マーケティングの基本3要素、フレームワーク・コピー・プロダクトを分かりやすく学べる本を紹介します

マーケティングの基本3要素、フレームワーク・コピー・プロダクトを分かりやすく学べる本を紹介します

マーケティングについてイチから学びたいと考えている人に向けた本3冊+αを紹介する企画。マナミナを運営する株式会社ヴァリューズのマーケティング・コンサルタント、秤谷大河さんに挙げてもらいました。長期休暇の間などに、時間を取ってじっくりと読んでみてはどうでしょうか。


マーケティングの基礎から実務まで掴める本

こんにちは。ヴァリューズの秤谷と申します。

今日はマーケティングをこれから学びたい学生の方や実務でも役立つ本を探している方に、初学者向けのおすすめ本を紹介していきますね。

株式会社ヴァリューズ 秤谷 大河(はかりや たいが)
同志社大学を卒業、一橋大学の大学院へ進みMBA(経営学修士)を取得後、新卒で株式会社ヴァリューズへ入社。広告代理店やメディア事業会社など大手クライアントを顧客に抱え、マーケティングコンサルタントの第一線として活躍しつつ、マネジャーとしてチームをマネジメントしている。

選んだ3冊のテーマは、「マーケティングのフレームワークが学べる本」「ターゲットに届ける力を磨ける本」「独自性のあるプロダクトづくりが学べる本」です。領域がかぶらない3冊を意識して本を選定しました。

最近はいろんな商品がコモディティ化してきているので、差別化が難しくなっています。そこで重要なのは、プロダクトにより独自性をもたせ、ターゲットにちゃんと届くような表現ができるかだと、私自身感じています。

そこで「フレームワーク・キャッチコピー・プロダクト」といった重要な部分をおさえつつ、特に「独自性」や「ターゲット理解」がインプットしやすい本をセレクトしました。これから学ぶ方であれば、順番に読むとインプットしやすいと思います。

また、私が最近読む本の多くはマネジメントの本で、その中でも特に社会人1年目の方に読んでいただきたい1冊があります。これはリーダーシップについて書かれた本なのですが、私は10ページ読んだだけで心が震えました(笑) 。これから社会人生活を歩んでいく上でとても参考になる本だと思います。

1.わかりやすいマーケティング戦略 

まず1冊目は、マーケティングとは何か?から基礎のフレームワークと事例までおさえている、マーケティング人生の土台となる本です。

わかりやすいマーケティング戦略(新版)

▼おすすめポイント
・初心者でもわかりやすい説明
・フレームワークなど基礎を網羅できる
・事例も豊富でインプットしやすい
・仕事(マーケテイング業務)の土台になる良書
・手のひらサイズでソフトカバー、持ち運びも読みやすさも◎

MBA入学最初の授業で著書の沼上先生の授業を受講し、基礎教材だったことがきっかけで手に取りました。今では表紙もボロボロになるほど読み返しています

内容やフレームワークはかなりベーシックなことが書かれていますが、基礎こそが王道です。この本に記載されているフレームを使いこなせれば、ほとんどのお客さんの信頼を得て一緒に議論ができるようになります。自身の経験も踏まえて、仕事の土台になる本だと実感していますね。

時代が変化していても読み続けられるのは王道のフレームワークは変わらないから、そして実務でも重要だからです。この本は手のひらサイズで持ち運べるので、マーケティング知識をすぐに補えるのも良いですね。いつもそばにあると安心できる一冊だと思います。

これからマーケティングを学ぶ学生や、社会人1、2年目でフレームワークを叩き込みたい人に読んでほしい本です。また実務でマーケティングを経験されている方にもおすすめしたいですね。自分の業務内容を振り返ってみたとき、この作業にはこんなフレームワークを使ったらいいんだなどと、整理にも使えますよ。

2.ここらで広告コピーの本当の話をします。

キャッチコピーはマーケティングにおける重要な要素のひとつです。この本を読むと、普段見かける広告の見方すら変え、日常から学びを得られるようになる一冊。そしてとっつきやすさはピカイチです。

ここらで広告コピーの本当の話をします。

¥ 1,870

▼おすすめポイント
・どうしたらターゲットに刺さるのかを学べる
・イメージしやすくラフな文章で面白く学べる
・キャッチコピーはクリエイティブ要素だけでなくマーケティング力
・コピーライターの視点を得ることができる
・Kindle Unlimited で無料で読める

