貯金よりも今を楽しみたい!Z世代が実践する「ソフトセービング」や「Y2K」ブームなど...海外トレンドに見るビジネスの種(2023年12月)

貯金よりも今を楽しみたい!Z世代が実践する「ソフトセービング」や「Y2K」ブームなど...海外トレンドに見るビジネスの種(2023年12月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、アメリカ出身の著者が、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は「Z世代」のトレンドに注目。貯金より今を楽しむためにお金をかける「ソフトセービング」や、ファッションにとどまらない「Y2K」ブーム、ハイブランドを真似た「デュープス」の流行などを紹介していきます。


貯金より今を楽しむ!Z世代が実施する「ソフトセービング」

近年話題の「FIRE (Financial Independence, Retire Early)」。FIREは、できるだけ多くのお金をためて早期に仕事を辞めることを意味します。しかし最近働き始めたZ世代は、「ソフトセービング」を実践しています。「ソフトセービング」とは、将来のための貯金を少なくし、現在にお金を使うことです。実際、彼らの多くは「退職の予定はまったくない」と述べています。アメリカ合衆国経済分析局によると、アメリカ人は可処分所得の3.9%しか貯金していないとしています。これは直近10年間の平均8.51%に比べると低い水準です。*

*”Person Income and Outlays, August 2023” by The U.S. Bureau of Economic Analysis
Published date: September 29, 2023
https://www.bea.gov/news/2023/personal-income-and-outlays-august-2023#:~:text=Personal%20saving%20was%20%24794.1%20billion,3.9%20percent%20(table%201).&text=From%20the%20preceding%20month%2C%20the,0.4%20percent%20(table%205).

ミレニアル世代と同様に、Z世代も過去の世代よりも多くの経済的な課題に直面しています。インフレーションの影響で住宅価格や日常必需品のコストが給与よりも速く上昇しており、若い世代が給与から貯金できる余裕がほとんどありません。

そのためZ世代は、経済状況から見て非現実的な「貯金」ではなく、快適でストレスの少ないライフスタイルを実現することを目標にして、現在の生活の質を向上させたいと考えています。ソフトセービングのトレンドは、お金よりも経験を優先するという選択肢から生まれました。別の見方をすると、Z世代が質の高い経験をすることで、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な流行により失われた時間を取り戻そうとしている結果ともいえます。彼らは収入のうち自由に使えるわずかな額を、生活必需品ではないもののの購入や趣味に充てています。主な支出としては、旅行や娯楽が挙げられます。

【参考文献】
Retire is overrated, Gen Z says, as ‘soft saving’ trend takes hold
https://www.cnbc.com/2023/11/04/gen-z-leans-into-soft-saving-less-focused-on-retirement.html

Say goodbye to retirement? A ‘soft saving’ trend is emerging among young people
https://www.cnbc.com/2023/10/23/soft-saving-trends-reshape-gen-z-millennials-personal-finance-goals.html#:~:text=Soft%20saving%20refers%20to%20putting,Prosperity%20Index%20Study%20by%20Intuit

Y2Kブームはファッションだけじゃない!ガラケー・デジカメ・ボイスメモ...2000年代の技術に魅了されるZ世代

2000年代初頭のポップカルチャーが「Y2K」トレンドとして再浮上しています。日本でも若い世代の間で、ローライズのジーンズや厚底の靴が流行しています。しかし時代を映すものは洋服だけではありません。Z世代はスマートフォン、ソーシャルメディア、人工知能の台頭と共に育ったデジタルネイティブたちですが、2000年代初頭の技術に魅力を見出しているのです。

デジタルカメラやフィルムカメラ

ハッシュタグ「#digitalcamera」がTikTokでトレンドとなっています。
Z世代のユーザーは、デジタルカメラで撮られた写真はカジュアルでノスタルジックな雰囲気を生み出すこと、それによって彼らのソーシャルメディアがカッコよくなることに魅力を感じています。デジタルカメラ市場は2028年までに年平均2%成長すると予想されています。

Z世代のユーザーは、スマートフォンで写真を撮り、すぐに撮ったものを確認して撮り直すかどうかを検討し、それらをソーシャルメディアで共有します。その結果、彼らはかなりの時間をスマートフォンに費やすことになります。

一方でデジタルカメラの写真は、簡単にチェックしてソーシャルメディアに投稿できず、コンピューターでアップロードすることになります。このアップロードまでのタイムラグにより、撮影の瞬間を楽しむだけでなく、後で写真を見て当時の体験を再び楽しむことができ、満足感が得られるのです。

またデジタルカメラは、写真加工アプリにも影響を与えています。写真加工アプリのひとつ「VSCO」は、デジタルカメラのようなフィルターを写真にかけることが可能です。同じく写真SNS「Dispo」やフィルムカメラのような写真が撮れる「Huji Cam」では、写真をチェックできるまで一定の時間待たせることで、フィルムカメラと同じような期待感を再現しています。

スマートフォンではなくガラケー

スマートフォンが定着している一方で、多くのZ世代はガラケー(折りたたみ携帯電話)も持ち歩くことを好んでいます。現代人は、友達や家族と交流する際、食べ物をInstagramに投稿したり、通知やメッセージを受け取ったりと、スマホに邪魔されてその瞬間を満足に楽しめないことがよくあります。ガラケーを使うことで、Z世代は他のことに気が散ることなく、今の状況により集中できると感じているのです。

