企業(BtoC)ブランディングの成功事例
まず、企業(BtoC)で成功しているブランディングの事例として、日本のみならず世界を牽引している2社を紹介していきます。
■スターバックスのブランディング成功事例
スターバックスは、心地よい場所を提供する「サードプレイス」を掲げている世界を代表するコーヒーショップです。
スターバックスは1971年に設立され、現在では世界で3万店舗以上展開しています。日本においては、1,800店舗以上展開しており、世界中の人々に愛されている企業です。
スターバックスは、独自のコーヒーやフードメニューを提供することで、コーヒー好きなファンのみならず、老若男女問わず多くの方から高い指示を得ています。
また、独自の店舗デザインや空間を演出することによって、居心地の良い場所となっている点も特徴的です。
スターバックスがブランディンする際のポイントとしては3つあります。
・独自の店舗デザイン採用
・環境に配慮した取り組み
・SNSを活用したマーケティング戦略
独自の店舗デザインでは、店舗ごとにデザインやコンセプトが異なり、ブランドイメージを高めています。例えば、新宿御苑店では、四季折々に表情を変える新宿御苑に、自然に溶け込む店舗がデザインされています。さらに、他の店舗でも、シンプルで温かみのある内装や、登録有形文化財を残したデザインを採用するなど、顧客から支持を得ている点が強みです。
環境の配慮では、プラスチックの削減やカップの再利用など、環境に貢献する取り組みが行われています。
また、SNSのマーケティング戦略においては、InstagramやXなどのソーシャルメディアを活用して、顧客と接する機会を多くすることで、ブランドイメージを高めています。
スターバックスは、単にコーヒーを提供するのではなく、サードプレイスを提供したり、環境に配慮したり、SNSを活用して顧客との距離を近づけたりして、ブランディングを高めている点が成功している理由に挙げられるでしょう。
スタバファンはいったいどんな人なのか?アプリ利用者の行動特徴からペルソナを分析
https://manamina.valuesccg.com/articles/1097気になるブランドや商品のペルソナについてヴァリューズのマーケティングコンサルタントが調査する企画。今回の調査は確固たるブランドを確立している『スターバックス』についてです。スターバックスファンにはいったいどんな特徴があるのか。Web行動ログデータとアンケートデータを用いて人物像を分析していきます。
■Appleのブランディング成功事例
Appleは、リンゴのデザインが特徴的な、テクノロジーブランドを代表する企業です。
Appleは、世界中の顧客から製品やサービスに高い信頼を得ています。例えば、iPhoneやiPad、MacBookなどの製品は、デザイン性と操作性の評判が良く、日本のみならず世界の人々から支持を得ています。
世界から支持を得ている理由は2つです。
・ブランドカラーの統一
・シンプルで直感的なデザイン
Appleでは、ブランドカラーの統一を重視しています。実際にApple製品は「シルバー・グレー・黒・白」が多く、ブランドカラーを定着させるための戦略と言えます。
デザイン面では、シンプルかつ直感的で、使いやすさを重視しています。例えば、iPhoneはAndroidに比べ非常にシンプルな操作性で、説明書がなくても直感的に操作できる点が特徴的です。
Appleは、自社ブランドを想起させるための工夫を行っている点が、顧客に選ばれている理由と言えるでしょう。
リブランディングの成功事例
リブランディングとは、企業全体の既存ブランドを顧客のニーズや時代の変化に合わせて再構築することです。
リブランディングの成功事例として、関西最大のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」があります。
USJは2001年にオープンし、これまで日本になかった映画のテーマパークとしてオープンしました。初年度の来場者数は1,000万人を突破し、華々しいスタートを切ったかのように思えましたが、その後は来場者数も減り、2004年には事実上の経営破綻をしています。そこで、再建を目指しUSJがとった行動は、マーケッターである森岡毅さんを招いたことです。
森岡さんがリブランディングを行ったポイントとして、現状の把握と分析です。現状の把握では、USJの映画をテーマにしたコンセプトの限界にありました。なぜなら、映画をテーマにしたコンセプトは大人向けだったからです。
USJに来客する人は小さい子供を連れたファミリー層が多く、リピートに繋がらなかった点が課題として挙げられました。
課題の解決として森岡さんが行ったのは「世界最高のエンターテインメントを届けるテーマパーク」とコンセプトを変更。映画だけではなく、アニメやゲームなど、子供向けのコンテンツを強化しました。
