生活者ストーリー全体を捉えるためのデータ分析、花王のツール活用事例 | 「VALUES Marketing Dive」レポート

生活者ストーリー全体を捉えるためのデータ分析、花王のツール活用事例 | 「VALUES Marketing Dive」レポート

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を5/26に開催しました。本セミナー全体のテーマは「Update Your Marketing」。Withコロナ時代、生活者には新たな価値観や消費行動が生まれ、マーケティング戦略や施策においては、さらなるアップデートが求められています。本講演では、『生活者ストーリー全体を捉えるためのデータ分析、花王のツール活用事例』と題し、花王の顧客分析についてお届けしました。


スピーカー紹介

図:花王株式会社 稲葉里実氏

図:花王株式会社 稲葉里実氏

図:株式会社ヴァリューズ 伊東茉冬

図:株式会社ヴァリューズ 伊東茉冬

「線」で捉えるカスタマージャーニーの必要性

株式会社ヴァリューズ 伊東茉冬(以下、伊東):「まずは、花王様におけるDX推進の背景について、お話いただけますでしょうか。」

花王株式会社 稲葉里実氏(以下、稲葉):「花王は、2021年にDX戦略推進センターを設立いたしました。設立の目的はいくつかありますが、花王ならではの強みや先端技術を掛け合わせて、これまでの生活者の体験を変えるような新製品を開発することや、マーケティングの付加価値を創造することなどがあります。

私が所属しているカスタマーアナリティクス室では、花王の事業プロセスをデータドリブンにするあらゆる活動を行なっています。
データの収集から分析、ダッシュボードを使った可視化を通じて、ブランド戦略の提案や、商品開発のためのフィードバック、そしてプロモーション施策立案につなげていくなど、マーケティングのあらゆる部分にデータのスペシャリストとして参画することがメインの業務となっています。」

伊東:「データ活用を推進していく上で、何か課題点などは感じていらっしゃいますか。」

稲葉:「これまで購買データやSNS・口コミのデータは分析していましたが、購買に至る前の興味・検討部分のデータを保有しておらず、購買までのカスタマージャーニーの全体像が見えていなかったことが大きな課題と感じていました。
また、迅速に生活者や市場を理解してアクションを起こす、というスピーディさに欠けていたと感じています。」

伊東:「SNSなどでスポットでの情報を集めても、顧客がどのように情報収集をし、どのポイントで態度変容が起きて購入に至ったのかは、なかなか理解が難しいですよね。」

稲葉:「そうですね。顧客を中心にしたデータドリブンな取組みを目指しているので、施策検証・自社EC改善など、それぞれの課題に向き合う「点」でのアプローチに課題があったと思っています。生活者のストーリー全体をデータで把握する「線」でのアプローチが必要だと強く感じています。」

図:課題感:データ分析アプローチの変遷

図:課題感:データ分析アプローチの変遷

story bank活用事例:クラスタ分析

伊東:「顧客体験を「点」ではなく「線」で理解するといった観点で、ヴァリューズのDockpit ・story bankといったWebツールをご利用いただいている花王様ですが、それらの活用事例についてお話ください。」

稲葉:「マーケティング施策検討・商品開発のシーンで顧客理解が必要なため、特に全ての始まりであるゼロ次分析で、Dockpitやstory bankを活用しています。

顧客が求める生活価値の探索、集客構造の把握、ブランド担当者とのマーケティング戦略検討といった幅広い場面で、スピーディに顧客理解ができるようになりました。

それでははじめに、story bankのクラスタリング分析を活用した事例をご紹介します。
こちらは「歯磨き」を検索する方をクラスタリングしたものですが、興味関心を俯瞰できること、人をグルーピングして深堀りできるところが便利です。
グループごとの属性もわかるので、クラスタ分析を回した瞬間に、ターゲットとなるペルソナ分析ができたかのような結果が得られます
どのような生活者がいて、各ターゲットにどんな施策を実施するのか、戦略と戦術の両軸で考察することが出来る、素晴らしい機能だと思っています。」

