Zenlyとは?
Zenlyは、スマートフォン上で友達や家族、あるいは他人とお互いの位置情報をリアルタイムで共有し合うことを主な機能としたアプリです。位置情報の共有・確認以外にも、共有者のスマホの電池残量の確認、グループチャットや電話も行うことができ、多機能コミュニケーションツールとしてユーザー数は4000万人にまで成長。GooglePlayでのダウンロード数は1億を超えていました。
ユーザー4000万人の「Zenly」終了を決定したスナップ社の内幕。社員「皆、怒りと混乱を感じている」
https://www.businessinsider.jp/post-259096突如サービスが終了したフランスの位置情報・ソーシャルメッセージアプリ「Zenly」。スナップチャットの親会社であるスナップに買収されたものの、独自に運営されてきました。ですが、スタッフがサービス終了の事実を知らされたのは発表前日でした。
しかしその後、親会社であるスナップ社の経営不振により、多くの人に惜しまれつつ2023年2月3日にサービスを終了しました。
Zenly公式は、Snapchat内のMap機能を代替として推奨していました。
Zenly終了直後の乗り換え状況
マナミナでは、Zenlyがサービスを終了した直後の2023年3月29日に、位置情報共有アプリの利用動向調査をリリースしました。この時の調査では、Zenlyの若年層ユーザーは主に友人の位置情報を知る目的での利用である一方、20代の次にユーザー層として厚かった40代利用者は、親世代が子供の居場所確認を目的として利用していると予想されていました。
この調査時点では、Zenlyユーザーの乗り換え先予想として、ユーザー数上昇率と機能の類似性から「whoo」「NauNau」「友どこ」を有力なものとしてピックアップし、Zenlyとの併用率やユーザー属性から、「whoo」「NauNau」がZenlyと似たユーザー層と推測していました。
以下は各アプリ利用者の年代の割合です。こちらを参考に、whooとNauNauのユーザーの年代はZenlyユーザーと波形が似ている一方で、友どこユーザーの年代はネット利用者全体のグラフと似た形になっており、Zenlyからの乗り換えユーザーは少数であると推測していました。
「Zenly」「whoo」「NauNau」「友どこ」利用者年代
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン
友どこは子供を有する利用者が多く、40代以上のユーザーの割合が他アプリよりも大きかったことから、高齢の親や子供の見守りを目的としていることが示唆された他、一部利用者はこれらの競合外の、より見守り機能に特化したアプリに乗り換えた可能性もあると予想していました。
「Zenly」「whoo」「NauNau」「友どこ」利用者の子供有無
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン
Zenly利用者はどこにいった?位置情報共有アプリの利用動向
https://manamina.valuesccg.com/articles/23032023年2月にサービス終了を迎えた大人気アプリのZenly。友人や家族と位置情報を共有する便利さをユーザーに伝え、位置情報共有アプリの需要を高めました。Zenlyがなくなった今、その需要の受け皿はどのアプリが担うのでしょうか。ということで今回は、「whoo」、「NauNau(ナウナウ)」、「友どこ」をZenlyに代わる位置情報共有アプリとして取り上げ、ユーザー層やZenlyとの併用率などから、実際に乗り換えは進んでいるのか、どのアプリが優勢なのか、調査していきます。
Snapchatなど、2024年現在の代表的な位置情報共有アプリ
今回はwhoo、 友どこ、 Snapchat、 NauNau、 Jagatの5つを取り上げます。前回取り上げたアプリに、SnapchatとJagatの2つが加わりました。取り上げた理由は、そのユーザー数と機能性です。各アプリの違いについて、GooglePlayの公式メッセージより文章を引用しつつ説明します。
■[whoo]
https://play.google.com/store/apps/details?id=app.whoo&hl=ja&gl=US&pli=1
whooはただ友人や家族の位置情報を確認するだけのアプリではなく、「楽しさを追求する」という点を強調しています。
基本機能のほかにも、思い出の写真を保存する機能、一緒にいた時間を記録する機能、お気に入りスポットを登録する機能など多くの機能を有し、デザインはシンプルかつポップなものとなっています。
■[友どこ]
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.mixerbox.tomodoko&hl=ja&gl=US
「GPS追跡アプリ&新感覚地図SNS」を謳っており、チャット機能やその他副次的な機能を有しているものの、他類似アプリと比べると機能がシンプルです。節電性や安全性をアピールしていることから、位置確認機能に特化している印象を受けます。
■[Snapchat]
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.snapchat.android&hl=ja&gl=US
紹介したアプリの中では唯一、位置情報確認機能が「おまけ」である点が特徴です。「Snapchatは、今この瞬間に起きていることを友達や家族とシェアできる楽しいアプリです」とあるように、SNSとしての側面が強く、写真共有機能がメインです。
■[NauNau]
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.hello.zuttomo&hl=ja&gl=US
「家族や恋人や友達とのつながりを深める新しい位置情報共有アプリ」とあるように、こちらもwhooと同じく単なる位置情報確認ツールではない点を強調しています。
whooと同様の機能を有している一方、Zenlyデータ引き継ぎ機能や危険な時に大音量で通知を送ることができる機能などの独自機能も有しています。
■[Jagat]
https://play.google.com/store/apps/details?id=io.jagat.lite&hl=ja&gl=US
「『心の距離』という概念とはもうおさらば。友だち、恋人、家族との関係をより親密なものに」とあるように、whooやNauNauと同じような楽しい機能を多く有しています。whooとの違いは、ランキング機能がある点です。こちらは移動距離など、アプリ内の活動数に応じて他ユーザーと競い合う仕組みになっています。
以上を踏まえて、機能だけを見れば
・Snapchat
・Jagat、whoo、NauNau
・友どこ
と分類することができ、上側に並ぶものほど多機能で“楽しさ”を追求している印象を受けます。
■whooがユーザー拡大を続ける
