的でした。

※特徴値:他のワードで検索していた人のうち、「スイカゲーム」と他のワードのどちらも検索していた人の割合

「スイカゲーム」検索者の関心ワード ランキング
集計期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC、スマートフォン

スイカゲームは、ゲームジャンルでは「落ちものパズルゲーム」に分類されます。落ちものパズルゲームとは、フィールド内に落ちてくる対象を上手に配置して消していくというルールのゲームで、「テトリス」や「ぷよぷよ」などが有名です。
中でも「SHOT2048」というゲームは、落下してくる数字を配置し、同じ数字を組み合わせて2の累乗を作り、最終的には2048を目指すというゲームであり、スイカゲームに非常に近いゲーム性を有しています。

しかし、関心ワードにはこれらのゲームの名称は上位にあがっていませんでした。スイカゲームの検索者は、もともと落ちものパズルゲームに興味がある人よりも、ゲーム実況を見て初めて興味を持った人が多いのかもしれません。

実況で流行るゲームの共通点は、コスパとタイパ?

スイカゲームは主にゲーム実況の視聴が好きな人の関心を集めて話題になったと考えられます。一方で検索者の関心ワードには、スイカゲームの他にも「Q REMATERED」や「漢字でGO」など、配信者の間で流行ったゲームも存在しました。しかし、これらのゲームの流行はあくまでゲーム実況が好きな人のコミュニティの範囲内に限られます。

スイカゲームが普段はゲーム実況を見ない層にまで名前が知れ渡ったのは、異例の出来事といえるのではないでしょうか。配信されたゲームの中でも、なぜスイカゲームがこれほど影響力を持つようになったのか、考察していきましょう。

まずは、配信で人気になるゲームにはどのような特徴があるのか、スイカゲームと先ほどの関心ワードで1位だった「Q REMASTERED」、2位の「漢字でGO」の3つのゲームから共通点を探ります。

早速、上記の3つのゲームの内容を見ていくと、いずれも「ルールがシンプルで分かりやすい」ことと、「頭を使う」ゲームであることが共通しています。「Q REMASTERED」とは、画面内に自由に形を描いてお題を達成することを目指す物理演算パズルであり、「漢字でGO」は迫ってくる難読漢字をキーボードで答えるゲームです。下記は、ゲームプレイ中のワンシーンですが、画像一枚だけでもなんとなくルールが理解できてしまうのではないでしょうか。

ルールがシンプルであれば、配信を途中からパッとつけた人でもすぐに内容を理解し、話題に追いつくことができます。入退室の激しい生配信においては、初見でも今目指していることが一目で分かることが大切なのではないでしょうか。また、これらは頭を使って試行錯誤することが求められるゲームであるため、必然的に視聴者もコメント欄での議論が生まれやすいです。頭脳系のゲームは視聴者も「見ているだけではなく自分も参加している」という感覚が得られやすいため、配信に適しているのかもしれません。

内容以外にも3つのゲームには共通点があります。それは、「低価格」であることと「ワンプレイの時間が短い」ことです。それぞれのゲームの価格と1プレイにかかる時間は以下の通りです。

いずれも1000円以内で購入が可能であり、1プレイも30分以内に済ませることができます。このように、お手頃な価格設定で時間もそれほどかけずにプレイできるゲームは、配信を見た人が「自分も真似してみよう」と思いやすく、話題が広がりやすいと考えられます。最近ではSNSでもショート動画の影響力が増しているように、コンテンツが豊富な現代の環境でユーザーの興味を惹くには、時間を割くハードルを可能な限り低くすることが効果的なのかもしれません。

スイカゲームには中毒性がある?

それでは、配信で流行しやすいゲームの中でも、なぜスイカゲームは突出して大きな話題となったのでしょうか。ここからは、さらにスイカゲームが他のゲームと異なる点を考察します。

スイカゲームが盛り上がる要素の一つとして、「スコアランキング」が挙げられるのではないでしょうか。スイカゲームでは、「本日」、「月間」、「総合」に分けて自分のベストスコアが記録として残る他、オンラインでも上位ランカーとスコアが表示されます。配信者たちは同時に通信対戦などしなくても得点で競うことが可能になり、これが配信者同士の競争意識を煽ったと考えられます。

スイカゲームは高得点を目指すことで競って盛り上がることが出来ますが、実際には高得点以前に「スイカ」を作ることすらままならない難易度のゲームです。初心者はまずスイカを作れるようになることを一つの目標としています。その次に、配信者たちの間では「3000点」を取ることが大きな壁とされているようです。この壁を突破することで初めて、高得点の競争に参入することが出来ます。ちなみに2023年10月時点では、オンラインの上位ランカーの得点は7000点を超えています。これを達成するには、スイカを2つ以上作ることが必須の領域になってくるでしょう。

このように高得点を目指す前にも、「スイカを作る」、「3000点を目指す」と段階的なゴールが設けられているのも、スイカゲームの中毒性が高い理由なのかもしれません。「いきなりハイスコアは無理でも、もう1回挑戦したらメロンが作れるかもしれない。次はスイカまでいけるかも。」という心理で、繰り返しプレイしたくなった人も多いのではないでしょうか。

また、スイカゲームは「もう無理かも。」と感じても、予想だにしなかった動きでフルーツが連鎖し、大逆転する場面があります。下記画像のように、YouTubeでは一見ゲームオーバー間近の状態からスイカを作るショート動画が大量に出回っています。

スイカゲームは「危機的状況でもまだ逆転できるかもしれない。」というはらはら感を楽しめるゲームです。一気にフルーツが連鎖していく爽快感と、万人受けするポップで可愛い絵面も相まって、動画映えしやすいゲームといえるのではないでしょうか。動画として拡散したいと感じやすいゲームであることも、流行の秘訣だったのかもしれません。

まとめ

今回は、話題沸騰中の「スイカゲーム」について、突然人気になった秘密を探りました。まとめると、以下のようなことが分かりました。

・スイカゲームは布団ちゃんをはじめとして、多くの実況者が取り上げることで加速度的に人気が爆発した。
・スイカゲームに関心がある層は、「落ちものパズルゲーム」よりも「ゲーム実況視聴」に興味がある層に近いと考えられる。
・スイカゲームはシンプルな頭脳系のゲームで、かつ気軽にプレイできるため、配信に適しているのかもしれない。
・「段階的なゴール」と「オンラインスコアランキング」がスイカゲームの中毒性を高めていると考えられる。

スイカゲームのヒットの背景には複数の要因が絡み合っているようです。中でも、「時間を割くハードルを低くすること」や、「動画映えすること」など、他のコンテンツにも共通して重要になりそうな条件も見つかりました。新しくコンテンツを作る機会のある方は、参考にされてみてはいかがでしょうか。

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ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)

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この記事のライター

大学では経済学部で主に会計学を学び、2024年に新卒でヴァリューズに入社しました。現在はデータプロモーション局にて、弊社プロモーション事業のフロントを担当しています。

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