ポストCookie時代のWeb広告配信を考える。顕在層とのタッチポイントをWeb行動ログデータから探ってみた

ポストCookie時代のWeb広告配信を考える。顕在層とのタッチポイントをWeb行動ログデータから探ってみた

昨今、多くの事業においてデジタルマーケティングやWeb広告の重要性が高まっていることは言うまでもありません。そんな中で、個人情報保護の背景から強化されたCookie規制はマーケターに衝撃を与えました。今回はCookie規制に影響されない、ポストCookieについて考えます。


Cookie規制の影響とは?

まずは、Cookie規制における概観を見ていきましょう。

今回のデータ規制には、個人情報保護の「法律による規制」と、プライバシー保護の「ブラウザ・デバイスによる規制」の2つが挙げられます。

①法律による規制・改正個人情報保護法の施行による利用制限
②ブラウザ・デバイスによる規制・サードパーティーCookieの利用制限
・モバイル広告ID「IDFA(Identifier for Advertisers)」の利用制限 


①については、日本では個人情報保護法が3年ごとに見直されており、社会情勢の変化に合わせて改正されることになっています。個人情報保護法が2020年に改正され、2022年4月1日から施行されることになりました。

②については、サードパーティーCookieが問題視されており、AppleやGoogleなどの大手プラットフォーマーがCookie規制強化に乗り出しています。

AppleのブラウザSafariには、2021年9月にリリースされたiOS15とmacOSにITP(Intelligent Tracking Prevention)というサイトトラッキング防止機能を搭載。また、GoogleのChromeでも2023年にはサードパーティーCookieが廃止される予定です。さらに、スマートフォンで広告配信用に使われていた、iOSの各端末に紐付けられたIDである「IDFA(Identifier for Advertisers)」についても、現在デフォルトでOFFになっています。

このように、Cookie規制によって広告配信に使用できるデータが減ってしまうと、「ターゲティングの精度の低下」や「コンバージョン数の計測が不完全になる」、「機械学習が適切に回らなくなる」など、マーケティングに大きく影響します。

当メディア「マナミナ」では、Cookieの基礎知識やサードパーティーCookieに関する記事を公開しています。ぜひ参考にしてください。

Cookieに頼らないWeb広告配信とは?

Cookie規制により、今後はCookieに頼らないWeb広告配信の手法がますます重要となることは言うまでもありません。

ここでは、ターゲティングに関する主要な4つの対応策について紹介します。
以下の4つはITP/クッキーレスの対策としてもよく手法として挙げられるものになります。

・コンテンツの活用
・メディア横断データの活用
・保有リストを外部広告配信と接続
・会員情報を持つメディアから配信

4つの対応策についての詳細は、以下の記事を参考にしてください。

今回は、対応策の1つでもある「コンテンツの活用」について、Web行動ログ分析ツール「Dockpit」を使って分析する手法をご紹介します。

DockpitのWeb行動ログのメリットについてまとめてみました。

Cookieの影響を受けない

独自保有する国内最大規模250万人の消費者パネルを活用しているので、Cookieの影響を受けません。         

属性と紐づけが可能
250万人規模の消費者パネルの性別・年代・年収・エリアなどの属性情報付きで把握しています。
アプリやアンケートデータとの紐づけが可能
消費者パネルを活用し、Web上の消費者ニーズとトレンドを把握することが可能です。
期間を年単位で遡ることが可能
MAX3年前まで遡って分析をすることが可能です。

CVユーザーの分析から顕在層とのタッチポイントを発見

では、Web行動ログ分析ツール「Dockpit」でのターゲティングはどこまで活用の余地があるのでしょうか。

SBI証券のサイトを例に挙げて見てみましょう。

まずは、CVユーザーの特徴的な閲覧サイトを分析するためにCVページを決定します。
口座開設ページ入口に遷移する=見込み客である可能性が高いと仮定し、口座開設ページ入口に接触したユーザーをCVユーザーとします。
※SBI証券の無料口座開設ページ:m.sbisec.co.jp/eatiw011

