熾烈なチケット争奪戦、第2次抽選でも衰えず
まず、2018年12月~2019年11月の東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会公式HP のユーザー数推移をサイト分析ツールの「eMark+」を用いて調べました。
突出してユーザー数の伸びが見られたのは、観戦チケットの第1次抽選販売が開始となった2019年5月でした。その後7月までは徐々に下がり、観戦チケットの第1次抽選の追加募集が始まる8月、第2次抽選販売が始まる11月に再び盛り上がりを見せています。チケット販売サイトでは人々のアクセスが集中し接続困難な状態が続くなど、運営側の予想をはるかに上回る応募が殺到した観戦チケットですが、ユーザー数の推移からも人々の関心の高さが読み取れます【図1】。
Tokyo 2020 | 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
https://tokyo2020.org/jp/東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式ウェブサイトです。大会に関する最新ニュースやイベント情報、大会ビジョンや会場計画をご紹介します。
【図1】東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会公式HPユーザー数推移
※デバイス:PC、スマートフォン
また、2019年6月から2019年11月までの東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会公式HPのコンテンツランキングを調べてみました。こちらでも観戦チケットの購入に関するページが上位を占めており、チケット購入への人々の関心の高さを裏付ける結果となりました【図2】。
【図2】東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会公式HP内コンテンツランキング(2019年6月~2019年11月)
※デバイス:PC
男性の関心高め、大きな世代差はみられず
続いて、2018年12月~2019年11月にHPを閲覧した人の属性情報を詳しく調べてみました。まず、男女比率をみてみると、男性が約6割を占めており、女性よりも関心が高いことがわかります【図3】。
【図3】属性情報(性別)
※デバイス:PC、スマートフォン
次に年代をみてみると、1位の40代が27.4%と大きな割合を占めていました。2位の30代と合わせると約半数となります。3位の50代と4位の20代はあまり差がなく、年代による大きな関心の差はないことがわかります【図4】。
【図4】属性情報(年代)
※デバイス:PC、スマートフォン
最後に地域をみてみると、競技開催会場の最も多い関東地方が60%を占める結果となりました。2位は自転車競技3種目が行われる静岡県を含む中部地方で14.1%、3位は近畿地方で10.5%と続きます【図5】。
【図5】属性情報(地域)
※デバイス:PC、スマートフォン
自転車競技で盛り上がる静岡県
前述の通り、静岡県は自転車競技3種目の会場に選ばれています。静岡県伊豆市ではトラック・レース/マウンテンバイクの2種目が行われます。選手村は東京都中央区晴海に設置されますが、伊豆市にあるラフォーレリゾート修善寺が分村として自転車競技の宿泊施設に決まるなど、伊豆市はオリンピックの開催において重要な役割を担っています。このことは伊豆市のHPでも大きく取り上げられ、コースの全容やテストイベントの模様など、随時多くの情報が発信され続けています。市民に加え、選手や関係者、観客など多くの人々の関心を集めることとなりそうです 。
また、同じく静岡県の駿東郡では富士スピードウェイにてロードレースの開催が予定されています。7月には東京武蔵野の森公園から富士スピードウェイまでの区間でテスト大会も開催されました。ロードレースはチケットを購入していなくとも沿道から誰でも応援が可能であることが大きな魅力です。テスト大会ではその魅力を十分に宣伝しきれず、予想よりも観客が伸び悩む結果となりましたが、 本番に向けて浮き彫りとなった問題点を改善できるよう、精力的に準備が進められているようです。
静岡県はもともと観光地として有名な場所ではありますが、オリンピックの開催を経てさらなる盛り上がりが期待されます。
開幕前1年 見えた収穫と課題 東京五輪自転車ロードテスト大会|静岡新聞アットエス
https://www.at-s.com/sports/article/shizuoka/tokyo_olympic/661910.html東京五輪の開幕まで7月24日であと1年。静岡県がコースに含まれる自転車競技のロードレースは21日、武蔵野の森公園(東京都府中市など)から富士スピードウェイ(SW…
「ホストタウン」制度で盛り上がる地方都市
オリンピックで盛り上がりを見せるのは競技開催地である関東地方・中部地方にとどまりません。
