トレンドが変化したの2月24日と3月1日
まず、2020年1月10日から3月4日までの期間で、国内の主要Webサイト全体のUU数を調査し『どのあたりでトレンドが変化したのか?』を分析してみました(下図参照。グラフは2月以降を掲載)。
その結果、2月24日と3月1日に日別のUUのトレンドが大きく変わったタイミング(変化点)を迎えているサイトが多いことがわかりました。
2月24日は「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が開催され、「これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」との見解が示され、翌25日の政府による新型コロナウイルス感染症対策の基本方針発表につながり、大きなターニングポイントだったと言えるでしょう。
3月1日については、前日の29日に安倍首相が会見し、小中高への休校要請の背景を説明。既に休校が始まった地域もありました。加えて、大規模なスポーツや文化イベントについては中止または規模縮小などの対応を要請した影響が、色濃く出ていると考えられます。
変化点別サイト数の推移
※2020年2月1日~3月4日
2つの変化点で伸びているWebサービスは?
大きな変化点となった2月24日と3月1日で、具体的にどのようなWebサービスが伸びていたのか、株式会社ヴァリューズが保有するモニターパネルの消費者ネット行動ログから調査しました。
■地方自治体、ドラッグストアをはじめ、オフィス用品の通販サイトも需要拡大
まず、2月24日にUU数が伸びたのは内閣や地方自治体のサイト、そしてドラッグストア。加えて、「Forestway」や「カウネット」、「たのめーる」などオフィス用品の通販サイトでした。今後1~2週間が感染拡大の瀬戸際との見解に、マスクや消毒剤など感染対策商品を求める需要が一気に拡大したものと考えられます。
コクヨから生まれたオフィス通販の「カウネット」ではサイトTOPに、マスクや消毒剤等の感染対策商品、及び中国からの輸入商品に関する在庫切れについての告知が掲載されている(2020年3月12日現在)
■観光、おでかけ、旅行系メディアは苦戦
一方、2月24日に日次UU数がダウンしたサイトを見てみると、観光情報や子供とのおでかけ情報メディア、温泉など旅行情報メディアが多数あがりました。トラベル業界への影響が出ている様子が浮き彫りとなっています。
■電子コミック、子ども向けメディアの伸びは休校措置の影響か
3月から休校措置が始まった学校も多く見られましたが、3月1日にサイトUUが伸びたサイトを見てみると、「ジャンプBOOKストア!」や「小学館eコミックストア」などの電子コミックのECサイト、また、「Yahoo!きっず」など子ども向けメディアも早くもUU増加が見られました。
さらに、「中小企業庁」のサイトもランクインしており、経済産業省の支援策や資金繰りの問題に直面している経営者、事業者の深刻度が垣間見えます。
Yahoo!きっずでは、新型コロナウイルス感染症の影響から臨時休校の学校が増えることにに伴い、自宅でも勉強ができるサイト「ヤフーきっず おうち学校」を2020年3月2日に開校。フィルタリングが施された子ども向け検索機能で宿題の内容について調べたり、動画や写真で教科を勉強したりできるコンテンツが提供されている。
■親子コミュニケーションを助けるアプリも利用者増加
最後に、スマートフォンのアプリについても、利用者が急増したアプリをピックアップしてみます。
まず、タブレットで学ぶ通信教育「スマイルゼミ」を提供する、株式会社ジャストシステムの「みまもるトークアプリ」。子どもが専用タブレットで学習すると、学習結果が家族専用タイムライン「みまもるトーク」に届き、学習進捗が分かるほか、タイムライン上で親子でメッセージのやり取りもできます。学校が休校になり、こうした通信教育やコミュニケーションツールを活用する親子も増えていることが考えられます。
「みまもるトークアプリ」
そして、ディズニー、ピクサー、スター・ウォーズ、マーベルの新作を含む映画・動画が見放題のディズニー公式動画サービス「Disney DX(ディズニーDX)」のアプリも利用者が増加しています。休校により自宅で一日を過ごす親子のニーズが高まっているのかもしれません。
「Disney DX(ディズニーDX)」
まとめ
2月末~3月初旬の時点では、新型コロナウイルスに関する情報収集、マスク・消毒液など感染対策商品への需要拡大、休校措置による親子の対応が、ネット行動にも顕著に表れていました。現状はまだ混乱が続いている様子ですが、今後、国内感染者の拡大に歯止めがかかるなど、もう少し事態が落ち着いてくれば、家の中での消費を楽しむ余裕も出てくるのかもしれません。
通信教育、オンライン英会話などの教育サービス、動画やゲームなどエンタメ業界では、サブスクサービスで3月中は無料を打ち出しているところもあり、利用者の増加が見込まれます。こんな時だからこそ、改めて生活者視点に立ち、いま何が求められているのか、それをどのような形でコミュニケーションし伝えるのか。マーケティングも真価が問われてくるのではないでしょうか。
調査概要
株式会社ヴァリューズが保有する国内モニターパネルのネット行動ログから、2020年1月10日~3月4日のデータを分析しました。
※対象デバイスはPC・スマートフォン
■関連記事
コロナ禍で起きた消費者行動変化を緊急調査 Webやアプリの行動ログから見えてきた実態とは
https://manamina.valuesccg.com/articles/823新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛やテレワークなど、人々のライフスタイルが大きく様変わりする中、消費者の行動や意識にはどのような変化が起きているのでしょうか。「巣ごもり消費」や「ネット行動の活発化」など、Webやアプリの行動ログから、日別の推移、商品ジャンルの閲覧伸び率などを通じて、変化の実態を緊急調査しました。
コロナ禍で集客に成功した5サービスの共通点とは? 食や通信、栄養ドリンクから手作りマスクまで
https://manamina.valuesccg.com/articles/901新型コロナで社会が大きく変貌を遂げた2020年春。この期間にプロモーション施策で集客に成功したサービスとは?コロナ禍で話題になった5つのサービスをピックアップし、市場分析ツール「<a href="https://www.valuesccg.com/service/emarkplus/" target="_blank">eMark+(イーマークプラス)</a>」を使ってユーザー数の推移を調査。それぞれの成功要因となったプロモーション施策を分析します。
コロナ影響でネットスーパー4サイトのユーザーが急上昇。1位はコストコ、楽天西友は経済圏内の回遊が強みか
https://manamina.valuesccg.com/articles/843新型コロナの影響で外出自粛が叫ばれ、多くの業界が打撃を受ける一方、一部のサービスは需要を伸ばしています。その一つとして今回着目したのが、ネットスーパー。感染予防のために店頭での買い物を控え、ネットスーパーの利用者が増えているのではないかと予想し、eMark+を使ってその実態を調査しました。
ファッションECで前年比の訪問者数が54%増のサイトも。巣ごもり消費と新型コロナ影響の関係を探る
https://manamina.valuesccg.com/articles/818外食産業や観光業をはじめ、あらゆる業界に深刻な売上不振をもたらしている新型コロナウイルス。しかしそんな中で、“巣ごもり消費”でEC売上が向上していると言われているのがファッションECです。本稿では、外出自粛の影響で、実際にファッションECが伸びているのか、またどのような影響が現れているのか、実態を調査していきます。
マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。
編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。