Georgiaに見るオウンドメディア活用ブランディング|前編 右肩上がりのCoke ONアプリ

Georgiaに見るオウンドメディア活用ブランディング|前編 右肩上がりのCoke ONアプリ

お客さまと直接コミュニケーションできるD2C(Direct to Customer)チャネルとして、消費財メーカーなどを中心にブランドサイトやSNS、アプリといったオウンドメディアを活用する企業が増えています。今回は、飲料メーカーのオウンドメディアに着目してみました。


サントリー、コカ・コーラが強し!食品・飲料業界のサイトランキング

まず、eMark+のPC&スマートフォンサイトランキングで食品・飲料メーカーのユーザー数上位サイトを確認したところ、15サイト中5サイトはブランドサイトや会員サイト。

それ以外のコーポレートサイトも、トップページを彩るのはいずれもブランドシンボルやキャンペーン情報で、企業情報やメディア、投資家向けリリースを全面に出す企業はほとんどありませんでした。

図表 1 eMark+「食品・飲料」サイトユーザー数ランキング(2019年6月)

図表 1 eMark+「食品・飲料」サイトユーザー数ランキング(2019年6月)

網掛けはブランドサイト

なかでも目を引くのが、日本コカ・コーラが運営する3サイト。2位「コカ・コーラ会員」は会員サイト、7位「缶コーヒー「ジョージア」」はブランドサイトです。

コーポレートサイトとコカ・コーラのブランドサイトを兼ねる「コカ・コーラ」も12位に入っていました。これらサイトのほか、決済機能付き自販機アプリ「Coke ON」は1400万ユーザーがダウンロードしています(コーポレートサイトより)。

感動体験を生むIoTアプリ「Coke ON」がリアル×デジタルで挑む東京2020オリンピック

https://www.cocacola.co.jp/stories/olympic_CokeON_relay_190617

コカ・コーラ社のスマホ自販機で使えるアプリ「Coke ON」。東京2020オリンピック聖火ランナーに応募できるキャンペーンも開始し「Coke ON」を使ってより楽しくオリンピックを応援できるように進化します。 リアル×デジタルで挑む「Coke ON」の戦略に迫ります。

コンビニコーヒーやチェーン店からのテイクアウトで消費量は漸減傾向の缶コーヒー。

他方、2018年には「ジョージア」と「サントリー天然水」に続きライバル「BOSS」の出荷量が初めて1億ケースを超えるなど、ペットボトル普及により従来の主要顧客だった30-50代男性から20-30代男女へと、市場の裾野は広がっているという見方もあります。

図表 2 日本人の1週間あたりコーヒー消費量

図表 2 日本人の1週間あたりコーヒー消費量

(全日本コーヒー協会統計「日本のコーヒーの飲用状況」より)

多様化するコーヒー市場で圧倒的強さを見せるジョージアそしてコカ・コーラブランド。

会員サイト、ブランドサイト、コーポレートサイト、自販機アプリといったオウンドメディア、そしてCMや各種キャンペーンとの相乗効果を探ってみます。

キャンペーンへのダイレクトな反応

冬のジョージアブランドキャンペーンが始まった2018年11月は、コカ・コーラ会員サイト、ジョージアサイトともにユーザーが急増。

Coke ONドリンクチケットが当たるくじを自分で引いて、さらに働く仲間や友人にLINEで差し入れもできる「日本の冬をあたためよう!みんなで差し入れキャンペーン」や「日本の冬は、あたたかい。」LINEスタンプのプレゼント、「極暖ヒートテック」が当たる「ジョージア Coke ONアプリ限定キャンペーン」なども奏功して、12月にはCoke ONユーザーが500万人の大台を突破しています。

図表 3 コカ・コーラのオウンドメディアユーザー数及びコーヒー飲料生産量

図表 3 コカ・コーラのオウンドメディアユーザー数及びコーヒー飲料生産量

(サイトユーザーはPC+スマホの合計。コーヒー飲料生産量は平成30年度食品産業動態調査より)

エメラルド・マウンテン25周年を記念した機動戦士ガンダムとのコラボ缶、ヤマハ E-バイクやG-SHOCKが当たるジョージア ジャパン クラフトマンキャンペーンが開催された2019年4月もコカ・コーラ会員サイト、ジョージアサイトともにユーザーを増やし、コーヒー飲料生産量(右軸)自体の市場拡大にも貢献したようです。

Coke ONアプリユーザーも右肩上がりで、6月には1400万ユーザーの半数近い669万人が起動しました。

コーヒーブランドのプレゼントキャンペーンは目新しい施策ではありませんが、オウンドメディアやCoke ONといったD2Cチャネルを設けたことによって、ユーザーはいっそう反応しやすくなったのではないでしょうか。

調査概要

ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービスeMark+を使用し、食品・飲料業界のサイト、Coke ONアプリについて調査しました。
※ユーザー数は、PC及びスマートフォンのアクセスを集計し、ヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
※サイト分類のカテゴリは、ヴァリューズが独自に定義。

後編はこちら

Georgiaに見るオウンドメディア活用ブランディング|後編 キャンペーンだけじゃない人気コンテンツ

https://manamina.valuesccg.com/articles/528

後編では、先進マーケティングカンパニー、コカ・コーラのオウンドメディアが強い背景を、人気コンテンツから考察します。

この記事のライター

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。

関連する投稿


オウンドメディアとは?目的やメリット、運営する際のポイントを紹介

オウンドメディアとは?目的やメリット、運営する際のポイントを紹介

オウンドメディアとは、企業が保有している自社メディアの総称のことで、一般的には自社ブログやウェブサイトのことをいいます。自社の商品やサービスの認知度を高め、優良顧客と継続的な取引をするためには、オウンドメディアの活用が欠かせません。 そこで本記事では、オウンドメディアとは何か、活用目的やコーポレートサイトとの違い、メリット・デメリットなどについて解説していきます。オウンドメディアを有効活用できるよう、知識を整理していきましょう。


