冷凍宅配弁当を検討する人が増えている?
冷凍宅配弁当について深掘りするために、今回はヴァリューズの分析ツールDockpitを使っていきます(毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール)。
まずは、「冷凍宅配弁当」のニーズは増えているのかどうか、「弁当」との掛け合わせ検索ワードランキングで確認してみましょう。
以下の表のとおり、「わたみ」「宅配」「配達」「冷凍」など、「ナッシュ」と類似のサービスに関する検索ワードが上位を占めていることがわかります。
一方で、「レシピ」との掛け合わせは5位にランクインしているものの、「簡単」「作り置き」「食材名」などは10位以下となっており、コロナ禍において、自分で弁当を手作りする人に対して、宅配弁当を検討する人が増えていると言えそうです。
「弁当」との掛け合わせ検索ワードランキング
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
好調「ナッシュ」、急成長中の「GOFOOD」
今回は、「ナッシュ」のイメージが強い冷凍宅配弁当の業界において、実態はどうなっているのか、他サービスと比較しながら検証していきたいと思います。
比較対象としたのは以下の4社です。
※宅配弁当がメインサービスであり、冷凍弁当がメニューの一部となっているような企業は除きます(例:ヨシケイ)。
ナッシュ:https://nosh.jp/
GOFOOD:https://gofood.jp/
ワタミの宅食direct:https://www.watami-takushoku-direct.jp/
食宅便:https://shokutakubin.com/
4社のサイト訪問ユーザー数の推移を比較すると、「ナッシュ」が冷凍宅配弁当のマーケットシェアの大部分を占めており、好調が続いていることがわかります。
冷凍宅配弁当提供企業4社のユーザー数推移比較
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
一方で、「ナッシュ」以外の3社でユーザー数を比較してみると、2021年12月以降、「GOFOOD」が好調(2年間で4.4倍)に推移しています。「食宅便」と「ワタミ」についても、直近2年間で増加傾向にあることがわかります。
リモートワークが定着しつつある中で、多様な冷凍宅配弁当サービスが台頭してきているようです。
冷凍宅配弁当提供企業3社(「ナッシュ」を除く)のユーザー数推移比較
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
YouTube、Facebook広告での集客が加速中のGOFOOD
続いて、4社の集客構造を比較していきます。
流入元ごとの推移を見てみると、「ナッシュ」はソーシャルとディスプレイ広告からの流入数が増加傾向にあることがわかります。特にソーシャル経由の流入については、2021年12月から増加を続けており、順調に集客できている様子がうかがえます。
冷凍宅配弁当提供企業4社の集客構造(セッション数)
リスティング・ソーシャル・ディスプレイ広告・アフィリエイト広告
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
2021年12月からユーザー数を獲得してきた「GOFOOD」も「ナッシュ」と同じくディスプレイ広告と、特にソーシャルでの集客が順調であることがわかります。
冷凍宅配弁当提供企業4社の集客構造(セッション数、ナッシュ以外)
ソーシャル・ディスプレイ広告
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
「GOFOOD」のソーシャルの集客構成を見ると、YouTubeが67.6%を占めています。
YouTubeでは、歌手のDream Shizukaさんが手掛けたイメージソングに乗せて、CM動画が投稿されています。公式チャンネルも開設されており、YouTuberとのコラボ動画も複数見られます。
「GOFOOD」のソーシャル集客構造(セッション数)
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
「GOFOOD」のCM動画
https://www.youtube.com/watch?v=2hu9xWrCDE8
「GOFOOD」のディスプレイ広告経由の流入としては、Facebook広告からの流入が約7割を占めています。Facebookでは、「シェフ監修」を押し出したラグジュアリーな雰囲気のクリエイティブや、「ダイズライス」を使った糖質の低さを訴求するクリエイティブなどがよく見られています。
また、タレントの郷ひろみさんを起用した、「GO」と「郷」を掛け合わせたYouTube広告でのプロモーションも好調です。
「GOFOOD」のディスプレイ広告集客構造(セッション数)
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
「ナッシュ」は男性ユーザーの取り込みに成功
続いて、4社のサイトを訪れたユーザーの属性を比較します。
まず男女比を見てみると、いずれも女性が半数以上を占めていますが、「ナッシュ」は男性比率が他サービスに比べて高く、男女比がほぼ半々であることがわかります。
体に気を遣いつつ、手間を省きたいという男性をいち早く取り込めていると言えそうです。
冷凍宅配弁当提供企業4社のユーザー属性比較/男女比
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
「ナッシュ」のディスプレイ広告のクリエイティブを見てみると、俳優の佐藤健さんを起用したものや、「おれたちの飯」「1人男の飯をナッシュで解決」といったメッセージを掲げるものが表示日数上位に来ており、「ヘルシー」という要素で女性に寄りがちなユーザーのバランスを取ろうとしている様子がうかがえます。
シニア向けの「食宅便」「ワタミ」と、若者向けの「ナッシュ」
続いて、4サービスの年代比率を見てみましょう。
「食宅便」と「ワタミ」は、50代以上のユーザー割合が高く、特に60代以上は他2サービスに比べて高く出ており、ともにシニア層の集客ができていることがわかります。
公式サイトを見てみると、「食宅便」は「腎臓病用やさしいおかず」「減塩ライフ」などを大きく掲げており、「やわらかい食事」なども用意されています。同様に「ワタミ」も「介護食」が注文できるなど、ご自身やご家族向けに適切な、年齢に合わせたプランが提供されていることが、シニア層からの人気につながっているのかもしれません。
一方で「ナッシュ」は20代ユーザーの割合が他サービスに比べて高く出ています。先述のように、SNSでのプロモーションに力を入れていたり、佐藤健さんを起用していたりと、若者に対する露出が大きいことが起因していそうです。
冷凍宅配弁当提供企業4社のユーザー属性比較/年代
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
GOFOODは業界ポジショニングを模索中?