有名な広告コピーでは、例えばJR東海の「そうだ 京都、行こう。」がありますね。パッと伝わりやすくキャッチーで、京都に行ってみようかな、と考える機会を消費者に与えます。

このようなキャッチコピーのセンスは、天性のあるクリエイティブな人が生み出している印象を持ってしまいがちです(私自身そう思っていました)。しかしこの本を読んで、広告コピーの土台にはマーケティングがあり、ちゃんと消費者のことを理解した上で広告コピーを考えていると分かりました。天性やセンスではなく、まさに”マーケティング”である。自身の見方や考え方を変えてくれた一冊でしたね。

また、「打ち出したい商品が競合の商品と比較して独自性があるかどうか、が非常に重要なポイントである」というUSP(Unique Selling Proposition)の概念についても書かれています。

消費者を理解するための本は世の中に溢れていますが、顧客に刺さるコミュニケーションや言葉の開発という点で非常にフラットに書かれているので、分かりやすく学べると思いますよ。内容もすらすらと入ってきて読みやすいので、初学者におすすめしたいですね。

3.たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング 

事業成長に必要な根っこの部分を抑えている本です。事業側視点で書かれたN1分析の具体例が書かれていて、実務で足踏みするときにも答え合わせとして使える一冊です。

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング

¥ 2,160

▼おすすめポイント
・プロダクト(商品)の独自性をどうやったらつくれるかの手引書
・N1分析と具体的な実例の豊富さ
・マーケティング実務経験者のサポートとして使える
・数少ない事業側視点から書かれたN1分析の実例
・実務経験者が見ると納得感のある本

この本は、プロダクト(商品)をそもそもどうやって作っていくか?という製品そのものについての話が、実例を基に書かれています。

ある商品を売り続けるには、商品そのものの価値と、それを効果的に伝えられるか、この両面が噛み合ってはじめてうまくいきます。どちらも大事なのですが、この本はその中でもプロダクトアイデア、つまり商品の独自性をいかに持たせることができるかにポイントを置いて書かれています。そして、その独自性はどうやってつくっていくのかを「N1分析」から考えていくのです。N1分析といえばこの著者ですね。

N1分析とは、実在するひとりの顧客においてどういうきっかけで心理の変化が生じ、購買行動にいたったのかを分析していく手法です。ポイントは、ひとりを深掘りすること。全体の傾向をつかむことも重要ではありますが、商品の独自性をもたせる上では特にひとりに着目することが重要だと説いています。

具体的には、著者が実際にN1分析を行って事業を伸ばしてきた実績をもとに、豊富な事例の中で解説されています。実例が豊富なので分かりやすいですし、マーケティングに関わる仕事をしている方であれば、実務で足踏みしてしまうときにもその原因に気づけるのではないかなと思いますね。

私は国内の大手事業会社のクライアントに、データを基にしたマーケティングリサーチとコンサルティングを行うヴァリューズという会社に務めています。そこでN1分析は主業務にも関わってくる内容なのですが、リサーチ系の会社がN1分析の重要性を説く本はよく出ています。

しかし、実際にその手法を使ってみてどうかという具体的事例や、事業側からみたメリットを解説する本は意外と少ないんですね。だからこそイメージがつきやすく、事業会社のマーケターの方が参考にできるところもおすすめの理由です。

番外編:リーダーシップの旅 見えないものを見る 

リーダーシップは大層なものじゃなく、ふとしたときに芽生えた気持ちと衝動がリーダーシップになり得るという、発見と勇気を与えてくれる一冊です。

リーダーシップの旅 見えないものを見る

生まれながらにしてリーダーの素質を持った人がなるべくしてリーダーになるわけではなく、誰でもその種は持っている、とこの本では書かれています。特に、リーダーシップという言葉が嫌いな人に向けて書かれているところが面白いポイントです(笑)。

たしかに多くの人は電車の中で席を譲ろうとか、赤ちゃんを抱えたお母さんの手助けをしようとか考えますよね。そんな正義感が芽生えたときの内なる衝動がリーダーシップにつながるそうです。この本はマネジャーになった4年前に手に取ったのですが、最初の10ページにそう書いてあってグッと来てしまいました(笑)。