音声メモやボイスメッセージ

テキストメッセージはその便利さで、人々のコミュニケーションのあり方を変えました。電話で話す場合は双方が同時に通話可能な状態である必要がありますが、メッセージは即座に配信されるだけでなく、都合が良いときに後で返信することも可能です。Z世代は電話での会話が好きではない一方で、テキストメッセージにも感情や雰囲気が伝わらず内容が誤解される可能性があることに気付いています。iMessageやLINEなどの多くのメッセージアプリでは、音声メモやボイスメッセージの送信が可能です。音声メッセージはテキストを打つよりも簡単であるだけでなく、ユーザーが伝えたいトーンでコミュニケーションできるため、会話を通じてより強いつながりを築けます。

このようにZ世代は、現代の技術やスマートフォン、SNSによって、質の高い経験や繋がりをむしろ失っていると認識し、2000年代初頭の技術を活用しています。まるでZ世代が、スマートフォンで無限の情報に疲弊することなくありのままを楽しんでいた2000年代初頭に対して、ある種の憧れを抱いているかのようです。

【参考文献】
How Gen Z uses technology–flip phones, digital cameras, voice memos
https://www.cnbc.com/2023/10/17/how-genz-uses-tech-flip-phones-digital-cameras-voice-memos.html

Z世代の間で、ブランド品を真似た「デュープス」が流行中

Z世代は、高級品やブランド製品を持つことにそれほどこだわっていません。市場には手頃な価格の「デュープス(Dupes)」がたくさんあるからです。

「デュープ」は「複製」や「偽者」を意味し、「デュープス」は高級品の手ごろな代替品を指します。デュープスを扱う企業は、プラダの最新ローファーやセレブが持つボッテガ・ヴェネタのジョディ(バッグ)などのブランド品と同様のデザインで、より安価な品を提供しています。デュープスは、許可されていないラベルを含む「偽造品」とは異なります。なぜならデュープスは、ブランドのデザインをインスパイアし、一部の特色を模倣しているだけだからです。なおZ世代の49%は、意図的にデュープを購入したと述べています。*

*A poll of 2,216 adults in the U.S conducted by Morning Consult
Period: Early October 2023
https://pro.morningconsult.com/analysis/dupe-buyer-demographics-brand-strategy

Z世代およびミレニアル世代がブランド品ではなくデュープスを購入する主な理由は、自由に使える収入が少なく、高級品を手に入れるのは難しいと考えているからです。これらの世代はファストファッションで育ったため、安価な品を購入することに慣れています。

一般的に、ブランド品の「偽物」を持つことは恥ずかしいこと、または「インチキ」であるとされます。しかしZ世代およびミレニアル世代は、ある程度の品質があり、費用対効果の高いデュープスには価値があると考えています。Z世代の10人に6人は、「お金があっても、実際の高級ブランドよりデュープスを購入するだろう」と述べています。デュープスを買うことは妥協ではなく、むしろ目標となっているのです。

デュープスは、高級ハンドバッグやアパレルに限らず、さまざまな産業で存在しています。たとえばディオールやシャネルのような高級メーカーの化粧品を見て、ドラッグストアで似たような色合いや品質の化粧品を見つけている人もいます。特定ブランドの高級香水を再現し、デュープスとして販売している企業もあります。お気に入りのセレブが着用する高価な服を参考に、最適なデュープスを共有するSNSアカウントも。鋳物ホーロー鍋の「Staub(ストウブ)」や「Le Creuset(ルクルーゼ)」は高価であるため、他の調理器具会社が同様のデザインで製造しています。高級シャンパンのデュープスまで存在するのです。

特筆すべきは、旅行のデュープスです。高い需要のある旅行先は、旅行代金が高いだけでなく観光客も増加します。そのような状況を避けるために、イギリスのロンドンを訪れたい場合はリバプールへ、タイのバンコクの代わりにパタヤに行く、というような提案がなされるのです。雑誌「ELLE」も、冬の休暇に良質なスキー場を探している場合、世界でも有数の観光地であるスイス・ツェルマットの代わりに、日本の北海道を訪れることを提案しています。

【参考文献】
Destination Dupes Are The Travel Trend You Need To Know for 2024
https://www.elle.com/uk/life-and-culture/travel/g45790291/destination-dupes-travel-trend/

Gen Z and Millennials Now Prefer Dupes to Luxury, for More Than Just Prices
https://www.ypulse.com/article/2023/11/10/gen-z-and-millennials-now-prefer-dupes-to-luxury-for-more-than-just-the-prices/

With Gen Z, millennials now the biggest ‘dupe’ shoppers, online culture has ‘flipped the script,’ analyst says
https://www.cnbc.com/2023/10/31/gen-z-millennials-are-shopping-for-dupes-the-most-report-finds.html

この記事のライター

Born and raised in the Bay Area, U.S.A, I was fascinated by the different social and purchasing behaviors between Japanese and American consumers. I studied communication for undergrad and international marketing for my graduate studies. My professional background is in bilingual recruitment and Japanese-English translation.

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