市場調査の代表的な方法4つとその進め方(アンケート・電話調査・会場調査・インタビュー・ネットリサーチ)

市場調査の代表的な方法4つとその進め方(アンケート・電話調査・会場調査・インタビュー・ネットリサーチ)

マーケティング施策立案のため行われる市場調査ですが、代表的な手法としてアンケート調査、電話調査、会場調査、インタビュー調査、ネットリサーチを取り上げます。調査目的や回答数の規模、予算などからどの手法を選択するか決定しますが、本記事ではそれぞれの手法の特徴と進め方について説明します。


アンケート調査の特徴と進め方

アンケートは市場調査の基本となる調査方法です。調査対象の嗜好や行動を把握するため、一定期間に質問に対する回答を回収します。アンケート調査を集める手法として電話調査・インタビュー・会場調査・ネットリサーチがあります。

アンケートでは以下のステップで調査を設計します。このうち「アンケート設計」とある部分で調査項目・調査対象・規模・時期・分析方法・報告方法・予算などの要素から電話調査・会場調査・ネットリサーチいずれの手法を用いるか決定します。

1.目的の明確化
2.アンケート設計
3.調査票の設計
4.データ集計・分析
5.レポート作成

電話調査の特徴と進め方

電話調査では調査対象に対して電話をかけて質問し、回答を集める調査方法です。政府や新聞社の世論調査などで使われています。

電話調査では調査員が対象となる個人や組織に電話し、アンケートの調査票に基づいて回答を集めますが、その電話番号は予め属性などで絞り込まれた名簿方式と、プログラム的に無作為に電話番号を生成するRDD方式(Random Digit Dialing)があります。

RDD方式には統計的に無作為という特徴の他に、電話帳に載っていない携帯電話も対象にできるメリットがあります。

世論調査 「RDD」方式とは - 政治:朝日新聞デジタル

https://www.asahi.com/politics/yoron/rdd/

朝日新聞社のニュースサイト、朝日新聞デジタルの世論調査 「RDD」方式とはについてのページです。

電話調査の特徴としては「調査を準備する(=実査の)準備が少なくて済む」「その場で回答が得られる」「全国など広範囲の地域の調査に向いている」「訪問調査より低コスト」、調査の趣旨や注意点を説明できるので「誤解のない回答を集められる」などのメリットがあり、デメリットとしては「質問量が多い長時間の調査には向かない」という点が挙げられます。

インタビュー調査の特徴と進め方

インタビュー調査は対面で聞く調査方法で、消費者の生の声を聞いてその深層心理や行動の意味を深堀りできる所に特徴があります。

また、調査対象の人物と一対一のインタビューを行う「デプスインタビュー」と複数人を集めて座談会形式で行う「グループインタビュー(グルイン)」に分けられます。

デプスインタビューでは一人の対象者に十分時間を取って調査できるため、気持ちや行動の背景にある本音や深層心理まで踏み込んだ詳しい情報が得られるのはもちろん、グループインタビューと比べ「他の参加者に意見が影響されない」「自分の意見を邪魔されず発言できる」「デリケートなテーマでも回答してくれることがある」というメリットがあります。

デメリットとしては一人ひとり実施するため「時間と経費がかかる」、回答者が一人または少数なので「定量的な情報としては扱えない」などが挙げられます。

これに対し司会者に参加者3−6人程度の座談会形式で行う「グループインタビュー」では、参加者同士が刺激され発言が活性化する「グループダイナミクス」が期待できるという利点があります。

性別・年齢や嗜好などである程度共通の属性を持つ参加者を集めることで、共通の話題として盛り上がり、発言が集約されたり発展する効果が「グループダイナミクス」です。

従って、インタビューでは筋書きやアンケート的な調査票的を用意するとしても、それに囚われず定量的なアンケートで捉えられなかった定性的な部分を調査するのに向いています。