その結果、全年齢層が楽しめるテーマパークにリブランディングすることができ、事実上の経営破綻にまで追い込まれていたUSJは、2015年には来場者数が1,390万人まで上昇し、V字回復を遂げました。
USJのリブランディングでは、「自社だけでなく外部のマーケターに再建を依頼したこと」「既存のテーマやコンセプトを変革したこと」が成果につながったと考えられます。
マーケティング戦略の成功事例として有名な「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」。USJの経営をV字回復させた森岡 毅氏の手腕が、マーケティング戦略のお手本としてよく取り上げられます。消費者視点を重視しイベント・アトラクションの成功率を高めたマーケティング戦略の転換とは。
顧客の声を反映したブランディングの成功事例
スノーピークは、新潟で生まれたアウトドアブランドです。今や、アメリカやイギリスなど海外に直営店を構えるまでに飛躍しています。
世界中で顧客を獲得できている理由として、「商品設計の徹底したこだわり」があります。同企業の会長である、山井とおる氏は自身が年間30泊以上のキャンプを行うマニアで「顧客のニーズにあったあったら便利な商品」に徹底した製品作りを行ってきました。
「ニーズにあった商品を作る」ことは一見当たり前のように感じますが、スノーピークはニーズ調査のためにキャンプのイベントを開催して、ユーザーの生の声を聞くことで、顧客の声を現地で収集しています。
これにより、顧客が本当に欲しいと思える商品を作り続け、キャンプを愛する顧客に「キャンプ用品といえばスノーピーク」というブランディングを実現しました。
デザイン面でも他社とは異なる「白を基調とした高級感の創出」や「日本の焚き火文化を世界に広める製品作り」が海外の顧客を魅了しています。
「体験」を売るブランディングの成功事例
バルミューダは2003年に設立された家電メーカーです。新興メーカーながら、ライバル製品よりも高価格帯で販売し、常に品薄状態になるほど売れている、個性的でデザイン性が高い製品です。
バルミューダは、家電ながら「体験」を売ることでブランディングに成功しています。
成功している理由として挙げられる点は、バルミューダは「体験」を通じて他社と違う製品を作り、価格や機能で比較されないような製品を生み出していることです。例えばオーブントースターでは、上手に焼けるトースターではなく、美味しく焼けるトースタを追求しています。結果的に、さまざまな種類のパンが、1番美味しい状態で食べられるように焼くことができています。
さらに、デザイン性では、「とても美味しいのもは、どのようなところから出てくるべきか?」をテーマに、約2,000種類のデザイン案の中から採用されています。部屋に置きたいと思えるシンプルなデザインやカラーが、性別や年齢問わず、多くのユーザーに受け入れられている点が強みです。
バルミューダは、「体験」を売ることで成功しているといえるでしょう。
地域ブランディングの成功事例
次に地域ブランディングの成功事例について、香川県と北海道の自治体について紹介します。
■香川県直島のブランディング成功事例
香川県の直島町は、アートの島として地域ブランディングが特徴的です。
直島町では、日本の芸術家の草間彌生氏が作品された「赤かぼちゃ」や、建築家の藤本壮介氏の作品である「直島パヴィリオン」が宮浦港に飾られています。
直島にアートが実現できた理由として、ベネッセホールディングスと、町長の思いが重なり合ったことによります。ベネッセホールディングス創業者の福武哲彦氏は「世界中の子どもたちが集える場所を作りたい」という思いを抱いていた点や、町長が「直島に文化エリアを開発したい」という思いが重なって成功した点です。
アートの聖地という地域ブランディングに成功し、移住者の増加はもちろん、観光客は2003年に記録した10万から2019年には約7倍の75万人を達成しました。
香川県直島町では、「ここでしかできない体験」を作ることで、地域ブランディングに成功しています。
■北海道夕張のブランディング成功事例
北海道夕張市の代表的なブランディング成功事例は「夕張メロン」です。夕張メロンは今でこそメロンの最高級ブランドとして有名ですが、品種改良を重ねて生み出された地域の特産品です。
夕張市はかつて炭鉱町として栄えましたが、炭鉱閉鎖後に新たな産業を模索していました。そこで、代わりの産業として、「夕張メロン」の開発が進められました。当初は「カボチャメロン」と揶揄されましたが、PRのためにプロ野球のホームラン賞として持ち込んだ結果、口コミが広がり全国展開のきっかけとなりました。
また、輸送問題に直面した際は、産地直送という当時では画期的な手法を導入し、厳格な品質管理を行うことで全国各地のデパートに売り出すことに成功しました。