伊東:「こういった商材についての分析結果というのは、カスタマーアナリティクス室とブランド側とで、一緒に見て議論するという形を取られるのでしょうか。」

稲葉:「そうですね。日頃、我々カスタマーアナリティクス室だけで動くということはなく、必ずブランド側の課題を一緒に理解した上で、どう顧客理解を深めようかと検討しながら進めています。
また、そういった時にDockpitやstory bankを使う一つのメリットとして、打ち合わせのタイミングでデータが引けることで、議論の進み方が圧倒的に早まり、そこにもとても満足しています。」

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<クラスタリング>

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<クラスタリング>

Dockpit活用事例:検索トレンド・流入ページ分析

稲葉:「続いては、Dockpitの検索トレンド分析機能を活用した事例をご紹介します。
最近、化粧品業界でも話題になっている「メンズメイク」ですが、実際はどのような状況なのかということを確認する作業に活用しました。
一番左のグラフを見ても、じわじわと検索数が増加しているのがわかります。ここから、増加している時期にどんなことがあったのか、増加の要因を深掘りしていきました。
男性と女性で検索者を分けると、トレンドが全く違うということも興味深い点でした。」

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<検索トレンド>

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<検索トレンド>

稲葉:「そこで、男女間における違いについて探るために活用したのが、流入ページ分析機能です。
例えば男性は「バレないメイク方法」といったメイクに役立つ実践的な情報を検索していることが多いのですが、女性は「僕がメイクを始めた理由」といった、実用というよりも男性の心理面に興味を持っているということがわかります。
このように、検索後にユーザーが流入したページまで分かるので、生活者が関心を持つポイントに直接結びつけることができて、非常に大きなヒントになります。」

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<流入ページ分析>

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<流入ページ分析>

稲葉:「こちらはDockpitの類似ワード機能を活用した事例です。
私たちはこの機能を特に活用しています。生活者が探索するキーワードの幅を広げたり、特定のキーワードにどのようなイメージを抱いているかを知ることができます。

例えば「丁寧な暮らし」というキーワードを検索すると、「ミニマルライフ」や「シンプルな暮らし」というよく聞くワードの他にも、「自分を大切にする」といったワードが現れました。このことから、「丁寧な暮らし」というキーワードには「自分を大切にする」という生活者の願望も隠れているのではないかという発見につながりました。

このように、ブランドが掲げる重要なキーワードに対して、生活者がどのような価値観を抱いているのかが見えてくるという点で、新たな気づきにつなげてくれる大変面白い機能だと思っています。」

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<類似ワード分析>

図:Dockpit/story bankの活用具体事例<類似ワード分析>

データに翻弄されない顧客分析のコツ

伊東:「ここまでデータの活用事例をいくつかご紹介いただきましたが、実際にデータを見ながら分析をしていく、顧客理解をしていく中で、大切にされていることや注意点についてお伺いできますか。」

稲葉:「データを通じた顧客理解を行う上で注意すべき点として、3つご紹介します。

1つ目は、すべてのデータには条件があり、何かしらのバイアスがある点を忘れないことです。データの取得方法によるバイアスに翻弄されず、データの分析結果を正しく読み解き、生活者の本音にせまることを意識しています。

2つ目、何を実現するためのデータ分析なのか、目的をしっかりと見極めた上で仮説や手法を組み立てるということが重要だと思っています。

そして最後の3つ目が、私個人としては一番大事なポイントだと思っているのですが、日々の生活で、同じく生活者の1人である自分自身の感情や違和感を敏感に捉え、データを読み解く視点を磨くということです。

単純にビッグデータを分析しても新しい発想は生まれないので、チーム全員でこの能力を高めていけるよう頑張っています。」

伊東:「この件について、最近の出来事で気づきがあった具体的な例があれば教えていただけますか。」

稲葉:「個人的な話なのですが、10年以上も愛用していたアイブロウを変えたことです。かなり愛着を持っていた商品だったのに、なぜガラリと変えることができたのか、自分の感情の部分を分析しました。」

