自動車業界5社をマーケティング視点で企業研究!現役大学生のデータドリブン就活【第1回】

自動車業界5社をマーケティング視点で企業研究!現役大学生のデータドリブン就活【第1回】

現役大学生が、競合分析ツール「eMark+」を使って、各業界の企業研究するシリーズ。第1回は自動車業界の主要5社、トヨタ・ホンダ・日産・マツダ・スズキをWebサイトの集客状況から分析し、自動車メーカー各社の強みや違いをまとめました。


企業研究は難しい!今回は「自動車業界」の5大メーカーを分析

初めまして、小幡(おばた)です。私は大学でマーケティングを勉強しながら、データマーケティングの会社、ヴァリューズでインターンとして働いています。いまは大学4年生で、来年の春からはヴァリューズに入社する予定です。

就活のとき、困ったのが企業研究でした。行きたい業界を見つけたら、会社ホームページや就活サイトで情報収集をしたり、インターンに参加してみたり…。でも、紹介されているのは企業の良いところばかりで、本当のところはなかなか分かりません。

そこで今回、私が入社するヴァリューズの競合分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使って企業研究をしてみました。eMark+は消費者のインターネット上の行動を分析し、実際消費者がどんなサイトを閲覧しているのかを調べることができます。業界のあの大手企業は、本当に人気なのか?何に力を入れているのか?といった視点から、今までとは一味違った企業研究をしていきます。

さて、第1回は「自動車業界」を取り上げます。自動車業界の就活に役立てていただけたら幸いです。

自動車業界とは?完成車を扱う“メーカー”だけにあらず

自動車業界は大別すると、以下の3つの業種から成り立っています。

サプライヤー:部品製造に関わる
メーカー:部品を集めて組み立てる
ディーラー:自動車を販売する

サプライヤーにはメーカーと直接取引を行う一次サプライヤーを筆頭に、多くの下請け企業によって成り立っています。自動車業界ならではの呼び名として「Tier(ティア)」があります。一次サプライヤーがティア1、以下ティア2、ティア3と続いていきます。

自動車業界の現状にもついても少し触れておきます。人口減少や若者の車離れといった国内事情はあるものの、世界全体にまで目を向けると、日本の自動車市場は成長を続け、日本の総輸出額(F.O.Bベース)のおよそ2割を占めています。

しかし、最大のマーケットである中国の新車販売台数が減少傾向にあり、全体での自動車販売台数は若干減少(2018年度は前年比0.6%減)しています。

抑えておくべき自動車業界の注目ワード

環境問題を含め、岐路に立っている自動車業界に大変革期をもたらすといわれるキーワードが「CASE(ケース)」です。

頭文字となっている4つの領域の進展によって商品構造、バリューチェーン、ビジネスモデルが非連続的に変化し、脅威とチャンスを生み出すと予測されています。

Connected:コネクティッド

自動車とインターネットを常時接続し、自動車の状態や周囲の道路状況などといったビックデータを蓄積し、分析。それによって自動運転車の安全性向上に役立てようというものです。それ以外にも急な操作の頻度を解析し、安全運転に務めるドライバーの保険料をやすくする、といった付加価値も検討されています。

Autonomous:自動運転

自動運転に関しては自動車メーカーだけでなく、Google(Waymo)、Uberといった新たなグローバルプレーヤーが実用化を目指してさまざまな取り組みを行っています。2020年中には一般道での試乗実験が本格化します。

自動運転の実現は、交通事故の減少だけではなく、深刻化している業務ドライバー不足の解決として期待されています。

Shared/Service:カーシェア

高級耐久財の自動車は、以前は購入して使うものという消費者意識があったものの、購入せずに必要なときに自動車を利用する「カーシェアリング」の動きも盛んになってきました。

とくに駐車場代も高い東京では、自動車所有のハードルが高まっており、若年層を中心にカーシェアリングの利用率が高くなっています。

Electric:電動化

エンジンを使わずに電動モーターのみを動力にするのが電動化の着地点です。現状では中国、欧州メーカーが電動自動車の開発に先んじています。日本でも当然ながら開発は進められていますが、中国などと比較して進捗状況は遅れている印象です。しかし、2030年までには電気自動車とプラグインハイブリッド車の普及目標を20~30%と定め、電動化を推進しています。

分析企業の紹介

今回は、2017年~18年の売上高ランキングにおける、上位5社を分析しました。

売上規模圧倒的1位のトヨタ

売上・営業利益ともに他社を圧倒しているのがトヨタ自動車(以降、「トヨタ」と表記)です。2018年の自動車メーカーにおける売上高世界ランキングでも2位にランクインしており、国内外問わず人気なメーカーであるといえます。
(参考:『【2019年版】世界自動車メーカー売上高ランキング ―トヨタは30兆円超えも、2位に後退』)

