マーケティング戦略立案時になぜフレームワークが必要?
マーケティング戦略立案に役立つ「フレームワーク」は、言い換えれば「思考のための枠組み」のことです。この“思考”のなかには、要因の分析なども含みます。
フレームワーク=決められた枠組みに思考やデータを当てはめると課題が整理され、スムーズに問題解決の道筋が見えてきます。ビジネスにおいても、集めるべきデータや検討すべき視点を漏れなく効率的に検討するのに役立ちます。
以下、マーケティング戦略立案時に役立つフレームワークを紹介しますが、これらは戦略立案時に踏むべき段階である、以下のステップに沿ったものとします。
1.市場を取り巻く環境は?
2.誰に向けた訴求をするのか?
3.市場内でどのポジションを狙うのか?
4.顧客にどのような「利益」を与えられるのか?
自社の商品・サービスを市場に普及させるには、一貫したマーケティング戦略が必要です。企業のマーケティング戦略立案に使われる3C分析・STP分析・4P分析などのフレームワークや、有名企業のマーケティング戦略事例をご紹介します。
PEST分析
PEST分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの観点の頭文字を取った、外部環境(マクロ環境)が自社環境に及ぼす影響を分析する方法です。
PESTの観点それぞれについて、自社にまつわる情報を集め、それらを機会(好機)と脅威、短期と長期に分け、自社への影響を検討します。
Politics(政治)
>法律、法改正、税制、裁判制度、政権、政治団体
Economy(経済)
>為替、株価、経済成長率、景気動向、消費動向、物価指数
Society(社会)
>人口動態、流行、世論、宗教、教育、社会情勢
Technology(技術)
>IT、インフラ、特許、技術開発投資、イノベーション
ブランディングのための戦略=ブランド戦略。戦略立案のためにはいくつかのステップを踏む必要があります。その際にフレームワークを利用すると効率が上がります。ここではブランド戦略立案に便利なフレームワーク「3C分析」「SWOT分析」「PEST分析」をご紹介します。
3C分析
3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)という3つの要素の頭文字「C」を取ったフレームワークです。外部環境の調査に用います。
それぞれの言葉の範囲は以下の通りです。
Customer(市場・顧客)
顧客にどれほど購買意思があるのか、また能力などを分析していきます。
市場の大きさや成長性、購買に至る過程などがあります。
Company(自社)
自社の経営状況や強みについて調べておきます。
市場が変化にするにつれて、変化に対応することや、自社の比較を行います。
Competitor(競合)
競合他社について、また競争の状況を調べます。
自社のオリジナリティを探していくのに必要なポイントです。
実際の分析方法の解説は以下のリンクで詳しく行っています。
3C分析の概要とフレームワークの重要性とは?目的とやり方を解説
https://manamina.valuesccg.com/articles/512自社の製品・サービスをマーケティングするには、自社が置かれた市場環境や強み・弱みなどを理解してマーケティング戦略を立案し、施策を実行していきます。マーケティング戦略立案にあたり、顧客・競合・自社の3つの要素から分析する3C分析という方法があります。この記事では、3C分析の意味や実際の手順、事例を元に3C分析活用の注意点を解説します。
5フォース分析
5フォース分析も外部環境を知るためのフレームワークで、以下の5つの要素によって自社が置かれている環境を整理・分析したのち、マーケティングにおいて自社のリソースをどのように振り分けるのかの検討材料にします。
1.競合他社
どれぐらいの競合他社があるのか、競合他社の存在感は市場においてどれぐらいあるのか、などをできるだけ客観的な指標をもって整理・分析します。
2.新規参入
市場に新規参入があった場合、そこでの競争のあり方がガラリと変わってしまう可能性がでてきます。したがって、新規参入業者が大資本、強力な技術力を持っている場合、自社にとって脅威となる可能性があります。
3.代替品
想定した商品と異なる商品やサービスが時として脅威になる場合があります。その理由は顧客側は同じ枠組みと捉えていたり、技術の進化によって市場の垣根が取り払われてしまうケースです。具体的な例を挙げると、デジタルカメラ(デジタルビデオカメラ)の代替品としてスマートフォンが広く使われるようになったことが挙げられます。
4.売り手の力
売り手、つまり自社の力というのは、商品であればそれの原材料などの仕入元との力関係です。仕入元との関係が良好でない場合、原材料の高騰などの要因によって材料を仕入れづらくなるケースが考えられます。原材料が仕入れられなければ商品の供給がストップしてしまいます。したがって、仕入元との関係次第ではわずかなほころびによって自社にとって脅威を与えてしまいます。
5.買い手の力
買い手=顧客も脅威になってしまう可能性があります。買い手の力が強くなると、売り手=自社ならびに競合他社は限界スレスレの値引きを求められてしまい、体力勝負の薄利合戦になって収益を上げづらくなってしまうからです。
これら5つの力が強い業界は収益率が低く、市場としての価値はさほど高くない、となります。ちなみに、5フォースの分析結果は続いて紹介する「SWOT分析」における「外的な強み・弱み」にも利用できます。
SWOT分析
SWOT分析とは、「内部環境か外部環境か」と「事業にとってプラス要因かマイナス要因か」の2×2軸で4つに分類することで、事業を取り巻く要因を整理するフレームワークです。
2×2軸の4つの象限の頭文字が「SWOT」になります。
・Strength(強み)=内部環境xプラス要因
・Weakness(弱み)=内部環境xマイナス要因
・Opportunity(機会)=外部環境xプラス要因
・Threat(脅威)=外部環境xマイナス要因
「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」は自社の強み・弱みとも言い換えられます。また例えば市場が成長しているなら外部環境xプラス要因で「Opportunity(機会)」になります。