読み終わって、あらためて現場やメンバーから「芽」があがってきたら実行させてあげられる環境を作るのが大事だなと思いました。芽をつまずに「やってみよう」の声を尊重して完遂させるサポートをしてあげる体制構築、組織環境の整備の必要性を意識的にもっておくことが大事だと思わせてくれましたね。

この本は特に節目のタイミングで手にとってほしいです。例えばこれから社会人になる人や、部下がついたり増えたりする人、これまでと違ったことをやる人など。そういうタイミングでこの本を手に取ると、背中を押してくれると思いますよ。

最後に

ここまでマーケティング初学者向けの本を3冊と、社会人人生を送る上で勉強になるリーダーシップの本を紹介してきました。最後にお伝えしたいのは、本との向き合い方です。

私は新しい「知」を取り入れるために本を読んでいましたが、最近ではそれに加えて、本は自分の思いや考えを言語化する作業をサポートしてくれるものだな、と感じ始めています。言ってしまえば、本が自分の考えを代弁してくれる、という感じです。

継続的な新しい知のインプットに加えて、なんとなくふんわりとしていた思考を、自分の言葉に昇華していくこと。この2つのサイクルをどんどん回していくと自分の語彙が増えていくはずです。そんな、本との付き合い方をしていくといいんじゃないかと思います。

今回紹介した3冊+αの本がみなさんのお役に立つことを願っています。

関連記事

4P分析とは?マーケティングミックスに活用

https://manamina.valuesccg.com/articles/623

4P分析は企業が販売戦略を決める際に使わるフレームワークでProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の頭文字を取った用語です。ニーズを満たした製品を、適切な価格で適切な流通で効率よく販促できれば、売上拡大につながります。

マーケティングの基礎!STP分析を使った市場参入

https://manamina.valuesccg.com/articles/553

STP分析はマーケティングのフレームワークで、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字を取ったもの。新規参入にあたって、市場全体の中でどの分野を狙い、自社が競争優位なポジショニングはどこかを決めるのに役立ちます。

競合調査の代表的フレームワーク3種(3C分析・4P分析・SWOT分析)

https://manamina.valuesccg.com/articles/589

市場における自社の強み・弱みや他社の戦略を把握するために行う「競合調査」。ビジネスの競合調査でよく使わているフレームワークが3C分析・4P分析・SWOT分析です。各フレームワークの概要と分析方法、使い分けをご紹介します。

この記事のライター

2018年MRT株式会社に新卒入社。オンライン診療サービス新規事業部に所属し、医師患者医療業界の方の声からオンライン診療情報サイトの重要性を感じ「MedionLife」を立ち上げる。リアルな声を大事にした"web上にいきるbookづくり"を目指し日々奮闘中。料理したり植物を育てたりすることがすきです。マナミナ編集部元ライター。

関連する投稿


"飲みづらい"のに人気な「ゆっくりビアグラス」誕生秘話と想いに迫る

"飲みづらい"のに人気な「ゆっくりビアグラス」誕生秘話と想いに迫る

クラフトビールメーカー、ヤッホーブルーイングが手がけた"飲みづらい"グラス「ゆっくりビアグラス」。ビール好きからは疑問の声が上がりそうな飲みづらいグラスは、メディアやSNSで大きな反響を呼んだほか、「プレスリリースアワード2024」においてもインフルエンス賞(※)を受賞しました。社会のニーズを的確にとらえ、人々の共感を呼び、形にしていく同社の取り組みについて、河津さんと渡部さんにうかがいました。<br> <br> ※株式会社PR TIMESが開催している「プレスリリースアワード」の賞の一つ。発信と活用により社内外へもっとも広く好意的な影響をもたらしたプレスリリースに贈られる賞


ARPUとは?客単価との違いや計算方法・向上のための6つの施策

ARPUとは?客単価との違いや計算方法・向上のための6つの施策

ARPU(アープ)とは、ユーザー一人当たりの平均収益・売上を示す指標です。 もともとは携帯電話等の一契約当たりの売り上げを表す際に用いられていましたが、Saasや課金制のビジネスモデルでもARPUが活用されています。ARPUを用いることで、「優良顧客の選定」や「事業の成長性や収益性の判断」といった経営判断を行えます。本記事では、ARPUの計算方法に加え、ほかの関連指標との違い、ARPUを向上させる施策について解説します。SaaSの運営や、課金のあるサービスの運営をしている方や、ARPUの数値を改善したい方は参考にしてください。