海外企業提携でグローバル展開をする日産

日産自動車(以降、「日産」と表記)は日本を含み、世界160か国以上に展開をするグローバル企業です。フランスのルノーやドイツのダイムラーAGなど、海外自動車メーカーと提携を行っているのも特徴です。他社より先んじて自動運転技術の実用化を行うなど、技術革新を積極的に行っている会社です。
(参考:『企業研究をしよう!日産ってどんな会社?』)

二輪・四輪の両事業で高いシェアを獲得するホンダ

本田技研工業(以降、「ホンダ」と表記)は日本の自動車メーカーで初めて、海外での自動車生産を始めた会社です。二輪車・四輪車の開発・生産を主要事業として行っています。国内では自動車の売上の方が高いですが、世界的には二輪車事業の方が高く、シェア率は世界第1位です。他にも芝刈り機や除雪機も取り扱っており、独自の技術を生かして自動車以外の事業展開も積極的に行っています。
(参考:『企業研究をしよう!ホンダってどんな会社?』)

独自の世界観でファンを集めるマツダ

MAZDA(以降、「マツダ」と表記)は「走る歓び(Zoom-Zoom)」を提供するクルマづくりをモットーに事業を展開しています。海外での販売台数比率が87%と自動車企業の中でもトップクラスです。「魂動デザイン」など他社とは異なる独自のデザイン設計で、人気を集めています。
(参考:『【マツダの今後と将来性】エンジンとデザイン性で生き残れるか?EVが課題【企業分析】』)

軽自動車を中心に、海外展開も積極的に行うスズキ

スズキは、ホンダ同様に二輪車事業も展開している会社です。四輪車事業では軽自動車をメインに取り扱っており、国内で販売される軽自動車の3割以上はスズキが占めています。時代や国にマッチする商品を開発することで、アジア・欧米で高い人気を誇るメーカーです。
(参考:『企業研究をしよう!スズキってどんな会社?』)

自動車メーカー各社のWebサイトを分析!上位3社がユーザー数で圧倒

まずは、eMark+で2019年7月の、自動車メーカー各社のWebサイトへの訪問者数ランキングを見てみました。eMark+でカテゴリ「車」を選択すると、次のような画面になります。

1位~15位をピックアップしてみると、以下のようになりました。

※対象デバイス:PC

売上1位のトヨタ、2位の日産、3位のホンダが他2社と大きな差をつけていることが分かります。また、マツダを除く対象4社は、前年同月(2018年7月)と比べ訪問者数を落としています。

次に、自動車メーカー各サイトの月間ユーザー数推移を見てみましょう。

※対象デバイス:PC

ホンダ、スズキの訪問者数は、ほぼ横ばいといえます。トヨタ、マツダも山はあるものの、大きな変化はありません。対して日産は2018年9月末から11月にかけて行った、50万円の購入資金、または車1台が当たる「やったぜ!日産キャンペーン」により、訪問者数を大きく伸ばしています。

自動車は耐久財であるため訪問数に変化は起きにくく、企業はキャンペーンやテレビCMを利用して販売促進に取り組んでいるといえるでしょう。

日産、マツダは特定ターゲットに刺さるアプローチをしている

では、実際にどんなユーザーが製品サイトを訪問しているのでしょうか。次はeMark+の機能「Site Analyzer」を用いて、各サイトのユーザー属性を比較してみます。まずは男女比を見てみました。

※対象デバイス:PC
 集計期間:2018年8月~2019年7月

5サイト全てで男性比率が半数以上となり、自動車製品サイトを訪問するのは男性が多いことが分かります。

このグラフから分かることとして、売上高2位の日産は女性比率が最も高いという点が挙げられます。日産は、様々なカラーを用意したコンパクトカー「MARCH」など、女性をターゲットにした製品も販売していることが要因なのではないでしょうか。

これは「MARCH」の製品サイトのトップページのキャプチャ画像です。画像にはピンクや水色といったキュートな色が使われ、女性の後ろ姿が載せられています。ターゲットとして女性をイメージした戦略を取っていることがうかがえるでしょう。

対して5位「MAZDA」は、グラフ上で男性比率が最も高いことが分かります。これは、「ロードスター」を代表とするスポーツカーをラインナップとして揃えていることが要因ではないでしょうか。

マツダ「ロードスター」の製品トップページでは、サングラスをかけたダンディな男性とロードスターが中央に映されていて、右端にはデート相手と思われる女性の後ろ姿が。画像の色味も黒が中心となっており、シックな印象を与えます。日産「MARCH」と比べると、イメージしているサイト訪問者の違いがよく分かるのではないでしょうか。