ではここから、上記5つのアプリの比較を行っていきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールDockpitを用います。
まずユーザー数推移を参照すると、whooの月間ユーザー数は2023年11月以降、他のアプリの2倍以上であることがわかります。
Zenlyがサービスを終了した2023年2月時点では、2023年5月リリースのJagatを除いたいずれのアプリも大幅にユーザー数が増加しましたが、その後のユーザー数はwhoo以外次第に減少しています。しばらくの間は元Zenlyユーザーが様々な位置情報共有アプリを併用し試したものの、次第にお気に入りの移行先アプリを決め、それ以外のアプリからは離脱したものと見られます。
「whoo」「友どこ」「Snapchat」「NauNau」「Jagat」のユーザー数推移
期間:2022年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
特に注目したいのは、前回の記事でZenlyと似たユーザー層だと考えられていたwhooとNauNauの違いです。whooの伸びに比べてNauNauは伸び悩んでしまいました。特に、2023年11月頃には一気に下落しています。何故でしょうか?
2023年10月のYahoo!ニュースの記事によると、「NauNau」は個人情報流出の可能性があるとして、アプリのサービスを一時停止したと発表しています。このことが、11月のユーザー数の低下に影響していると考えられます。
位置共有アプリ情報流出か 「NauNau」提供停止(共同通信) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/917407ba70603e809453f1911b7331d86f000799友人や家族と位置情報を共有する人気アプリ「NauNau」(ナウナウ)から個人情報が流出した可能性があることが23日、分かった。アプリを運営する企業の親会社「モバイルファクトリー」が同日、発表した。
なお、現在は調査を終えているようですが、メンテナンス状態が続いているようです。試しに筆者がダウンロードとユーザー登録を試みたところ、エラーでユーザー登録ができませんでした。このようなエラー状況も、ユーザー数に影響していると考えられます。
■友どこは子育て世代から支持を獲得か
次に、実際に各サービスをどのような人が使っているのか調査してみましょう。
各アプリユーザーの性別割合をみると、全体としては大きな差は見られないものの、他に比べSnapchatは僅かに女性の割合が高いとわかります。whoo、友どこ、NauNau、Jagatは明確に位置情報共有アプリに分類される一方、SnapchatはSNSとしての性質が強いことが一因かもしれません。
「whoo」「友どこ」「Snapchat」「NauNau」「Jagat」のユーザーの性別
期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
次に各アプリユーザーの年代割合ですが、前回の調査と同様、位置情報共有アプリは若者世代(20代)と子供の見守りを目的としてアプリを利用する世代(40代)の割合が高くなる傾向があります。前回調査同様、whoo、NauNauに加え、JagatはZenlyとユーザーの年齢層が近いといえますが、「友どこ」はグラフの形状から年代間での偏りが少ないのが見て取れます。位置確認に重きを置いたシンプルな作りだからこそ、見守られる側の子供や高齢者にもわかりやすく、見守りアプリとして使いやすいと子育て世代から支持を得ているのかもしれません。
「whoo」「友どこ」「Snapchat」「NauNau」「Jagat」のユーザー年代割合
期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
Snapchatは厳密には位置情報共有アプリではない(=Zenlyとは性質が異なる)点、以前から多くの人に利用されていた点が理由で、whoo、NauNau、Jagatほど年代に偏りが無いものと思われます。
さらに各アプリユーザーの子供の有無の割合を見ると、やはり友どこユーザーは子供を有している傾向が僅かに高く、先述したように、見守り機能としての位置情報共有機能に需要を見出している傾向がありそうです。
「whoo」「友どこ」「Snapchat」「NauNau」「Jagat」ユーザーの子供の有無の割合
期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
■whoo・NauNau・Jagatはヘビーユーザーが多い
続いて月平均アプリ起動日数を見てみましょう。whoo、NauNau、Jagatは曲線が比較的なだらかで、ヘビーユーザーが多めなことが伺えます。特に、whooユーザーは月平均のアプリ起動日数が6日以上の層が全体の50.5%を占めるなど、他アプリと比べヘビーユーザーが多いことがわかります。ヘビーユーザーが多い理由としては、位置情報共有アプリの性質が深く関係していると思われます。位置情報を共有するためには、お互いが同一のアプリを使用している必要があるため、アプリの選択は「位置情報を交換したい相手が使っているか否か」に大きく左右されます。そのため、娯楽性に重きを置きつつ、早期にリリースを終えたwhoo、NauNauは先行性ゆえにZenlyのヘビーユーザー層からの乗り換えを多く確保でき、以後は機能の充実性・セキュリティ面などの優位性からwhooにヘビーユーザーが集まったと推測できます。
「whoo」「NauNau」「友どこ」「Jagat」「Snapchat」のユーザー起動日数分布
期間:2023年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
その他の要因に関しては、過去に製作してきたアプリのユーザーへのヒアリング、過去の開発経験、資金調達などが成功要因として挙げられるそうです。より詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
「ナンバーワンを確信していた」。位置情報共有アプリ「whoo」3ヶ月で1,000万ダウンロード達成の舞台裏 LinQ・原田CEO|STARTUPS JOURNAL
https://journal.startup-db.com/articles/linq#:~:text=Zenly%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%81%AF%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%99%BA,%E3%81%AFwhoo%E3%82%92%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82「3か月で1,000万ダウンロードを突破」 「各国のアプリストアで1位を獲得」 「MIXIから最大約20億円の資金調達」 2023年4月に発表されたプレスリリースにはこんな文言が躍る。 出したのは、若...