「比較・検索サイト」に関心を寄せている

それでは、2022年2月の口座開設ページ入口の接触者の関心サイトを特徴値優先(※)で見てみましょう。

※特徴値 = 指定したサイトへ訪問し、かつ当該サイトへも訪問した人数 ÷ 当該サイトの訪問者数 で算出。特徴値優先は、サイト利用者のうち対象者が占める割合が高いサイトから優先して表示される。比較的小規模なサイトで、対象者が特徴的に訪問していたサイトを把握することができる。顕在層へアプローチするためのサイトや、業界の中でも中〜小規模の競合を見つけたい場合に参考になる。

特徴値が高かったのは、「ネット証券の窓口」サイトでした。ネット証券は手数料の安さに加え、スマートフォンで簡単に取り引きできたり、少額投資などのサービスにも対応しておりメリットが多い反面、相談窓口がなく本格的に運用をする場合は自分自身で対応しなければならないデメリットもあります。条件に合った証券会社を簡単検索できる「ネット証券の窓口」への関心が高いのは、上記の背景があるからかもしれません。

2022年ネット証券会社パーフェクトガイド」や「証券研究Lab」、「おすすめのネット証券.com」、「ネット証券ランキング」などの比較・検索サイトも同様に関心が高いことがわかりました。
また、メディアサイトである「たあんと」も上位にランクインしていました。


比較・検索サイトが多くランクインしていることから、これらのサイトはターゲットへのアプローチにおいて重要なタッチポイントとなっていることがわかりました。

「SBI証券の無料口座開設」ページの関心サイト

「SBI証券の無料口座開設」ページの関心サイト ※特徴値優先

期間:2020年2月
デバイス:PCおよびスマートフォン

20代は、投資情報や経済・金融情報に関心あり

CVユーザーは年代によっても、関心サイトに違いがあることもわかりました。

ターゲットを20代に絞って見てみましょう。

上位には、「大和証券」や「野村証券」などがランクインしており、SBI証券以外の証券会社にも関心があるようです。

投資情報販売サイト「フィスコ」や、情報メディア事業と情報ソリューションの提供を行っている「株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド」、フィンテック企業「ZUU」、IR・株式投資情報サイト「ブリッジサロン」などがランクイン。

楽天証券の投資情報メディア「トウシル」などもランクインしていることから、20代のCVユーザーは投資情報や経済・金融情報を幅広く求めていることが読み取れました。

「SBI証券の無料口座開設」ページの関心サイト:20代

「SBI証券の無料口座開設」ページの関心サイト:20代 ※特徴値優先

期間:2020年2月
デバイス:PCおよびスマートフォン

30代は、企業サイトやメディア、ポイントサイトに関心あり

続いて、30代に絞って見てみましょう。

三菱UFJ国際投信の「MAXIS」や「iDeCo公式サイト」など企業サイトの他に、「やさしい投資信託のはじめ方」や「みんかぶ」などのメディアサイトがランクインしていました。

他には、「糖質制限ダイエットとか陸マイラーとかいろいろやってみた」や「ポイントサイト比較ランキング」なども挙がっており、ポイントサイトにも興味関心があることがうかがえました。

コンテンツターゲティングで成果を上げるためには、「誰をターゲティングにするか?」を軸として考え、間接的に関連するサイトへ配信することが重要となります。

このように、Web行動ログ分析ツール「Dockpit」では、性別や年代など属性に絞って関心サイトを分析可能となっているので、コンテンツマーケティングに有効活用できます。

「SBI証券の無料口座開設」ページの関心サイト:30代

「SBI証券の無料口座開設」ページの関心サイト:30代 ※特徴値優先

期間:2020年2月
デバイス:PCおよびスマートフォン

まとめ

今回は、Cookieレスによる広告配信への影響と、Cookieに頼らないWeb広告配信の手法についてまとめました。

今後は、広告施策への取り組みも柔軟に対応していくことが求められます。
さらに、目的やターゲットを明確にして、最適な情報を届けることも重要となるので、それらに対応できるCookieに頼らない分析ツールの導入が不可欠となるでしょう。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連するキーワード


