顧客分析の代表的なフレームワーク3選(RFM分析・デシル分析・NPS分析)

顧客分析の代表的なフレームワーク3選(RFM分析・デシル分析・NPS分析)

自社の商品やサービスの購入が見込める顧客を予測し、効果的な販売促進のアプローチを探る「顧客分析」。マーケティングにおける顧客分析では「RFM分析」「デシル分析」「NPS分析」というフレームワークがよく用いられます。各フレームワークの基本的な概要や分析方法などを紹介します。


優良顧客の判定に役立つ「RFM分析」

優良顧客をセグメンテーションする「RFM分析」の概要と目的

RFM分析とは、下記の3指標で顧客をスコアリングし、優良顧客を判定するための手法です。

R=Recency:最新購入日
F=Frequency:購入頻度
M=Monetary:購入金額


これは顧客のセグメンテーション方法としては基礎的かつ実績のある手法で、優良顧客や優良顧客への成長を見込める顧客をターゲットにしたプロモーション施策を行い、顧客の維持と売上の拡大を目的としています。

なお、優良顧客のセグメンテーションだけではなく、新規顧客、休眠顧客、離反顧客の分析も行えます。

STP分析でセグメンテーションする具体的な方法と事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/695

自社にとって優位なマーケティング戦略を練るうえで欠かせないフレームワークSTP分析。今回STPのうちのS=セグメンテーションについて、市場を細分化する具体的な方法やポイント、事例をご紹介します。

RFM分析の基本的な分析方法

まず、データ分析したい顧客の「R」「F」「M」データを用意します。続いて、R・F・M各指標を5段階の評価を作成し、そこに顧客を振り分けます。

RFM条件設定例
ランク R=最新購入日 F=購入頻度 M=購入金額
5 1ヶ月以内 10回以上 100万円以上
4 3ヶ月以内 9回 50万円以上
3 6ヶ月以内 7回以上 25万円以上
2 1年以内 3回 5万円以上
1 1年以上 1回 5万円未満

RFMすべてのランクが5ならば、優良顧客。すべて3ならば中間層となります。また、R軸の評価が5でF軸とM軸に関しては1という場合は、新規顧客になりますので、購入頻度や購入金額を上げるためにダイレクトメールやクーポン配布でリピートを狙う、といった施策が考えられます。

また、RFMすべての軸での分析ではなく、F軸とM軸を使っての分析により、顧客ランクの変動もチェックできます。ランクが下がっている顧客を抽出し、対策を講じて離反を防いだりといった、施策の立案、改善、そして優良顧客育成に分析結果を活用できます。

購入金額でコアな顧客層を抽出する「デシル分析」

デシル分析の概要と目的

デシル分析とは、全顧客を購入金額順に10等分し、各ランクの購入比率や売上高構成比を算出する分析方法です。

購入金額の高いグループほど購買力があり、企業の売上に貢献しているとみなします。また、購買力の低いグループよりも集中的に強化した施策で囲い込みを狙います。

デシル分析の基本的な分析方法

デシル分析は以下の手順で行います。なお、データの作成はエクセルでも可能です。

1.顧客を購入金額が多い順に並べる
2.全体の人数を10等分し、各グループの購入金額を算出
3.全体の購入金額に対し、各グループの合計売上が何割を占めているか算出

10等分に関しては、マストではありません。調査の規模によっては、5等分や3等分にしても問題ありません。

デシル分析の結果の活用例としては、購入金額比率の高い上位層を優良顧客とし、規定額以上での割引セールやクーポンの送付、また、高額商品をおすすめ。
反対に購入金額比率の低い層には低単価商品やまとめ売り、福袋といった「お得感」をアピール、などという施策があります。

注意点としては、デシル分析は単に売上金額だけでデータを算出したもの。したがって、過去に1度でも高額商品を購入していてその後はなにも購入していないと上位グループに入ってしまいます。この部分を正確に見極めたいのであれば、上記の「RFM分析」が最適です。

なお、デシル分析の「デシル」とは、ラテン語で「10等分」や「10分の1」という意味があります。

企業やブランドに対する愛着や信頼性を測る「NPS分析」

NPS分析の概要と目的

NPS分析とは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で、企業やブランドに対して顧客がどれくらいの愛着や信頼を持っているかを測る指標です。なお、NPSは顧客体験の評価・改善に生かされるだけではなく、業績に直結します。

NPS分析と似たような概念に「顧客満足度」がありますが、これとは異質なものと認識する必要があります。その理由は、顧客満足度は業績向上に貢献するとは限らないため、業績と結びつくNPSとは異なります。

NPSの向上は、批判者が減って推奨者の増加にもつながります。これによっても業績にポジティブな影響を与えます。

NPS分析の基本的な分析方法

NPS分析は、0〜10段階で評価する質問を設定します。例えば「あなたはほかの人にこの商品(もしくはサービスや企業)をすすめる可能性はどれぐらいありますか?」といった内容です。

そして、0〜10段階を批判者、中立者、推奨者の3つに分類して0〜6点を批判者、7〜8点を中立者、9〜10点を推奨者とします。

最後に3つの割合を算出し、推奨者の割合から批判者の割合を引いたものがNPSの値となります。

NPSの値を同業種の平均ポイントや業界1位ポイントと比較し、自社がどの程度の数値を目指すべきかの指標にします。

NPS®とは(ネットプロモータースコア)顧客満足度に変わる新指標 - NPSソリューション

https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

NPS®とはNet Promoter Score(ネットプロモータースコア)の略で、顧客ロイヤルティを測る指標です。業界においてNPSでトップを走る企業は競合他社の2倍の成長率を上げていると言われるように、事業成長との高い相関関係があるのが特徴です。

NPSが高い=推奨者が多い、となります。推奨者は企業にとってよい顧客であり続けるだけではなく、ポジティブな口コミも広めてくれます。つまり、NPSを高めることは直接的にも間接的にも業績に好影響をもたらしてくれます。

NPS分析の適用例

顧客満足度と異なり、NPS分析が売上に直結するKPIとして使われる例としては、カスタマーサクセスの分野があります。

月額課金などのサブスクリプション系サービスでは、チャーンレート(解約率)を低く保つことが重要で、NPS分析で顧客ロイヤリティを測ることで、解約に至る前に改善施策を打つことができます。

カスタマーサクセスのKPIに使う指標とは?チャーンレート・LTVなど

https://manamina.valuesccg.com/articles/313

顧客の成功を支援するカスタマーサクセスですが、その結果として契約更新を目指すだけが目的ではありません。カスタマーサクセスのKPIとしては顧客生涯価値を最大化するLTV、解約率を見るチャーンレート、オンボーディング完了率、アップセル/クロスセル率などの指標を使います。

まとめ

せっかく良い商品・サービスを提供しようとしても、利用する顧客のニーズと合わない場合は、なかなか良い結果を得られません。

効率の良いマーケティング施策を行うためにも、今回紹介した3つの顧客分析のフレームワークを活用し、顧客を知ることが重要になります。

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