リサーチャー菅原大介氏新刊!『ユーザーリサーチのすべて』出版記念セミナーレポート

リサーチャー菅原大介氏新刊!『ユーザーリサーチのすべて』出版記念セミナーレポート

リサーチャーである菅原大介氏の新刊『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)が2024年10月に発売されました。 ユーザーリサーチは、定性および定量的な手法を駆使して顧客の真のニーズを明らかにし、企業がサービス改善や新たなマーケティング戦略の立案をする際に活用できるため、その重要性が高まっています。今回は出版を記念するセミナーとして、著者の菅原氏をはじめ、ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員・CMOの黒澤友貴氏、株式会社マテリアルデジタル 取締役の川端康介氏をお迎えしてお話しいただきました。


国内外で受賞!味の素冷凍食品「冷凍餃子フライパンチャレンジ」における生活者との共創ポイント

国内外で受賞!味の素冷凍食品「冷凍餃子フライパンチャレンジ」における生活者との共創ポイント

味の素冷凍食品株式会社の「冷凍餃子フライパンチャレンジ」プロジェクトが、日本マーケティング大賞 奨励賞の他、世界有数のPRアワードである「PR Awards Asia-Pacific 2024」で3部門のゴールドを受賞しました。「冷凍ギョーザがフライパンに張り付いた」という一件のSNS投稿からはじまったという、このプロジェクト。立ち上げの背景や、取り組むうえで大事にされていたことを、同社 戦略コミュニケーション部 PRグループ長の勝村敬太氏に伺いました。


プレスリリースアワード2024イベントレポ。受賞プレスリリースから考える、優れたプレスリリースとは

プレスリリースアワード2024イベントレポ。受賞プレスリリースから考える、優れたプレスリリースとは

株式会社PR TIMESが開催した、優れたプレスリリースを表彰する「プレスリリースアワード2024」に、マナミナ編集部員が参加してきました。入賞したプレスリリースがどんなものだったか、今回のイベントから考えられる優れたプレスリリースとはどんなものなのかを紹介していきます。


最新の投稿


"ABM"を認知・実践しているBtoB企業は約7割!うち約8割が成果を実感【IDEATECH調査】

"ABM"を認知・実践しているBtoB企業は約7割!うち約8割が成果を実感【IDEATECH調査】

株式会社IDEATECHは、BtoB企業のマーケティング担当者を対象に、BtoB企業のABM(アカウントベースドマーケティング)に関する実態調査を実施し、結果を公開しました。


博報堂、生成AIでリアル販売員の個性を反映した接客・対話を支援するサービスプロトタイプ「バーチャル販売員」を開発

博報堂、生成AIでリアル販売員の個性を反映した接客・対話を支援するサービスプロトタイプ「バーチャル販売員」を開発

株式会社博報堂は、生成AIを接客・対話など生活者との「コミュニケーション」のために活用し、よりよい顧客体験を実現するためのサービスプロトタイプ「バーチャル販売員」を開発したことを発表しました。


認知的不協和とは ~ 態度と変容の応用

認知的不協和とは ~ 態度と変容の応用

営業やマーケティングにも深く関係のある「認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」をご存知でしょうか。この理論に含まれる概念に本稿のテーマにある「認知的不協和」が含まれるのですが、これは自分が認知していることに2つの矛盾する考えや行動がありストレスを感じることを表した心理状態を指します。この意識をどう誘導し変容させるかによって、その人の行動も180度変わってくると言えるこの理論。本稿では、バランス理論にも言及し、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が解説します。


メディア関係者の約8割が、調査データが含まれるプレスリリースは記事化の可能性を高めると感じている【レイクルー調査】

メディア関係者の約8割が、調査データが含まれるプレスリリースは記事化の可能性を高めると感じている【レイクルー調査】

株式会社レイクルーは、ニュースサイトやオンラインメディアでプレスリリースを活用した記事作成に携わるメディア関係者を対象に「メディア関係者のプレスリリース選定基準に関する実態調査」を実施し、結果を公開しました。


都道府県・政令指定都市別の公式観光サイト推計閲覧者数ランキング【2024年】

都道府県・政令指定都市別の公式観光サイト推計閲覧者数ランキング【2024年】

公益社団法人日本観光振興協会(本部:東京都港区、会長:菰田 正信)と、ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸)は協同で、2024年の観光関連Webサイトの年間推計閲覧者数を調査しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