会場調査の特徴と進め方

会場調査(CLT=Central Location Test)では、会場に集まってもらった対象者に自社の商品・サービスを試してもらい、その様子を観察したり、評価や感想をアンケートやインタビューで回収する調査方法です。

参加者の選び方は、繁華街で通行人をリクルートして会場で試飲した感想や評価をアンケートで集めるような場合と、予め抽出したモニターに来てもらう方法があります。

「品質管理できる共通環境下で試飲・試食してもらえる」他、誓約書への署名やスマホやカメラの持ち込みの制限などができるため、情報流出などセキュリティ面でメリットがあります。また、曖昧な回答の場合その場で深堀りできるのも会場調査の特徴です。

デメリットとしては管理下での調査のため「参加者がリラックスできない」、「ある程度商品の数を準備しなければならない」点が挙げられます。

ネットリサーチの特徴と進め方

インターネットを使うネットリサーチは他の手法と比べ圧倒的に「低コストで短期間に大量の回答数を集められる」のが特徴です。

年代や性別など調査対象を絞り込んでも調査対象の数が確保できるため回答の統計的な精度も確保できます。デメリットとしては「回答者の偏り」があり、ネット利用率が少ない属性の対象に対しては向かない調査方法です。

また匿名性を利用して適当な回答をしてきたり、謝礼目当ての不正回答が入りこむデメリットもあり、スクリーニングの手間がかかります。

ユーザーの購買検討プロセスを理解するデータ分析手法とは。アナリストの灰谷さんに聞いてみた

https://manamina.valuesccg.com/articles/412

マーケティングの中心的な課題である「ユーザー理解」のための調査をするデータアナリスト・灰谷圭史さんに、調査手法を事例とともに語っていただきました。

まとめ

一口にアンケート調査といってもその回収方法は主に電話調査・インタビュー・ネットリサーチの4種類あることを説明しました。各手法の特徴やメリット・デメリット、市場調査の目的や欲しい情報、予算の制約など複数の要素を勘案して最適な手法を選択しましょう。

関連記事

もう迷わない!市場調査の基礎知識まとめ

https://manamina.valuesccg.com/articles/731

商品やサービスの企画・開発にあたり、マーケティング施策立案に欠かせない「市場調査」。アンケートなど市場調査の方法から、調査結果をもとにしたレポートの書き方、実際の市場調査報告書までまとめました。

初めてでも分かりやすい!サイト・アプリ分析ツールeMark+の使い方事例まとめ

https://manamina.valuesccg.com/articles/805

マナミナを運営する株式会社ヴァリューズの競合サイト分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」の事例記事をまとめます。eMark+には機能がたくさんあり、利用シーンも企業や担当者によってそれぞれ違います。実際何ができるのか、どんなシーンに使えるのかを一望できるようにしました。本記事をブックマークなどしてお使いください。

市場調査にネットリサーチを活用!メリット・デメリットと進め方

https://manamina.valuesccg.com/articles/666

商品・サービスを企画する段階で重要な市場調査ですが、アンケートを行う場合、近年はネットリサーチが有力な手段となっています。大規模なアンケート調査を安価で短期間にできる点がネットリサーチの特徴です。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

新型コロナウイルスの拡大の時期に、キャンプが注目を集め、一大トレンドになりました。日常を取り戻した現在、キャンプブームは下火になっているようにみえます。一方で、キャンプブームが収まったのではなく、人々の生活にキャンプが文化として根付いたという意見もあります。今回は、キャンプブームをデータで分析し、その変遷と現状について考察します。


国内外で受賞!味の素冷凍食品「冷凍餃子フライパンチャレンジ」における生活者との共創ポイント

国内外で受賞!味の素冷凍食品「冷凍餃子フライパンチャレンジ」における生活者との共創ポイント

味の素冷凍食品株式会社の「冷凍餃子フライパンチャレンジ」プロジェクトが、日本マーケティング大賞 奨励賞の他、世界有数のPRアワードである「PR Awards Asia-Pacific 2024」で3部門のゴールドを受賞しました。「冷凍ギョーザがフライパンに張り付いた」という一件のSNS投稿からはじまったという、このプロジェクト。立ち上げの背景や、取り組むうえで大事にされていたことを、同社 戦略コミュニケーション部 PRグループ長の勝村敬太氏に伺いました。