宅配冷凍弁当のターゲットとして、どの層に向けてメッセージングしていくのかが、今後の各社のマーケットシェアに大きく関わります。
先程の年代比のグラフでは、GOFOODは他サービスのちょうど真ん中あたりに位置していました。年代比率の推移を比べてみると、「ナッシュ」は各年代のボリュームが安定していますが、「GOFOOD」は波が大きいことがわかります。
「GOFOOD」は現時点でターゲット属性が型化されていないとすれば、今後の戦略に注目していきたいところです。
「ナッシュ」のユーザー属性推移/年代
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
「GOFOOD」のユーザー属性推移/年代
期間:2020年5月〜2022年4月
デバイス:PCおよびスマホ
まとめ
今回は冷凍宅配弁当の業界について調査しました。この業界では「ナッシュ」が圧倒的なユーザー数を獲得しており、現在も好調に推移していますが、一方で、多様な冷凍宅配弁当サービスが台頭してきているようです。
まずは、「冷凍宅配弁当」のニーズは増えているのかどうか、「弁当」との掛け合わせ検索ワードランキングで確認しました。
この結果、「わたみ」「宅配」「配達」「冷凍」など、「ナッシュ」と類似のサービスに関する検索ワードが上位を占めていることがわかりました。コロナ禍において、自分で弁当を手作りする人に対して、宅配弁当を検討する人が増えていると言えそうです。
次に、4つの冷凍宅配弁当サービスについて、ユーザー数や集客構造、ユーザー属性を比較しました。
「ナッシュ」以外の3社でユーザー数を比較してみると、2021年12月以降、「GOFOOD」が好調(2年間で4.4倍)に推移していることがわかりました。「食宅便」と「ワタミ」についても、直近2年間で増加傾向にあるようです。
また、4社の公式サイトへの集客構造の比較も行いました。
近年ユーザー数の伸長が大きい「GOFOOD」は、「ナッシュ」と同じくディスプレイ広告と、特にソーシャル経由の集客が順調であることがわかりました。YouTubeとFacebook広告を活用して、SNSを面とした集客に力を入れているようです。
続いて、4社のサイトを訪れたユーザーの属性を比較しました。
まず男女比は、いずれも女性が半数以上を占めていますが、「ナッシュ」は男性比率が他サービスに比べて高く、男女比がほぼ半々であることがわかりました。
広告に男性ユーザーのイメージを盛り込み、体に気を遣いつつ、手間を省きたいという男性をいち早く取り込めていると言えそうです。
次に、年代比率を比較すると、「食宅便」と「ワタミ」は、50代以上のユーザー割合が高く、ともにシニア層の集客ができていることがわかります。一方で「ナッシュ」は20代ユーザーの割合が他サービスに比べて高く出ています。若者に対する露出が大きいことが起因していそうです。
「GOFOOD」の年代比については、他サービスのちょうど真ん中あたりに位置しており、比率の推移を見てみると波が大きく出ています。今後さらに集客を拡大するにあたって、どの媒体に注力していくのか、どの層をメインにターゲティングしていくのか、引き続き注目です。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
フリーライター。大手キャリア系企業で編集の仕事に出会い、その後、3つのメディアの立ち上げなど行い、2014年にフリーランスに。医療系、就活系、教育系、結婚系のサイトで執筆中。