伊東:「確かに、年を重ねていくと自然と自分の中の定番が固まっていくにもかかわらず、どうして突然変えようと思ったのか、分析してみるというのは面白そうですね。」

図:データを通じた顧客理解を行う上での注意点

図:データを通じた顧客理解を行う上での注意点

DXの目的は、デジタル化でなく変革

稲葉:「花王のDX戦略推進センターのカスタマーアナリティクス室では、D(デジタル)とX(トランスフォーメーション)において、後者の「変革を起こす」ということの方が圧倒的に重要だと考えています。
顧客体験を変革し、生活者のリアルな行動や声からスピーディに価値を発見することで、顧客を中心としたデータドリブンなマーケティングを実行して参ります。」

伊東:「本日は貴重なお話をありがとうございました。」

関連記事

花王流・データによる顧客理解の実践とは。点ではなく線でストーリーを理解する分析の裏側

https://manamina.valuesccg.com/articles/1729

花王のDX戦略推進センターでは、商品を認知する前の生活者データからLTV向上のための購買体験データまで、あらゆるデータを集約し、事業プロセス全体に活かしています。鍵となるのは「点ではなく線で、顧客ストーリー全体を理解するデータ分析」。どのように実践しているのか、DX戦略推進センターの稲葉里実さん、有地拓也さん、瀧柳七海さんにお話を聞きました。

なぜ花王は強力なデータ分析チームを作れたのか? リスクを取るリーダーが率いる総勢20名の組織とは

https://manamina.valuesccg.com/articles/753

データ分析チームを社内で組織化していきたいという動きは多くの企業で高まっていますが、人材は社内で育成すべきか、あるいは外部パートナーの手を借りるべきかといった人手の悩みや、そもそも何から始めたらいいのかと課題を抱える方は多い状況です。そんな中、早くからデータ分析組織の内製化を進めていた花王さんは、どのような取り組みをされているのでしょうか。データ活用コンサルタントであるヴァリューズの岩村がその秘訣を聞きました。

DX推進に潜むギャップと落とし穴。高まる「Demand」の重要性とは? | 「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1844

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、新しいマーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を5月26日に開催しました。本セミナー全体のテーマは「Update Your Marketing」。Withコロナ時代、生活者には新たな価値観や消費行動が生まれ、マーケティング戦略や施策においては、さらなるアップデートが求められています。本講演では、『DX推進に潜むギャップと落とし穴。高まる「Demand」の重要性とは』と題し、キーノートをお届けしました。

徹底した顧客理解が起点に。ちば興銀が取り組むユーザーニーズに寄り添うコンテンツの磨き方|「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1861

「VALUES Marketing Dive」は、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めて、今年誕生した新しいマーケティングイベントです。今回のテーマは「Update Your Marketing ~ 顧客理解の新潮流」。本レポートでは、ちば興銀の顧客理解を起点としたコンテンツマーケティングの取組みについてお届けします。

広島県の新たな観光構造の構築と、組織の自走化を目指したデータ活用とは|「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1888

“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めて2022年に誕生したマーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」。「Update Your Marketing ~ 顧客理解の新潮流」を今回のテーマに掲げ、広島県観光連盟の新たなDMP構想や自走するデータ活用組織の構築など、DX推進にてヴァリューズが伴走支援を行った事例をレポートします。

仮説のレベルを一段上げる。電通の分析ツール活用法 |「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1900

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を5/26に開催しました。本セミナーの全体テーマは「Update Your Marketing」。これからの時代、生活者には新たな価値観や購買行動が生まれ、マーケティング戦略や施策はさらなるアップデートが求められます。本講演では電通のプランナーをお迎えし、「仮説のレベルを一段上げる Dockpit活用法」と題して、リアルな声をふまえたツール活用法をご紹介いただきました。