Cookie プロモーション

関連する投稿


TDとは?リスティング広告の成果を高める作成方法を徹底解説

TDとは?リスティング広告の成果を高める作成方法を徹底解説

Web広告におけるタイトルと説明文を意味するTD(Title and Description)。文章次第でユーザーが広告をクリックするかどうかが決まるため、TDは広告の成果に直結する重要な要素です。 この記事では、TDの意味や目的、作成方法などについて詳しく解説します。TDを作成する際に注意するべきことや広告の成果を高めるためのポイントも紹介するので、広告運用の参考にしていただければ幸いです。


The Butterfly Circuit: Eight Motives for Information-Seeking and Creative Ideas that Stick with Consumers

The Butterfly Circuit: Eight Motives for Information-Seeking and Creative Ideas that Stick with Consumers

The "Butterfly Circuit," a framework developed in collaboration with Google, describes the information-seeking process that leads to a purchase. We will present the reality of information-seeking considering the "Butterfly Circuit," its application to communication strategy, and provide insightful suggestions.


顧客目線を忘れない。独自データを活用した広告領域の伴走者としての支援とは

顧客目線を忘れない。独自データを活用した広告領域の伴走者としての支援とは

株式会社ヴァリューズでは独自データを用いた調査分析や分析ツールの提供を広く行う調査会社です。データを活用した広告のプランニングから実行支援と、幅広い分野で実績を重ねています。今回は広告提案のプランニングを行っている松本さんのお話です。コンサルタントとして、業界を問わず多くの事業会社と相対してきた裏側についてお聞きしました。


独自データと伴走支援で唯一無二の存在に。ヴァリューズ「事業と人を、育てる事業」に込められた想い

独自データと伴走支援で唯一無二の存在に。ヴァリューズ「事業と人を、育てる事業」に込められた想い

マナミナを運営する株式会社ヴァリューズは、独自データを用いた調査分析とマーケティングツールの提供を広く行う会社です。またデータを活用したプロモーションの実行支援も幅広く行っています。そんなヴァリューズの中で、いま急成長を遂げているのがデータプロモーション事業。今回はコンサルタント担当の渋谷さんが事業責任者の齋藤さんにお話を伺いました。


「バタフライ・サーキット」が示す8つの情報探索動機と、消費者に刺さるクリエイティブとは | 日経クロストレンドフォーラム レポート

「バタフライ・サーキット」が示す8つの情報探索動機と、消費者に刺さるクリエイティブとは | 日経クロストレンドフォーラム レポート

Google社との共同研究で開発された、購買に至る情報探索プロセスを表すフレームワーク「バタフライ・サーキット」。2022年7月に開催された日経クロストレンドフォーラムでは、「バタフライ・サーキット」に照らし合わせた情報探索の実態と、消費者とのコミュニケーション施策への応用方法をご紹介。8つに分類した情報探索動機から、消費者に刺さるクリエイティブ施策のヒントをお届けしました。詳細なセミナー資料は無料でダウンロードできます。記事末尾のフォームよりお申し込みください。


最新の投稿


アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

Repro株式会社は、アパレル系店舗アプリのインストール前後の利用状況に関するユーザー調査を実施し、結果を公開しました。


認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

未知株式会社は、全国の企業に在籍する20〜60代の方を対象に「コンテンツマーケティングの実施・成果」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

近年、美容インフルエンサーの発信により特定のスキンケア成分がフォーカスされ、「成分関心層」が増加しています。今回は、@cosmeを運営するアイスタイル社が保有する、日本最大級の美容に関する生活者データと、ヴァリューズが保有するオンライン行動データを活用。成分に関する情報感度の高いアーリーアダプター層に注目し、その裏にあるユーザーインサイトから、成分関心層と取るべきコミュニケーションを探ります。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


官民連携の智略 ~ PPP/PFI

官民連携の智略 ~ PPP/PFI

高い効率性が求められるのは今や個人の仕事や学業の範疇にとどまらず、国の施策運営である公共事業などにもその思考傾向は浸透しつつあります。その結果、国は民間企業の協力を得て「官民連携」で公共事業を進めることでそれらを効率化し、さまざまな事業を支えている例が多く存在します。本稿では、このような「官民連携」で効率化を目指す手法のPPPやPFIなどについて、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