【TVドラマランキング】医療系ドラマ「ブラックペアン シーズン2」や親子の愛がテーマの「海のはじまり」の視聴実態など

【TVドラマランキング】医療系ドラマ「ブラックペアン シーズン2」や親子の愛がテーマの「海のはじまり」の視聴実態など

近年動画配信サービスが普及し、時間や場所にとらわれず様々なジャンルの動画を手軽に視聴できるようになりました。テレビ離れが幅広い年代で囁かれている時代、話題になるテレビドラマとは、どのようなものなのでしょうか。今回は、2024年7月~9月に放送されたドラマについて、認知度や視聴方法、満足度、満足理由などをランキング化。その実態を探りました。


社内の営業資料・企画資料を自動で整理する「Pitchcraft (ピッチクラフト)」~ 社内にある“使える資料”が、みんなのものに

社内の営業資料・企画資料を自動で整理する「Pitchcraft (ピッチクラフト)」~ 社内にある“使える資料”が、みんなのものに

マーケティングの業務支援を行うSaaSとして、「Dockpit」を提供してきたヴァリューズが、2024年7月、組織の提案力と生産性を向上させる提案ナレッジシェアクラウド「Pitchcraft(ピッチクラフト)」をリリース。社内の情報を効率よく共有したいという思いから開発したツールは、その圧倒的な利便性からプロジェクト化し、1つのサービスとして世に出ることになりました。本記事ではナレッジシェアの重要性にはじまり、「Pitchcraft」の特徴や効果などについて、データマーケティング局アライアンスG マネージャーの大櫛、ソリューション局 システムソリューションG マネージャーの大島に取材しました。


現役Z世代が若者のリアルを分析し事業展開をサポート|Gen-Z調査隊

現役Z世代が若者のリアルを分析し事業展開をサポート|Gen-Z調査隊

経営の意思決定の背中を押す“データ”。ヴァリューズは、データを通じて顧客の多様なニーズに応える、伴走型の価値創造支援サービスを提供しています。今回は「Z世代」に注目した独自のサービスを紹介します。


最新の投稿


タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

近年タイではコーヒーブームが起こっています。バンコクには次々と新しいカフェができており、SNS映えする店内だけではなくコーヒーの味にもこだわりを持つカフェが増えています。実際に、起業してカフェオーナー兼バリスタになるのはタイでは一つのトレンドです。 近年、タイのコーヒー市場は右肩上がりに伸びており、タイのコーヒー市場は日本円で1440億円を超えると言われています。 そこで本記事では、タイのコーヒー市場の現状を読み解くとともに、タイでなぜコーヒーの人気が高まっているのかを、タイのコーヒーブームの歴史と共に解説します。


2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

株式会社Creative Groupは、同社が運営するメディア『トレンドメディアTrepo(トレポ)』にて、10代~20代の女性を対象に、2025年上半期のZ世代トレンド予想調査を実施し、結果を公開しました。


ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズは、ゲームプレイヤーの心理・行動を分析し、分かりやすく彼らの実態を可視化した「ゲーム総合調査レポート2024」を作成し、公開しました。


スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

疲労回復、毎日のコンディション管理に必要不可欠な「睡眠」。その睡眠、あなたは足りていますか?最近ではニュースでも多く取り上げられた通り、日本は世界規模での「不眠大国」。実に日本人の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)の加盟国33ヵ国の中で最下位とも言われています。そして睡眠はただ眠るだけではなく、経済とも大いに関わりがあるのです。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、良質な睡眠の鍵を解説します。


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、全国のマーケティングコンサルタントを対象に、「BtoBマーケターが始めた方が良いこと」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