これらの取り組みにより、夕張メロンは夏の風物詩として全国に広まり、現在では高級フルーツとして一般的なメロンの約2倍の価格で取引されるほど地域の特産品として人気を博しています。
地域の特産品として、本当に美味しい商品を開発するだけでなく、認知を拡大するための努力を惜しまないことで成功した地域ブランディング事例です。
商品・サービスのブランディング成功事例
商品・サービスのブランディングの成功事例について2社紹介します。
■杉山フルーツのブランディング成功事例
杉山フルーツは静岡県にある個人経営の果物専門店です。個人経営の果物屋が減っている中、杉山フルーツの業績は好調です。例えば、杉山フルーツはゼリーを370円から販売していますが、毎日500個ほどが売れています。
要因としては、徹底した品質へのこだわりです。贈答用のゼリーでは、高級フルーツを惜しみなく使った「生ゼリー」があります。保存料を一切使わず全て手作業で作ったり、商品が破損するリスクから地方発送は行わなかったりと、徹底した品質にこだわっています。
また、杉山フルーツでは、素材の味をそのまま届けられるよう、大量生産は行わない点も業績を伸ばし続けている点が要因です。
杉山フルーツでは、プレミアム感を生み出し、来店しないと手に入らないオンリーワンの戦略を実現されています。
■Everlaneのブランディング成功事例
Everlaneは、アメリカのアパレル企業です。
「徹底的な透明化」をコンセプトに、洋服の生産や販売にかかるコストを顧客に開示して、業界に衝撃をもたらしたブランドです。
実際に、商品ページには掛かったコストが記載されています。
・材料費
・ハードウェア費
・労働費
・職務費
・輸送費
さらに、実際に服が生産されている様子もWebで公開しており、顧客に商品が届くまでの様子がわかるようになっています。
Everlaneでの全ての情報を届けようとするブランディング戦略は、多くの顧客に注目を集め、コンセプトに共感する人も増えた成功事例です。
採用ブランディングの事例
ここからは採用ブランディングの事例について、株式会社マイプリントを紹介します。
株式会社マイプリントは、婚礼や年賀の印刷会社で、国内で高いシェアを誇る企業です。
しかし近年、採用における課題が5つあり、以下で紹介していきます。
・年賀状の投函数の激減
・若手とベテランの層で構成されている
・社員のモチベーションに差があり、事業間での協力がなくなっている
・男性が求人に集まりにくい
・年功序列で若い人の給料が上がらない
そこで、課題をもとに施策を2つ打ち出しました。
・コーポレートスローガンの策定
・スローガンをもとに、採用するメッセージに落とし込み採用率アップに繋げる
コーポレートスローガンでは、「おめでとうは、日本の文化だ。」と設定し、一般的な印刷会社ではなく、日本が大切にしてる文化を祝う会社であることを掲げました。
また、採用メッセージにおいては、「祝いゴトを仕事にしよう。」と策定しました。採用メッセージでは、社員の多くが年賀や婚礼など、人生の特別な瞬間にかかわることを通じて、仕事に意義を見出しているという点が反映されています。
採用の広告では、オフィス内で正月と結婚式の風景を撮影し、日々の仕事がお客様の祝いごとにつながっていることを表現しました。その結果、目標にしていた採用人数を達成しました。
株式会社マイプリントでは、スローガンをもとに採用メッセージにつなげたことで、採用力強化に繋がっています。
インナーブランディングの事例
インナーブランディングは、自社の企業理念やブランド価値を社員に伝えて、浸透させる活動です。社員の企業に対するイメージ向上や、自発的な行動を促すなどいい影響があります。
そこで、インナーブランディング事例で成功している企業として、株式会社オリエンタルランド(ディズニーリゾート)について紹介しましょう。
株式会社オリエンタルランドは、インターブランドジャパングループが調査した「日本における顧客体験価値ランキング」で1位を獲得しています。
顧客体験価値を生み出している要因は、東京ディズニーリゾートで働く従業員一人ひとりの行動です。ディズニーで働く従業員は約2万人おり、うち80%以上がアルバイトです。社員以上にアルバイトが多くても高い価値を提供できる要因は「ディズニーユニバーシティ・プログラム」と呼ばれる座学研修にあります。
研修で学ぶのは、業務マニュアルやオペレーションではなく、ウォルトディズニーが掲げたビジョンや、最高のテーマパークにするために守るべき行動規準などです。
ディズニーにおける価値観を共有ができることで社員・アルバイト関係なく、接客品質を保つことができています。
インナーブランディングの効果とは?マーケティング支援会社ヴァリューズでの挑戦|Part1