政府はスポーツ立国、グローバル化の推進、地域の活性化、観光振興等に資する観点から、参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図る地方公共団体を「ホストタウン」として支援することを発表しています 。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるホスト・タウン関係府省庁連絡会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/hosttown_suisin/2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向け、スポーツ立国、グローバル化の推進、地域の活性化、観光振興等に資する観点から、参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図る地方公共団体を「ホストタウン」として全国各地に広げていきます。
ホストタウンでは事前合宿が行われる他、大会参加国と地域住民の文化的・教育的交流が図られるなど、さまざまなイベントが企画されています。
また、東日本大震災で被災した岩手県・宮城県・福島県の3県では、震災時に支援をしてくれた国々に復興した姿を見せ、東京オリンピックに向けてさらなる交流を行う「復興ありがとうホストタウン」が設置されました。両者を合わせ、2019年11月29日時点では392件もの地方公共団体が登録されています。
直近では、オリンピック・パラリンピック出場を目指す南スーダンの選手たちが、群馬県前橋市にて長期合宿を開始したことが話題となりました。紛争の影響で満足な練習をできずにいる選手達の状況を知り、ホストタウンである前橋市が長期的な練習場所の提供と本番直前までの生活支援を申し出て実現したものです。
選手の滞在は市民にも広く知らされており、衣類を無償提供しているユニクロのガーデン前橋店では選手たちが買い物客から「頑張って」と声をかけられたり、地元小学校での交流会の際には多くの児童たちからサインを求められたりと町全体が応援ムードに溢れています。オリンピックに向け早くも活気づく前橋市の動向に今後も注目が集まりそうです。
来年夏まで前橋で過ごす南スーダン選手団、ユニクロに「暖かい」 : 東京オリンピック・パラリンピック : オリンピック・パラリンピック
https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20191116-OYT1T50274/東京五輪・パラリンピックに出場する南スーダン選手団(コーチ1人含む5人)がホストタウンの前橋市に滞在する間、カジュアル衣料品店の「ユニクロ」が彼らの衣類を無償で提供することになった。選手たちは16日、同市小屋原町の「ユ
東京五輪・パラに向け、前橋市に長期滞在中の南スーダン選手団が12日、前橋敷島小を訪れ、交流した。昼休みには選手たちが児童から「サイン攻め」に合う一幕もあった。
また、聖火リレーのグランドスタートを飾る福島県楢葉町・広野町のナショナルトレーニングセンターJヴィレッジでは、11月4日に「復興ありがとうホストタウンサミット」が開催され、岩手県・宮城県・福島県の3県においてホストタウンに登録された19市町村の関係者が集い、東京オリンピック・パラリンピックに向けた海外交流のスタートを切りました。ブラインドサッカー世界ランキング1位のアルゼンチン代表と日本代表との親善試合も行われ、大きな盛り上がりをみせました 。
ホストタウン制度の広がりは、オリンピックの競技開催地ではない地方都市においても訪日外国人旅行者向けに地元の魅力を発信し、地域を活性化するための足掛かりとなりそうです。
分析概要
全国のモニター会員(20代以上)の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2018年12月~2019年11月におけるユーザーの行動を分析しました。
※ユーザー数はPC,スマートフォンからのアクセス を集計し、ヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
■関連記事
オリンピック後の日本経済をアテネ・ロンドン五輪から考察しました【2020年トレンド予測】
https://manamina.valuesccg.com/articles/7362020年に話題になりそうなトピックを調査・紹介する連載企画「2020年トレンド予測」。今回のテーマは「ポストオリンピックの経済をロンドン五輪から予測」です。大会後の日本経済について、サイト分析ツール「eMark+」や過去の開催国の経済を参考に予測します。
いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第8回 ワールドカップをデータで振り返る ラグビー編(1)
https://manamina.valuesccg.com/articles/719競技ごとにスポーツマーケティングの動向をとりあげる連載企画。3つ目の競技は、昨年9月20日~11月2日のワールドカップで日本中、いえ世界中を熱狂させた「ラグビー」です。
マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。
編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。