資生堂「SHIFT 2025 and Beyond」に込めた想いとブランディングを成功に導く視点|株式会社資生堂代表 魚谷氏に訊く【後編】

資生堂「SHIFT 2025 and Beyond」に込めた想いとブランディングを成功に導く視点|株式会社資生堂代表 魚谷氏に訊く【後編】

資生堂 会長 CEOの魚谷雅彦氏は、3年前倒しで売上目標1兆円を達成した後、コロナ禍でも様々な取り組みを実行してきました。新たに中期経営戦略として策定された「SHIFT 2025 and Beyond」には、どのような想いがあったのか。自社ブランディングを成功させるために必要な視点も合わせて、マーケティングのプロフェッショナルである魚谷氏にヴァリューズ 代表取締役社長の辻本が伺いました。


資生堂の中期経営戦略「VISION2020」で実行した構造改革と2030年への展望|株式会社資生堂代表 魚谷氏に訊く【前編】

資生堂の中期経営戦略「VISION2020」で実行した構造改革と2030年への展望|株式会社資生堂代表 魚谷氏に訊く【前編】

資生堂 会長 CEOの魚谷雅彦氏は社長への着任後、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」となることを宣言し、資生堂のオリジンをしっかり出しつつも、様々な取り組みを実行。100年先も輝き続ける会社を目指し、短期目線ではなく中長期での成長実現に向け、取り組んできた想いや狙いをヴァリューズ 代表取締役社長の辻本が伺いました。


約8割がオウンドメディアにプラスの効果を実感!課題は「コンテンツ数の維持」【宣伝会議調査】

約8割がオウンドメディアにプラスの効果を実感!課題は「コンテンツ数の維持」【宣伝会議調査】

株式会社宣伝会議は、同社発行の広報・PR・コミュニケーションの専門誌『広報会議』にて、広報活動において重要な役割を担う「オウンドメディア」について、広報担当者、オウンドメディアの担当者を対象に調査を実施し、結果を公開しました。


企業イメージ経営 ~ キャラクターの威力

企業イメージ経営 ~ キャラクターの威力

企業イメージと聞き、最初に思いつくのはロゴでしょうか、色でしょうか、それともキャラクター?昨今では、キャラクターを用いての広告戦略は企業だけでなく、地域おこしなど、あらゆるところで目にするようになりました。誰も彼もが深い意味もなく「かわいい」と愛着を感じてしまう「ゆるキャラ」や企業のイメージキャラクター。実はそこに認知心理学が深く関わっているようです。本稿では人心を捉えるために計算尽くされたキャラクターの威力について、株式会社創造開発研究所所長を務める渡部数俊氏が解説します。


最新の投稿


取り上げられるプレスリリースは「内容の興味深さ」!共感を呼ぶストーリーや他社と異なる独自性が重要【PRIZMA調査】

取り上げられるプレスリリースは「内容の興味深さ」!共感を呼ぶストーリーや他社と異なる独自性が重要【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、メディア関係者を対象に、「プレスリリースに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


宅配サービスの直近の利用率は約4割でコロナ禍であった2年前より低下 受け取り方は「自宅で手渡し」が依然として高い傾向【クロス・マーケティング調査】

宅配サービスの直近の利用率は約4割でコロナ禍であった2年前より低下 受け取り方は「自宅で手渡し」が依然として高い傾向【クロス・マーケティング調査】

株式会社クロス・マーケティングは、「宅配」に関わる利用実態や意識・行動に関する調査として、全国47都道府県に在住する20~69歳の男女を対象に「宅配に関する調査(2024年)」を実施し、結果を公開しました。


博報堂DYホールディングスと博報堂テクノロジーズ、デジタルクリエイティブ制作における戦略や企画の効率化・高度化を行う「CREATIVE BLOOM PLANNING」を開発

博報堂DYホールディングスと博報堂テクノロジーズ、デジタルクリエイティブ制作における戦略や企画の効率化・高度化を行う「CREATIVE BLOOM PLANNING」を開発

株式会社博報堂DYホールディングスと株式会社博報堂テクノロジーズは、統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM (クリエイティビティ エンジン ブルーム)」に、デジタルクリエイティブ制作における戦略や企画の効率化、高度化を行う「CREATIVE BLOOM PLANNING」を開発し、社内での利用を開始したことを発表しました。


約6割がタレント起用の広告を見てブランドをより好きになった経験あり!消費者の購入意欲度を高めることや購買行動を促す効果も【エイスリーグループ調査】

約6割がタレント起用の広告を見てブランドをより好きになった経験あり!消費者の購入意欲度を高めることや購買行動を促す効果も【エイスリーグループ調査】

エイスリーグループは、Z世代・Y世代の男女を対象に、タレント起用の広告が消費者に与える影響を調査し、結果を公開しました。


電通デジタルと電通、SmartNewsアプリ内「記事閲読行動データ」の活用で、生活者のモーメントを捉えたアプローチを実現

電通デジタルと電通、SmartNewsアプリ内「記事閲読行動データ」の活用で、生活者のモーメントを捉えたアプローチを実現

株式会社電通デジタルと株式会社電通は、スマートニュース株式会社と共同で、ユーザーのプライバシーを保護しながら安全にデータ分析ができるデータクリーンルーム「SmartNews Ads Data Pot」を構築。スマートニュース株式会社が運営するニュースアプリ「SmartNews」の記事閲読行動データなどを活用し、生活者のモーメントを捉えたマーケティング支援を開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