次に、年代別の訪問者を5サイトで比較しました。

※対象デバイス:PC
 集計期間:2018年8月~2019年7月

60代以上のユーザーが最も多かったのは、日産自動車でした。トヨタ自動車、本田技研工業、スズキは40代が最も多いですが、ばらつきは少なく、バランスよくユーザーを獲得しているようです。

トヨタ・日産は他事業でも高い認知

自動車業界の大手企業とはいえ、販売以外の事業も多数行っています。自動車メーカーの各サイトはどんな目的で検索をされているのでしょうか。eMark+のKeyword Finderを用いて、掛け合わせで検索されているキーワードを分析してみました。

まず、トヨタ・日産・ホンダです。

トヨタは、「トヨタレンタカー」「トヨタレンタリース」といったレンタカー事業、「トヨタファイナンス」といったクレジットカード事業関連のキーワードが目立ちます。製造・販売以外にも幅広い事業で消費者から認知されていることがうかがえます。

以下のキーワードを含む検索キーワードからランキング化
トヨタ関連検索…トヨタ,TOYOTA 日産関連検索…日産,NISSAN
ホンダ関連検索…ホンダ、HONDA

※対象デバイス:PC
 対象期間:2018年8月~2019年7月

日産も「日産レンタカー」や「日産カード」というキーワードがランクインしており、トヨタ同様に幅広いサービスで消費者に検索されていました。対してホンダでは、「バイク」がよく検索されています。自動車だけではなく、バイクでも高い人気を誇る証拠といえます。

次に、スズキ・マツダを見てみます。

以下のキーワードを含む検索キーワードからランキング化
マツダ関連検索…マツダ,MAZDA スズキ関連検索…スズキ,SUZUKI

※対象デバイス:PC
 対象期間:2018年8月~2019年7月

マツダでは「MAZDA3(マツダ3)」「デミオ」「アクセラ」、スズキでは「ジムニー」「ハスラー」「スペーシア」「スイフト」といったブランド名でのランクインが目立ちます。2社は製造・販売業に特化し、独自の世界観で差別化を図っているのではないでしょうか。

まとめ

eMark+を使って分かった自動車メーカー各社の特徴をまとめます。

トヨタ・・・圧倒的な売上1位を維持。レンタカーやリースなど他事業でも消費者から高い認知を得ている。

日産・・・一般的に自動車への関心が低いといわれる女性や高齢者のサイト訪問者割合が高い。キャンペーンやサイトでのアプローチを通して、消費者に響く施策を実施している。

ホンダ・・・自動車・バイクの両事業で人気を集める。直近のサイト訪問者数では一位にランクインし、安定した集客に成功している。

マツダ・・・男性をターゲットにした商品設計・マーケティングを実施。ブランド名も高く認知されている。

スズキ・・・軽自動車市場で高いシェアを確保。ブランド名の認知も高い

一概に自動車業界といっても、自動車メーカー各社が力を入れているポイントは異なります。特にトヨタ・日産はレンタカー事業や金融事業など、製品販売以外の事業も大きな柱となっていました。このようにデータドリブンで企業研究を進めていくことができれば、理解もより深まるのではないでしょうか。

今回使用したツール「eMark+」は、私が入社する株式会社ヴァリューズのツールです。ヴァリューズは消費者のインターネット行動履歴を分析することで、調査~施策までのマーケティング支援を行っています。

「マーケティングに関わる仕事がしたいが、行きたい業界は見つからない……」「1つの業界に決めず、様々な業界で仕事がしてみたい!」などと思っている方にぴったりの会社だと思います。説明会も開催中なので、興味がある方はぜひ一度足を運んでみてください。お申し込みは以下のURLからどうぞ。

<マーケティング × ビッグデータ × IT> | ヴァリューズ 採用サイト

https://recruit.valuesccg.com/

<<マーケティング × ビッグデータ × IT>株式会社ヴァリューズの採用サイトです。ヴァリューズは、インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する会社です。

調査・分析概要

ヴァリューズ保有モニターパネル(20代以上)のログデータを用いて、自動車製品サイトのユーザーの行動ログを分析。行動ログは、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用。データはヴァリューズ保有のモニターでの出現率を基に、国内ネット人口に換算して推測。

分析対象期間:2018年8月~2019年7月
デバイス:PC

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この記事のライター

大学でマーケティングを勉強しながら、ヴァリューズでインターンとして働いていました。2020年の春からは新卒としてヴァリューズに入社しました。

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