競合調査の代表的フレームワーク3種(3C分析・4P分析・SWOT分析)
https://manamina.valuesccg.com/articles/589市場における自社の強み・弱みや他社の戦略を把握するために行う「競合調査」。ビジネスの競合調査でよく使わているフレームワークが3C分析・4P分析・SWOT分析です。本稿では、各フレームワークの概要と分析方法、使い分けをご紹介します。
STP分析
STP分析は3C分析などと並ぶマーケティングの基礎的なフレームワークで、Segmentation・Targeting・Positioning(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の頭文字を取ったものです。
STP分析の流れとしては、市場を細分化(セグメンテーション)し、その中でターゲットにする市場(顧客)を選定(ターゲティング)し、最後に競合に対して自社が優位なポイント(ポジショニング)を確認します。
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングに関しては、以下のリンクにて詳しく解説しているので、ぜひご確認ください。
STP分析はマーケティングのフレームワークで、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字を取ったもの。新規参入にあたって、市場全体の中でどの分野を狙い、自社が競争優位なポジショニングはどこかを決めるのに役立ちます。
4P分析
4P分析とは、1960年アメリカのマーケティング学者エドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱した、次の4つのPの頭文字を取った理論です。
・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(流通)
・Promotion(販促)
各「P」の分析、設定のポイントは以下のとおりです。
Product(製品)
コア機能(機能・価値)、形態(品質・ブランド・パッケージ)、付随機能(アフターサービス)など。
Price(価格)
利益・高級か庶民向けか・値引き有無など。
Place(流通)
チャネル構造・在庫など。
Promotion(販促)
広告媒体、イベントなど。
4P分析は企業が販売戦略を決める際に使わるフレームワークでProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の頭文字を取った用語です。ニーズを満たした製品を、適切な価格で適切な流通で効率よく販促できれば、売上拡大につながります。
4C分析
4C分析とは、Customer Value(顧客価値)、Cost(顧客にとっての経費)、顧客利便性(Convenience)、Communication(顧客とのコミュニケーション)の頭文字を取ったフレームワークです。
4P分析と似ていますが、施策を考える上での視点が異なっています。4Pは企業視点、4Cは「顧客視点」なのが相違点です。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、商品の仕入れ(自社で製造する場合はその原材料の調達も含む)からそれが顧客に届くまでに必要な活動の中で、どこに価値が生じるのかを分析するものです。
商品(サービス)の提供において、製造、マーケティング、販売といった活動を「主活動」とし、その主活動をバックアップするような人事や労務管理、仕入先などの確保といった活動を「支援活動」と設定します。
バリューチェーン分析によって主活動、支援活動を包括し、どこにコストがかかっているのか、どこに価値が出ているのかを可視化し、コスト削減の道筋を検討したり、自社の状況分析につなげます。
こちらは、今まで紹介したフレームワークの補助として用います。
PDCA
PDCAとは、Plan、Do、Check、Action(計画、実行、評価、改善)の頭文字を取ったもので、「PDCAサイクルを迅速に回す」といった言い回しで使われ、ビジネスシーン以外においても使用頻度が高くなったフレームワークで、ミスを少なくしてより高い効果を得るために用いられます。
そのため、PDCAをマーケティング戦略との関連で利用するのは、立案時よりも戦略の実行フェーズのほうが効果的と言えます。
MECE
MECEとは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字を取ったもので、「漏れや重複がない」という意味の思考法です。
課題に対する解決策を見出す場面では、この「漏れや重複がない」こと、つまりMECEの概念が重要になります。そのために、課題を細かく、シンプルに切り分けたり積み上げたりして検討します。
この過程で「トップダウン・アプローチ」という、課題を俯瞰で見て大きな枠組みを決め、そこにさまざまな要素を組み合わせていく方法や、課題全体を把握しづらい場合には「ボトムアップ・アプローチ」という、細かい部分を先に洗い出してそれを積み上げていく方法があります。
MECEに関しては立案時よりも、マーケティング戦略実行後に想定した結果にならなかった場合に、その原因を分析するときに活用できるものです。
まとめ
マーケティング戦略の立案においては、市場(や自社)の環境の把握、訴求相手の決定、市場でのポジショニング、顧客に与えられる価値、以上4点を考慮しなければなりません。
この場合にそれぞれ、PEST分析、3C分析、5フォース分析、SWOT分析、STP分析、4P分析、4C分析を用いると効果的な戦略立案が可能になります。
バリューチェーン分析はフレームワーク立案時の補助的なものとして、PDCAやMECEに関しては戦略実行時やその後の反省材料を出す際に用いるようにします。
用語がたくさん出てきたように、これらの要素を都度いちから考えて漏れなく検討するのは困難です。フレームワークを知っておくと、漏れなく効率的に物事を検討するのに役立ちます。
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