また、whoo、NauNauは機能面での差が僅かであったため、詳しい違いを知りたい方は以下のアカウントに掲載されている機能表を参考にしてみてください。
https://twitter.com/insteadof_zenly?s=21&t=xLLlv-7Rq3Cp__o83O_NrQ
そして、以下の月平均アプリ起動日数推移を示したグラフから分かるように、トラブルのあったNauNauを除外すれば、数年前に既にリリースされているSnapchatは安定的な一方、他3つは変動はあれど起動日数を伸ばしています。全体のユーザー数は減少傾向にあるものが多いため、ライトユーザーが離脱し、ヘビーユーザーが徐々に定着しているのでは無いでしょうか。
「whoo」「友どこ」「Snapchat」「NauNau」「Jagat」の月平均アプリ起動日数推移
期間:2022年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
■アプリどうしの比較検討はどれくらい起こっている?
次に、これら5つのアプリの併用状況を見てみましょう。
whooユーザーの他類似アプリの併用率を分析すると、他アプリのリリースのタイミングでは併用率が上がる一方、その後は順調に「併用なし」の割合を増やしています。このことから、他アプリと比較され、勝ち残り、着実にユーザーを定着させていることがうかがえます。
whooユーザーから見た各アプリ併用率推移
期間:2022年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
友どこは非併用率8割以上をキープ。機能性の差から、whoo、NauNau、Jagatでは達成できない需要をユーザーは友どこに見出していそうです。
友どこユーザーから見た各アプリ併用率推移
期間:2022年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
Snapchatもwhooと同様、他の位置情報共有アプリがリリースされる度に併用率が上がっており、一部のユーザーはwhooをはじめとする他のアプリに流入後定着し、一部は併用を続けている状態です。一方で、Jagatとの併用はほとんどありません。
Snapchatユーザーから見た各アプリ併用率推移
期間:2022年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
NauNauも他アプリのリリースのタイミングで併用率が上がっていますが、中でもwhooとの併用が多かったようです。徐々にユーザーを固定させていたことがうかがえますが、先述したように2023年10月〜11月のタイミングで局所的にwhooとの併用率が上がっています。このタイミングで一定のユーザーがNauNauからwhooへ乗り換えたのかもしれません。
NauNauユーザーから見た各アプリ併用率推移
期間:2022年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
Jagatはリリース直後にwhooとの併用が6割を超え、その後徐々に併用率を下げていることから、Jagatユーザーは比較検討先としてwhooを選ぶ傾向にあったものの、少しずつJagat単体の利用になっていったユーザーが多いことがわかります。
Jagatユーザーから見た各アプリ併用率推移
期間:2022年3月~2024年2月
デバイス:スマートフォン
まとめ
今回の調査から分かったことをまとめます!
・Zenlyユーザーとwhoo、NauNau、Jagatのユーザー層は同質の可能性あり。NauNauが情報漏洩でサービス提供を一時停止して以降、whooの一強に。
・友どこユーザーは年代の偏りが少ない。シンプルな作りから見守り目的の親世代に好まれていると予想。
・公式からSnapchatのマップ機能を推奨されていたものの、Zenlyのサービス停止以前と劇的なユーザー数の変化はなし。Zenlyユーザーが求めていた機能とは異なった可能性。
・コミュニケーション、待ち合わせ、日々の見守り、災害時の安否…と位置情報確認の目的に応じたアプリ選択が行われていると推察。
「位置情報共有機能」を各社どう活用していくか、位置情報共有アプリ市場はどうなるのか、今後も目が離せません。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
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