https://manamina.valuesccg.com/articles/1657ブランディングというと、一般的には顧客など社外に向けた自社イメージの向上活動を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年はインナーブランディング、つまり社員に対し、企業や事業、サービスの目指すべき姿を理解・浸透させる啓蒙活動も重要と認知され始めています。今回は株式会社ヴァリューズの新生コンサルティンググループで行ったインナーブランディング・プロジェクトをご紹介。取り組む前の組織課題や実施時の工夫、効果について、プロジェクトリーダーの中尾さんに伺いました。 本稿は全3話のうち第1話です。
ブランディングの事例から読み解く成功のための秘訣
これまで紹介してきた事例から、成功するための秘訣は6つあります。
・付加価値をつける
・ブランドに統一感をもつ
・ターゲットを明確にする
・自社の強みを活かす
・他社と戦う軸をずらす
・プレミアム感やオンリーワンを提供する
ブランディングは「〇〇といったらあのブランド」と顧客に想起してもらうことです。そのためには、顧客の理解に加え、付加価値やブランドの統一感、自社の強みを活かすブランディングを行う必要があります。
また、物が溢れるこの時代で競合と同じような商品を販売しているようでは、事業の生存戦略として適切ではありません。
他社との競合と自社の強みを最大限活かせるブランディングを検討しましょう。例えば、バルミューダのように「機能性だけでなくデザイン性にもこだわる」などの価値を作り出すことで、価格競争に巻き込まれることなく、自社の製品を選んでもらえるでしょう。
企業イメージ経営 ~ 企業イメージを高める経営・ブランド戦略とは
https://manamina.valuesccg.com/articles/1792企業イメージやブランドイメージを高める企業経営や戦略とはどのようなものなのでしょうか。個人の価値観が多様化する現代社会において、自社そのものやブランド、サービスに対し、誰にどんなイメージを持って貰いたいかを設計する難易度は増しています。 広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏に、企業イメージを高める経営について解説いただきます。
「ブランド」や「ブランディング戦略」という言葉はよく使われますが、具体的にはなにを意味していて、どう実践すればよいのでしょうか。ブランディング戦略の立案方法や商品やサービス、企業のブランディング事例をもとにご紹介します。
本メディアを運営しているヴァリューズが開発・提供するツール「Dockpit」は、検索キーワードや消費者が閲覧しているWebコンテンツを分析でき、スピーディーな市場ニーズの理解に役立ちます。
URLを入力するだけでWebサイトのアクセス構造を分析できる機能や、キーワード入力によるユーザー像の分析・競合調査といった機能が充実しており、ブランディングの戦略立案に役立ちます。
無料版もありますので、まずは使用感など試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、業界業種・目的の異なるブランディングの成功事例11選を紹介しました。
リブランディングやインナーブランディングなど様々な種類があるものの、ブランディングで重要なことは「顧客を理解し、ニーズに合わせて自社にしかできない価値を届けること」です。
本記事で紹介したブランディングの成功事例や成功の秘訣を元にブランディング戦略に取り組んでみてはいかがでしょうか。
「デザイン」と聞くと「アート」や「ブランド」といったものを想起する人は多いのではないでしょうか。本来「デザイン」とは「創意工夫をすること」を指し、「常に人中心に」考えられるものと解かれています。また、そのような考えのもとに派生した「デザイン思考」をビジネスに取り込んだものは「デザイン経営」と呼ばれ、今やその重要性は企業の方向性を操るほどであるのと共に、社会全体の価値創造にも影響する力を持っていると言われています。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が、「デザイン」と企業価値向上の繋がり、企業イメージ経営の重要性について解説します。
ヒット商品や長く愛されるブランドを支える重要なキーが「ネーミング」。良いネーミングとはどのようなものなのでしょうか。広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏の寄稿により、ブランド価値を醸成する3つの力とネーミングの役割について解説します。
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