お問合せ

本記事や弊社サービスに関するお問い合わせはこちらから
https://www.valuesccg.com/inquiry/

この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経てマーケティング・リサーチ業界へ。
趣味は食と旅行。

関連する投稿


検索順位をチェックし競合分析できる無料ツール「SEOチェキ!」と「SEOTOOLS」とは

検索順位をチェックし競合分析できる無料ツール「SEOチェキ!」と「SEOTOOLS」とは

競合サイト分析に使える無料ツール「SEOチェキ!」「SEOTOOLS」について。知名度がありキーワードの検索順位などもチェックできますが、ツールとしての世代が古い感は否めません。SEOチェキ!とSEOTOOLSの特徴や使いどころ、検索順位が競合分析にどう役立つかを解説します。


【2023年2月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2023年2月13日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


【2023年2月6日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2023年2月6日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


【2023年1月30日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2023年1月30日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


自動車メディアの市場を調査。「カービュー」「くるまのニュース」が2強に!

自動車メディアの市場を調査。「カービュー」「くるまのニュース」が2強に!

クルマの情報や魅力、楽しさなどを発信する自動車メディア。今回は、数多くある自動車メディアについて調査します。自動車メディア市場の概観や勢力図、ユーザー属性などについて分析していきます。


最新の投稿


【TVドラマランキング】Twitterで世界トレンドに!若年層の心をつかんだ「silent」が人気

【TVドラマランキング】Twitterで世界トレンドに!若年層の心をつかんだ「silent」が人気

近年動画配信サービスが普及し、時間や場所にとらわれず様々なジャンルの動画を手軽に視聴できるようになりました。テレビ離れが幅広い年代で囁かれている時代、話題になるテレビドラマとは、どのようなものなのでしょうか。今回は、2022年10月~12月に放送されたドラマについて、認知度や視聴方法、満足度、満足理由などをランキング化。その実態を探りました。


Does Gen Z Prefer Apps Over Websites When Online Shopping?

Does Gen Z Prefer Apps Over Websites When Online Shopping?

The Gen Z data analysts at VALUES, Inc. analyzed behavioral data regarding the online shopping consumption among Generation Z. It is said that Gen Z prefers “e-commerce apps” over “e-commerce websites,” but what is true? We will dig deeper, incorporating the honest voices of the Gen Zers.


検索順位をチェックし競合分析できる無料ツール「SEOチェキ!」と「SEOTOOLS」とは

検索順位をチェックし競合分析できる無料ツール「SEOチェキ!」と「SEOTOOLS」とは

競合サイト分析に使える無料ツール「SEOチェキ!」「SEOTOOLS」について。知名度がありキーワードの検索順位などもチェックできますが、ツールとしての世代が古い感は否めません。SEOチェキ!とSEOTOOLSの特徴や使いどころ、検索順位が競合分析にどう役立つかを解説します。


Instagramにおける「クリエイターマーケティング」 ~ 注目高まるクリエイターエコノミーと企業活用事例

Instagramにおける「クリエイターマーケティング」 ~ 注目高まるクリエイターエコノミーと企業活用事例

2023年、マーケターが押さえておきたいトピックのひとつに、Instagramを活用した「クリエイターマーケティング」が挙げられます。今回は、クリエイターマーケティングをテーマに、Facebook Japanの相原氏と、ヴァリューズの岩間と蒋が対談。期待される効果や施策を行う際のポイント、企業活用事例などをお届けします。


地産地消 ~ 道の駅と食育から

地産地消 ~ 道の駅と食育から

近年注目されつつある「地産地消」。この裏には、人気のお出かけスポットとしての「道の駅」が一役買っています。単なる観光客向けの食品・工芸品の販売だけではなく、地元の生活者の糧としても活用され、そして何より子供たちの「食育」にも繋がることで、「地産地消」の循環の輪は広がっているようです。そのような「地産地消」のメリット・デメリットを含めた実情を、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら